潜水艦の中はどのようになっているのか

潜水艦の中は、操縦設備やソナー、機関、電池、兵器、居住設備などを限られた船体内部に高密度で配置した特殊な空間です。
一般的な船のように広い廊下や客室があるわけではなく、通路の近くに機器や配管が並び、その限られたスペースで乗員が生活しながら任務を行います。

ただし、潜水艦の内部構造は、通常動力型か原子力型か、攻撃型か弾道ミサイル搭載型かといった種類によって大きく異なります。
ここでは、主に現代の軍用潜水艦を想定しながら、潜水艦の中がどのようになっているのか詳しく解説します。

目次

潜水艦の中はどのような構造になっている?

潜水艦の内部には、艦を操縦するための設備だけでなく、乗員が生活するための設備や、長期間にわたって水中で活動するための生命維持設備も備えられています。

代表的な設備としては、発令所、ソナー関連区画、兵器区画、居住区、調理室、食堂、トイレ、機関区画、電池、発電設備、空調設備などがあります。

すべての設備を限られた船体内部に収めなければならないため、潜水艦の内部は非常に効率的に設計されています。

潜水艦内部の主な設備

一般的な軍用潜水艦には、主に次のような区画や設備があります。

  • 発令所・操縦関連設備
  • ソナー・戦闘システム関連設備
  • 魚雷発射管や兵器を収容する区画
  • 乗員の寝台や居住区
  • 食堂・調理室
  • トイレ・洗面・シャワー設備
  • 機関・推進関連設備
  • 蓄電池や発電設備
  • 空調・酸素供給などの生命維持設備

ただし、これらの配置や規模は潜水艦によって異なります。
また、現役の軍用潜水艦では内部構造の詳細が公開されていない場合も多いため、一般に確認できるのは基本的な構成が中心です。

潜水艦の内部を守る「耐圧殻」とは?

潜水艦の構造を理解するうえで重要なのが「耐圧殻」です。

潜水艦が深く潜るほど、船体には大きな水圧が加わります。
その圧力に耐えて乗員や重要な設備を守る構造が耐圧殻です。

耐圧殻の内側が主な生活・作業空間になる

潜水艦の外から見える船体全体が、そのまま乗員の生活空間になっているわけではありません。

潜水艦によって構造は異なりますが、耐圧殻の外側には外殻、タンク、各種設備などが配置されることがあります。

乗員が活動する主要な空間や重要設備は、水圧に耐えられる耐圧殻内部に配置されます。

耐圧殻は円筒形を基本としている

潜水艦の耐圧殻には、円筒形を基本とした構造が広く採用されています。

円筒形は、周囲から受ける高い水圧に耐える構造として適しているためです。

そのため潜水艦内部は、円筒形を基本とする限られた空間の中に、床や区画を設けて多数の設備を配置する構造になっています。

発令所は潜水艦の中枢となる場所

潜水艦の中で特に重要なのが発令所です。

発令所では、潜水艦の運航や作戦に必要なさまざまな情報を扱います。

潜航・浮上や航行を管理する

発令所では、艦の航行状況を確認したり、潜航や浮上に関係する操作を行ったりします。

航法情報や各種センサーから得られる情報も確認され、乗員が連携して潜水艦を運航します。

現代の潜水艦では電子化や自動化が進み、多数のディスプレイや操作端末を使用する艦もあります。

昔の潜水艦より自動化が進んでいる

古い潜水艦では、各種バルブ、レバー、計器などを乗員が直接操作する場面が多くありました。

現代の潜水艦ではコンピューターによる統合や自動化が進んでいるため、操艦方法も大きく変化しています。

そのため、映画などで見られるような大きなハンドルや多数の機械式計器が、すべての現代潜水艦にそのまま残っているわけではありません。

ソナー関連設備で水中の音を分析する

潜水艦にとって、周囲の状況を把握するために欠かせないのがソナーです。

海水中では一般的なレーダー用の電波が強く減衰するため、水中で遠くの対象を探知する際には音波が重要になります。

パッシブソナーで周囲の音を聞く

潜水艦では、周囲の艦船や潜水艦などが発する音を受信するパッシブソナーが重要な役割を果たします。

パッシブソナーは自ら音を発信しないため、自艦の存在を相手に知られにくいという特徴があります。

収集した音響情報から、音源の方向や特徴などを分析して対象を識別します。

アクティブソナーを使用する場合もある

アクティブソナーは、自ら音波を発信し、対象物から返ってくる反射音を利用する方式です。

対象までの距離などを把握するのに役立つ一方、音を発信することで自艦の存在を察知される可能性もあります。

そのため、軍用潜水艦では状況に応じてソナーを使い分けます。

潜水艦には魚雷などを搭載する区画がある

軍用潜水艦には、魚雷などの兵器を運用するための設備があります。

攻撃型潜水艦などでは、魚雷発射管と魚雷を収容するスペースが設けられています。

魚雷発射管からミサイルを発射できる潜水艦もある

潜水艦によっては、魚雷だけでなく、魚雷発射管から巡航ミサイルなどを発射できる場合があります。

また、機雷を運用できる潜水艦もあります。

ただし、搭載できる兵器や発射方法は艦級によって異なります。

弾道ミサイル潜水艦には大型の発射筒がある

弾道ミサイル潜水艦では、大型の潜水艦発射弾道ミサイルを搭載するための発射筒が船体内部に組み込まれています。

そのため、一般的な攻撃型潜水艦より船体が大型になる傾向があります。

潜水艦には乗員が眠る居住区もある

潜水艦は長期間にわたって海中で活動するため、乗員が生活するための居住設備も必要です。

ただし、船体内部のスペースが限られているため、一般的な船と比べても一人あたりの生活空間は小さい傾向があります。

寝台は上下に配置されることが多い

潜水艦では、限られた空間を有効活用するため、寝台を上下に重ねて配置する方式がよく見られます。

寝台にはカーテンなどが付けられ、最低限のプライバシーを確保できるよう工夫されています。

乗員は勤務時間以外に、こうした寝台で睡眠を取ります。

個室が用意される場合もある

艦長や一部の士官などには個室が設けられる潜水艦もあります。

ただし、潜水艦では空間そのものが貴重であるため、個室であっても一般的な住宅の部屋のような広さはありません。

収納設備なども限られたスペースを有効利用できるよう工夫されています。

潜水艦には食堂や調理室もある

乗員が長期間生活する潜水艦には、食事を作るための調理室もあります。

出航時には任務期間に応じて多くの食料を搭載します。

艦内で食事を調理する

潜水艦では、冷凍・冷蔵食品や保存性の高い食品などを活用しながら乗員の食事を用意します。

長期間の任務では食料の保管スペースも重要になるため、艦内の限られた場所が効率的に利用されます。

食堂を多目的に使用する場合もある

潜水艦では空間が限られているため、食堂が食事専用の場所とは限りません。

休憩や打ち合わせなどに利用されることもあります。

一つの空間を複数の目的に使うことは、潜水艦ならではの特徴の一つです。

潜水艦にはトイレやシャワーもある

潜水艦の中でも長期間生活できるように、トイレ、洗面設備、シャワーなどが設置されています。

ただし、水上の施設とは設備の仕組みが異なります。

淡水を作る設備を搭載する潜水艦もある

現代の潜水艦には、海水から淡水を作る造水設備を備えているものがあります。

この水は飲料水や調理、洗面などに利用されます。

ただし、使用できる水の量や運用方法は潜水艦の種類や任務によって異なります。

そのため、「潜水艦ではシャワーを浴びられない」と一概にいうことはできません。

排水にも専用設備が必要になる

潜航中は潜水艦の外側に大きな水圧がかかっています。

そのため、家庭の排水設備のように単純に水を外へ流すことはできません。

汚水や排水を処理するためにも、水圧を考慮した専用の設備が使用されます。

潜水艦の中には配管やケーブルが多い

潜水艦内部の写真を見ると、天井や壁の周辺に多数の配管、ケーブル、バルブなどが配置されていることがあります。

これは、船体内部に非常に多くのシステムを収めなければならないためです。

多数の設備を限られた空間に収めている

潜水艦には、海水、空気、油圧、冷却、電力、空調などに関係するさまざまな系統があります。

これらを限られた耐圧殻内部に配置する必要があるため、設備密度が非常に高くなります。

ただし、潜水艦のすべての場所で配管やケーブルがむき出しになっているわけではなく、区画によって内部の雰囲気は異なります。

通常動力型潜水艦には大型の蓄電池がある

通常動力型潜水艦では、蓄電池が重要なエネルギー源になります。

潜航中には、蓄電池から供給される電力によって推進用の電動機や艦内設備を動かします。

鉛蓄電池やリチウムイオン電池が使われる

潜水艦では長年にわたって鉛蓄電池が広く使用されてきました。

一方、近年ではリチウムイオン電池を採用する潜水艦も登場しています。

海上自衛隊では、そうりゅう型の後期艦である「おうりゅう」「とうりゅう」や、その後のたいげい型にリチウムイオン電池が採用されています。

リチウムイオン電池は、従来の鉛蓄電池とは異なる特性を持ち、通常動力型潜水艦の水中での行動能力を支える重要な装備となっています。

ディーゼル機関で発電する

ディーゼル・エレクトリック方式の潜水艦では、ディーゼル機関によって発電し、蓄電池を充電します。

ただし、ディーゼル機関は燃焼のために空気を必要とします。

そのため、水中でディーゼル機関を運転する場合には、シュノーケルなどを利用して外気を取り込む必要があります。

AIPを搭載する潜水艦もある

一部の通常動力型潜水艦には、AIPと呼ばれる非大気依存推進システムが採用されています。

AIPを使用すると、通常のディーゼル機関だけに頼る場合と比べて、外気を取り込む頻度を減らすことができます。

ただし、AIPを搭載しているからといって外気や蓄電池が完全に不要になるわけではありません。

原子力潜水艦には原子炉が搭載されている

原子力潜水艦では、ディーゼル機関や蓄電池を主要な推進エネルギー源とする通常動力型とは異なり、原子炉を主なエネルギー源として使用します。

原子炉の熱を推進や発電に利用する

原子炉では核分裂によって熱を発生させます。

その熱を利用して蒸気を作り、蒸気タービンなどを介して推進や発電に利用します。

具体的な推進システムは艦級によって異なりますが、原子力潜水艦は長期間にわたって大きなエネルギーを得られる点が特徴です。

原子炉周辺には放射線防護措置が施されている

原子力潜水艦の原子炉が、乗員の生活空間にそのまま置かれているわけではありません。

原子炉周辺には放射線遮蔽などの防護措置が施され、居住区などとは適切に区画されています。

一方で、機関部門の乗員は原子力推進システムを運転・監視する必要があるため、機関関連区画で勤務します。

潜水艦の中では空気をどのように確保する?

完全に潜航している潜水艦では、常に外気を取り込めるわけではありません。

そのため、艦内の空気を安全な状態に保つ生命維持システムが必要になります。

酸素を供給する

長時間潜航する潜水艦には、艦内へ酸素を供給するための設備があります。

特に長期間連続して潜航できる原子力潜水艦では、酸素を生成する設備などを使用して艦内環境を維持します。

二酸化炭素を除去する

人間が呼吸すると酸素を消費して二酸化炭素を排出します。

そのため、密閉された潜水艦内部では二酸化炭素を除去し続けなければなりません。

専用の空気浄化装置を利用して、二酸化炭素の濃度を適切な範囲に維持します。

一酸化炭素や臭気なども管理する

潜水艦では二酸化炭素以外にも、一酸化炭素、湿気、臭気、機器などから発生する微量の物質を管理する必要があります。

そのため、空調設備や空気浄化設備を使用して、乗員が安全に生活できる環境を維持しています。

軍用潜水艦には窓が基本的にない

現代の軍用潜水艦には、一般的な船の客室にあるような窓は基本的にありません。

深く潜る潜水艦では、窓を設けることが耐圧構造を複雑にする要因となります。

また、水中では目視よりソナーなどのセンサーによって周囲の状況を把握することが重要です。

水面付近では潜望鏡などを使用する

潜水艦が水面近くを航行する際には、潜望鏡などを使用して海上の状況を確認できます。

潜望鏡を海面上に出すことで、潜水艦本体を浮上させなくても周囲の様子を確認できます。

電子光学マストを搭載する潜水艦もある

現代の潜水艦には、従来型の光学式潜望鏡ではなく、カメラや赤外線センサーなどを搭載した電子光学マストを採用するものもあります。

マストが取得した映像を艦内のディスプレイに表示するため、乗員が直接潜望鏡をのぞく必要がない潜水艦も存在します。

潜水艦の中は暗いの?

潜水艦の中が常に真っ暗というわけではありません。

通常の活動中は艦内照明が使用されています。

外の明るさでは昼夜を判断しにくい

完全に潜航している場合、乗員は外の太陽光を見ることがほとんどありません。

そのため、艦内時計や勤務シフトなどによって生活リズムを管理します。

潜水艦では24時間運航を続けるため、勤務する乗員と休息する乗員が交代しながら任務を行います。

赤い照明が使われることもある

映画などでは潜水艦内部が赤い照明に包まれている場面があります。

実際に状況に応じて照明の色や明るさが変えられることはありますが、潜水艦内部が常に赤色照明になっているわけではありません。

潜水艦の中は静かなの?

軍用潜水艦では、敵に発見されにくくするために静粛性が非常に重要です。

そのため、機械の振動を抑えたり、機器を防振支持したりするなど、さまざまな静粛化対策が行われています。

艦内が完全に無音なわけではない

潜水艦が静粛化されているといっても、艦内そのものが無音になるわけではありません。

空調、換気設備、ポンプ、電動機、各種機械などが動いているため、艦内では機械音が発生します。

乗員の会話や作業音もあります。

重要なのは、こうした音や振動をできるだけ海中へ伝えず、相手のソナーに探知されにくくすることです。

潜水艦では乗員が交代しながら生活する

潜水艦は昼夜を問わず運航を続けるため、乗員は交代しながら勤務します。

すべての乗員が同時に働き、同時に眠るわけではありません。

勤務と休息を交代で行う

乗員は複数のグループに分かれ、操艦、監視、機関管理などを交代で担当します。

勤務時間以外には睡眠、食事、整備、訓練、休憩などを行います。

具体的な勤務体系は国や海軍、艦級によって異なるため、すべての潜水艦で同じ勤務時間が採用されているわけではありません。

潜水艦の中を簡単に表すと?

潜水艦の内部は、簡単にいえば「細長く限られた耐圧空間の中に、司令室・機械室・兵器設備・寝室・食堂・生命維持設備などを詰め込んだ空間」です。

水上艦のように広いデッキや居住スペースを設けることが難しく、機械や配管のすぐ近くで乗員が生活することも珍しくありません。

一方、現代の潜水艦には、ソナー、航法、通信、空調、酸素供給、二酸化炭素除去、造水、調理、衛生設備など、長期間にわたって水中で活動するための高度なシステムが搭載されています。

つまり潜水艦の中は、単なる「狭い船内」ではありません。
船、司令室、発電設備、兵器システム、生活施設を一つの限られた船体内部に集約した、高度に機能的な空間といえるでしょう。

以上、潜水艦の中はどのようになっているのかについてでした。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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