「航海士」は英語で、一般的に deck officer(デック・オフィサー) と表現します。
ただし、日本語の「航海士」に対応する英語は、役職や仕事内容、船の種類、使用する場面によって異なります。
航海や航法を担当する人という意味では navigator や navigation officer が使われることもありますが、商船で働く職業としての航海士を表す場合は、deck officerが最も広く使いやすい表現です。
実際の船内役職を伝える場合は、deck officerという総称ではなく、chief officer、second officer、third officerなどの具体的な名称を使います。
航海士の基本的な英語表現
deck officer
deck officer は、商船などで航海当直や船舶の安全運航を担当する甲板部士官を表す言葉です。
deckには「甲板」や「甲板部」、officerには「士官」や「役職者」という意味があります。
航海士は船の進路を確認するだけでなく、航海計画の作成、航海当直、見張り、貨物作業、安全設備の管理、甲板部員の指揮など、幅広い業務を担当します。
そのため、職業としての航海士を表す場合は、deck officerが適しています。
He works as a deck officer on a cargo ship.
彼は貨物船の航海士として働いています。
She is training to become a deck officer.
彼女は航海士になるための訓練を受けています。
ただし、deck officerは一人の特定の役職名ではなく、甲板部士官を広く表す総称です。
船長や一等航海士などを含む広い意味で使われることもあります。
navigation officer
navigation officer は、「航海担当士官」や「航法担当士官」を意味する表現です。
特に、航海計画、船位確認、海図管理、航海計器の管理などを担当する人物を表す場合に使われます。
The navigation officer checked the vessel’s position.
航海担当士官は船舶の位置を確認しました。
ただし、navigation officerはすべての商船で共通する正式な階級名ではありません。
船会社、船種、海軍、組織などによって使われ方が異なります。
一般的な職業名として「航海士」と伝える場合は、deck officerのほうが無難です。
navigator
navigator(ナビゲーター) は、「進路を判断する人」「航法を担当する人」という意味です。
船舶だけでなく、航空機、宇宙船、自動車競技などで進路を確認する人物にも使われます。
The navigator calculated the ship’s course.
航法担当者は船の針路を計算しました。
navigatorは、航海に関する役割や機能を表す一般語です。
そのため、現代の商船における正式な資格名や階級名として、必ず使われるわけではありません。
職業としての航海士を表したい場合はdeck officer、航法を担当する人という役割を強調したい場合はnavigatorと使い分けるとよいでしょう。
航海士の役職別の英語表現
一等航海士
一等航海士は、一般的に次のように表します。
- chief officer
- chief mate
商船業界では、chief officer または chief mate が標準的な表現です。
一等航海士は、通常、船長に次ぐ立場にあり、甲板部の責任者として貨物作業、船体整備、安全管理、乗組員の指揮などを担当します。
The chief officer is responsible for cargo operations.
一等航海士は貨物作業を担当しています。
first officerやfirst mateと呼ばれる場合もありますが、船会社や船種によってはchief officerとは別の職位を表すことがあります。
正式な役職名を記載する場合は、勤務先や船舶で使われている名称を確認することが大切です。
二等航海士
二等航海士は、一般的に次のように表します。
- second officer
- second mate
二等航海士は、航海計画の作成、海図の管理、航海計器の点検などを担当することが多い役職です。
The second officer prepared the passage plan.
二等航海士は航海計画を作成しました。
「航海計画」は、英語で passage plan または voyage plan と表現します。
三等航海士
三等航海士は、次のように表します。
- third officer
- third mate
三等航海士は、航海当直に加え、救命設備や消防設備の点検・管理を担当することがあります。
The third officer inspected the life-saving equipment.
三等航海士は救命設備を点検しました。
officerとmateの違い
船舶関係では、officerとmateの両方が航海士の役職名に使われます。
例えば、次の表現はそれぞれ対応しています。
- chief officer/chief mate
- second officer/second mate
- third officer/third mate
officerとmateの使い分けは、単純にアメリカ英語とイギリス英語だけで分けられるものではありません。
国、船会社、船種、資格制度、船内の慣行によって異なるため、どちらの表現も広く使われていると理解しておくのが適切です。
船長は英語で何という?
captain
captain は、日常会話で最も分かりやすい「船長」の英語表現です。
The captain gave the order to depart.
船長は出港を命じました。
一般の人に職業を説明する場合や、会話の中で船長を指す場合はcaptainが自然です。
master
master は、船舶の最高責任者を表す正式な海事用語です。
法令、契約書、資格証明書、運航書類、事故報告書などでは、captainよりもmasterが使われることがあります。
The master is responsible for the safety of the vessel.
船長は船舶の安全に責任を負います。
masterは単なる呼び方ではなく、船舶の運航と安全に最終的な責任を負う立場を表します。
shipmaster
shipmaster も「船長」を意味しますが、日常会話ではcaptain、正式な海事文書ではmasterのほうが一般的です。
mateにも航海士という意味がある
船舶におけるmateの意味
一般英語のmateには「仲間」や「友人」という意味がありますが、船舶関係では「航海士」や「甲板部士官」を表します。
代表的な表現は次のとおりです。
- chief mate:一等航海士
- second mate:二等航海士
- third mate:三等航海士
He is the second mate on an oil tanker.
彼は石油タンカーの二等航海士です。
mate単独で「航海士」や「船長を補佐する甲板部士官」を表す場合もあります。
ただし、大型商船では階級を明確にするため、chief、second、thirdなどを付けるのが一般的です。
航海士と海技士の違い
航海士は職業や役職を表す
航海士は、船上で航海当直や船舶運航を担当する職業・役職を指します。
英語では、主に次の表現を使います。
- deck officer
- chief officer
- second officer
- third officer
- mate
どの表現を使うかは、役職や仕事内容によって異なります。
海技士は資格を表す
「海技士」は、日本の船舶職員に関する国家資格の名称です。
航海士が職業や船内の役職を表すのに対し、海技士は船長、航海士、機関士などとして乗船するために必要な資格を表します。
英語で説明する場合は、文脈に応じて次のような表現が使えます。
- licensed deck officer
- qualified deck officer
- holder of a Certificate of Competency
- maritime officer qualification
ただし、日本の海技士制度と海外の資格制度は完全には一致しません。
履歴書、公的書類、海外の船会社への提出書類などに記載する場合は、自分で直訳せず、海技免状や発行機関に記載された正式な英語表記を確認することが重要です。
海技士資格の英語表記例
例えば、「三級海技士(航海)」を説明する場合は、文脈に応じて次のような表現が考えられます。
Third Grade Maritime Officer (Navigation)
ただし、これは使用目的や提出先によって表記が異なる可能性があります。
Third-class deck officer certificateなどと独自に訳すと、海外の資格区分と誤解されるおそれがあるため、正式書類では避けたほうが安全です。
Certificate of Competency
Certificate of Competency は、船長や航海士などの職務に必要な能力を証明する資格証明書を表します。
略して CoC と呼ばれることもあります。
He holds a Certificate of Competency as a deck officer.
彼は航海士としての能力証明書を保有しています。
各国で資格制度や証明書の記載方法が異なるため、日本の海技免状を説明する場合は、提出先の基準を確認する必要があります。
航海当直に関する英語表現
航海当直を行う
「航海当直を行う」は、次のように表現できます。
- stand a navigational watch
- keep a navigational watch
- serve as officer of the watch
Deck officers stand navigational watches on the bridge.
航海士は船橋で航海当直を行います。
serve as officer of the watchは、「当直士官として勤務する」という意味です。
officer of the watch
officer of the watch は、「当直士官」や「航海当直士官」を意味します。
略して OOW と表記されることがあります。
The officer of the watch monitored the surrounding traffic.
当直航海士は周囲の船舶交通を監視しました。
Officer in Charge of a Navigational Watch
Officer in Charge of a Navigational Watch は、航海当直を担当する甲板部士官を表す正式な表現です。
略称は OICNW です。
日本語では、文脈に応じて次のように訳されます。
- 航海当直を担当する職員
- 航海当直責任者
- 航海当直を担当する甲板部士官
航海士の仕事内容を表す英語
船を航行させる
「船を航行させる」は、次のように表現できます。
- navigate a ship
- navigate a vessel
navigateは、航路や船位を確認しながら船を目的地へ進めることを表します。
The officer navigated the vessel through the narrow channel.
航海士は狭い水路を通って船舶を航行させました。
船を操船する
「船を操船する」は、文脈によって次の表現を使います。
- maneuver a ship
- handle a ship
- handle a vessel
maneuverは、入出港時や狭い水路などで船を細かく動かす意味があります。
handleは、船の特性を理解しながら操船するという意味で使われます。
The captain maneuvered the ship into the harbor.
船長は船を操船して港に入れました。
operate a vesselも使われますが、船舶を事業として運航する意味を含むことがあるため、直接的な「操船」にはmaneuverやhandleのほうが適しています。
航海計画を作成する
「航海計画を作成する」は、次のように表現します。
- prepare a passage plan
- draw up a voyage plan
- plan the ship’s route
The second officer prepares the passage plan before departure.
二等航海士は出港前に航海計画を作成します。
船位を確認する
「船の位置を確認する」は、次のように表現できます。
- check the vessel’s position
- determine the vessel’s position
- fix the ship’s position
check the vessel’s positionは、単純に船の位置を確認する表現です。
determineやfixは、航海機器や観測結果を使って船位を決定するという専門的な意味があります。
The officer fixed the vessel’s position using GPS and radar.
航海士はGPSとレーダーを使って船位を決定しました。
見張りを行う
「見張りを行う」は、次のように表現します。
- keep a lookout
- maintain a proper lookout
The officer must maintain a proper lookout at all times.
航海士は常に適切な見張りを維持しなければなりません。
maintain a proper lookoutは、単に周囲を見るのではなく、安全な航海のために人の目や聴覚、航海機器などを用いて適切な監視を続けることを表します。
航海士を使った英語例文
自己紹介で使う場合
I am a deck officer.
私は航海士です。
I work as a deck officer on a merchant ship.
私は商船の航海士として働いています。
I am a second officer on a container ship.
私はコンテナ船の二等航海士です。
具体的な役職が分かっている場合は、deck officerよりもsecond officerなどの役職名を使うと、より正確に伝えられます。
航海士を目指していると伝える場合
I want to become a deck officer.
私は航海士になりたいです。
I am studying to become a licensed deck officer.
私は資格を持つ航海士になるために勉強しています。
My goal is to work as a deck officer on an oceangoing vessel.
私の目標は外航船の航海士として働くことです。
「国際航海船」を表す場合、international vesselよりも oceangoing vessel や vessel engaged on international voyages のほうが意味を明確にできます。
航海士の仕事内容を説明する場合
Deck officers are responsible for navigation, watchkeeping, cargo operations, and shipboard safety.
航海士は、航海、当直、貨物作業、船内の安全管理を担当します。
A deck officer monitors the ship’s course, position, speed, and surrounding traffic.
航海士は、船の針路、位置、速力、周囲の船舶交通を監視します。
商船の航海士を表すその他の英語
merchant marine officer
merchant marine officer は、主にアメリカ英語で「商船士官」を表す言葉です。
ただし、航海士だけでなく、機関士などの船舶士官を含む場合があります。
航海士であることを明確にしたい場合は、次のように表現できます。
- merchant marine deck officer
He is a merchant marine deck officer.
彼は商船の航海士です。
Merchant Navy officer
Merchant Navy officer は、主にイギリス英語で商船隊に勤務する士官を表します。
こちらも航海士だけを指すとは限らないため、明確にする場合は次のように表します。
- Merchant Navy deck officer
She works as a Merchant Navy deck officer.
彼女は商船の航海士として働いています。
航海士と間違えやすい英語
naval officer
naval officer は、「海軍士官」を意味します。
民間の商船で働く航海士をnaval officerと表現すると、海軍に所属している人物だと誤解される可能性があります。
- deck officer:商船などの航海士
- naval officer:海軍士官
- navigation officer:航海担当士官
海軍内の航海担当者をnavigation officerやnavigating officerと呼ぶ場合もありますが、正式名称は国や組織によって異なります。
sailor
sailor は、「船乗り」「水夫」「船員」を表す広い言葉です。
航海士も広い意味ではsailorに含まれることがありますが、sailorだけでは資格や役職までは分かりません。
He is a sailor.
彼は船員です。
「彼は航海士です」と明確に伝える場合は、次の表現が適切です。
He is a deck officer.
彼は航海士です。
seafarer
seafarer は、「船員」や「海上で働く人」を表す比較的正式な言葉です。
国際条約、海事労働、船員の雇用や安全に関する文書などでよく使われます。
The convention protects the rights of seafarers.
その条約は船員の権利を保護しています。
seafarerは航海士だけを表す言葉ではありません。
船長、航海士、機関士、甲板員、司厨員など、船上で勤務する人を広く含みます。
航海士に関連する英単語
役職に関する英語
| 日本語 | 英語 |
|---|---|
| 航海士 | deck officer |
| 航法担当者 | navigator |
| 航海担当士官 | navigation officer |
| 一等航海士 | chief officer/chief mate |
| 二等航海士 | second officer/second mate |
| 三等航海士 | third officer/third mate |
| 船長 | captain/master |
| 航海当直士官 | officer of the watch |
| 甲板部 | deck department |
| 船員 | seafarer/crew member |
| 船乗り | sailor |
| 海軍士官 | naval officer |
航海業務に関する英語
| 日本語 | 英語 |
|---|---|
| 船橋 | bridge |
| 航海当直 | navigational watch |
| 航海計画 | passage plan/voyage plan |
| 海図 | nautical chart |
| 針路 | course |
| 船位 | ship’s position/vessel’s position |
| 操船 | ship handling/maneuvering |
| 見張り | lookout |
| 商船 | merchant ship/merchant vessel |
| 外航船 | oceangoing vessel |
| 能力証明書 | Certificate of Competency |
航海士の英語表現に関する注意点
職種名と役職名を区別する
職種全般として航海士を説明する場合は、deck officerを使えます。
一方、実際の船内役職を示す場合は、次のように具体的な名称を使うのが適切です。
- 一等航海士:chief officer
- 二等航海士:second officer
- 三等航海士:third officer
資格名を自己判断で直訳しない
日本の海技士資格は、海外の資格制度と完全には一致しません。
履歴書、ビザ申請、公的証明書、海外企業への応募書類などでは、独自に英訳せず、資格証明書や発行機関が示す表記を使用してください。
船会社や船種による違いを確認する
chief officer、first officer、chief mate、first mateなどの役職名は、船会社や船種によって意味が異なる場合があります。
特にクルーズ船、旅客船、ヨット、海軍艦艇などでは、一般商船とは異なる役職体系が採用されることがあります。
まとめ
「航海士」を職業名として英語で表す場合は、一般的に deck officer を使います。
ただし、deck officerは甲板部士官を広く表す総称でもあるため、実際の役職を伝える場合は、chief officer、second officer、third officerなどの具体的な名称を使うのが適切です。
主な英語表現は次のとおりです。
- 航海士:deck officer
- 一等航海士:chief officer/chief mate
- 二等航海士:second officer/second mate
- 三等航海士:third officer/third mate
- 航法担当者:navigator
- 航海担当士官:navigation officer
- 船員全般:seafarer
- 船長:captain/master
navigatorは航法を担当する人という役割を表す言葉であり、deck officerと完全に同じ意味ではありません。
また、sailorやseafarerは船員全般を表すため、資格や役職を持つ航海士であることを正確に伝えたい場合は、deck officerや具体的な役職名を使うことが重要です。
以上、航海士は英語でなんというのかについてでした。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。















