「船の舵(かじ)ってどうやって動くの?」「構造が知りたいけど専門的で難しそう…」
そんな疑問を持つ方も多いでしょう。
舵とは、船の進行方向を変えるための装置です。
エンジンや風の力で前に進む船を、舵の角度を変えることで水の流れを操り、方向転換させます。
この記事では、
- 舵の基本構造と部品の名称
- 舵が方向を変える仕組み
- 舵の種類とそれぞれの特徴
- 船の安全を支える操舵システムの基本
をわかりやすく解説します。
舵の構造とは?船を操る「方向制御装置」
舵(かじ)の基本構造
舵は、主に船尾(せんび/後ろ側)に取り付けられた金属板状の部品で、舵の角度を変えることで水の流れを操作し、船を左右に曲げます。
構造を分解すると、以下の5つのパーツから構成されています。
| 部位名 | 読み方 | 役割 |
|---|---|---|
| 舵板(だいた) | Rudder Blade | 水の流れを受けて方向を変える主要部分 |
| 舵軸(だじく) | Rudder Stock | 舵板を支え、回転運動を伝える軸 |
| 舵頭(だとう) | Rudder Head | 操舵装置(ハンドル・舵輪)と連結される上部 |
| 舵柄(だへい) | Rudder Arm | 操舵機からの力を舵軸に伝える腕状パーツ |
| 舵取装置(そうだそうち) | Steering Gear | 操舵輪の動きを油圧・電動で舵へ伝える装置 |
この5つの要素が連動して働くことで、船の方向を自由にコントロールできるのです。
舵の構造と仕組み|どうやって船を曲げるのか?
舵が船の方向を変える原理は、「流体力(りゅうたいりょく)」にあります。
- 船が前進しているとき、水は舵板の両側を通り抜けます。
- 操舵輪を回して舵板を傾けると、水の流れに偏りが生じる。
- この流れの差(圧力差)によって、舵板に横向きの力(揚力)が働く。
- その力が船体に伝わり、船が左右に旋回する。
船の進行方向を変えるのは、舵そのものの力ではなく、水流の力なのです。
例えで言うと…
車のハンドルが「タイヤの角度」で地面を押して曲がるように船は「舵板の角度」で水を押して方向を変える、という仕組みです。
舵の構造タイプ|船種によって異なる3つの基本形
舵の構造には、船の大きさ・推進方法・用途によっていくつかのタイプがあります。
バランス・ラダー(Balance Rudder)
舵軸の前後に舵板を配置し、舵板前部にも水流を受ける面積を設けた構造。
操作が軽く、商船やフェリーで一般的。
セミバランス・ラダー(Semi-Balance Rudder)
舵板の一部が舵軸より前に出る構造。
バランス性能と強度を両立させ、小型船やタグボートに多い。
フルバランス・ラダー(Full-Balance Rudder)
舵軸の中心付近に舵板があり、左右の水圧が均等になりやすいタイプ。
大型船や油圧操舵装置を持つ船舶に使用されます。
舵の構造を支える操舵装置(ステアリングシステム)
舵は、操舵輪(ハンドル)と連動して動くように設計されています。
この一連の仕組みを 「操舵装置(そうだそうち)」 と呼びます。
操舵装置の種類
| タイプ | 特徴 | 使用例 |
|---|---|---|
| 機械式(ワイヤー式) | ワイヤーやロッドで直接舵を動かす構造。 | 小型ボート・ヨット |
| 油圧式 | ハンドルの動きを油圧ポンプで舵へ伝達。 | 中型船・漁船 |
| 電動式(パワーステアリング) | 電気信号で油圧弁やモーターを制御。 | 大型船・最新フェリー |
どの方式でも、操舵輪 → 操舵機構 → 舵軸 → 舵板という流れで力が伝わる点は共通しています。
舵の構造における重要ポイント|「水流」と「バランス」
舵の性能を決めるのは、単なる形ではなく構造上のバランス設計です。
舵板の面積比
舵板の大きさが大きすぎると抵抗が増え、小さすぎると十分な舵効きが得られません。
一般に、船体の断面積の約1/60〜1/70が理想とされています。
舵軸の位置
舵軸が前方に寄りすぎると舵が重くなり、後方すぎると不安定になります。
バランスラダー構造では、舵軸を舵板の前縁より20〜30%内側に設置するのが一般的です。
材質と強度
現代の舵は高張力鋼やアルミ合金などで作られ、内部に補強リブが入った中空構造になっています。
これにより、強度を保ちながら重量を軽減できます。
舵の構造と安全性の関係
舵は船の「ハンドル」にあたる重要な装置です。
構造上のトラブルは、操船不能(steering failure)という重大事故につながります。
主なトラブル例と原因
| トラブル内容 | 原因 | 対策 |
|---|---|---|
| 舵が動かない | 油圧漏れ・リンク破損 | 操舵機構の定期点検 |
| 舵が戻らない | 舵軸の摩耗・変形 | グリス注入・部品交換 |
| 舵効きが悪い | 舵角不足・水流干渉 | 舵板角度の調整・整流板の設置 |
定期的な点検とグリスアップを行うことで、舵の構造的なトラブルはほとんど防ぐことができます。
まとめ:舵の構造を知れば船の動きがもっとわかる!
ポイントをまとめると、
- 舵は、舵板・舵軸・舵柄・舵頭・操舵装置から構成される
- 水流の圧力差を利用して船の方向を変える
- 構造にはバランス型・セミバランス型・フルバランス型がある
- 操舵装置は機械式・油圧式・電動式に分かれる
- 定期点検と整備が、安全な操船の鍵
舵の構造を理解すれば、船の仕組みがより身近に感じられるはずです。
海を走る船の「見えない操縦の力」に、ぜひ注目してみてください。
以上、舵の構造についてでした。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。


