潜水艦は嵐の影響を受けるのかについて

潜水艦も嵐の影響を受けます。

ただし、水上を航行する船と比べると、十分な深さまで潜航した潜水艦は嵐の影響を受けにくくなります。

台風やハリケーンなどによって海面が大きく荒れていても、波による海水の動きは水深が深くなるほど小さくなるためです。

そのため、潜水艦が受ける嵐の影響は、海面に浮上しているのか、浅い深度を航行しているのか、十分な深度まで潜っているのかによって大きく異なります。

目次

なぜ潜水艦は深く潜ると嵐の影響を受けにくくなるのか

波による海水の動きは深くなるほど小さくなる

嵐によって発生する強風や豪雨は、基本的には大気中の現象です。

そのため、水中深くを航行している潜水艦に強風や雨が直接当たるわけではありません。

潜水艦に影響を与えるのは、主に嵐によって発生した波やうねりに伴う海水の動きです。

海面に波ができると、海水の粒子は円や楕円に近い軌道を描くように動きます。

この動きは海面付近でもっとも大きく、水深が深くなるほど急速に小さくなります。

そのため、海面では激しい高波が発生していても、十分な深さでは波による揺れが大幅に弱まります。

「波長の半分」は絶対的な安全深度ではない

海洋学では、深海波について、波による水粒子の運動が及ぶ深さを考える目安として「波長の約2分の1」が用いられることがあります。

ただし、波の影響がその深さで突然ゼロになるわけではありません。

実際には、水深が深くなるにつれて波による海水の動きが徐々に、かつ急速に弱くなっていきます。

したがって、「波長の半分まで潜れば絶対に揺れない」「水深○メートルなら必ず安全」と考えるのは正確ではありません。

波の影響は、波高だけでなく、波長や周期、海域の水深などによっても変化します。

海面に浮上している潜水艦は嵐の影響を受けやすい

浮上中は強風や高波を直接受ける

潜水艦が嵐の影響をもっとも受けやすいのは、海面に浮上しているときです。

浮上中は船体が海面にあるため、一般的な水上船と同じように強風や高波の影響を直接受けます。

海が荒れている場合には、船体が上下したり左右に傾いたりすることがあります。

また、艦橋や甲板には大量の海水がかかる可能性があり、見張りや甲板上での作業も難しくなります。

潜水艦は主として水中での性能を重視して設計されているため、浮上中は潜航中よりも波浪の影響を直接受けやすい状態になります。

海面直下や浅い深度ではまだ揺れることがある

少し潜っただけでは波の影響はなくならない

潜水艦が海面の下へ潜ったからといって、すぐに嵐の影響がなくなるわけではありません。

波による海水の動きは海面下にも及んでいるため、浅い深度では潜水艦が上下したり、傾いたりすることがあります。

特に波長の長いうねりは、比較的深い場所まで海水の運動を伝えることがあります。

そのため、海面から少し潜った程度では、大きなうねりの影響が残る場合があります。

波の高さだけでは影響の大きさは決まらない

潜水艦への影響を考える際は、単純な波の高さだけを見ることはできません。

波長や周期も重要です。

一般的に、波長の長い波ほど海中のより深い場所まで影響が及びやすくなります。

したがって、「波が高いから必ず深いところまで影響する」というわけでも、「波が低ければ影響が浅い」と単純に判断できるわけでもありません。

十分な深さまで潜航すると嵐の影響は大幅に小さくなる

海面が大時化でも水中では比較的安定する

潜水艦の大きな特徴のひとつが、荒れた海面から離れて水中を航行できることです。

十分な深さまで潜れば、海面で大きな波が発生していても、その波に伴う海水の運動は大幅に小さくなります。

そのため、海面では暴風と高波による大時化になっていても、潜航中の潜水艦では比較的安定した状態になることがあります。

実際に、荒天を避ける目的で潜航するという潜水艦の運用例も知られています。

ただし、深く潜れば海水の動きが完全になくなるわけではありません。

海中には海流や内部波など、海面の波とは異なる現象も存在します。

台風やハリケーンの下でも潜水艦は航行できるのか

十分に潜航していれば航行は可能

潜水艦は、台風やハリケーンによって海面が荒れている海域でも潜航することができます。

台風の強風や豪雨は大気中で発生しているため、十分な深さにいる潜水艦へ直接作用するものではありません。

問題になるのは、台風によって発生した高波や長周期のうねり、それに伴う海水の動きです。

十分な深さまで潜航すれば、これらの影響は小さくなります。

「台風の下なら必ず安全」というわけではない

ただし、台風の海域に潜れば無条件に安全になるわけではありません。

潜水艦の航行では、海域の水深や海底地形、海流、周囲の船舶、任務内容なども考慮する必要があります。

特に水深の浅い海域では、波を避けるために十分な深さまで潜れない場合があります。

そのため、台風やハリケーンの際の安全性は、単純に「潜っているかどうか」だけで判断できません。

潜水艦の乗組員は嵐の揺れを感じるのか

浅い場所では荒天を感じることがある

潜水艦が海面付近や浅い深度にいる場合には、波やうねりによって船体が動くことがあります。

そのため、乗組員も海が荒れていることを揺れとして感じる可能性があります。

深く潜るほど体感しにくくなる

十分な深度まで潜航すると、海面波による船体の揺れは小さくなります。

そのため、浮上中と比べると、乗組員が荒天を直接的に体感しにくくなることがあります。

もちろん、実際の潜水艦では気象情報や海洋情報を確認しながら航行するため、乗組員が嵐そのものを把握できないという意味ではありません。

潜水艦は嵐以外の海中現象からも影響を受ける

海流の影響

海流は、大量の海水そのものが一定の方向へ移動する現象です。

海面の波とは異なり、深い場所でも存在します。

そのため、潜水艦の進路や速度、航法に影響を与えることがあります。

内部波の影響

海中には「内部波」と呼ばれる現象もあります。

海水は温度や塩分の違いによって密度が変化しており、密度の異なる水の層の境界付近などで波が発生することがあります。

これが内部波です。

内部波は海面に見える通常の波とは異なり、海中そのものに形成されます。

したがって、深く潜れば海中のあらゆる水の動きから解放されるわけではありません。

海底地形による複雑な流れ

海峡や海底の起伏が激しい場所では、地形の影響によって複雑な流れが発生することがあります。

潜水艦にとっては、海面の天候だけでなく、水温、塩分、海流、海底地形などを含めた海洋環境全体を把握することが重要です。

嵐のときはずっと潜っていればよいとは限らない

通信のために必ず浮上するわけではない

現代の軍用潜水艦には、潜航中でも利用できる通信手段があります。

そのため、「通信をするたびに完全に浮上しなければならない」というわけではありません。

ただし、使用する通信方式や任務によっては、浅い深度へ移動したり、アンテナやマストを海面上に出したりする必要が生じることがあります。

その際には、海面の状態が運用に影響する場合があります。

入出港時は荒天の影響を避けにくい

潜水艦が港へ入ったり出たりするときは、海域の水深が浅くなります。

十分な深さまで潜航できないため、沖合の深い海域と比べて波やうねりの影響を受けやすくなります。

また、周囲の船舶や岸壁などにも注意する必要があるため、荒天は潜水艦の入出港にとって大きな制約になり得ます。

潜水艦は嵐で沈没することがあるのか

嵐に遭遇しただけで、潜水艦が簡単に沈没するわけではありません。

十分に潜航している潜水艦は、水上艦のように高波を船体上部から直接受け続ける状態ではないためです。

また、波による海水の運動は、水深が深くなるほど小さくなります。

一方で、「潜水艦ならどんな嵐でも絶対に安全」と考えるのも正確ではありません。

浅い海域や浮上中、入出港時、機器の故障や浸水など、複数の条件が重なれば危険性は高まります。

嵐そのものだけでなく、潜水艦の状態や周辺環境を含めて安全性を考える必要があります。

潜水艦と水上艦では嵐の影響が異なる

水上艦は、基本的に常に海面を航行するため、強風や高波の影響を直接受けます。

一方、潜水艦は波の影響が弱くなる深さまで移動できる点が大きな違いです。

大まかに整理すると、浮上中は嵐の影響を強く受け、海面直下や浅い深度では波やうねりの影響が残り、十分な深度まで潜航すると海面波による影響が大幅に小さくなります。

ただし、具体的な影響は波長や周期、海域の水深などによって異なるため、「水深○メートルなら必ず安全」と一律に決めることはできません。

まとめ

潜水艦は嵐の影響をまったく受けないわけではありません。

海面に浮上しているときや浅い深度では、強風、高波、うねりなどの影響を受けます。

しかし、波による海水の動きは水深が深くなるほど小さくなるため、十分な深さまで潜航すれば、海面の荒天による影響を大幅に減らすことができます。

そのため、台風やハリケーンによって海面が大荒れになっていても、十分な深度を航行している潜水艦では比較的安定した状態になることがあります。

ただし、深く潜ればすべての影響がなくなるわけではありません。

海流や内部波、海底地形による流れなど、海中には海面の波とは別の現象も存在します。

つまり、「潜水艦は水上艦より嵐の影響を避けやすい」という理解は正しいものの、「潜れば嵐の影響を一切受けない」という理解は正確ではありません。

以上、潜水艦は嵐の影響を受けるのかについてでした。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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