潜水艦の号令について

潜水艦で使われる号令は、艦を安全かつ正確に動かすための短く明確な指示です。
ただし、実際の号令や運用手順は国や海軍、艦級によって異なり、軍事上の理由から細部が公表されていないものもあります。

一般に公開情報から確認できる範囲では、潜水艦では「操艦」「潜航・浮上」「機関操作」「戦闘配置」「緊急時対応」などに関する号令が使われます。

目次

潜水艦の号令とは

潜水艦では、艦長や当直士官などの指示を、各担当者が速やかに実行します。

水上艦と同様に、艦内では命令を聞き間違えないことが非常に重要です。
そのため、号令はできるだけ短く、意味が一つに定まる表現が使われます。

また、命令を受けた側がその内容を復唱する運用も重要です。

例えば進路や深度を変更する場合、指示を受けた担当者がその内容を復唱することで、聞き間違いや操作ミスを防ぎます。

潜航するときの号令

潜水艦特有の号令として代表的なのが、潜航に関するものです。

「潜航」の号令

潜水艦が水上航行から水中航行へ移行するときには、潜航を開始するための号令が出されます。

英語圏の潜水艦を扱った資料や作品では、

「Dive」
「Dive the boat」

などの表現が知られています。

ただし、実際の潜航では単に艦を沈めるだけではありません。

潜航前には、艦外へ通じる開口部や装置の状態を確認し、水中航行に適した状態へ移行する必要があります。

深度を指定する号令

潜水艦が水中を航行するときには、目標とする深度を指示します。

例えば英語圏では、

「Make your depth ○○ feet」

のように、目標深度を指定する形式が知られています。

深度を変更するときは、操舵員や潜舵を担当する乗員が指示に従って艦の姿勢を調整します。

ただし、現代の潜水艦では自動制御システムも利用されるため、具体的な操作方法は艦によって異なります。

浮上するときの号令

潜航中の潜水艦が海面へ戻る場合には、浮上に関する号令が出されます。

通常の浮上

通常の浮上では、安全を確認しながら徐々に深度を浅くしていきます。

潜水艦は浮上する前に、周囲に船舶などが存在しないか確認する必要があります。

そのため、ソナーや潜望鏡などを使って周辺状況を確認したうえで浮上します。

英語圏では、

「Surface」

という非常に単純な号令が使われる場合があります。

緊急浮上

潜水艦には、緊急時に短時間で浮上するための手段があります。

映画などでは、

「Emergency blow」

という号令がよく知られています。

これは主バラストタンクなどに高圧空気を送り込み、急速に浮力を増加させる操作を指します。

ただし、緊急浮上は通常運用とは異なる非常手段です。
具体的な操作手順や条件については、軍事・安全上の理由から詳細が公開されていない場合があります。

進路を変えるときの号令

潜水艦も水上艦と同様に、操舵によって進路を変更します。

「面舵」「取舵」に相当する号令

日本の船舶では一般に、

「面舵」
「取舵」

という言葉が知られています。

面舵は右方向へ、取舵は左方向へ舵を取る指示です。

ただし、現代の海上自衛隊潜水艦で具体的にどのような言い回しが使用されているかについては、公開情報だけではすべて確認できません。

そのため、一般的な船舶用語として理解するのが適切です。

英語圏の操舵号令

英語では、

「Right rudder」
「Left rudder」

などの表現が使われます。

例えば、

「Right full rudder」

であれば、右方向へ大きく舵を取る指示になります。

また、進路そのものを指定する場合には、

「Steady on course ○○」

のような号令が使われることがあります。

速度を変えるための号令

潜水艦では、推進機関の出力を変更するための号令も重要です。

前進の号令

一般的な艦船では、

「Ahead one-third」
「Ahead two-thirds」
「Ahead full」

などのように、前進速度を段階的に指定する方式があります。

意味としては、

低速前進
中速前進
全速前進

といった違いです。

潜水艦の場合も、艦の状況に応じて推進出力を変更します。

後進の号令

後進の場合は、

「Back one-third」
「Back full」

などの表現があります。

ただし、潜水艦は水上艦とは運動特性が異なるため、実際の速度管理や推進装置の操作方法は艦ごとに異なります。

潜水艦特有の深度制御の号令

潜水艦では左右方向だけでなく、上下方向にも進路を変える必要があります。

この点が水上艦との大きな違いです。

艦首を下げる指示

潜航深度を深くする場合には、艦の姿勢を下向きに調整します。

英語では、

「Dive」
「Down angle」

など、艦首を下げることを意味する表現が使われる場合があります。

艦首を上げる指示

逆に浮上方向へ向かう場合は、艦首を上げます。

「Up angle」

などの表現が使われることがあります。

ただし、実際には目標深度や艦の姿勢、速度などを総合的に管理します。

戦闘時に使われる号令

潜水艦では、敵艦や敵潜水艦を発見した場合に、戦闘配置へ移行するための号令が使われます。

戦闘配置

英語圏では、

「Battle stations」

という号令がよく知られています。

これは乗員が所定の戦闘配置につくことを意味します。

潜水艦の場合、ソナー、戦闘指揮、操艦、兵器など各部署が戦闘態勢へ移行します。

日本語では一般的に「戦闘配置につけ」などと表現されることがありますが、実際の海上自衛隊で使われる正式な号令の詳細は公開情報だけでは確認できないものがあります。

魚雷発射に関する号令

映画などでは、

「Fire」

という号令で魚雷を発射する場面がよくあります。

実際の潜水艦でも、射撃管制システムを通じて発射命令が伝えられます。

ただし、実際の発射手順は単純ではありません。

目標の確認、射撃諸元の計算、兵器の準備、安全確認、発射許可など複数の段階があります。

具体的な実戦手順は軍事情報にあたるため、一般向けには詳細が公開されていません。

ソナーに関する号令

潜水艦では、周囲の音を監視するソナー員の役割が非常に重要です。

音響接触の報告

ソナー員が艦船などの音を探知した場合には、艦長や当直士官へ報告します。

英語では、

「Contact」

という表現が知られています。

さらに、接触方向を表す方位や、音の特徴などが報告される場合があります。

ただし、具体的な分類方法や報告形式は軍ごとに異なります。

アクティブソナーの使用

潜水艦は自ら音波を発するアクティブソナーを使用する場合もあります。

ただし、音波を発すると自艦の存在を相手に知られる可能性があるため、状況に応じて慎重に使用されます。

そのため、潜水艦では相手が発する音を受信するパッシブソナーが特に重要になります。

潜望鏡を使用するときの号令

潜水艦が海面近くまで浮上すると、潜望鏡などを使用して海上を確認できます。

潜望鏡深度

潜望鏡を使用できる程度の深度は「潜望鏡深度」と呼ばれます。

英語では、

「Periscope depth」

という表現が使われます。

「Go to periscope depth」

といった形で、潜望鏡を使用可能な深度へ移行する指示が出される場合があります。

潜望鏡を上げる

映画などでは、

「Up periscope」

という号令がよく知られています。

これは潜望鏡を上げる指示です。

反対に、

「Down periscope」

で潜望鏡を下げます。

これらは潜水艦を象徴する号令として非常に有名です。

シュノーケル航行に関する号令

通常動力型潜水艦では、海面近くでシュノーケルを使用してディーゼル機関を運転し、蓄電池を充電することがあります。

この状態はシュノーケル航走などと呼ばれます。

シュノーケルを使用する際には、深度、海況、吸排気装置などを適切に管理する必要があります。

ただし、具体的な号令や手順は艦種や海軍によって異なるため、一般公開されている情報は限定的です。

緊急時には専用の号令が使われる

潜水艦では火災や浸水などが重大事故につながる可能性があります。

そのため、緊急事態が発生した場合には、乗員全員へ迅速に情報を伝える必要があります。

浸水

艦内へ海水が侵入した場合には、浸水箇所を特定し、区画を閉鎖するなどの対応が行われます。

潜水艦では小さな浸水でも深刻な事態になる可能性があるため、重要な緊急事態です。

火災

潜水艦内部で火災が発生した場合も非常に危険です。

密閉された艦内では煙や有毒ガスが拡散する可能性があるため、迅速な消火と区画管理が必要になります。

衝突への対応

海中では他の潜水艦や海底、海上では船舶などとの衝突リスクもあります。

そのため、異常が発生した場合には各部署が緊急配置につき、艦の安全状態を確認します。

号令は復唱することが重要

潜水艦の号令で非常に重要なのが「復唱」です。

例えば艦長が進路や深度を指示した場合、操作担当者がその内容を声に出して確認します。

これは、単なる儀式ではありません。

数字や方向を聞き間違えれば、艦の安全に直結するからです。

例えば、

「深度を100に」
「深度100」

というように、命令と復唱をセットにすることで認識のずれを防ぎます。

航空機や大型船舶などでも同様の考え方が採用されています。

映画の潜水艦号令はどこまで本物なのか

潜水艦映画では、

「Dive! Dive!」
「Battle stations!」
「Up periscope!」
「Fire!」

といった号令が頻繁に登場します。

これらのなかには実際の海軍用語をもとにしたものもあります。

ただし、映画ではテンポや演出を優先するため、実際よりも手順を大幅に省略している場合があります。

実際の潜水艦では、一つの操作を行う前に複数の確認や復唱、安全確認が行われることがあります。

そのため、映画のように艦長が一言命令すればすぐに潜航や魚雷発射が行われるとは限りません。

日本の潜水艦でも英語の号令を使うのか

海上自衛隊では基本的に日本語による指揮・運用が行われます。

一方、海上自衛隊は国際的な海軍活動や米海軍などとの共同訓練も行うため、英語による海事・軍事用語に習熟する必要があります。

ただし、日本の潜水艦内部で実際に使用される号令の具体的な文言については、公表資料だけですべてを確認することはできません。

したがって、

「日本の潜水艦では必ずこの言い方をする」

と断定するのは避けたほうが適切です。

潜水艦で使われる代表的な号令をまとめると

潜水艦では、主に次のような目的の号令が使われます。

  • 潜航開始
  • 浮上開始
  • 深度変更
  • 進路変更
  • 速度変更
  • 潜望鏡の上げ下げ
  • 戦闘配置
  • ソナー接触の報告
  • 兵器運用
  • 緊急浮上
  • 火災や浸水への対応

潜水艦は三次元の水中空間を航行するため、水上艦よりも「深度」に関する指示が重要になる点が大きな特徴です。

また、閉鎖された艦内で安全に行動するためには、短く明確な号令と復唱による確認が欠かせません。

以上、潜水艦の号令についてでした。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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