DNVとは、世界の海運・造船業界で広く利用されている代表的な船級協会の一つです。
船舶の船体構造や機関、電気設備、制御システムなどについて船級規則を定め、その規則に基づいて設計審査や建造中の検査、就航後の定期検査などを行っています。
船舶について「DNV船級」「DNV Class」と表現する場合、一般的にはDNVの船級規則に基づいて審査・検査され、DNVの船級登録を受けている船舶を意味します。
ただし、DNVの船級を取得しているからといって、DNVが船舶のあらゆる安全性を保証しているという意味ではありません。
DNVは、あくまで船級規則で定められた範囲について技術要件への適合性を審査・検査する機関です。
DNVとはどのような組織なのか
DNVはノルウェー発祥の船級協会
DNVの歴史は1864年までさかのぼります。
ノルウェーの海上保険関係者によって設立され、船舶の状態や耐航性を一定の基準で評価することを目的として発展してきました。
DNVの旧名称である「Det Norske Veritas」は、ノルウェー語で「ノルウェーの真実」といった意味を持つ名称です。
現在では船級業務だけでなく、エネルギー、認証、リスクマネジメント、デジタル技術など幅広い分野で事業を展開しています。
DNV GLから現在のDNVへ名称変更された
DNVを調べると、「DNV GL」という名称を目にすることがあります。
DNVは2013年にドイツの船級協会Germanischer Lloyd、通称GLと統合しました。
その結果、組織名称はDNV GLとなりました。
その後、2021年3月1日にブランド名が「DNV」へ変更されています。
したがって、DNVとDNV GLはまったく別の船級協会ではありません。
DNV GLは、現在のDNVにつながる旧名称と考えると分かりやすいでしょう。
そもそも船級とは何か
船級とは船舶の技術的適合性を確認する仕組み
船級とは、船級協会が独自に定める技術規則に基づいて、船舶の構造や設備などを審査・検査する制度です。
たとえば船体強度、主機関、軸系、電気設備、制御システムなどが、適用される船級規則の要求を満たしているか確認されます。
そのため船級制度は、船舶の技術的な信頼性を確認するうえで重要な役割を持っています。
ただし、「船級を取得している=船舶の安全を全面的に保証している」という意味ではありません。
より正確には、船級協会が規則に定められた範囲について適合性を確認し、その状態を継続的に管理する制度と理解するとよいでしょう。
船級は取得して終わりではない
船級は、新造船の建造時に一度取得すれば永久に有効というものではありません。
船舶が就航した後も、定期的な検査を受けながら船級を維持する必要があります。
一般的には、年次検査や中間検査、船級更新検査などが実施されます。
また、船体や機関に大きな損傷が発生した場合や、大規模な改造を行った場合には、追加の検査が必要になることもあります。
DNV船級では何を審査・検査するのか
船体構造
DNV船級では、船体構造が重要な審査対象になります。
代表的な対象には、外板、甲板、隔壁、二重底、フレーム、ガーダー、タンク構造などがあります。
また、船全体の縦強度や局部強度、疲労強度などについても、適用される規則に基づいて評価されます。
必要とされる要求は船種によって異なります。
コンテナ船、ばら積み貨物船、タンカー、LNG船、旅客船などでは、運航条件や積載貨物が異なるため、それぞれの特性に応じた規則が適用されます。
機関設備
主機関や補機などの機関設備も、船級における重要な対象です。
たとえば、主機、発電機、軸系、プロペラ、ボイラー、ポンプ、配管などが検査対象になります。
さらに、燃料系統、潤滑油系統、冷却水系統などについても、船級規則で必要な要求が定められています。
電気設備や制御設備
現代の船舶では、多くの設備が電子制御されています。
そのため、発電設備や配電設備、非常電源、警報システム、自動化システムなども船級上重要な設備です。
近年では船舶のデジタル化が進んでいるため、サイバーセキュリティに関する要求も重要性を増しています。
DNVでは以前からサイバーセキュリティに関する船級Notationを整備しており、近年はIACSのサイバーレジリエンス関連要求などにも対応しています。
DNV船級を取得するまでの流れ
設計段階で図面や計算書を審査する
DNV船級船として船舶を建造する場合、まず設計段階で各種図面や技術資料の審査が行われます。
たとえば、船体構造図、機関配置図、配管系統図、電気系統図、強度計算書などが対象になります。
DNVは、提出された設計資料が適用される船級規則を満たしているか確認します。
この工程は、一般に図面承認や設計承認と呼ばれます。
建造中にも検査が行われる
図面が承認されただけでは、船級を取得できるわけではありません。
実際の建造段階でも、DNVのSurveyorと呼ばれる検査員が必要な検査を行います。
たとえば、使用材料、溶接、船体構造、機器の据付、配管、電気設備、圧力試験などが確認されます。
つまり、設計そのものだけでなく、承認された設計に従って適切に建造されているかについても確認されるということです。
試運転などを経て船級登録される
船舶の建造が進むと、係留試験や海上試運転などを通して設備の機能や性能が確認されます。
必要な審査や検査が完了し、DNVの船級規則への適合が確認されれば、船級登録につながります。
その後は就航船として定期的な検査を受けながら、船級を維持していきます。
DNVのClass Notationとは
Class Notationは船舶の特徴を示す表記
DNV船級を理解するうえで重要なのが「Class Notation」です。
Class Notationとは、船舶がどのような船級要求を満たしているのかを示す表記です。
DNV船級船では、単に「DNV」という名称だけが付けられるわけではありません。
船種や構造、設備、運航能力、追加機能などに応じて複数のNotationが付与されます。
Main ClassやShip Type Notationなどがある
DNVの船級表記では、Main Classを基本として、Ship Type NotationやAdditional Class Notationなどが組み合わされます。
Ship Type Notationは、その船がどのような用途の船舶なのかを示すものです。
一方、Additional Class Notationは、標準的な船級要求に加えて、特定の設備や機能に関する追加要求を満たしていることを示します。
たとえば、代替燃料、バッテリー、陸上電力、動的位置保持、サイバーセキュリティなどに関連するNotationがあります。
実際のNotationは、船種、建造時期、適用規則によって異なります。
そのため個別の船舶について確認する場合は、船級証書やDNVの最新規則を確認する必要があります。
DNVとSOLASなどの国際条約との違い
DNV船級規則と国際条約は別の制度
DNVの船級規則と、SOLAS条約やMARPOL条約などの国際条約は同じものではありません。
SOLASは海上人命安全、MARPOLは船舶による海洋汚染防止などについて国際的な要求を定めています。
一方、DNVは船級協会として独自の船級規則を制定しています。
そのため、船級上の要求と法令・国際条約上の要求は制度上区別されています。
ただし、実際の船舶設計や検査では両者が密接に関係しています。
DNV規則の中にIMOやIACSなどによる外部要求が取り込まれることもあります。
船級検査と法定検査は同じではない
船舶では、Class SurveyとStatutory Surveyという言葉が使われます。
Class Surveyは、船級規則への適合性を確認する船級検査です。
Statutory Surveyは、国際条約や船籍国の法令に基づいて実施される法定検査です。
同じDNVのSurveyorが両方を担当する場合もありますが、制度上は別の検査です。
DNVとRecognized Organizationの関係
船籍国から権限を与えられる場合がある
本来、国際条約などに基づく船舶の法定検査は船籍国政府の責任で行われます。
ただし、船籍国は一定の条件を満たす船級協会などをRecognized Organization、略してROとして認定し、法定検査などの一部業務を委任することがあります。
DNVも、多くの船籍国からROとして認定されています。
そのため、DNVが船級検査と法定検査の両方を行うケースがあります。
ただし、DNVが世界中のすべての船籍国について、すべての法定検査を自由に行えるわけではありません。
実際に実施できる業務は、船籍国ごとの認定内容や委任範囲によって異なります。
DNVとIACSの関係
IACSとは国際船級協会連合のこと
IACSとは、「International Association of Classification Societies」の略称です。
日本語では「国際船級協会連合」と呼ばれます。
世界の主要な船級協会が加盟しており、船体構造や機関、電気設備などに関する技術要件の調整を行っています。
DNVもIACS加盟船級協会の一つです。
IACS Unified Requirementsとは
IACSでは、Unified Requirements、略してURと呼ばれる統一要件を策定しています。
Unified Requirementsは、IACS加盟船級協会が規則等へ取り込む共通の最低要求として位置付けられています。
DNVもIACS加盟船級協会として、こうした要求を自社の規則体系へ反映しています。
ただし、IACS加盟船級協会は必要に応じてUnified Requirementsより厳しい独自要求を設けることができます。
そのため、DNV、ClassNK、ABS、LR、BVなどの規則が完全に同一というわけではありません。
DNV船級を維持するための主な検査
Annual Survey
Annual Surveyは、一般に年次検査と呼ばれます。
船体や機関、設備などについて、船級規則で定められた範囲を定期的に確認します。
すべての設備を毎年同じ範囲で詳細に検査するわけではなく、船種や設備、適用規則などによって内容は異なります。
Intermediate Survey
Intermediate Surveyは中間検査です。
一般的にAnnual Surveyより広い範囲について確認される場合があります。
具体的な検査内容は、船種や船齢、適用される規則などによって異なります。
Renewal Survey
Renewal Surveyは船級更新検査です。
船級を引き続き維持できる状態にあるか確認するため、船体や設備について比較的詳細な検査が行われます。
主要な船級更新サイクルは一般に5年を基本としています。
ただし、個々の検査時期やSurvey Window、検査範囲は適用規則によって異なります。
DNV船級が重要な理由
船舶の技術的な信頼性を確認できる
船級制度では、船主や造船所とは別の船級協会が規則に基づいて審査や検査を行います。
これにより、船舶が一定の技術要件を満たしているかを客観的に確認しやすくなります。
船主だけでなく、荷主、保険会社、金融機関などにとっても、船級情報は重要な判断材料になります。
海上保険とも歴史的に関係が深い
船級制度は、海上保険の発展とも深く関係しています。
船舶の状態を客観的に評価できなければ、保険者は事故リスクを適切に判断することが難しくなります。
そのため、船舶を一定の基準で評価する船級制度が発達しました。
DNVも、こうした海上保険との関係を背景として設立された船級協会です。
DNVが注力している分野
LNGや代替燃料
現在の海運業界では、脱炭素化が重要な課題になっています。
そのためDNVでは、LNG、アンモニア、水素、バッテリーなどの新しい燃料・推進技術に対応する規則整備が進められています。
船舶は長期間使用されるため、建造時には従来燃料を使用しながら、将来的に別の燃料へ転換できる設計も重視されています。
Fuel Ready
Fuel Readyは、将来的な燃料転換に備えるための考え方です。
たとえば、将来アンモニアや水素などへ燃料転換することを想定し、必要なスペースや設備条件などをあらかじめ設計へ反映しておく方法があります。
こうした将来対応性についても、DNVは関連するClass Notationを整備しています。
サイバーセキュリティ
船舶の航海システムや機関制御システムは、急速にデジタル化しています。
そのため、サイバー攻撃によって船舶の安全運航が影響を受けるリスクも無視できません。
DNVでは以前からCyber Secureに関するNotationを整備しており、近年はIACS UR E26やUR E27などのサイバーレジリエンス要求にも対応しています。
DNVの船級規則は定期的に更新される
技術革新に合わせて規則が改訂される
DNVの船級規則は、一度制定されたら永久に変わらないものではありません。
新しい船舶技術や環境規制、デジタル技術などに対応するため、継続的に改訂されています。
たとえば近年では、代替燃料、バッテリー、陸上電力、サイバーセキュリティ、CO₂関連技術などに関する規則が追加・更新されています。
適用されるRule Editionの確認が重要
実務では、単純に最新のDNV規則だけを確認すればよいとは限りません。
船舶の建造契約時期や適用日、建造時期などによって、適用されるRule Editionが異なる場合があります。
そのため対象船について調査する際は、船級証書や建造契約条件、DNVのRules & Standards Explorerなどを確認することが重要です。
DNVとNK・ABS・LR・BVなどの違い
世界には複数の主要船級協会がある
DNV以外にも、世界にはさまざまな船級協会があります。
代表的なものとして、ClassNK、日本海事協会、ABS、American Bureau of Shipping、LR、Lloyd’s Register、BV、Bureau Veritas、RINAなどがあります。
これらはそれぞれ別の組織であり、独自の船級規則を持っています。
単純に「どこが一番厳しい」とは言えない
主要船級協会の多くはIACSへ加盟しており、IACS Unified Requirementsなどを通して共通の最低要求を取り込んでいます。
一方で、各船級協会には独自規則や独自のClass Notationも存在します。
そのため、「DNVはNKより厳しい」「ABSが最も厳しい」といった単純な比較は適切ではありません。
実際には、船種や構造、設備、適用Notationなどを個別に比較する必要があります。
DNV船級船を確認するときのポイント
DNVという名称だけでは十分ではない
ある船について「DNV Class」と記載されていても、それだけでは船舶の詳しい仕様は分かりません。
正確に確認する場合は、船級証書などからClass Notation全体を確認する必要があります。
Conditions of Classも重要
船級状態を確認するときは、Conditions of Classにも注意が必要です。
DNVでは、Conditions of Classを「CC」と表記することがあります。
これは、船級規則に関係する不適合や欠陥などについて、一定期間内に対応が求められている事項です。
一方、法定要件や旗国の権限に関係する事項には、Conditions of Authority、略してCAが使用される場合があります。
つまり、CCとCAでは意味が異なります。
船級船の状態を詳しく確認する場合は、船級の有無だけでなく、こうした未処理事項の有無も確認することが重要です。
まとめ
DNVは、世界を代表する船級協会の一つです。
1864年にノルウェーで設立され、Germanischer Lloydとの統合によるDNV GL時代を経て、現在はDNVという名称になっています。
DNV船級では、船体構造、機関、電気設備、制御システムなどについて、DNVの船級規則に基づく設計審査や検査が行われます。
また、船級は新造時に取得して終わりではありません。
就航後もAnnual SurveyやIntermediate Survey、Renewal Surveyなどを受けながら維持していく必要があります。
さらに、DNVはIACS加盟船級協会として国際的な統一要件を取り込みながら、代替燃料、バッテリー、陸上電力、サイバーセキュリティなど新しい船舶技術に対応した規則整備も進めています。
DNV船級を正確に理解するためには、「DNVという船級協会の名前」だけを見るのではなく、適用されるRule Edition、Class Notation、Survey Status、Conditions of Classなどまで確認することが重要です。
以上、船級のDNVについてでした。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。









