船検とは
船検とは、正式には「船舶検査」といい、船舶が安全に航行するための構造や設備、性能などの基準を満たしているかを確認するための法定検査です。
自動車に車検があるように、一定の船舶には船舶安全法に基づく船舶検査が義務付けられています。
特に、プレジャーボートやモーターボート、ヨット、水上オートバイなどを所有・使用する場合、船検は安全な航行を続けるために重要な制度です。
船検では、単に船が動くかどうかを確認するだけではありません。
船体の状態やエンジン、操舵設備、救命設備、消防設備、航海用具などについて、船舶の種類や用途、航行区域などに応じた基準を満たしているかが確認されます。
船検の目的
船舶が安全に航行できる状態か確認する
船検の大きな目的は、船舶そのものの安全性を確認することです。
船は海や湖、川などで使用されるため、航行中にトラブルが起きても、自動車のようにすぐ安全な場所へ停車できるとは限りません。
船体に大きな損傷や腐食があれば、浸水や破損につながる可能性があります。
また、エンジンや操舵装置に不具合があると、航行不能になったり、他船や障害物を避けられなくなったりするおそれがあります。
そのため船検では、船体や機関、操舵設備などが安全に使用できる状態であるかが確認されます。
乗船者の生命を守る
船検には、乗船している人の生命を守るという重要な目的もあります。
海上で事故が起こると、救助されるまでに時間がかかることがあります。
そのため、船舶には航行区域や最大搭載人員などに応じて、救命胴衣や救命浮環、消火器などの安全設備を備えることが求められます。
必要な設備が適切に装備されているか確認することも、船検の重要な役割です。
船を使用できる条件を確認する
船検では、その船をどのような条件で使用できるかについても確認されます。
具体的には、航行できる区域や最大搭載人員などが船舶検査証書に記載されます。
そのため、船検は単に「船が安全かどうか」を確認するだけではなく、「どのような条件で航行できる船なのか」を明確にする制度でもあります。
船検の法的な根拠
船舶検査制度は、主に船舶安全法に基づいて運用されています。
さらに、小型船舶については、小型船舶安全規則などによって具体的な技術基準が定められています。
そのため、船検はマリーナや販売店が独自に行う点検サービスではなく、法律に基づいて行われる公的な検査制度です。
小型船舶の船検はJCIが行う
一般的なプレジャーボートなどの小型船舶については、日本小型船舶検査機構、通称JCIが検査を行います。
一般に、総トン数20トン未満の船舶は小型船舶として扱われます。
ただし、総トン数20トン以上であっても、長さ24m未満でスポーツまたはレクリエーションのみに使用される船舶などは、小型船舶に含まれる場合があります。
そのため、「20トン以上なら必ず小型船舶ではない」と単純に判断することはできません。
船検には4つの主な種類がある
小型船舶の船検には、主に「定期検査」「中間検査」「臨時検査」「臨時航行検査」の4種類があります。
定期検査
定期検査とは、初めて船舶を航行させる場合や、船舶検査証書の有効期間が満了する場合に受ける検査です。
船体や機関、設備などについて比較的詳しい確認が行われます。
一般的な旅客船以外の小型船舶では、原則として6年ごとに定期検査を受けます。
中間検査
中間検査とは、定期検査と次の定期検査との間に受ける検査です。
定期検査よりも簡易的な内容ですが、船舶が引き続き安全な状態に保たれているかを確認する重要な検査です。
一般的なプレジャーボートの場合、6年ごとの定期検査の中間に中間検査を受けるため、おおむね3年ごとに何らかの船検を受けることになります。
なお、船舶検査証書の有効期間が残っていても、中間検査の受検時期を過ぎたまま航行できるわけではありません。
船舶検査手帳などを確認し、適切な時期に検査を受ける必要があります。
臨時検査
臨時検査とは、船舶に重要な改造や修理、設備の交換などを行った場合に必要となる検査です。
例えば、主機関の交換や操舵設備の改造、船体の強度や水密性に関係する修理などを行った場合、臨時検査が必要になることがあります。
また、航行区域や最大搭載人員などの条件を変更する場合にも、検査が必要になることがあります。
ただし、軽微な修理を行うたびに必ず臨時検査が必要になるわけではありません。
安全性や船舶検査証書の記載内容などに関係する重要な変更が主な対象となります。
臨時航行検査
臨時航行検査とは、船舶検査証書の交付を受けていない船舶を、特別な事情により一時的に航行させる場合に受ける検査です。
例えば、船検を受ける場所まで船を回航する場合や、試運転のために一時的に航行させる場合などが該当します。
臨時航行検査に合格すると、臨時航行許可証が交付されます。
船検ではどのような内容を確認するのか
船検の具体的な内容は、船舶の種類や用途、構造、航行区域、検査の種類などによって異なります。
そのため、すべての船で同じ項目を同じ方法で検査するわけではありません。
一般的には、次のような項目が確認されます。
船体
船体は、安全に航行するうえで基本となる部分です。
船体に大きな損傷や腐食、変形などがないか確認されます。
また、浸水につながるような損傷がないか、水密性に問題がないかなども重要です。
特にFRP船、アルミ船、鋼船、木造船などでは、船体の材質によって確認されるポイントが異なる場合があります。
エンジンや機関
モーターボートなどでは、エンジンや関連する機関設備も確認対象になります。
エンジンが航行中に停止すると、船が風や潮流によって流され、座礁や衝突につながる可能性があります。
そのため、主機関や関連設備が安全に使用できる状態かどうかが確認されます。
操舵設備
ハンドルや舵など、船をコントロールする操舵設備も重要な確認項目です。
操舵設備に不具合があると、他船や障害物を避けられなくなる可能性があります。
そのため、正常に作動するかどうかが確認されます。
救命設備
事故や転覆、浸水などが起きた場合に備え、救命設備が適切に装備されているか確認されます。
代表的なものとしては、救命胴衣や救命浮環などがあります。
必要となる設備や数量は、船舶の種類、最大搭載人員、航行区域などによって異なります。
消防設備
エンジンや燃料を搭載する船では、火災に備えた消防設備も重要です。
船舶の条件に応じて消火器などを備える必要があり、船検では必要な設備が適切に設置されているか確認されます。
航海用具
安全な航行を行うために必要な航海用具も確認対象になります。
必要な航海用具は、航行区域などによって異なります。
航行区域を広げる場合には、それまで必要なかった法定備品を追加しなければならないこともあります。
法定備品と桜マーク
小型船舶に備える救命設備や消防設備、航海用具などの一部には、型式承認や検定の対象となるものがあります。
こうした検定対象品のうち、基準を満たした製品には、いわゆる「桜マーク」が表示されています。
例えば、救命胴衣などでは桜マーク付きの製品が使用されることがあります。
ただし、すべての船用品に桜マークが必要というわけではありません。
法令上、型式承認や検定の対象となっている設備について確認する必要があります。
航行区域は船検で重要なポイント
船検を理解するうえで重要なのが「航行区域」です。
船は、船舶検査証書に記載された航行条件の範囲内で使用しなければなりません。
岸から近い場所だけを航行する船と、沖合まで航行する船では、求められる設備や安全基準が異なる場合があります。
そのため、「船検に通るためには何を準備すればよいか」を判断する際には、船の大きさや種類だけでなく、どこまで航行するのかも確認する必要があります。
船検に合格すると交付されるもの
船舶検査に合格すると、検査区分などに応じて船舶検査証書や船舶検査手帳などが交付されます。
定期検査の場合には、船舶検査済票も交付されます。
船舶検査証書
船舶検査証書には、その船に認められている航行区域や最大搭載人員などの条件が記載されています。
船を使用する際には、記載された条件を守る必要があります。
船舶検査手帳
船舶検査手帳には、検査に関する情報や次回の検査時期などが記載されています。
中古艇を購入する場合には、船舶検査証書だけでなく、船舶検査手帳の内容も確認しておくと安心です。
船舶検査済票
定期検査に合格した場合には、船舶検査済票が交付されます。
小型船舶では、船体の両舷に貼り付けて表示します。
船検と船舶登録は別の制度
船検と混同されやすいものに「船舶登録」があります。
船舶登録と船舶検査は、それぞれ目的が異なる制度です。
船舶登録は、船舶の所有関係や船舶そのものを公的に登録する制度です。
一方、船検は船舶が安全基準を満たしているかを確認する制度です。
そのため、「船舶登録が不要だから船検も不要」とは限りません。
登録と検査では対象条件が異なるため、それぞれ確認する必要があります。
すべての船に船検が必要とは限らない
すべての船舶に船検が必要なわけではありません。
一定の条件に該当する船舶については、船舶検査が免除される場合があります。
一定条件のミニボートなど
非常に小型の船舶については、一定の条件を満たせば船検の対象外となる場合があります。
代表的な例として、長さ3m未満で推進機関の出力が1.5kW未満など、所定の条件を満たすミニボートがあります。
ただし、対象外となる条件は細かく定められているため、「小さい船だから船検不要」と判断するのは避けるべきです。
一定条件を満たす小型漁船
一定の小型漁船についても、船検が免除される場合があります。
ただし、漁船登録を受けていることや、海岸から12海里以遠へ行かないこと、漁業以外の用途に使用しないことなど、複数の条件があります。
漁船登録をしていても、レジャー目的など漁業以外の用途で使用する場合には、船検が必要になる可能性があります。
一般的なプレジャーボートの船検周期
一般的な旅客船以外の小型船舶では、原則として6年ごとに定期検査を受けます。
その中間には中間検査があるため、一般的なプレジャーボートでは、おおむね3年ごとに検査時期が訪れると考えるとわかりやすいでしょう。
例えば、
定期検査
↓
約3年後に中間検査
↓
約3年後に次の定期検査
という流れになります。
ただし、実際には受検可能期間が設定されているため、必ずしもぴったり3年ごとに受けるという意味ではありません。
船舶検査手帳などで正確な受検時期を確認することが重要です。
船検は一度受ければ終わりではない
船検は、一度合格すれば永久に有効になる制度ではありません。
船舶は使用するにつれて、船体やエンジン、配線、操舵設備などが徐々に劣化していきます。
さらに、救命設備や消防設備なども、適切な状態を維持する必要があります。
そのため、定期検査と中間検査を繰り返し受けることで、船舶の安全性を継続的に確認する仕組みになっています。
また、検査期間の途中でも、主機関の交換や重要な改造などを行った場合には、臨時検査が必要になることがあります。
船検は船と乗船者の安全を守るための制度
船検とは、船舶が法律で定められた安全基準を満たしているかを確認する制度です。
船体や機関、操舵設備などの状態だけでなく、救命設備や消防設備、航海用具なども、船舶の種類や航行条件に応じて確認されます。
一般的なプレジャーボートなどの小型船舶では、JCIが検査を行い、定期検査、中間検査、臨時検査、臨時航行検査といった検査制度が設けられています。
また、一般的な旅客船以外の小型船舶では、原則として6年ごとの定期検査と、その中間の中間検査が必要です。
船舶検査証書の有効期限だけを見るのではなく、船舶検査手帳に記載されている次回検査時期や、法定備品の状態なども定期的に確認しておくことが大切です。
安全にプレジャーボートなどを楽しむためにも、自分の船がどの検査の対象となり、どのような航行条件が定められているのかを事前に把握しておきましょう。
以上、船検とは何か、検査の目的や内容についてでした。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。










