船の「水抜き(みずぬき)」は、船体内に侵入・蓄積した水を排出して、船の安全性・浮力・耐久性を保つための重要な作業です。
特に小型のプレジャーボートや漁船、ヨットなどでは、定期的な水抜き作業が不可欠です。
以下では、水抜きの基本から方法、注意点まで詳しく解説します。
目次
なぜ水抜きが必要なのか?
船体内に水がたまる原因はさまざまです。
- 雨水や波しぶき:オープンデッキに雨水や海水が溜まる
- 船底の浸水:古くなったパッキンやスルーハル(通水口)からの漏れ
- 冷却系統の結露やエンジンの水漏れ
- 作業時のこぼれ水などの軽微な原因も重なる
放置するとどうなるか?
- 船体が重くなり燃費が悪化
- バッテリーや電子機器が腐食
- 腐敗臭やカビが発生
- 最悪の場合、沈没のリスク
水抜きの方法
水抜きは大きく2種類あります。
自然排水(グラビティ式)
重力を使って水を抜く方法で、小型ボートに多いです。
- ドレインプラグ(排水栓)を開けて水を外に流す
- 陸揚げ時に船尾を低くすると流れやすくなる
- 簡単ですが、乗船中は使えない
自動・手動ビルジポンプ(排水ポンプ)
船のビルジ(船底の最も低い部分)にたまった水をポンプで吸い出します。
手動ポンプ
- ハンドポンプ、足踏みポンプなど
- 機械が不要なので緊急時にも使える
電動ビルジポンプ
- 水位センサー付きの自動型が主流
- バッテリー電源で作動
- 常時稼働させる設定も可能
- 排水ホースを通じて船外へ排出
ビルジポンプの設置と運用の注意点
設置場所
- 一番低い部分(通常は船底中央部)
- 必要に応じて複数個所(前後)に設置することもある
メンテナンスのポイント
- 定期的に異物(ごみ・油)を除去
- ポンプの吸入口やフィルターの詰まりチェック
- 電源系統(ヒューズ・配線)の点検
- 寒冷地では冬季の凍結対策(水抜き剤など)が必要
船を陸揚げした際の水抜きのコツ
- ドレインプラグを開ける前に船を少し傾ける(船尾下がり)
- バッテリースイッチを切ってから作業(感電・誤作動防止)
- しばらく置いて残水が完全に抜けるまで放置
船体タイプ別の水抜き対策
船タイプ | 水抜き手段 | 注意点 |
---|---|---|
小型FRPボート | ドレインプラグ+手動ポンプ | 陸揚げ後に必ず栓を開ける |
プレジャーボート(キャビンあり) | 自動ビルジポンプ(複数箇所) | 電装系の防水対策も併用 |
ヨット | 電動+手動ポンプ併用 | 長期航海前にはセンサー確認 |
漁船 | 電動ポンプ(高排出量) | 漁具による詰まりに注意 |
追加の対策とアドバイス
- 自動ビルジポンプ+水位センサー+アラームを組み合わせると安心
- 豪雨後や船を長時間放置した後は必ずチェック
- 油分が混ざっていた場合、海洋汚染防止法に抵触する可能性もあるため、適切に処理
まとめ
船の水抜きは、単なる「水を出す」作業ではなく、安全航行、船体寿命の延長、メンテナンスコストの削減にも大きく関わってきます。
日頃から水抜きの意識を持ち、ポンプや排水経路の点検を怠らないことが重要です。
以上、船の水抜きについてでした。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。