潜水艦で働く人の年収は、一律に決まっているわけではありません。
日本の場合、潜水艦で勤務する人の多くは海上自衛隊の自衛官です。
そのため、給与は一般企業のように職種ごとの固定年収で決まるのではなく、階級や号俸を基準とした俸給に、潜水艦勤務に対する各種手当や賞与が加算される仕組みになっています。
特に大きいのが、潜水艦の乗組員に支給される「乗組手当」です。
潜水艦乗員には、原則として俸給月額の55.5%に相当する乗組手当が設定されています。
そのため、同じ階級・号俸の自衛官でも、陸上勤務などと比較すると総支給額が高くなりやすいのが特徴です。
ただし、防衛省は「潜水艦乗員の平均年収」という統計を公表していません。
そのため、「潜水艦乗員の平均年収は○○万円」と一つの金額で表すのは正確ではありません。
潜水艦乗員の給与はどのように決まる?
基本となるのは自衛官の俸給
潜水艦乗員も海上自衛官であるため、給与の基本となるのは自衛官の「俸給」です。
俸給は一般企業における基本給に近いものです。
金額は主に、
・階級
・号俸
・勤続年数
・昇任状況
などによって変わります。
同じ潜水艦で勤務していても、若手隊員とベテラン隊員、曹と幹部では俸給額が異なります。
したがって、潜水艦での担当業務だけを見て年収を判断することはできません。
職種だけで年収が決まるわけではない
潜水艦にはさまざまな役割の乗員がいます。
たとえば、航海、機関、通信、電測、ソナー、武器、給養などの職域があります。
しかし、「ソナー員だから年収○万円」「料理を担当する隊員だから年収○万円」というように、職種ごとに一律の年収が決まっているわけではありません。
給与の土台となるのは、あくまでも階級や号俸です。
そこに、潜水艦への配置や航海など、実際の勤務内容に応じた手当が加算されます。
潜水艦乗員には俸給月額の55.5%の乗組手当が付く
潜水艦勤務の大きな特徴が「乗組手当」
潜水艦乗員の収入を考えるうえで、最も重要な手当の一つが「乗組手当」です。
海上自衛隊では、艦艇に乗り組んで勤務する自衛官に対して、海上勤務の特殊性などを考慮した乗組手当が設けられています。
潜水艦の場合、その割合は**俸給月額の55.5%**です。
これは潜水艦の給与を理解するうえで非常に重要なポイントです。
俸給30万円なら乗組手当は約16万6,500円
たとえば、俸給月額が30万円だったと仮定します。
乗組手当は、
30万円 × 55.5%
となるため、約16万6,500円です。
俸給と単純に合計すると、
30万円+16万6,500円=46万6,500円
となります。
ただし、これは制度を理解するための単純計算です。
実際の支給額は、乗組員としての配置期間や勤務条件などによって異なる場合があります。
俸給が上がれば乗組手当も増える
潜水艦の乗組手当は定額ではなく、俸給月額を基準として計算されます。
そのため、昇任や昇給によって俸給が高くなると、乗組手当も増えます。
たとえば俸給月額が35万円なら、
35万円 × 55.5%=19万4,250円
です。
俸給月額が40万円なら、
40万円 × 55.5%=22万2,000円
になります。
この仕組みから、勤続年数が長くなったり上位階級へ昇任したりすると、潜水艦勤務による手当も大きくなる傾向があります。
潜水艦と護衛艦では乗組手当が異なる
潜水艦は護衛艦より乗組手当の割合が高い
海上自衛隊の艦艇勤務では、すべての艦種で同じ割合の乗組手当が支給されるわけではありません。
代表的な割合を見ると、
護衛艦などは俸給月額の43%、潜水艦は55.5%となっています。
つまり、潜水艦勤務の方が乗組手当の割合が高く設定されています。
俸給30万円なら月約3万7,500円の差
俸給月額を30万円として単純計算すると、護衛艦の乗組手当は、
30万円 × 43%=12万9,000円
です。
一方、潜水艦の場合は、
30万円 × 55.5%=16万6,500円
です。
差額は月3万7,500円となります。
仮に同じ俸給額で12か月間それぞれの乗組手当が支給されたとすると、単純計算では年間約45万円の差になります。
ただし、これはあくまでも比較用の計算です。
実際の年間支給額は配置期間や勤務状況などによって異なります。
潜水艦乗員には航海手当もある
乗組手当とは別に航海手当が支給されることがある
潜水艦乗員には、乗組手当だけでなく、所定の条件を満たした航海を行った場合に「航海手当」が支給されることがあります。
航海手当は、潜水艦に所属していることだけを理由として一律に支給されるものではありません。
航海の状況や水域など、一定の条件に基づいて支給されます。
したがって、同じ階級・号俸の潜水艦乗員であっても、年間の航海状況によって収入に差が生じる可能性があります。
出港回数だけで金額が決まるわけではない
航海手当について、「出港すれば毎回同じ金額がもらえる」と考えるのは適切ではありません。
実際には航海区域などの条件が関係します。
そのため、潜水艦乗員の年収を計算するときに航海手当を固定額として扱うことは難しくなっています。
潜水艦乗員にはそのほかの手当もある
勤務条件によって複数の手当が加算される
自衛官には、勤務場所や家族構成などに応じてさまざまな手当があります。
代表的なものとしては、
・乗組手当
・航海手当
・地域手当
・扶養手当
・住居手当
・通勤手当
などがあります。
すべての潜水艦乗員が同じ手当を受け取るわけではありません。
勤務地、住居形態、扶養家族の有無などによって支給条件が変わります。
同じ階級でも年収が異なることがある
たとえば、同じ階級・同じ号俸の潜水艦乗員が2人いたとしても、実際の年収が完全に同じとは限りません。
航海日数や勤務地、扶養家族の有無などが違えば、支給される手当も異なるからです。
そのため、潜水艦乗員の年収は「階級だけ」で判断することもできません。
潜水艦乗員にはボーナスも支給される
自衛官にも年2回の賞与がある
自衛官には、民間企業のボーナスに相当する期末・勤勉手当があります。
原則として6月と12月の年2回支給されます。
したがって、潜水艦乗員の年間収入を考える場合、
俸給の12か月分だけを計算するのは適切ではありません。
年間収入は、おおむね、
俸給+乗組手当+航海手当などの各種手当+期末・勤勉手当
という構成になります。
初年度は賞与額が異なる場合がある
入隊したばかりの自衛官の場合、在職期間などによって最初の賞与額が通常より少なくなることがあります。
そのため、初任給を基準にして「月給×12+通常のボーナス」で初年度年収を計算すると、実際とは異なる可能性があります。
若手隊員の年収を紹介するときには、この点にも注意が必要です。
若手の潜水艦乗員はいくらくらいもらえる?
一般曹候補生の初任給が参考になる
2026年度の自衛官募集情報では、一般曹候補生の俸給月額は、高卒で23万9,500円、大卒で25万8,500円とされています。
ただし、これは一般曹候補生として採用された時点の俸給です。
入隊した直後から潜水艦乗員として勤務するわけではないため、この初任給に直ちに55.5%の乗組手当が加わるとは限りません。
仮に23万9,500円に55.5%を加えると約37万2,000円
制度上のイメージをつかむために、俸給月額23万9,500円の自衛官が潜水艦の乗組手当の対象になったと仮定します。
乗組手当は、
23万9,500円 × 55.5%=約13万2,900円
です。
俸給と合計すると、
23万9,500円+約13万2,900円=約37万2,400円
となります。
ただし、この金額を「潜水艦乗員の初任給」と表現するのは正確ではありません。
あくまでも、一定の俸給月額に55.5%の乗組手当を適用した場合の計算例です。
潜水艦乗員になるとすぐ給料が高くなるわけではない
入隊直後から潜水艦に乗るわけではない
海上自衛隊へ入隊したからといって、すぐに潜水艦へ配属されるわけではありません。
まず自衛官として必要な教育や訓練を受け、その後、適性や人員配置などに応じて各部隊へ配置されます。
潜水艦勤務についても、必要な教育や訓練を経たうえで乗組員となります。
したがって、
「海上自衛隊に入れば基本給の55.5%が必ず上乗せされる」
という理解は誤りです。
潜水艦乗組員として勤務していることが重要
55.5%の乗組手当は、潜水艦乗員として所定の条件を満たして勤務している場合に関係する手当です。
海上自衛官であるだけで一律に支給されるものではありません。
この違いを理解しておくことが重要です。
潜水艦乗員の平均年収は公表されている?
潜水艦だけの平均年収データは確認できない
防衛省や海上自衛隊では、自衛官の俸給や各種手当について公表しています。
一方で、
「潜水艦乗員の平均年収は○○万円」
という形の公式統計は公表されていません。
そのため、インターネット上で見かける「潜水艦乗員の平均年収○○万円」という数字については、根拠を確認する必要があります。
年収500万円や700万円と一律にはいえない
潜水艦乗員は乗組手当が大きいため、条件次第では比較的高い収入になることがあります。
しかし、
「潜水艦乗員なら年収500万円以上」
「平均年収は700万円程度」
などと一律に断定することはできません。
若手かベテランか、曹か幹部かによって俸給水準は大きく異なります。
さらに、航海手当や扶養手当などの有無でも年間収入は変わります。
海上自衛隊には年収700万円を超えるモデルケースもある
艦艇勤務では高い年収になるケースもある
防衛省が過去に示した給与モデルのなかには、護衛艦乗組員の年収が約770万円となる例があります。
モデルは33歳の1尉で、配偶者と子どもがいるケースです。
俸給だけでなく、乗組手当、扶養手当、航海手当などを含めた年間収入として示されています。
このことからも、艦艇勤務では階級や勤務条件によって年収700万円を超えることがあると分かります。
潜水艦乗員の平均年収ではない点に注意
ただし、このモデルケースは潜水艦乗員を対象としたものではありません。
また、乗組手当の割合も現在とは異なる時期の資料です。
したがって、
「潜水艦乗員の年収は約770万円」
と置き換えることはできません。
あくまでも、自衛官の艦艇勤務では各種手当によって高い年間収入になるケースがあることを示す参考例です。
潜水艦の艦長はどのくらいの年収になる?
艦長は幹部自衛官
潜水艦の艦長は幹部自衛官です。
そのため、一般の若手乗員より高い階級・号俸に位置し、俸給水準も高くなる傾向があります。
さらに、潜水艦勤務に関係する手当などが加わるため、若手乗員より年間収入が高くなることは自然です。
艦長だけの平均年収は公表されていない
一方で、「潜水艦艦長の平均年収」という公式統計は公表されていません。
そのため、
「潜水艦の艦長は必ず年収1,000万円を超える」
などと断定するのは適切ではありません。
実際の収入は階級や号俸、勤続年数、各種手当などによって変わります。
潜水艦乗員の手当が高い理由
潜水艦は特殊な勤務環境
潜水艦は一般的な職場とは大きく異なる環境で運用されます。
水中で行動している間は自由に外へ出ることができず、限られた艦内スペースで多くの乗員が生活します。
また、自然光が入らない環境で一定期間生活することもあります。
長期間の艦内生活も求められる
潜水艦では、任務によって長期間にわたり同じ艦内で生活する場合があります。
乗員は勤務だけでなく、食事や睡眠など日常生活の大部分を潜水艦の中で過ごします。
さらに、当直勤務によって交代しながら艦の運用を続けなければなりません。
このような特殊な海上勤務を考慮し、潜水艦には高い割合の乗組手当が設定されています。
潜水艦乗員は生活費の面でも一般会社員と異なる
自衛官には生活面の支援制度がある
自衛官には、勤務形態によって住居や食事などに関する公的な支援があります。
特に基地内などで生活する若手隊員の場合、一般企業に勤めて一人暮らしをする会社員とは生活費の構造が大きく異なることがあります。
そのため、単純に額面年収だけを比較するだけでは、実際の生活水準を正確に比較できない場合があります。
全員の家賃や食費が無料というわけではない
ただし、「自衛官なら家賃や食費がすべて無料」と考えるのは適切ではありません。
階級、年齢、家族構成、営内・営外居住の違いなどによって生活条件は変わります。
潜水艦乗員についても、全員が同じ生活費負担になるわけではありません。
潜水艦乗員の年収を左右する主な要素
階級と号俸
もっとも基本的な要素が階級と号俸です。
昇任したり勤続年数が長くなったりすることで俸給が高くなれば、基本的な年間給与も増えていきます。
また、乗組手当が俸給月額に連動しているため、俸給が上がるほど潜水艦勤務による手当額も増えます。
潜水艦への配置期間
潜水艦乗員としての勤務期間も収入に影響します。
年間を通じて同じ勤務条件とは限らないため、単純に「俸給×1.555×12」で年収が決まるわけではありません。
航海の状況
航海手当の対象となる勤務がどの程度あるかによっても年間収入は変わります。
潜水艦の任務内容や航海状況によって差が生じます。
家族構成や勤務地
扶養家族の有無や勤務地などによって、扶養手当や地域手当などが関係する場合があります。
そのため、同じ潜水艦に乗っている同階級の隊員でも、総支給額が異なるケースがあります。
潜水艦乗員は一般の自衛官より高収入になりやすい?
潜水艦乗員には俸給月額の55.5%という大きな乗組手当があります。
そのため、同じ階級・号俸の自衛官同士を比較した場合、潜水艦乗組員として手当の支給対象になっている期間については、陸上勤務などより総支給額が高くなる傾向があります。
さらに、航海手当などが加わる場合もあります。
ただし、潜水艦勤務は特殊な環境で行われる仕事です。
高い手当は単なる優遇というよりも、海上・潜水艦勤務の特殊性を考慮した給与制度の一部と考えるのが適切です。
潜水艦で働く人の年収についてのまとめ
潜水艦で働く人の年収は、一律に「○○万円」と決めることはできません。
日本の潜水艦乗員の多くは海上自衛官であり、給与は階級や号俸を基準とした俸給に、さまざまな手当や賞与が加わって決まります。
なかでも特徴的なのが、潜水艦乗員に設定されている俸給月額の55.5%の乗組手当です。
さらに、勤務条件によって航海手当、地域手当、扶養手当などが加わる場合があり、期末・勤勉手当も年2回支給されます。
一方、防衛省は潜水艦乗員だけを対象とした平均年収を公表していません。
そのため、「潜水艦乗員の平均年収は500万円」「艦長なら必ず1,000万円を超える」といった断定は避けた方が正確です。
潜水艦乗員の年収を理解する際は、「基本となる俸給に55.5%の乗組手当などが加わり、階級・号俸・航海状況・各種手当によって年間収入が大きく変わる」と考えるのが適切です。
以上、潜水艦で働く人の年収についてでした。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
















