JCIの譲渡証明書とは
JCIの譲渡証明書とは、小型船舶を売買や贈与などによって他人へ譲渡したことを証明するための書類です。
JCIとは、日本小型船舶検査機構のことで、小型船舶の検査や登録などを行っています。
中古のプレジャーボートや水上オートバイなどを購入し、登録上の所有者を変更する場合には、JCIで名義変更に関する手続きが必要になります。
登録対象となる小型船舶の場合は、原則として「移転登録」を行います。
その際、旧所有者から新所有者へ船舶が譲渡されたことを証明する重要な書類が譲渡証明書です。
譲渡証明書と売買契約書は別の書類
譲渡証明書と船舶売買契約書は、同じ書類ではありません。
譲渡証明書は、主にJCIで所有権の移転を証明するために使用します。
一方、売買契約書は、売主と買主の間で売買条件を定めるための書類です。
売買契約書には、たとえば次のような内容を記載します。
・売買価格
・支払方法
・船舶の引渡日
・船体やエンジンの状態
・付属品の内容
・名義変更の期限
・係留料などの負担
・契約不適合が見つかった場合の対応
特に個人間で高額なプレジャーボートを売買する場合は、譲渡証明書だけで済ませず、売買契約書も作成しておくとトラブル防止につながります。
JCIの譲渡証明書が必要になる主なケース
譲渡証明書は、主に船舶の所有者が変わる場合に使用します。
代表的なケースを確認しておきましょう。
中古のプレジャーボートを売買する場合
もっとも一般的なのが、中古艇を売買するケースです。
すでに登録されている船舶を売主から買主へ譲渡する場合、新しい所有者はJCIで移転登録を行います。
その際、旧所有者が作成した譲渡証明書が必要になります。
船舶を無償で譲る場合
譲渡証明書は、有償の売買だけで使用する書類ではありません。
家族や知人などへ無償で船舶を譲る贈与の場合でも、所有者が変わるため、登録対象船舶であれば移転登録が必要になります。
その際にも、譲渡の事実を証明する書類として譲渡証明書を使用します。
共同所有する船舶の持分を譲渡する場合
小型船舶は、複数人で共同所有することもできます。
共同所有の場合は、それぞれの所有者に持分が設定されます。
たとえば、船舶の持分1/2だけを別の人へ譲渡する場合は、その持分について移転登録を行います。
譲渡する持分と譲り受ける持分が一致していることを確認することが重要です。
譲渡証明書と変更・移転登録申請書の違い
JCIで中古艇の名義変更を行う際には、譲渡証明書だけで手続きが完了するわけではありません。
「譲渡証明書」と「変更・移転登録申請書」は、それぞれ別の書類です。
譲渡証明書
譲渡証明書は、旧所有者から新所有者へ船舶を譲渡したことを証明するための書類です。
基本的に、売主である譲渡人が作成します。
変更・移転登録申請書
変更・移転登録申請書は、JCIに対して実際に登録内容を変更するために提出する書類です。
新しい所有者の情報や登録原因、変更内容などを記載します。
そのため、譲渡証明書と変更・移転登録申請書の記載事項を混同しないことが重要です。
JCIの譲渡証明書の書き方
譲渡証明書は、JCIが用意している所定の様式を使用します。
申請書の様式は変更される可能性があるため、以前ダウンロードした用紙を使い回すのではなく、手続き時にJCI公式サイトから最新の様式を確認するのがおすすめです。
船舶を特定する情報を正確に記入する
譲渡証明書には、譲渡する船舶を特定できる情報を記入します。
代表的な情報には、次のようなものがあります。
・船体識別番号
・船舶番号または船舶検査済票番号
・推進機関の種類
・推進機関の型式
これらの情報は、船舶検査証書や船舶検査手帳、登録関係書類などと照合して記入しましょう。
番号や型式を推測して記入するのは避けるべきです。
譲渡年月日を記入する
船舶を実際に譲渡した年月日を記入します。
売買契約書や船舶の引渡日などと整合性が取れているか確認しましょう。
譲渡人の住所・氏名を記入する
船舶を譲る側である譲渡人の住所と氏名を記入します。
法人所有の場合は、法人名だけでなく、代表者の役職や氏名についてもJCIの様式に従って記入します。
登録対象船舶では実印を使用する
登録対象となる小型船舶の移転登録では、原則として譲渡人の実印を使用します。
あわせて、譲渡人の印鑑証明書も必要になります。
認印でよいと判断してしまうと手続きが進まない可能性があるため、印鑑証明書に登録されている実印を使用しましょう。
譲渡証明書を書くときの注意点
譲渡証明書は、所有権の移転に関わる重要な書類です。
記入時にはいくつか注意すべきポイントがあります。
消せるボールペンを使用しない
譲渡証明書は、通常のボールペンなどを使用して記入します。
フリクションペンなど、文字を消すことができる筆記具は避けましょう。
訂正方法に注意する
記載内容を間違えた場合は、修正液や修正テープで消して書き直すのは避けるべきです。
JCIの取扱いに従って訂正する必要があります。
重要な箇所を大きく間違えた場合は、新しい用紙に書き直す方が安全です。
船舶情報を必ず書類と照合する
船体識別番号や船舶番号、エンジン型式などに誤りがあると、船舶を正しく特定できない可能性があります。
船舶検査証書などの正式な書類を確認しながら記入しましょう。
譲渡人の印鑑証明書も必要
登録対象となる小型船舶の移転登録では、譲渡証明書だけでなく、譲渡人の印鑑証明書も必要になります。
印鑑証明書については、原則として譲渡年月日前3か月以内に発行されたものを用意します。
個人の場合は市区町村が発行する印鑑証明書を使用し、法人の場合は法務局で取得する印鑑証明書を使用します。
なお、登録対象外の船舶については、手続き内容が異なり、譲渡人の印鑑証明書が不要となる場合があります。
売主の住所が変わっている場合は注意
中古艇の名義変更で特に注意したいのが、売主の住所が登録時から変わっているケースです。
JCIに登録されている旧所有者の住所と、現在の印鑑証明書に記載されている住所が異なっている場合は、そのまま譲渡手続きを進められない可能性があります。
原則として譲渡前に住所変更登録を行う
JCIでは、船舶所有者の住所が変わっているにもかかわらず変更登録をしていない場合、譲渡前に住所の変更登録を行うよう案内しています。
そのため、売却前にJCIの登録住所と現在の住所が一致しているか確認しておきましょう。
住所変更を長期間放置していると、名義変更時に追加書類や手続きが必要になる場合があります。
船舶を売却した後のJCI手続き
船舶を譲渡した場合、所有者変更に伴う移転登録は原則として新所有者である買主が行います。
売主から買主へ必要書類を渡す
登録対象の船舶を売却する場合、売主は一般的に次の書類を買主へ渡します。
・譲渡証明書
・譲渡人の印鑑証明書
・船舶検査証書
・船舶検査手帳
買主はこれらの書類を使用して、JCIで名義変更手続きを行います。
買主が移転登録を申請する
買主は変更・移転登録申請書などの必要書類を準備し、JCIへ提出します。
登録対象船舶であれば、所有権の移転について移転登録を行います。
船舶検査証書の書換は必ず必要とは限らない
中古艇の名義変更では、船舶検査証書に関する手続きも関係します。
ただし、名義変更をしたら必ず別途書換申請が必要になるわけではありません。
所有者名・住所などだけの変更なら書換申請が不要な場合がある
変更内容が所有者名、住所、船籍港などに限られ、船名などその他の事項に変更がない場合は、別途書換申請や書換手数料が不要となる場合があります。
一方で、船名など別の登録事項も変更する場合は、書換手続きが必要になることがあります。
そのため、「中古艇の名義変更では必ず船舶検査証書の書換が必要」と考えないようにしましょう。
移転登録にかかる手数料
JCIの移転登録には手数料がかかります。
2026年9月時点では、移転登録の手数料は3,350円です。
ただし、別途書換などの手続きが必要になる場合は、追加で費用が発生する可能性があります。
そのため、名義変更に必要な費用が一律3,350円というわけではありません。
手続き内容によって総額が変わる点に注意しましょう。
共同所有の船舶を譲渡する場合
複数人で共同所有している船舶を譲渡する場合は、通常の単独所有よりも手続きが複雑になります。
持分を確認する
共同所有の場合、それぞれの所有者に持分があります。
船舶全体を譲渡するのか、一部の持分だけを譲渡するのかによって手続きが変わります。
譲渡人側の持分と、譲受人側が取得する持分が一致していることを確認しましょう。
船舶全体を売る場合は共有者全員の確認が必要
共有船全体を売却する場合は、共有者全員が関係する手続きになります。
一部の共有者だけで船全体を自由に譲渡できるわけではありません。
共同所有艇を購入する場合は、登録上の所有者や持分を事前に確認することが重要です。
法人名義の船舶を譲渡する場合
法人が所有する船舶を譲渡する場合も、基本的には譲渡証明書を使用します。
ただし、個人間の売買よりも追加書類が必要になることがあります。
法人と取締役の間で売買する場合
会社から代表取締役個人へ船舶を売却する場合など、会社と取締役との間の取引では、会社法上の利益相反取引に該当する場合があります。
そのため、取締役会議事録や株主総会議事録などの提出が必要になる場合があります。
法人名義の船舶を売買する場合は、事前にJCIへ必要書類を確認しておくと安心です。
相続の場合は譲渡証明書とは別の手続きになる
船舶所有者が亡くなり、相続によって所有者を変更する場合は、通常の売買や贈与とは必要書類が異なります。
相続の場合は、譲渡証明書ではなく、戸籍関係書類や遺産分割協議書など、相続関係を証明する書類を使用します。
そのため、売買・贈与と相続は分けて考える必要があります。
譲渡証明書を紛失した場合
名義変更前に譲渡証明書を紛失した場合は、まず譲渡人に連絡し、再度作成できるか確認するのが一般的です。
ただし、事情によってはJCI所定の申立手続きを利用できるケースもあります。
売主と連絡が取れない場合はJCIへ確認する
譲渡証明書を提出できない事情がある場合、JCIでは一定の条件のもとで申立書を使用する手続きが設けられています。
ただし、誰でも簡単に利用できる代替手段というわけではありません。
譲渡証明書を紛失した場合や、旧所有者と連絡が取れない場合は、自己判断で書類を作成せず、管轄のJCI支部へ確認しましょう。
中古艇を購入する前に所有者を確認する
中古艇を購入するときは、実際に船舶を販売している人と、JCIに登録されている所有者が一致しているとは限りません。
以前の所有者から名義変更をしないまま転売されているケースも考えられます。
登録事項証明書を利用できる
JCIには、小型船舶登録原簿の内容を確認できる「登録事項証明書」があります。
中古艇の個人売買では、登録事項証明書などを利用して、登録上の所有者や船舶情報を確認しておくとトラブル防止につながります。
売主も名義変更の完了を確認する
船舶を売却した売主は、譲渡証明書を渡した時点で完全に手続きが終わったと考えない方がよいでしょう。
買主が移転登録を行わなければ、JCI上では旧所有者の名義が残る可能性があります。
旧所有者に案内が届く場合がある
名義変更が行われていないと、船舶検査に関する案内などが旧所有者へ届くことがあります。
また、船舶に事故やトラブルがあった場合、旧所有者の情報が確認される可能性もあります。
そのため、売主も買主に名義変更が完了したか確認しておくことが大切です。
すべての小型船舶が移転登録の対象ではない
小型船舶を売買した場合でも、すべての船舶が同じ登録手続きになるわけではありません。
小型船舶の中には、登録制度の対象外となる船舶もあります。
登録対象外船舶では、移転登録ではなく、船舶検査関係の所有者変更手続きを行う場合があります。
そのため、まず自分の船舶が登録対象船舶かどうかを確認することが重要です。
JCIの譲渡証明書に関する手続きの流れ
中古のプレジャーボートなどを売買した場合の一般的な流れは、次のようになります。
1.売買条件を決める
売主と買主で売買価格や引渡日、付属品、名義変更期限などを決めます。
高額な取引では売買契約書を作成しておくと安心です。
2.譲渡証明書を作成する
売主がJCI所定の譲渡証明書を作成します。
登録対象船舶の場合は、実印を使用します。
3.必要書類を買主へ渡す
売主は譲渡証明書、印鑑証明書、船舶検査証書、船舶検査手帳などを買主へ渡します。
4.買主がJCIへ申請する
買主は変更・移転登録申請書などを準備し、JCIへ申請します。
5.必要に応じて書換手続きを行う
変更内容によっては、船舶検査証書などの書換手続きが必要になる場合があります。
6.名義変更完了を確認する
新所有者だけでなく、旧所有者も移転登録が完了したか確認しておくと安心です。
まとめ
JCIの譲渡証明書は、小型船舶を売買や贈与などで譲渡した際に、旧所有者から新所有者へ船舶を譲渡したことを証明するための重要な書類です。
登録対象船舶を売買した場合は、原則として新所有者がJCIで移転登録を行います。
その際、売主が作成した譲渡証明書や印鑑証明書などが必要になります。
譲渡証明書を記入するときは、船体識別番号や船舶番号、譲渡年月日、譲渡人の住所・氏名などを正確に記載し、正式な登録書類と照合することが重要です。
また、売主の住所変更が未登録の場合や、共同所有、法人所有、相続、譲渡証明書を紛失した場合などは、通常とは異なる手続きや追加書類が必要になることがあります。
さらに、名義変更に伴って船舶検査証書の書換が必ず必要になるわけではなく、変更内容によって手続きが異なります。
JCIの申請書様式や手数料は変更される可能性があるため、実際に手続きを行う際は、日本小型船舶検査機構の公式サイトで最新の様式や必要書類を確認したうえで申請しましょう。
以上、JCIの譲渡証明書とは何か、書き方や手続きについてでした。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。



