船級BVとは、世界的な船級協会の一つであるBureau Veritas(ビューローベリタス)が、独自の船級規則に基づいて船舶の設計・建造・設備などを審査・検査し、一定の技術要件を満たしていることを確認する船級制度のことです。
「BV」はBureau Veritasの略称であり、造船・海運業界では「BV船級」「BV Class」などの表現が広く使用されています。
BVは、船体構造だけでなく、主機・補機、電気設備、自動化設備、防火設備、配管、材料、溶接など、船舶を構成するさまざまな要素について技術基準を定めています。
船舶がこれらの規則を満たしていることが確認されると、BVの船級が付与されます。
Bureau Veritasとは
1828年に設立された歴史ある船級協会
Bureau Veritasは、1828年にベルギーのアントワープで設立された組織です。
設立当初は、海上保険の引受人などに対して船舶に関する情報を提供し、船舶や設備のリスクを評価することを目的としていました。
その後、1833年にパリへ拠点を移し、船舶の格付けや検査業務を発展させていきました。
現在では、船級業務だけでなく、検査、試験、認証などを世界規模で行うグループへと発展しています。
世界主要船級協会の一つ
BVは、IACSに加盟している主要船級協会の一つです。
IACSとは、**International Association of Classification Societies(国際船級協会連合)**の略称です。
世界の主要船級協会が加盟しており、船舶の安全性や環境保護に関する共通技術要件の策定などを行っています。
IACSによると、加盟船級協会の規則や基準は、世界の貨物輸送船腹量の90%超をカバーしています。
そのため、BVは世界の商船分野において広く利用されている船級協会の一つといえます。
BV船級の主な役割
船舶が技術基準を満たしているか確認する
BV船級の基本的な役割は、船舶がBVの定める船級規則に適合しているかを第三者の立場から確認することです。
たとえば、船体構造については、想定される波浪荷重や貨物荷重などに十分耐えられるかを審査します。
機関設備については、主機、補機、推進設備、軸系、配管などが適切に設計・製造・設置されているかを確認します。
さらに、電気設備、自動化システム、防火・消防設備などについても規則への適合性が確認されます。
新造船だけでなく就航後も検査する
船級は、船舶が完成した時点で一度取得すれば永久に有効になるものではありません。
船級を維持するためには、就航後も定められた検査を継続して受ける必要があります。
そのためBVは、船舶の設計・建造段階から就航後の保守・修理・改造まで、船舶のライフサイクル全体に関わります。
BVの代表的な船級規則
一般鋼船ではNR467が重要
BVが発行している船級規則の中で、一般的な鋼船において特に重要なのが、
NR467 Rules for the Classification of Steel Ships
です。
2026年9月時点では、NR467の現行版として2026年7月版が公開されています。
NR467は、船級制度、船体構造、機関、電気設備、防火設備、船種ごとの要件、追加船級符号などについて幅広く規定しています。
NR467 Part A:Classification and Surveys
Part Aでは、主に船級制度と検査に関する事項が規定されています。
主な内容は、船級の付与、船級の維持、定期的な検査、船級符号などです。
BV船級がどのように付与され、どのような条件で維持されるのかを理解するうえで重要な部分です。
NR467 Part B:Hull and Stability
Part Bでは、船体構造と復原性に関する要求事項が規定されています。
たとえば、船体に作用する荷重、構造部材の寸法、強度、区画、復原性などが対象になります。
船舶の基本的な構造安全性に関係する重要な規則です。
NR467 Part C:Machinery, Electricity, Automation, and Fire Protection
Part Cでは、主として機関、電気設備、自動化設備、防火設備に関する要件が規定されています。
対象となる設備には、主機、補機、推進装置、軸系、配管、電源設備、制御設備、警報設備、防火・消防設備などがあります。
NR467 Part D:Service Notations
Part Dでは、船舶の用途や船種に応じたService Notationに関する規定が設けられています。
たとえば、コンテナ船、バルクキャリア、油タンカー、ケミカルタンカー、液化ガス運搬船、客船、Ro-Ro船、自動車運搬船などが対象となります。
船舶の用途によって求められる構造や設備が異なるため、それぞれに応じた追加要件が規定されています。
NR467 Part E:Offshore Service Vessels and Tugs
Part Eでは、オフショア支援船やタグボートなどに関するService Notationが規定されています。
タグボートのほか、アンカーハンドリング船、サプライ船、消防船、油回収船、ケーブル敷設船、ダイビング支援船などが対象になります。
NR467 Part F:Additional Class Notations
Part Fでは、Additional Class Notations、つまり追加船級符号に関する要求事項が規定されています。
船舶が持つ特別な設備、性能、機能、運航条件などに応じて、追加のNotationが付与される場合があります。
材料や溶接にもBV規則がある
NR216で材料・溶接を規定
BV船級では、船体や機関の設計だけでなく、使用される材料や溶接についても詳細な要求があります。
代表的な規則が、
NR216 Rules on Materials and Welding for the Classification of Marine Units
です。
NR216では、圧延鋼材、鋼管、鍛鋼品、鋳鋼品、アンカー、チェーンケーブル、溶接材料などについて要求事項が規定されています。
そのため、BV船級は造船所や船主だけでなく、鋼材メーカー、部品メーカー、舶用機器メーカーなどにも関係します。
BV船級を取得するまでの一般的な流れ
設計審査
BV船級を取得する場合、まず船舶の設計図面や計算書などについて審査が行われます。
船体構造であれば、板厚、骨材寸法、構造配置、強度、荷重条件などが確認されます。
機関や電気設備についても、それぞれの設計内容がBV規則に適合しているか審査されます。
材料・機器の確認
船舶に使用される材料や機器についても、規則上必要な場合には確認や認証が行われます。
製品によっては、型式承認、製品証明、材料証明、製造方法承認、BV検査員による立会検査などが求められる場合があります。
ただし、すべての製品に同じ承認や証明が必要になるわけではありません。
対象製品や適用規則によって要求内容は異なります。
建造中検査
造船所では、BVのSurveyorが必要に応じて建造中の検査を実施します。
船体構造、溶接、機器の据付、配管、電気設備、安全設備などが主な対象です。
設計図面どおりに建造されているか、使用されている材料や機器が適切かなどを確認します。
試験・海上試運転
船舶が完成に近づくと、機器の作動試験、圧力試験、機能試験、海上試運転などが行われます。
必要な性能や安全機能が確保されていることが確認された後、所定の条件を満たせば船級が付与されます。
なお、実際の審査・検査内容は、船種、設備、Class Notationなどによって異なります。
BV船級取得後に行われる検査
船級維持には継続的な検査が必要
BV船級を取得した船舶は、その後も定期的に検査を受ける必要があります。
代表的なものとして、年次検査、中間検査、更新・定期検査、船底関連検査、機関設備の検査などがあります。
また、船舶に事故や損傷が発生した場合、大規模な修理や改造を行った場合などには、臨時の検査が必要になることもあります。
具体的な検査周期や内容は、船種、船齢、設備、Notationなどによって異なります。
BVの船級符号とは
Class Notationで船舶の特徴を表す
BV船級では、船級を取得していることだけでなく、船舶の構造、用途、設備、運航条件などを示すためにClass Notationが用いられます。
Class Notationを見ることで、その船舶がどのような用途や設備を持っているかを把握できます。
そのため、実務では単に「BV Class」とだけ確認するのではなく、正式なClass Notation全体を確認することが重要です。
Service NotationとAdditional Class Notation
BVのNotationには、船舶の用途を表すService Notationや、特別な機能・設備を表すAdditional Class Notationなどがあります。
たとえば、同じBV船級船であっても、タンカー、コンテナ船、タグボートなどでは適用されるNotationや要求事項が異なります。
そのため、仕様書や船級証書を確認する際は、Notationの内容まで確認する必要があります。
BVとIACSの関係
IACSの共通技術要件がBV規則にも関係する
BVはIACS加盟船級協会であるため、BV独自の規則だけでなく、IACSが定める共通技術要件も重要になります。
IACSでは、加盟船級協会が取り入れる最低技術要件として、Unified Requirements、いわゆるURを策定しています。
加盟船級協会は、必要な手続きを経てURを自社の規則や実務へ取り込みます。
ただし、各船級協会はURより厳しい独自要件を設定することも可能です。
バルクキャリアや油タンカーではCSRも重要
バルクキャリアや油タンカーの船体構造では、IACSのCommon Structural Rulesが重要になります。
現在は、
Common Structural Rules for Bulk Carriers and Oil Tankers(CSR BC & OT)
として共通構造規則が整備されています。
そのため、対象船ではBV独自規則だけでなく、IACS共通構造規則も重要な位置を占めます。
BV船級と法定検査の違い
船級と法定検査は制度上異なる
BVを理解するうえで重要なのが、船級と法定検査は同一ではないという点です。
船級は、BVが定める船級規則に対して船舶が適合しているかを確認する制度です。
一方、法定検査は、SOLASやMARPOLなどの国際条約や各国の法律に基づいて実施されます。
BVが政府の代行で法定業務を行う場合もある
船籍国政府から権限を与えられた船級協会は、Recognized Organization、略してROとして法定検査や証書発給などを行う場合があります。
そのため、BVが船級検査と法定検査の両方を担当するケースもあります。
ただし、BV船級であるからといって、必ずBVがすべての法定業務を担当するとは限りません。
船籍国からBVへどの範囲の権限が与えられているかを確認する必要があります。
つまり、船級と法定検査は制度上区別されていますが、実務上は密接に関係しています。
BVは日本でもROとして認められている
2024年に日本でROとして登録・認定
Bureau Veritasは、2024年3月25日に日本の国土交通省からRecognized Organizationとして正式に登録・認定されています。
対象には、船舶安全法や海洋汚染等及び海上災害の防止に関する法律に基づく業務が含まれます。
BVは日本では1953年から活動しており、現在も船級・海事分野で事業を展開しています。
BVでは次世代船舶向けの規則も整備されている
代替燃料船向けの規則がある
BVでは、従来型の重油・軽油を使用する船舶だけでなく、次世代燃料を使用する船舶向けの規則も整備されています。
たとえば、メタノール、エタノール、アンモニア、水素、燃料電池などに対応するRule Noteが存在します。
代表的なものには、NR670、NR671、NR678、NR547などがあります。
サイバーセキュリティにも対応
船舶のデジタル化が進む中で、サイバーセキュリティも船級上重要なテーマとなっています。
BVではNR659など、船舶や海洋設備のサイバーセキュリティに関する規則も整備しています。
今後、スマートシップや自動運航船が普及するにつれて、こうした分野の重要性はさらに高まると考えられます。
BVとNK・DNV・ABS・LRの違い
基本的な役割は共通している
BV、ClassNK、DNV、ABS、LRなどは、いずれも世界的に利用されている主要船級協会です。
それぞれ独自の船級規則を持っていますが、IACS加盟船級協会については共通の技術要件も多く存在します。
そのため、安全性を単純に「BVの方が優れている」「NKの方が劣っている」といった形で比較するのは適切ではありません。
規則やサービスには違いがある
一方で、各船級協会には違いもあります。
具体的には、船級符号、独自規則、審査手法、各船種における実績、各地域の拠点、デジタルサービス、環境関連技術への対応などが異なります。
船主や造船所は、船舶の用途や運航地域、契約条件などを考慮して船級協会を選定します。
舶用機器メーカーにとってもBVは重要
「BV対応」の意味を確認することが重要
舶用機器の仕様書では、
「BV Class」
「BV Type Approval」
「BV Certificate」
「BV Surveyor Attendance」
などの表記が使われることがあります。
ただし、これらはすべて同じ意味ではありません。
製品についてBVの型式承認が必要なのか、製品ごとの証明が必要なのか、検査員の立会が必要なのかによって、対応方法は異なります。
そのため、単に「BV対応が必要」とだけ記載されている場合は、要求内容を詳しく確認することが重要です。
「BV認証」と「BV船級」は同じではない
船舶の船級と製品認証は別の概念
実務では「BV認証」という表現が使われることがあります。
しかし、この言葉だけでは具体的な意味が分からないことがあります。
たとえば、船舶そのものがBV船級に入っていることと、搭載される機器がBVのType Approvalを取得していることは別です。
さらに、BVがROとして法定検査を実施することも別の業務です。
そのため、BVに関する要求を確認する際は、
「船級なのか」
「型式承認なのか」
「製品証明なのか」
「材料証明なのか」
「法定検査なのか」
を区別して考える必要があります。
BV船級について押さえておきたいポイント
BV船級を理解するうえでは、いくつか重要なポイントがあります。
まず、BVはBureau Veritasの略称であり、1828年に設立された歴史ある船級協会です。
また、BVはIACS加盟船級協会の一つであり、国際的に広く利用されています。
一般鋼船ではNR467が中心的な船級規則となっており、船体、機関、電気設備、防火、船種別要件などが規定されています。
さらに、船級は新造時だけでなく、就航後も定期的な検査を受けて維持する必要があります。
加えて、船級と法定検査は制度上異なりますが、BVがROとして法定業務を担当する場合もあります。
まとめ
船級BVとは、Bureau Veritasが独自の船級規則に基づいて船舶の設計、船体構造、機関、電気設備、防火設備などを審査・検査し、技術要件への適合を確認する制度です。
BVは1828年に設立され、現在ではIACS加盟船級協会の一つとして世界の海運・造船業界で広く利用されています。
一般鋼船ではNR467が中心的な規則となり、材料や溶接についてはNR216などの関連規則も使用されます。
また、船級は船舶が完成した時点で終わるものではなく、就航後も継続的に検査を受けながら維持されます。
実務では「BV」という名称だけを確認するのではなく、適用されるBV Rule、Class Notation、必要なCertificate、Type Approvalの有無、Surveyor立会の要否などを具体的に確認することが重要です。
特に舶用機器や船舶仕様書を扱う場合は、「BV船級」「BV認証」「BV Type Approval」「法定検査」の意味を明確に区別することで、要求事項をより正確に理解できます。
以上、船級のBVについてでした。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。




