潜水艦にはさまざまな種類があり、主に動力方式・任務・大きさ・用途などによって分類できます。
ただし、「原子力潜水艦」「弾道ミサイル潜水艦」「小型潜水艦」などは、それぞれ分類の基準が異なります。
たとえば原子力潜水艦は「動力方式」による分類ですが、弾道ミサイル潜水艦は「任務や搭載兵器」による分類です。
そのため、潜水艦の種類を理解するときは、分類基準を分けて考えることが重要です。
動力方式による潜水艦の種類
現代の軍用潜水艦は、動力方式によって大きく原子力潜水艦と通常動力型潜水艦に分けられます。
原子力潜水艦
原子力潜水艦は、艦内に搭載した原子炉から得られるエネルギーを利用して航行する潜水艦です。
一般には「原潜」と略して呼ばれることもあります。
多くの原子力潜水艦では、原子炉の熱を利用して蒸気をつくり、タービンなどを動かすことで推進力や艦内で必要な電力を得ています。
原子力潜水艦の大きな特徴は、通常動力型潜水艦のように蓄電池を充電するため頻繁にシュノーケル航走を行う必要がないことです。
原子炉から継続して大きなエネルギーを得られるため、長期間にわたって潜航しながら高速で航行できます。
一方で、原子炉を搭載するため構造が複雑になり、建造費や維持費も高額になります。
原子炉の安全管理や専門的な教育を受けた乗員も必要になることから、原子力潜水艦を保有・運用している国は限られています。
通常動力型潜水艦
通常動力型潜水艦は、原子炉を使用せず、主にディーゼルエンジン、発電機、蓄電池、電動機などを組み合わせて航行する潜水艦です。
代表的なのがディーゼル・エレクトリック方式です。
通常動力型潜水艦は、原子力潜水艦ほど長期間にわたり高速潜航することは難しいものの、比較的小型化しやすく、低速航行時の静粛性に優れた艦もあります。
沿岸海域や比較的狭い海域での作戦に適していることも特徴です。
ディーゼル・エレクトリック潜水艦とは
ディーゼル・エレクトリック潜水艦では、ディーゼルエンジンを使って発電し、蓄電池を充電します。
潜航中は電力を使って航行する
ディーゼルエンジンは燃焼するために空気を必要とします。
そのため、完全に潜航した状態では通常、ディーゼルエンジンを運転することができません。
潜航中は蓄電池に蓄えた電力を利用して電動機を動かし、スクリューなどを回転させて航行します。
蓄電池の残量が減ると、浮上するか海面近くまで上昇し、シュノーケルと呼ばれる装置を海面上に出してディーゼルエンジンを運転します。
これによって蓄電池を再び充電できます。
AIPを搭載した潜水艦
通常動力型潜水艦の潜航能力を高める技術として利用されてきたのが、AIPです。
AIPは「Air Independent Propulsion」の略で、日本語では「非大気依存推進」などと訳されます。
外部の空気に頼らずエネルギーを得られる
AIPは、外部の大気を継続的に取り込まなくても、水中で発電や推進に必要なエネルギーを得られる仕組みです。
代表的な方式には、スターリングエンジンや燃料電池、閉サイクル方式などがあります。
AIPを利用すると、従来のディーゼル・エレクトリック潜水艦より長時間潜航しやすくなります。
特に低速で長時間潜航する場合に有効です。
ただし、一般的なAIPは原子力機関ほど大きな出力を継続的に得られるわけではありません。
そのため、長時間にわたる高速航行能力では原子力潜水艦が優れています。
リチウムイオン電池を搭載した潜水艦
通常動力型潜水艦では、従来の鉛蓄電池に代えてリチウムイオン電池を採用する例もあります。
リチウムイオン電池搭載潜水艦は、厳密には原子力潜水艦や通常動力型潜水艦と並ぶ独立した大分類ではなく、通常動力型潜水艦に採用される蓄電池技術の一つと考えるのが適切です。
日本でもリチウムイオン電池が採用されている
リチウムイオン電池は、一般に鉛蓄電池と比べて高いエネルギー密度や充放電性能を持っています。
そのため、潜航中に利用できる電力量を増やし、水中での行動能力を高めることが期待できます。
日本の海上自衛隊では、そうりゅう型潜水艦の11番艦「おうりゅう」と12番艦「とうりゅう」でリチウムイオン電池が採用されました。
その後のたいげい型潜水艦でも、リチウムイオン電池を利用した推進システムが採用されています。
一方で、大量のリチウムイオン電池を潜水艦という閉鎖された環境で使用するためには、高度な安全管理や温度管理なども必要です。
任務による潜水艦の種類
軍用潜水艦は、どのような任務を担当するかによっても分類できます。
代表的なものとして、攻撃型潜水艦、弾道ミサイル潜水艦、誘導ミサイル潜水艦などがあります。
攻撃型潜水艦
攻撃型潜水艦は、敵の潜水艦や水上艦艇を捜索・追跡し、必要に応じて攻撃することを主な任務とする潜水艦です。
SSNとは
原子力推進の攻撃型潜水艦は、一般に「SSN」と表記されます。
SSNは魚雷などを使用して敵の潜水艦や水上艦艇に対処するだけでなく、艦によっては巡航ミサイルなども搭載します。
任務は幅広く、敵潜水艦の追跡、水上艦艇への対処、情報収集、偵察、特殊作戦部隊の支援、地上目標への攻撃などを担当することがあります。
原子力によって長時間高速航行できるため、広い海域で活動しやすいことも特徴です。
SSKとは
通常動力型の攻撃潜水艦については、軍事分野で「SSK」と表記されることがあります。
ただし、SSKはすべての国や組織で統一して使用されている世界共通の公式分類ではありません。
そのため、「通常動力型潜水艦は必ずSSKと呼ばれる」と考えるのではなく、通常動力型攻撃潜水艦を示す分類記号の一つとして理解するのが適切です。
弾道ミサイル潜水艦
弾道ミサイル潜水艦は、潜水艦発射弾道ミサイルであるSLBMを搭載する潜水艦です。
原子力推進の弾道ミサイル潜水艦は、一般に「SSBN」と表記されます。
戦略的な核抑止を担う
SSBNの重要な役割は、敵から発見されにくい海中に潜伏しながら、弾道ミサイルを発射できる状態を維持することです。
潜水艦は位置を特定されにくいため、敵から先制攻撃を受けた場合でも生き残る可能性を高められます。
その結果、相手に対して「攻撃しても反撃を受ける可能性がある」と認識させることができ、核抑止力の一部として重要な役割を果たします。
米国などでは、陸上配備型の大陸間弾道ミサイル、戦略爆撃機、弾道ミサイル潜水艦を核戦力の「三本柱」と位置付けています。
誘導ミサイル潜水艦
多数の誘導ミサイルを搭載する原子力潜水艦は、一般に「SSGN」と表記されます。
SSGNは「Guided Missile Submarine」の略で、日本語では「誘導ミサイル潜水艦」などと呼ばれます。
大量の巡航ミサイルを搭載できる
SSGNでは、代表的な兵器として多数の巡航ミサイルを搭載できます。
巡航ミサイルを使用することで、軍事施設や指揮所、防空施設などの地上目標を遠距離から攻撃できます。
また、SSGNはミサイル攻撃だけではなく、特殊作戦部隊の輸送や支援などに利用される場合もあります。
そのため、単なる「巡航ミサイルを発射する潜水艦」ではなく、多目的な能力を持つ潜水艦として運用されることがあります。
特殊作戦に対応する潜水艦
潜水艦は敵から発見されにくいという特徴を生かし、特殊作戦部隊の潜入や回収に使用されることもあります。
専用艦とは限らない
「特殊作戦用潜水艦」という独立した世界共通の艦種が存在するわけではありません。
実際には、攻撃型潜水艦や誘導ミサイル潜水艦などに特殊作戦能力を持たせて運用するケースがあります。
潜水員や特殊部隊を目的地付近まで輸送したり、小型の水中航走体を利用して隊員を送り出したりすることができます。
任務としては、偵察、情報収集、潜入、回収などが考えられます。
大きさによる潜水艦の違い
潜水艦は、大きさによって大型・中型・小型などと表現されることもあります。
ただし、これらについて世界共通の厳密な排水量基準が定められているわけではありません。
大型潜水艦
大型潜水艦の代表例としては、弾道ミサイル潜水艦が挙げられます。
大型の弾道ミサイルや発射装置を搭載し、長期間航海するための居住設備や食料、各種機器を備える必要があるため、艦体も大きくなる傾向があります。
大型原子力潜水艦には100人を超える乗員が乗り込むものもあります。
小型潜水艦
大型の潜水艦とは別に、少人数で運用する小型潜水艦も存在します。
小型潜水艦は大型潜水艦ほどの航続距離や兵器搭載量を持たないことが一般的ですが、小型であることを生かして沿岸防衛や特殊作戦などに利用される場合があります。
特殊潜航艇
小型潜水艦の一種として、特殊潜航艇があります。
特殊潜航艇は少人数で運用され、敵の港湾付近への潜入など、特殊な任務を目的として設計されることがあります。
第二次世界大戦では、日本やイギリスなどが特殊潜航艇を実戦で使用しました。
潜水艦と潜水艇は厳密には同じではない
一般には、水中を航行する乗り物を広い意味で潜水艦と呼ぶ場合もあります。
しかし、軍用潜水艦と深海調査艇、観光用潜水艇などは、用途や構造が大きく異なります。
そのため、専門的には区別して考えた方が分かりやすいでしょう。
深海調査用の有人潜水艇
海洋研究では、深海を調査するための有人潜水調査船や有人潜水艇が使用されています。
深海の水圧に耐えられる構造を持つ
深海では非常に高い水圧がかかるため、乗員が入る耐圧殻には高強度の材料が使用され、球形に近い構造が採用されることがあります。
代表的な用途は、深海生物の観察、海底地形や地質の調査、海底資源の研究、沈没船の調査などです。
軍用潜水艦が長距離を航行しながら任務を遂行することを重視するのに対し、深海調査艇は非常に深い場所まで安全に潜ることを重視して設計されています。
観光用潜水艇
観光客を乗せて海中を観察するための潜水艇もあります。
海中を観察できる窓が設けられている
観光用潜水艇には、乗客が魚やサンゴ礁などを観察できるよう、大きな窓が設けられているものがあります。
軍用潜水艦では耐圧性や静粛性などが重視されるため、大型の窓を設置することは一般的ではありません。
一方、観光用潜水艇は比較的浅い海域で運航されるものが多く、海中景観を楽しめるように設計されています。
無人潜水艇・UUV
近年は、人が乗らずに水中を航行する無人水中航走体も発達しています。
一般に「UUV(Unmanned Underwater Vehicle)」と呼ばれます。
有人潜水艦とは別のカテゴリー
UUVは一般的な有人潜水艦とは異なるカテゴリーの水中航走体です。
遠隔操作されるものや、あらかじめ設定されたプログラム、センサーなどを利用して自律航行するものがあります。
用途としては、海底調査、海洋観測、機雷探知、情報収集、海底地形の測量などがあります。
軍事分野でも研究・運用が進められており、有人潜水艦と無人水中航走体を組み合わせて使用することも考えられています。
潜水艦の種類を理解するポイント
潜水艦には数多くの種類がありますが、重要なのは分類基準を分けて考えることです。
動力方式で分類すると、原子力潜水艦と通常動力型潜水艦に大きく分けられます。
通常動力型潜水艦には、ディーゼル・エレクトリック方式を基本として、AIPを併用するタイプやリチウムイオン電池を採用するタイプがあります。
一方、任務によって分類すると、攻撃型潜水艦、弾道ミサイル潜水艦、誘導ミサイル潜水艦などがあります。
さらに、大きさによる小型潜水艦や特殊潜航艇などの分類もあります。
深海調査艇、観光用潜水艇、UUVなどは、広い意味では水中を航行する乗り物ですが、一般的な軍用潜水艦とは別のカテゴリーとして考える方が正確です。
このように、潜水艦の種類は単純に一つの基準だけで分けられるわけではありません。
「どのような動力で動くのか」「どのような任務を行うのか」「どの程度の大きさなのか」という複数の視点から整理すると、それぞれの潜水艦の特徴や役割を理解しやすくなります。
以上、潜水艦にはどのような種類があるのかについてでした。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
















