潜水艦のサイズはどのくらい?
潜水艦のサイズは、種類や任務、動力方式によって大きく異なります。
比較的小型の通常動力型潜水艦から、弾道ミサイルを搭載する巨大な原子力潜水艦まであり、すべての潜水艦を同じ基準で「このくらいの大きさ」と表すことはできません。
現代の軍用潜水艦では、全長60〜90m程度の通常動力型潜水艦が多く見られる一方、攻撃型原子力潜水艦では100mを超えるものもあります。
さらに、弾道ミサイルを搭載する戦略原子力潜水艦になると、全長170m前後に達する大型艦も存在します。
潜水艦の大きさを理解するときには、主に「全長」「幅」「排水量」の3つを見ると分かりやすいでしょう。
潜水艦の大きさは全長・幅・排水量で表される
全長とは、船首から船尾までの長さです。
幅は、船体の最も広い部分の横幅を示します。
もう一つ重要なのが排水量です。
排水量とは、艦艇が水に浮かぶことで押しのける水の重量をもとに、艦の規模を表したものです。
ただし、潜水艦の排水量には「基準排水量」「水上排水量」「潜航時排水量」など複数の表し方があります。
そのため、異なる国や艦級の排水量を比較するときには、どの種類の排水量なのか確認する必要があります。
通常動力型潜水艦は全長60〜90m程度が多い
ディーゼル・エレクトリック方式などを採用する潜水艦
通常動力型潜水艦とは、原子炉を搭載せず、ディーゼル機関や蓄電池、電動モーターなどを利用して航行する潜水艦です。
国や設計によって大きさにはかなり差がありますが、現代の主要な通常動力型潜水艦では、全長60〜90m程度のものが多く見られます。
比較的小型の艦は沿岸海域などでの活動を重視している一方、大型の通常動力型潜水艦では長期間の航海や多数の兵器・センサーを搭載できるようになっています。
日本の海上自衛隊が運用する潜水艦は、このなかでは比較的大型の部類に入ります。
日本の潜水艦は全長80m台
「たいげい」型は全長84m
海上自衛隊の最新世代にあたる「たいげい」型潜水艦は、全長84.0m、全幅9.1m、深さ10.4mです。
基準排水量は約3,000トンで、乗員は約70人とされています。
全長84mという長さは、25mプールを約3.4個縦に並べた長さに相当します。
数字だけを見る以上に大きな乗り物であり、地上に置けばかなり巨大に感じられるサイズです。
一方で、潜水艦は水中抵抗を小さくするために細長い流線形をしているため、写真などでは比較的スリムに見える場合があります。
「そうりゅう」型も全長84m
「そうりゅう」型潜水艦も全長84mです。
幅は9.1m、深さは10.3m、基準排水量は2,950トンとなっています。
「たいげい」型と全長や幅はほぼ同じですが、搭載するシステムや内部構成などには違いがあります。
「おやしお」型は全長82m
「おやしお」型潜水艦は、全長82m、幅8.9m、深さ10.3m、基準排水量2,750トンです。
後継の「そうりゅう」型や「たいげい」型より若干小さいものの、大きさには大きな差はありません。
このことから、近年の海上自衛隊の潜水艦は、おおむね全長80m台、幅約9mというサイズであることが分かります。
原子力潜水艦は100mを超えるものが多い
攻撃型原子力潜水艦は通常動力型より大型の艦が多い
原子力潜水艦は、原子炉によって発生させたエネルギーを利用して航行する潜水艦です。
原子力推進設備だけでなく、大型ソナーや兵器、静粛化設備、長期間の任務に必要な居住設備などを搭載するため、通常動力型潜水艦より大型の艦が多くなっています。
ただし、「原子力潜水艦だから必ず通常動力型より大きい」と単純に決まるわけではありません。
潜水艦の大きさは、動力方式だけでなく任務や設計思想によって決まります。
バージニア級は約115〜140m級
アメリカ海軍のバージニア級攻撃型原子力潜水艦は、基本型では全長約114.8mです。
潜航時排水量は約7,925メートルトンで、日本の通常動力型潜水艦と比べるとかなり大型です。
さらに、Virginia Payload Moduleと呼ばれる追加区画を備えるタイプでは、全長が約140.5m、潜航時排水量が約10,364メートルトンまで大型化しています。
同じバージニア級であっても、建造時期や仕様によってサイズが異なる点には注意が必要です。
戦略原子力潜水艦は170m級になることもある
オハイオ級は全長約171m
潜水艦のなかでも特に大型なのが、弾道ミサイルを搭載する戦略原子力潜水艦です。
アメリカ海軍のオハイオ級弾道ミサイル原子力潜水艦は、全長約170.7m、幅約12.8mです。
潜航時排水量は約1万9,000メートルトンに達します。
全長170mという長さは、日本の「たいげい」型の約2倍です。
一般的なサッカーコートの長辺よりもはるかに長く、潜水艦としては非常に巨大な部類に入ります。
大型化する大きな理由の一つは、弾道ミサイルを搭載するための発射設備です。
そのほかにも、原子力推進設備、魚雷などの兵器、センサー、通信設備、乗員の居住区などを船体内部に収容する必要があります。
2万トンを超える大型潜水艦も存在する
潜水艦の排水量は「2万トン程度が最大」と考えるのは正確ではありません。
現在建造が進められている大型戦略原子力潜水艦のなかには、排水量が2万トンを超える設計も存在します。
したがって、現代の潜水艦全体を説明するときには、「大型の戦略原子力潜水艦では排水量2万トン級、あるいはそれ以上に達する場合がある」と考えるほうが適切です。
潜水艦の大きさを身近なものと比較すると
80m級でも巨大な乗り物
全長80mを超える潜水艦は、身近な乗り物と比較するとかなり大きな存在です。
たとえば全長84mの「たいげい」型であれば、25mプール約3.4個分の長さがあります。
幅も約9mあるため、自動車を数台横に並べられるほどの大きさです。
ただし、潜水艦は水中航行に適した細長い形をしているため、同じ長さの建物などと比較すると細身に見えます。
170m級になると大型船並みの長さになる
オハイオ級のような全長170m級の潜水艦になると、その長さは大型の船舶と比べても非常に大きなものになります。
それほど巨大な艦体が海中に完全に潜り、水中を航行することを考えると、潜水艦が非常に大規模な工業製品であることが分かります。
潜水艦はなぜ細長い形をしているのか
水の抵抗を小さくするため
現代の潜水艦が細長く滑らかな形をしている大きな理由は、水中を効率よく航行するためです。
水は空気より密度が高いため、水中を移動すると大きな抵抗を受けます。
そのため、潜水艦では船体表面の凹凸をできるだけ減らし、水の流れを乱しにくい形状が採用されています。
現代の潜水艦は、涙滴型を基本として発展した滑らかな流線形の船体を持つものが一般的です。
水中性能を重視した形状になっている
かつての潜水艦では、水上を航行する性能も重視されていました。
しかし現代の潜水艦は、水中で長時間活動することを前提として設計されているため、水上船よりも水中航行に適した船体形状になっています。
この形状によって水中抵抗を減らすことができ、効率や速力、静粛性の向上にもつながります。
外から見える大きさがそのまま居住空間になるわけではない
潜水艦の内部には耐圧殻がある
潜水艦の内部には、「耐圧殻」と呼ばれる非常に頑丈な構造があります。
海中では深く潜るほど水圧が高くなるため、乗員や重要な機器を守る部分には高い強度が必要です。
耐圧殻は、この水圧に耐えるために設けられています。
そのため、外から見た潜水艦の大きさが、そのまま内部の生活スペースの広さになるわけではありません。
単殻式や複殻式など構造には違いがある
潜水艦の船体構造は、すべて同じではありません。
耐圧殻を中心とする単殻式のほか、耐圧殻の外側にさらに外殻を設ける複殻式や、その中間的な設計などがあります。
外殻と耐圧殻の間などには、バラストタンクや各種設備が配置される場合があります。
そのため、たとえば全幅9mの潜水艦であっても、内部に幅9mの広い部屋があるわけではありません。
潜水艦の居住空間は、外観から想像するより狭いのが一般的です。
潜水艦が大型化する理由
推進装置を搭載する必要がある
潜水艦内部には、航行するためのさまざまな機器が搭載されています。
通常動力型潜水艦であれば、ディーゼル機関、発電機、蓄電池、電動モーターなどが必要です。
原子力潜水艦の場合は、原子炉を中心とした原子力推進システムが搭載されます。
これらの設備が、船体内部の大きなスペースを占めます。
ソナーや兵器を搭載する必要がある
潜水艦の重要な装備の一つがソナーです。
潜水艦は水中ではレーダーを通常の航空機や水上艦のようには利用できないため、音波を利用して周囲の状況を把握するソナーが重要になります。
そのほかにも魚雷発射管、魚雷、ミサイル、通信装置、各種電子機器などを搭載します。
戦略原子力潜水艦では弾道ミサイルとその発射設備も必要になるため、特に大型化しやすくなります。
乗員が長期間生活するための設備が必要
潜水艦は、乗員が数週間から数か月にわたって艦内で生活することがあります。
そのため、寝台、厨房、食堂、トイレ、シャワー、食料庫など、生活に必要な設備も搭載しなければなりません。
さらに、長期間の航海では大量の食料や日用品なども必要になります。
原子力潜水艦では100人を超える乗員が乗り組む場合もあり、それだけの人数が活動できるスペースを確保する必要があります。
大きな潜水艦ほど高性能とは限らない
大型潜水艦には多くの装備を搭載できる
潜水艦を大型化すれば、より多くの兵器、センサー、食料、各種設備を搭載できます。
居住設備を充実させたり、長期間の任務に対応しやすくしたりすることも可能です。
そのため、長距離・長期間の作戦を行う潜水艦では、大型の設計が採用されることがあります。
小型潜水艦にもメリットがある
一方で、潜水艦は大きければ必ず優れているというわけではありません。
大型化すれば、建造費や維持費が高くなり、必要となる港湾設備なども大規模になります。
比較的小型の潜水艦は搭載できる兵器や物資の量では不利になりますが、沿岸海域での運用など、特定の任務に適した設計にすることができます。
潜水艦の最適なサイズは、求められる任務によって異なるのです。
潜水艦のサイズを種類別に比較
代表的な潜水艦の大きさ
代表的な潜水艦のサイズを整理すると、次のようになります。
| 艦級 | 全長 | 公表されている排水量 |
|---|---|---|
| おやしお型 | 82m | 基準2,750t |
| そうりゅう型 | 84m | 基準2,950t |
| たいげい型 | 84m | 基準約3,000t |
| バージニア級基本型 | 約114.8m | 潜航時約7,925t |
| バージニア級VPM搭載型 | 約140.5m | 潜航時約10,364t |
| オハイオ級 | 約170.7m | 潜航時約19,000t |
ただし、日本の潜水艦で示される基準排水量と、アメリカの潜水艦で示される潜航時排水量は定義が異なります。
そのため、表の数字だけを見て「こちらの艦は何倍重い」と単純に比較することはできません。
潜水艦のサイズは任務によって大きく変わる
潜水艦には、すべてに共通する標準的なサイズがあるわけではありません。
通常動力型潜水艦では全長60〜90m程度の艦が多く、日本の海上自衛隊の現行潜水艦は全長80m台です。
一方、攻撃型原子力潜水艦では100mを超えるものが多く、バージニア級では仕様によって約115〜140mになります。
さらに、弾道ミサイルを搭載する戦略原子力潜水艦では170m級に達するものもあり、排水量が2万トンを超える設計も存在します。
つまり、「潜水艦はどのくらい大きいのか」を簡単にまとめるなら、通常動力型では60〜90m程度が多く、大型の原子力潜水艦では100〜170m以上になることもあると考えると分かりやすいでしょう。
潜水艦のサイズは、単純に大きさを競って決められているわけではありません。
動力方式、搭載する兵器やセンサー、航続能力、乗員数、想定される任務などを総合的に考え、それぞれの目的に適した大きさに設計されています。
以上、潜水艦のサイズはどのくらいの大きさなのかについてでした。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
















