船舶検査を自分で行う方法について

目次

船舶検査は自分で受けられる?

小型船舶の船舶検査は、整備業者やマリーナに代行を依頼せず、船の所有者自身で手続きを進めることができます。

自分で行えるのは、主に船舶検査の申請、検査前の点検、法定備品の確認、検査当日の立会いなどです。

ただし、自分で船を点検して「問題がない」と判断するだけでは、法定の船舶検査に合格したことにはなりません。

船舶検査の対象となる小型船舶は、原則としてJCI(日本小型船舶検査機構)などによる所定の検査を受ける必要があります。

そのため、「自分で船舶検査をする」というよりも、正確には「業者に代行してもらわず、自分で船舶検査の申請や準備を行い、JCIの検査を受ける」と考えるとよいでしょう。

船舶検査の主な種類

小型船舶の検査には、主に定期検査、中間検査、臨時検査があります。

自分で船検を受ける場合は、まず自分の船がどの検査に該当するのかを確認することが重要です。

定期検査

定期検査は、一定期間ごとに実施される検査です。

旅客定員12人以下の一般的なプレジャーボートなどでは、基本的に6年ごとに定期検査を受けます。

定期検査では、船体や機関、設備、法定備品などについて確認が行われます。

中間検査

中間検査は、定期検査と次の定期検査の間に行われる検査です。

旅客定員12人以下の一般的なプレジャーボートの場合は、定期検査の約3年後に中間検査を受け、さらに約3年後に次の定期検査を受けるという流れが一般的です。

そのため、結果としておおむね3年ごとに定期検査または中間検査を受けることになります。

ただし、船舶の用途や種類などによって検査時期は異なります。

すべての小型船舶が一律に3年ごとというわけではないため、実際の受検期間は船舶検査手帳で確認する必要があります。

臨時検査

臨時検査は、船体や機関、航行条件などに一定の変更を行った場合に必要となる検査です。

例えば、船体の大規模な改造、主機関の変更、航行区域の変更、最大搭載人員の変更などを行った場合に必要となることがあります。

ただし、エンジンを交換したからといって、必ず臨時検査が必要になるわけではありません。

船舶検査手帳に指定されている船外機への交換など、一定の条件を満たせば臨時検査の対象外となる場合があります。

改造やエンジン換装を予定している場合は、作業前にJCIへ確認しておくと安心です。

船舶検査の時期を確認する方法

船検を自分で受ける場合は、最初に検査時期を確認します。

船舶検査手帳を確認する

正確な検査時期を確認する際に重要なのが、船舶検査手帳です。

船舶検査手帳には検査の時期が記載されているため、現在が定期検査の期間なのか、中間検査の期間なのかを確認できます。

次回検査時期指定票も確認する

船体に貼られている「次回検査時期指定票」でも、次回の検査時期のおおよその年や月を確認できます。

ただし、実際の受検期間については、船舶検査手帳の記載を確認するのが確実です。

中間検査を受け忘れないよう注意する

船舶検査証書の有効期間が残っていても、中間検査の時期を迎えている場合は検査を受ける必要があります。

「船舶検査証書の期限が切れていないから航行できる」と考えるのは注意が必要です。

指定された期間内に必要な検査を受けて合格しなければ、そのまま航行することはできません。

自分で船検を受ける基本的な流れ

自分で船舶検査を受ける場合は、次のような流れで進めます。

1.検査の種類と時期を確認する

最初に船舶検査証書や船舶検査手帳を確認し、今回受けるのが定期検査なのか中間検査なのかを確認します。

エンジン換装や改造などを行っている場合は、臨時検査や変更手続きが必要かどうかも確認しましょう。

2.船体やエンジンを事前点検する

検査当日に不具合が見つからないよう、船体、機関、燃料系統、電気系統、操舵装置などを事前に確認します。

3.法定備品を確認する

救命胴衣や救命浮環、信号設備など、自分の船に必要な法定備品を確認します。

期限が設定されている備品については、有効期限も確認しておきます。

4.申請書類を準備する

船舶検査申請書など、必要な書類を準備します。

5.検査手数料を支払う

JCIが定める検査手数料を支払います。

6.JCIへ申請する

必要書類をそろえ、担当するJCI支部へ検査を申請します。

7.検査日時や場所を調整する

申請後、検査日時や検査場所についてJCIと調整します。

8.検査当日に立ち会う

検査当日は、船舶検査証書や船舶検査手帳、法定備品などを確認しやすい状態にしておきます。

検査員による検査を受け、問題がなければ合格となります。

船体を自分で点検する

船舶検査を受ける前には、船体に大きな損傷や異常がないか確認しておきます。

FRP船で確認したい部分

FRP製のプレジャーボートであれば、船体のひび割れや損傷、著しい変形などを確認します。

特に確認したいのは、船底、トランサム、キール周辺、スルーハル周辺などです。

FRPが大きく剥離していたり、構造部分まで達する亀裂があったりする場合は、専門業者に点検や修理を依頼することも検討しましょう。

水漏れや浸水の有無も確認する

船内への水漏れや、通常よりビルジ水が増えていないかも確認します。

原因不明の浸水がある場合は、船舶検査のためだけではなく、安全面からも原因を調べることが大切です。

エンジンを点検する

エンジンなどの機関に不具合があると、検査に合格できない可能性があります。

検査前に正常に使用できる状態であるか確認しておきましょう。

エンジンの始動状態を確認する

可能であれば、検査前に実際にエンジンを始動して確認します。

アイドリングが安定しているか、異音や異常な振動がないか、正常に運転できるかを確認します。

船外機の場合は、冷却水が正常に排出されているかも確認するとよいでしょう。

オイルや燃料の漏れを確認する

エンジン周辺にオイル漏れや燃料漏れがないか確認します。

ホースの接続部分やフィルター周辺なども確認しておくと安心です。

燃料系統を点検する

燃料系統の不具合は、火災や爆発につながる可能性があるため注意が必要です。

燃料ホースを確認する

燃料ホースにひび割れや硬化がないか確認します。

長期間交換していない場合は、劣化していないか特に注意しましょう。

燃料タンク周辺を確認する

燃料タンクやホースの接続部分から燃料が漏れていないか確認します。

ガソリン船の場合は、船内に燃料臭が残っていないかにも注意する必要があります。

バッテリーや電気系統を点検する

電気系統についても、検査前に正常な状態であるか確認します。

バッテリーの固定状態を確認する

バッテリーがしっかり固定されているか確認します。

航行中にバッテリーが動くと、配線が外れたり短絡したりする可能性があります。

バッテリー端子や配線を確認する

端子に著しい腐食がないか、配線に損傷がないかを確認します。

電源を入れた際に異常がないかも確認しておきましょう。

操舵装置を確認する

ハンドルや操舵装置が正常に作動するか確認します。

ハンドルを左右に動かして確認する

ハンドルを左右に動かし、途中で引っかからないか、不自然に重くないかを確認します。

船外機が正常に左右へ動くことも確認します。

油圧操舵の場合は油漏れを確認する

油圧操舵を採用している船では、ホースやシリンダー周辺から油が漏れていないか確認します。

航海灯を確認する

航海灯が装備されている場合は、実際に点灯させて正常に作動するか確認しておきます。

電球切れだけでなく配線も確認する

航海灯が点灯しない原因は、電球切れだけとは限りません。

配線やスイッチ、ヒューズなどに問題がある場合もあるため、検査前に確認しましょう。

必要な灯火は船によって異なる

必要となる航海灯の種類は、船の種類や長さ、運航方法などによって異なります。

すべての船に同じ航海灯が必要というわけではありません。

法定備品を確認する

自分で船検を受ける場合、法定備品の確認は特に重要です。

必要な法定備品は船によって異なる

法定備品は、船の大きさ、航行区域、最大搭載人員、用途などによって異なります。

代表的なものには、救命胴衣、救命浮環、信号設備、係船索、アンカーなどがあります。

条件によっては、コンパス、海図、無線設備などが必要となる場合もあります。

ただし、すべての小型船舶にこれらが一律で必要になるわけではありません。

市販の「船検セット」だけで判断しない

インターネットなどでは法定備品をまとめた「船検セット」が販売されています。

しかし、市販のセットを購入すれば必ず船検を通せるとは限りません。

航行区域や船舶の仕様によって必要な備品が異なるため、自分の船に必要な設備を確認したうえで準備することが重要です。

救命胴衣を確認する

救命胴衣については、必要数だけでなく状態や表示も確認します。

最大搭載人員に応じた数を確認する

一般的な小型船舶では、最大搭載人員に対応した数の救命胴衣が必要です。

不足していないか確認しましょう。

救命胴衣の状態を確認する

破れやベルトの損傷などがないか確認します。

膨張式救命胴衣の場合は、ボンベや作動装置なども正常な状態か確認しておくと安心です。

救命設備の表示も確認する

船舶検査では、救命設備の表示不備が指摘されることがあります。

救命胴衣には、船名、船舶番号、船舶所有者名など、所定の表示が必要となります。

個数だけでなく、表示についても検査前に確認しておきましょう。

信号設備を確認する

船の条件によって信号紅炎などが必要になる場合があります。

有効期限を確認する

信号紅炎などには有効期限があります。

自分の船に備付けが必要な場合は、検査前に期限が切れていないか確認します。

必ずすべての船に必要とは限らない

信号設備の要件は、船舶の種類や航行区域、通信設備の有無などによって異なります。

「すべての船に信号紅炎が必要」とは限らないため、自船の条件を基準に確認しましょう。

消火設備を確認する

船の条件によっては、消火器などの消火設備が必要になります。

腐食や損傷を確認する

船内は湿気や潮風の影響を受けやすいため、消火器の容器が腐食している場合があります。

特に底部などに著しい腐食がないか確認しましょう。

すべての船で条件が同じではない

消火設備の必要性や数量は、船の構造、機関、用途などによって異なります。

自分の船に必要な設備を確認することが大切です。

アンカーやロープを確認する

アンカーや係船索などが法定備品として必要な船では、それぞれの状態も確認します。

アンカー本体を確認する

著しい腐食や損傷がないか確認します。

ロープや接続部分も確認する

アンカーロープや係船索が著しく摩耗していないか確認します。

シャックルなどの接続部分についても、外れたり破損したりするおそれがないか確認しましょう。

船舶検査の申請書を準備する

船の事前点検が終わったら、検査申請の準備をします。

船舶検査申請書を用意する

JCIが用意している船舶検査申請書に必要事項を記入します。

申請書には、船舶所有者、船名、船舶番号、船舶の長さなどを記入します。

船舶検査証書や船舶検査手帳を準備する

船舶検査証書や船舶検査手帳も準備します。

手続き内容によって必要書類が異なる場合があるため、申請前にJCIの案内を確認するとよいでしょう。

船舶検査の手数料

船舶検査を受けるには、JCIが定める手数料が必要です。

旅客定員12人までの基本的な検査手数料

2026年9月時点で、旅客定員12人までの小型船舶における基本的な検査手数料は次のとおりです。

船の長さ定期検査中間検査
3m未満13,100円5,900円
3m以上5m未満19,000円9,500円
5m以上10m未満27,800円17,200円
10m以上20m未満35,200円22,200円
20m以上30m未満49,800円32,300円

旅客定員13人以上の船舶や臨時検査などでは、料金が異なります。

また、今後料金が改定される可能性もあるため、実際に申請する際はJCIの最新料金を確認してください。

JCIへ船舶検査を申請する

必要書類と手数料の準備ができたら、担当するJCI支部へ申請します。

手数料を支払ってから申請する

本人が検査を申請する場合は、原則として所定の検査手数料を支払い、払込証明書などとともに申請書類を提出します。

検査日時や場所について打ち合わせる

申請後、JCIと検査日時や検査場所について調整します。

検査場所や船の種類によっては、JCI支部への持込み検査が可能な場合もあります。

検査場所を準備する

検査当日は、検査員が船体や設備を確認できる状態にしておきます。

上架が必要か事前に確認する

船の種類や検査内容によっては、船底などを確認するため上架が必要となる場合があります。

ただし、すべての船で上架が必要とは限りません。

自己判断せず、検査前にJCIへ確認しておくと安心です。

船内を確認しやすい状態にする

収納庫やエンジン周辺など、検査対象となる場所を確認しやすい状態にしておきます。

荷物が多い場合は、必要に応じて整理しておきましょう。

法定備品を確認しやすくしておく

検査当日は、法定備品をすぐ確認できるよう準備しておくとスムーズです。

法定備品を一か所にまとめる

救命胴衣や信号設備などは、収納場所から取り出し、確認しやすい状態にしておくとよいでしょう。

JCIも、法定備品を容易に確認できるようにしておくことを案内しています。

船舶検査当日の流れ

検査当日は、JCIの検査員が必要な項目を確認します。

船体や設備などを確認する

検査では、船体、機関、設備、法定備品などが検査対象となります。

実際の検査内容は、船の種類や検査区分によって異なります。

検査には立会いが必要

本人で手続きをする場合は、基本的に検査当日に立ち会います。

検査員から設備について確認されることもあるため、船の設備や備品の保管場所を把握しておくとスムーズです。

不具合が見つかった場合

検査で不具合や不備が見つかった場合は、改善する必要があります。

不具合が解消されるまで合格にならない

航海灯が点灯しない、必要な法定備品が不足しているなどの問題がある場合は、その不具合を改善しなければ検査に合格できません。

必要に応じて修理、交換、備品の追加などを行います。

よくある不備も事前に確認する

船舶検査では、救命設備の表示不足などが指摘されることがあります。

最大搭載人員の表示などについても、事前に確認しておくとよいでしょう。

船舶検査に合格した後の手続き

検査に合格すると、検査の種類に応じた書類や標識などが交付されます。

定期検査の場合

定期検査に合格した場合は、船舶検査証書、船舶検査手帳、船舶検査済票、次回検査時期指定票などが交付されます。

船舶検査済票や次回検査時期指定票は、所定の場所へ貼り付けます。

中間検査の場合

中間検査では、定期検査の場合と交付されるものが異なります。

一般的には、新しい船舶検査証書や船舶検査済票が毎回交付されるわけではありません。

そのため、「定期検査と中間検査で同じものが交付される」と考えないよう注意しましょう。

航行時は必要書類を船内に備える

航行する際は、船舶検査証書や船舶検査手帳を船内に備えておく必要があります。

自宅などに保管したまま出航しないよう注意しましょう。

船舶検査証書や手帳を紛失した場合

船舶検査証書や船舶検査手帳を紛失していても、一定の手続きを行えば検査を受けることができます。

定期検査と中間検査で手続きが異なる

中間検査の場合は、再交付申請が必要となるケースがあります。

再交付手数料が必要になることもあります。

一方、定期検査の場合は新しい船舶検査証書が交付されるため、手続きが異なる場合があります。

紛失している場合は、申請前にJCIへ確認するとよいでしょう。

自分で船検を受けるメリット

船舶検査を自分で申請すると、費用を抑えられる可能性があります。

船検代行費用を抑えられる

マリーナや整備業者に船検を依頼すると、JCIの検査手数料以外に代行手数料や整備費などがかかる場合があります。

自分で手続きを行えば、代行費用を節約できる可能性があります。

自分の船の状態を把握できる

自分で船体や設備を確認することで、船の状態を理解しやすくなる点もメリットです。

どの部品が劣化しているのか、どの法定備品が必要なのかを把握することは、日常的な安全運航にも役立ちます。

自分で船舶検査を受ける際の注意点

初めて自分で船検を受ける場合は、次のようなミスに注意しましょう。

中間検査の時期を勘違いしない

船舶検査証書の有効期限だけを見ていると、中間検査の時期を見落とすことがあります。

船舶検査手帳で正確な受検期間を確認しましょう。

法定備品を自己判断しない

必要な法定備品は船ごとに異なります。

他の船で必要だったものが、自分の船にも同じように必要とは限りません。

反対に、市販のセットだけでは不足することもあります。

エンジン換装や改造を見落とさない

エンジンを交換したり船体を改造したりしている場合は、臨時検査や変更手続きが必要になる可能性があります。

不明な場合は、通常の継続検査として申請する前にJCIへ相談しましょう。

船舶検査証書の内容と実際の船を一致させる

航行区域や最大搭載人員、機関などについて、船舶検査証書の記載内容と実際の船の状態が一致していることも重要です。

変更しているにもかかわらず必要な手続きを行っていない場合は、検査前に確認する必要があります。

初めて自分で船検を受ける場合のおすすめ手順

初めて自分で船舶検査を受ける場合は、順番に確認していくと失敗しにくくなります。

まず船舶検査手帳を確認する

最初に、今回受ける必要がある検査とその時期を確認します。

自分の船に必要な法定備品を確認する

航行区域、最大搭載人員、船の大きさなどを確認し、自船に必要な法定備品を調べます。

船体や機関を事前点検する

船体、エンジン、操舵装置、電気系統などを確認します。

不具合があれば、検査前に修理しておきましょう。

JCIへ申請する

必要書類を用意し、手数料を支払って検査を申請します。

検査場所や上架の必要性など、分からない点があれば事前に担当支部へ確認します。

検査当日は備品を確認しやすくする

法定備品を取り出しやすくし、船内も確認しやすい状態にしておきます。

船舶検査証書や船舶検査手帳などの書類も準備しましょう。

船舶検査は自分でも十分に手続きできる

小型船舶の船舶検査は、必ずしもマリーナや整備業者に代行してもらう必要はありません。

所有者本人が必要書類を準備し、法定備品や船の状態を確認したうえでJCIへ申請し、検査を受けることができます。

ただし、本人による自主点検だけで法定検査が完了するわけではありません。

また、必要な法定備品や検査内容は、航行区域、船の大きさ、用途、最大搭載人員などによって異なります。

そのため、自分で船検を受ける場合は、船舶検査手帳や船舶検査証書を確認し、自分の船の条件に合わせて準備することが重要です。

特に、検査時期、法定備品、機関換装や改造の有無については自己判断せず、不明な点があればJCIへ確認してから手続きを進めると安心です。

以上、船舶検査を自分で行う方法についてでした。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次