潜水艦の長さは、艦の種類や任務、推進方式、搭載する兵器などによって大きく異なります。
現代の軍用潜水艦を見ると、全長60m台の比較的コンパクトな潜水艦から、170mを超える大型の原子力潜水艦まで存在します。
特に、日本の海上自衛隊が運用する近年の潜水艦は80m台が中心です。
一方、アメリカやイギリスなどが運用する原子力潜水艦には100mを超える艦が多く、弾道ミサイルを搭載する大型潜水艦では150〜170mを超えるものもあります。
そのため、「潜水艦は何mくらいあるのか」と一概に決めることはできません。
種類ごとの特徴と実際の艦級を見ながら理解することが重要です。
潜水艦の長さの目安
潜水艦は用途によって大きさが異なるため、長さにもかなりの幅があります。
代表的な潜水艦を基準にすると、おおよそ次のようなイメージになります。
| 潜水艦の種類 | 長さのおおよその目安 |
|---|---|
| 小型・沿岸向け潜水艦 | 約40〜70m前後 |
| 一般的な通常動力型潜水艦 | 約60〜90m前後 |
| 攻撃型原子力潜水艦 | 約90〜140m前後 |
| 弾道ミサイル原子力潜水艦 | 約140〜170m超 |
ただし、この表はあくまで代表例をもとにした目安です。
潜水艦にはさまざまな設計があり、すべての潜水艦がこの範囲に収まるわけではありません。
したがって、潜水艦の大きさを知りたい場合は、具体的な艦級ごとに全長を確認するのが最も正確です。
日本の潜水艦の長さ
日本の海上自衛隊が近年運用している主要な潜水艦は、おおむね80m台の全長となっています。
原子力潜水艦を運用する国と比較すると比較的コンパクトですが、通常動力型潜水艦としては大型の部類に入ります。
たいげい型は全長84m
海上自衛隊の最新世代にあたる「たいげい型潜水艦」は、全長84.0mです。
全幅は9.1mで、基準排水量は約3,000トンとされています。
乗員は約70人です。
全長84mという数字だけでは大きさをイメージしにくいかもしれませんが、25mプールを縦方向に約3.4個並べた長さに相当します。
つまり、一般的な感覚からすると非常に大型の乗り物です。
そうりゅう型も全長84m
たいげい型の前世代にあたる「そうりゅう型潜水艦」も、全長84.0mです。
全幅は9.1m、深さは10.3mとされています。
基準排水量は約2,950トンで、乗員は約65人です。
そのため、近年の海上自衛隊では、そうりゅう型とたいげい型の両方が全長84mとなっています。
おやしお型は全長82m
そうりゅう型より前の世代にあたる「おやしお型潜水艦」は、全長82mです。
全幅は8.9mで、基準排水量は2,750トンとされています。
したがって、海上自衛隊の近年の主要な潜水艦を見ると、全長はおおむね82〜84m程度です。
海外の原子力潜水艦は100mを超えるものが多い
原子力潜水艦は、通常動力型潜水艦より大型に設計されるケースが多く見られます。
原子炉や推進関連設備だけでなく、長期間の作戦行動に必要な兵装、センサー、居住設備、物資などを搭載するためです。
アメリカのバージニア級は約115m
アメリカ海軍の代表的な攻撃型原子力潜水艦である「バージニア級」は、標準的な仕様で全長377フィートです。
メートルに換算すると約114.8mになります。
日本のたいげい型が84mなので、標準的なバージニア級は約31m長い計算です。
さらに、Virginia Payload Moduleと呼ばれる追加区画を装備する艦では、全長が461フィート、約140.5mまで延長されます。
同じ艦級でも、仕様によって全長が大きく変わる例といえるでしょう。
イギリスのアスチュート級は97m
イギリス海軍が運用する攻撃型原子力潜水艦「アスチュート級」は、全長97mです。
排水量は7,400トンとされています。
たいげい型の84mと比較すると約13m長くなります。
ただし、潜水艦の大きさは全長だけでは判断できません。
船体の太さや排水量、内部構造なども大きさを左右するためです。
弾道ミサイル潜水艦は特に大型になりやすい
潜水艦の中でも特に大型化しやすいのが、弾道ミサイルを搭載する原子力潜水艦です。
一般にSSBNと呼ばれ、戦略的な核抑止などを目的として運用されます。
オハイオ級は約171m
アメリカ海軍の「オハイオ級弾道ミサイル原子力潜水艦」は、全長560フィートです。
メートル換算では約170.7mになります。
全幅は約12.8mで、水中排水量は約19,000トンです。
たいげい型の全長84mと比較すると、オハイオ級はほぼ2倍の長さになります。
170mという長さは、25mプールを約6.8個並べた規模です。
非常に巨大な潜水艦であることが分かります。
弾道ミサイルを搭載するため船体が大きくなる
弾道ミサイル潜水艦が大型になりやすい大きな理由の一つが、搭載するミサイルです。
潜水艦発射弾道ミサイルは大型であり、船体内部に複数の発射筒を配置する必要があります。
そのため、魚雷や巡航ミサイルを中心に運用する攻撃型潜水艦よりも、船体が長くなる傾向があります。
通常動力型潜水艦は比較的コンパクト
通常動力型潜水艦は、原子力潜水艦と比較すると全長60〜90m前後の艦が多く見られます。
海上自衛隊のたいげい型やそうりゅう型も、このカテゴリーに含まれます。
60m台の潜水艦も存在する
通常動力型潜水艦の中には、全長60m台の艦も存在します。
例えばドイツ系の設計として知られるClass 209には、全長約60m台の仕様があります。
そのため、「現代の潜水艦は最低でも70〜80m程度ある」と考えるのは正確ではありません。
任務や設計によっては、より小型の潜水艦も運用されています。
なぜ潜水艦によって長さが違うのか
潜水艦の長さは単純に「大きいほど高性能」というわけではありません。
設計目的や任務内容によって必要な大きさが変わります。
搭載する兵器によって変わる
潜水艦には、魚雷、対艦ミサイル、巡航ミサイル、弾道ミサイルなどさまざまな兵器が搭載されます。
魚雷を主体とする潜水艦では、比較的コンパクトな船体にまとめることもできます。
一方、大型の弾道ミサイルを多数搭載する潜水艦では、大規模なミサイル区画が必要です。
その結果、船体が長くなる傾向があります。
推進方式によっても異なる
潜水艦には、主に通常動力型と原子力型があります。
通常動力型では、ディーゼル発電機、バッテリー、電動機などを組み合わせたシステムが一般的です。
一方、原子力潜水艦には原子炉や蒸気系統、タービンなどの設備が必要になります。
さらに、原子力潜水艦は長期間の作戦行動を前提として設計されることが多く、兵装やセンサー、乗員設備なども充実しています。
このため、現代の原子力潜水艦には通常動力型より大型の艦が多く見られます。
乗員数や航海期間も関係する
潜水艦では、乗員が長期間生活しながら任務を行います。
船体内部には寝床、食堂、厨房、トイレ、指揮所、機械室などが必要です。
さらに、長期間の任務では大量の食料や生活物資も積み込まなければなりません。
そのため、乗員数や想定される航海期間も潜水艦の大きさに影響します。
潜水艦は長くても内部が広いとは限らない
全長100m前後の潜水艦と聞くと、内部も非常に広いように感じるかもしれません。
しかし、実際には船体内部の大部分が機械設備や兵器などによって占められています。
船体内部には大量の設備がある
潜水艦の内部には、推進装置、バッテリー、燃料関連設備、魚雷、ミサイル、発射管、ソナー関連装置、電気設備、配管などが密集しています。
そのため、全長が長いからといって、その分だけ乗員の生活スペースが広くなるわけではありません。
特に通常動力型潜水艦では、限られた空間を効率的に利用する必要があり、非常に高密度な設計になっています。
居住区は限られている
潜水艦の乗員は、限られた居住スペースの中で生活します。
寝台、食堂、通路なども必要最小限に抑えられている場合が多く、一般的な船舶と比べても空間に余裕があるとはいえません。
潜水艦の外観が大きく見えても、内部では多数の機器や設備が優先的に配置されているためです。
潜水艦の大きさは長さだけでは比較できない
潜水艦を比較するときは、全長だけを見るのでは不十分です。
全幅や排水量なども確認する必要があります。
全幅も重要な指標
同じ全長でも、船体の直径や幅が違えば内部容積は大きく異なります。
細長い潜水艦と太い潜水艦では、同じ長さでも内部の広さや搭載できる設備の量が変わります。
そのため、全長だけで「どちらの潜水艦が大きいか」を判断するのは適切ではありません。
排水量を見ると規模が分かりやすい
潜水艦の規模を比較するときには排水量も重要です。
排水量は、艦が水を押しのける量を基準として船体の規模を示す指標です。
ただし、排水量には「基準排水量」「水上排水量」「水中排水量」など複数の基準があります。
異なる種類の排水量を単純に比較すると、正確な比較にならない場合があります。
したがって、潜水艦同士を比較する場合は、できるだけ同じ基準の排水量を確認することが重要です。
潜水艦の長さを身近なものと比較
潜水艦の長さは、身近なものと比較するとイメージしやすくなります。
たいげい型は25mプール約3.4個分
たいげい型の全長84mは、25mプールを約3.4個並べた長さです。
100m走のトラックの直線部分に近い規模と考えると、大きさをイメージしやすいでしょう。
バージニア級は25mプール約4.6個分
標準的なバージニア級の約114.8mは、25mプール約4.6個分です。
日本の潜水艦と比較しても、かなり長いことが分かります。
オハイオ級は25mプール約6.8個分
オハイオ級の約170.7mは、25mプールを約6.8個並べた長さになります。
潜水艦は海上では船体全体を見る機会が少ないため小さく感じることがありますが、実際には非常に大型の艦船です。
潜水艦の長さに関するよくある疑問
潜水艦は一般的な船より長い?
船の種類によって大きく異なるため、一概には比較できません。
80〜100m程度の潜水艦は、中型クラスの船舶に匹敵する長さがあります。
一方、大型の貨物船やクルーズ船には全長300mを超えるものもあるため、潜水艦がすべての船より大きいわけではありません。
潜水艦は大きいほど強い?
必ずしもそうではありません。
潜水艦の性能は、静粛性、センサー、兵装、推進方式、航続性能、運用目的など多くの要素によって決まります。
小型の潜水艦には、沿岸部や浅い海域で活動しやすいという利点もあります。
そのため、大きさだけで潜水艦の能力を判断することはできません。
日本の潜水艦は世界的に見ると小さい?
海上自衛隊の潜水艦は全長82〜84m程度なので、100mを超える大型原子力潜水艦と比較すれば短いといえます。
しかし、通常動力型潜水艦として見ると決して小型ではありません。
世界には60m台の通常動力型潜水艦も存在するため、日本の潜水艦は比較的大型の通常動力型潜水艦と考えられます。
まとめ
潜水艦の長さは艦種によって大きく異なり、現代の軍用潜水艦には全長60m台の通常動力型から、170mを超える大型原子力潜水艦まで存在します。
海上自衛隊では、おやしお型が82m、そうりゅう型とたいげい型が84mとなっています。
海外では、イギリスのアスチュート級が97m、アメリカの標準的なバージニア級が約114.8m、オハイオ級が約170.7mです。
特に弾道ミサイルを搭載する原子力潜水艦は、大型のミサイル発射区画などを必要とするため、船体が長くなる傾向があります。
一方、通常動力型潜水艦には60〜90m前後の艦も多く、任務や設計思想によって大きさはさまざまです。
また、潜水艦の規模を判断するときは全長だけを見るのではなく、全幅や排水量も合わせて確認することが重要です。
つまり、潜水艦の長さについては、「おおむね60m台から170m超まで幅広く、日本の近年の主要潜水艦は82〜84m程度」と理解しておくと分かりやすいでしょう。
以上、潜水艦の長さはどのくらいなのかについてでした。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
















