「船の舵にはどんな種類があるの?」「バランスラダーって何?」
そんな疑問を持つ方も多いでしょう。
舵(かじ)は、船の進行方向をコントロールするために欠かせない装置です。
実は、舵には構造や取り付け方の違いによって複数の種類があり、船の大きさや用途に応じて最適なタイプが選ばれています。
この記事では、
- 舵の基本構造と役割
- 舵ごとの典型的な用途と船型の相性
をわかりやすく解説します。
目次
舵の基本構造と役割をおさらい
舵とは、船尾(後ろ)に取り付けられた金属板状の装置で、舵の角度を変えることで水流を操作し、船の方向を変える役割を果たします。
舵の構造を構成する主な部品
| 部品名 | 読み方 | 役割 |
|---|---|---|
| 舵板(だいた) | Rudder Blade | 水の流れを受けて方向を変える部分 |
| 舵軸(だじく) | Rudder Stock | 舵板を支え、回転力を伝える軸 |
| 舵柄(だへい) | Rudder Arm | 操舵装置(ハンドル)からの力を伝達 |
| 操舵装置 | Steering Gear | 油圧や電動で舵を動かす仕組み |
この構造のうち、舵板の「形」と「軸の位置」によって種類が分かれます。
舵ごとの典型的な用途と船型の相性
舵の種類と船型の間には、設計目的・推進効率・操縦性などの観点から密接な関係があります。
以下の表に、代表的な舵の用途と船型との相性を整理しています。
| 舵の種類 | 適する船型・用途 | 相性の理由・特徴 |
|---|---|---|
| 普通舵(Ordinary Rudder) | 貨物船・フェリーなど一般商船 | 構造が堅牢で、長期運航向け。安定した操縦性能を持つ。 |
| 吊り舵(Hanging Rudder) | 小型旅客船、フェリー、フィッシングボート | 船尾が浅くても搭載可能で、小型軽量。浅喫水船に最適。 |
| 釣合舵(Balanced Rudder) | コンテナ船、ヨット、LNG船 | 操作力が軽く応答性が良い。自動操舵との相性良好。 |
| 半釣合舵(Semi-Balanced Rudder) | 中型商船・タンカー | 操舵安定とねじれ強度のバランスが良く、信頼性が高い。 |
| 非釣合舵(Unbalanced Rudder) | 小型木造船、漁船、旧式船 | 構造が単純で製作コストが低い。小推力船向け。 |
| フラップ付き舵(Flap Rudder) | タグボート、内航船、港湾作業船 | 狭水域での旋回に強く、港湾操船性が極めて高い。 |
| シリングラダー(Schilling Rudder) | 高速船・RO/RO船・補給船 | 高速域でも効率が落ちにくく、安定した横力制御が可能。 |
| ゲートラダー(Gate Rudder) | 商船、練習船、大型外航船 | プロペラの両側に配置し、推進効率向上と省エネ効果14%。 |
| KSR型舵(Nakashima設計) | 中~大型商船 | 軽量・高効率設計。保守が容易で燃費改善効果も高い。 |
| ベックツイン・ラダー(Vec-Twin Rudder) | 特殊作業船、研究船、操縦性重視船 | 2枚の独立舵により超高操縦性・後進操船が可能。 |
| スケグ舵(Skeg Rudder) | 外洋ヨット、遠洋漁船 | スケグによる保護と安定直進性。外洋での衝撃に強い。 |
| Rupas型(高揚力舵) | コンテナ船・油槽船・自動車船 | 高揚力で省エネ性に優れる。大型外航船の主流舵型。 |
適用の傾向:
- 内航船・港湾船舶:操作性が最優先。フラップ舵やシリング舵が主流。
- 外航大型商船:燃費・安定性を重視。半釣合舵やRupas舵、KSR構造が一般的。
- 高速・特殊船:高揚力舵(シリング型、ゲート型)が採用され、離着岸や微操船に強い。
- ヨット・レジャー艇:スケグ舵・釣合舵が主力。操作性と安全性のバランスが取れている。
このように、港湾で頻繁に操船する船は「高操縦性舵」系、外洋長距離船は「高安定・省エネ舵」系に分類されます。
さらに、近年ではゲートラダーやRupas型など、推進効率と環境性能を両立した次世代舵の採用が増えつつあります。
まとめ:舵の種類を知れば船の性能が見えてくる
舵は、船種・用途・航行環境に合わせて最適な構造が選ばれます。
たとえば、操縦性重視の内航船ではフラップ舵、耐久性重視の外洋船ではスケグ舵やKSR型舵が使われるなど、目的に応じた設計思想が反映されています。
舵の種類を理解すると、船がどのように方向を変え、どんな技術で安定航行しているのかがより深くわかります。
以上、舵の種類についてでした。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。







