漁船登録と船舶検査は別の制度
漁船登録と船舶検査は、どちらも船を使用するうえで重要な制度ですが、目的や根拠となる法律、手続きを行う機関が異なります。
漁船登録は、主に「その船を漁船として登録・管理するための制度」です。
一方、船舶検査は、船体や機関、救命設備などが安全基準を満たしているかを確認するための制度です。
そのため、漁船登録を受けたからといって、船舶検査を受けたことにはなりません。
また、漁船登録を受ければ必ず船舶検査が不要になるわけでもありません。
船舶検査が必要かどうかは、船の用途や航行する水域などによって判断されます。
漁船登録と船舶検査の主な違い
漁船登録と船舶検査の違いを整理すると、次のようになります。
| 項目 | 漁船登録 | 船舶検査 |
|---|---|---|
| 主な目的 | 漁船として登録・管理する | 船の安全性を確認する |
| 主な根拠法 | 漁船法 | 船舶安全法 |
| 主な窓口 | 都道府県 | 小型船舶は原則としてJCIなど |
| 主な確認内容 | 所有者、船の種類、機関、用途など | 船体、機関、救命設備、航行条件など |
| 一方を受ければ他方も完了するか | しない | しない |
このように、漁船登録と船舶検査は、それぞれ独立した制度として考える必要があります。
漁船登録とは
漁船として使用する船に必要となる登録
漁船として使用する船舶については、原則として漁船法に基づく漁船登録が必要です。
漁船登録では、船舶の所有者や船の種類、総トン数、機関、用途などが登録されます。
一般的には、その漁船の主たる根拠地を管轄する都道府県で手続きを行います。
そのため、通常のプレジャーボートに関する小型船舶登録とは、制度そのものが異なります。
趣味で魚を釣るだけでは漁船にはならない
船で魚を釣るからといって、すべての船が漁船として扱われるわけではありません。
例えば、自分で食べる魚を釣る目的や、趣味・レジャーとして釣りをするためだけの船は、そのことだけで漁船法上の漁船になるわけではありません。
漁船として登録するためには、実際に漁業に使用されることなど、所定の条件を満たす必要があります。
漁船登録と小型船舶登録は同じではない
漁船登録とJCIの小型船舶登録は別制度
一般的なプレジャーボートなどの小型船舶は、一定の場合を除き、JCIによる小型船舶登録を受けます。
一方、漁船については、都道府県による漁船登録が行われます。
そのため、漁船登録と小型船舶登録は同じ登録ではありません。
両方を同時に登録することはできない
原則として、小型船舶登録と漁船登録を同時に受けることはできません。
すでにJCIで小型船舶登録されている船を漁船として登録する場合には、小型船舶登録の抹消手続きが必要になります。
ただし、ここで注意したいのは、小型船舶登録を抹消したからといって、船舶検査まで不要になるわけではないという点です。
「船舶の登録」と「船舶検査」は別々に考える必要があります。
漁船登録をしても船舶検査が必要になる場合がある
漁船だから船舶検査が不要とは限らない
小型漁船については、一定の条件を満たす場合に船舶検査が免除されることがあります。
代表的な条件としては、次の2つがあります。
- 本邦の海岸から12海里以遠の水域へ行かないこと
- 漁業以外の用途に使用しないこと
この2つの条件をともに満たす小型漁船については、船舶検査が免除される場合があります。
反対に、どちらかの条件を満たさない場合には、漁船登録をしていても船舶検査が必要になります。
12海里以遠へ航行する場合
漁業専用の船であっても、本邦の海岸から12海里以遠へ航行する場合には、船舶検査が必要になります。
12海里は約22.2kmです。
ただし、法令や制度上の判断では「約22km」ではなく、「12海里」という基準で考えることが重要です。
したがって、沖合まで漁に出る漁船については、航行範囲を確認したうえで船舶検査の要否を判断する必要があります。
漁業以外の用途に使う場合は船舶検査に注意
レジャー目的の釣りに使用する場合
普段は漁業に使用している漁船でも、個人的なレジャー釣りに使用する場合には注意が必要です。
レジャーとしての釣りは、通常の漁業とは異なる用途として扱われます。
そのため、漁業以外の用途にも使用する船については、船舶検査が必要になる場合があります。
例えば、平日は漁業に使用し、休日には趣味の釣りに使用する船などが該当します。
家族や友人を乗せる場合
家族や友人を乗せる場合も、単に誰かを乗せたという事実だけで船舶検査の要否が決まるわけではありません。
重要なのは、どのような目的で船を使用しているかです。
例えば、家族や友人を乗せてレジャー目的で航行する場合には、漁業以外の用途に該当する可能性が高くなります。
その場合には、船舶検査が必要となる可能性があります。
漁業とその他の用途に使う船は「小型兼用船」になることがある
漁業とレジャーの両方に使うケース
漁船登録を受けている船であっても、漁業以外の用途にも使用する場合があります。
このような船は、船舶検査上「小型兼用船」として扱われることがあります。
例えば、次のようなケースです。
- 平日は漁業に使用する
- 休日は個人的な釣りに使用する
- 漁業以外の作業にも使用する
このような場合には、漁船登録を受けたまま船舶検査を受けることがあります。
つまり、
「漁船登録あり・船舶検査あり」
という状態は特別なものではありません。
漁船登録をしたからといって船舶検査証書を返納するとは限らない
小型船舶登録の抹消と船舶検査は別
もともとプレジャーボートなどとして小型船舶登録を受け、船舶検査も受けていた船を漁船へ転用するケースがあります。
この場合、小型船舶登録については漁船登録に伴って抹消する必要があります。
しかし、船舶検査証書まで必ず返納するわけではありません。
例えば、漁船登録後も12海里以遠へ航行する場合や、漁業以外の用途にも使用する場合には、引き続き船舶検査が必要になります。
そのため、「登録を抹消したから船舶検査も終了する」と考えないことが重要です。
漁船登録の「検認」と船舶検査は別物
漁船登録には定期的な検認がある
漁船登録を受けた船については、登録内容と実際の船の状態に相違がないかを確認するため、定期的な検認が行われます。
例えば、都道府県によっては5年ごとに知事の検認を受ける必要があります。
検認では、漁船登録票に記載されている内容と、実際の船舶の状態が一致しているかなどが確認されます。
検認を受けても船舶検査を受けたことにはならない
漁船登録における検認と、船舶安全法に基づく船舶検査は別の制度です。
そのため、漁船の検認を受けたからといって、船舶検査を受けたことにはなりません。
反対に、船舶検査を受けているからといって、漁船登録に関する検認が不要になるわけでもありません。
それぞれの制度に応じて適切に手続きを行う必要があります。
中古漁船を購入した場合も注意が必要
前所有者の漁船登録はそのまま引き継げない
中古の漁船を購入した場合、前所有者の漁船登録をそのまま使用できるわけではありません。
漁船が譲渡されると、前所有者の登録は効力を失います。
購入後も引き続き漁船として使用する場合には、新たに漁船登録の手続きを行う必要があります。
船舶検査が残っている場合
中古漁船に有効な船舶検査証書があり、購入後も船舶検査が必要な使い方をする場合には、所有者変更などに伴う手続きが必要になることがあります。
また、航行区域や最大搭載人員、機関などを変更する場合には、変更内容によって臨時検査が必要になる場合があります。
中古船を購入するときは、漁船登録だけでなく、現在の船舶検査の状態もあわせて確認しておくことが大切です。
漁船からプレジャーボートへ変更する場合
漁船登録を抹消して一般船舶として登録する
漁船として使用していた船を漁業に使用しなくなり、プレジャーボートなどとして使用する場合には、漁船登録を抹消する必要があります。
そのうえで、一般の小型船舶としてJCIの登録を受けることになります。
漁船登録を抹消して一般船舶へ転用する場合の小型船舶登録は、新規登録として扱われます。
船舶検査についても確認する
プレジャーボートとして使用する場合には、船舶検査についても確認する必要があります。
漁船から一般船舶への転用では、用途や航行区域などが変わることがあるため、変更内容によっては臨時検査などが必要になる場合があります。
そのため、登録変更と船舶検査をセットで確認することが重要です。
遊漁船として営業する場合は別の登録も必要
遊漁船業は漁船登録とは別制度
漁船を使って客を漁場まで案内し、釣りなどをさせる事業を行う場合には、「遊漁船業」に関する制度も関係します。
遊漁船業の登録は、漁船登録や船舶検査とは別の制度です。
そのため、漁船登録を受けているだけで、有料で客を乗せて釣りをさせる営業ができるわけではありません。
個人のレジャー釣りと遊漁船業は分けて考える
「遊漁」という言葉は、レジャーとしての釣りという意味で使われることがあります。
一方、「遊漁船業」は、客を乗せて釣りなどをさせる営業としての制度を指します。
記事や手続きを確認するときは、この2つを混同しないように注意しましょう。
漁船登録と船舶検査の関係をケース別に確認
漁船登録と船舶検査の関係をまとめると、次のようになります。
| 使用状況 | 漁船登録 | 船舶検査 |
|---|---|---|
| 漁業専用で12海里以遠へ行かない小型漁船 | 原則必要 | 条件を満たせば免除 |
| 漁業専用だが12海里以遠へ航行する | 原則必要 | 必要 |
| 漁業と個人的なレジャーの両方に使用 | 原則必要 | 原則として必要 |
| 漁業と遊漁・交通船などの用途に使用 | 原則必要 | 必要 |
| 漁船から一般船舶へ転用する | 漁船登録を抹消 | 一般船舶として確認 |
| 一般船舶から漁船へ転用する | 漁船登録を行う | 航行水域や用途によって判断 |
特に注意したいのは、12海里以内で航行するという条件だけで、必ず船舶検査が免除されるわけではないことです。
漁業以外の用途に使用しないことなど、ほかの条件も満たす必要があります。
漁船登録と船舶検査はそれぞれ別に確認することが重要
漁船登録と船舶検査は密接に関係していますが、同じ制度ではありません。
漁船登録は、船を漁船として登録・管理するための制度です。
一方、船舶検査は、船の安全性を確認するための制度です。
そのため、漁船登録を受けたからといって、船舶検査が自動的に免除されるわけではありません。
小型漁船の場合、原則として「本邦の海岸から12海里以遠へ行かないこと」と「漁業以外の用途に使用しないこと」という条件をともに満たす場合に、船舶検査が免除されることがあります。
レジャー釣りなど漁業以外にも使用する場合や、12海里以遠まで航行する場合には、漁船登録船であっても船舶検査が必要になります。
また、漁船からプレジャーボートへ転用する場合や、中古漁船を購入する場合には、漁船登録、小型船舶登録、船舶検査それぞれの手続きを確認することが大切です。
実際の検査要否は、船の大きさや構造、用途、航行区域などによって異なる場合があります。
判断に迷う場合は、漁船登録については管轄する都道府県、船舶検査についてはJCIや管轄機関へ事前に確認すると安心です。
以上、漁船登録と船舶検査の関係についてでした。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。








