海上自衛隊の潜水艦には、一定の基準に沿って名前が付けられています。
単に響きの良い名前や力強い名前を自由に選んでいるわけではありません。
海上自衛隊が使用する船舶の名称については命名基準が定められており、潜水艦の場合は主に「海象」「水中動物の名」「ずい祥動物の名」から選ばれます。
ここでいう海象とは、潮や海流など海に関係する自然現象のことです。
水中動物には鯨などが含まれ、ずい祥動物とは龍のように縁起が良いとされる伝説上の動物を指します。
そのため、海上自衛隊の潜水艦には「しお」「りゅう」「げい」などを含む名前が多く見られます。
海上自衛隊の潜水艦は何にちなんで命名されるのか
海象に由来する名前
海上自衛隊では、潮や海流などの海象に由来する名前が潜水艦に使われてきました。
代表的なのがおやしお型潜水艦です。
おやしお型には、歴代で「おやしお」「みちしお」「うずしお」「まきしお」「いそしお」「なるしお」「くろしお」「たかしお」「やえしお」「せとしお」「もちしお」といった名前があります。
いずれも海や潮を連想させる名称になっている点が特徴です。
ただし、これら11隻すべてが現在も同じ艦種・状態で運用されているわけではありません。
退役した艦や、潜水艦から練習潜水艦へ種別変更された艦もあります。
そのため、記事では「おやしお型として建造された歴代の艦名」として紹介すると正確です。
龍などのずい祥動物に由来する名前
そうりゅう型潜水艦では、龍に関係する名称が採用されています。
主な艦名は次のとおりです。
そうりゅう、うんりゅう、はくりゅう、けんりゅう、ずいりゅう、こくりゅう、じんりゅう、せきりゅう、せいりゅう、しょうりゅう、おうりゅう、とうりゅうです。
そうりゅう型では、「りゅう」という共通要素を持たせることで、同じ艦型として統一感のある命名が行われています。
龍は実在する水中動物ではありませんが、縁起が良いとされる伝説上の動物であるため、潜水艦の命名基準である「ずい祥動物」に該当します。
鯨に由来する名前
たいげい型潜水艦では、鯨に関連する名称が使われています。
2026年時点で確認できる艦名には、「たいげい」「はくげい」「じんげい」「らいげい」「ちょうげい」「そうげい」などがあります。
「たいげい」は漢字で表すと「大鯨」で、大きな鯨を意味します。
「じんげい」は「迅鯨」、「らいげい」は「雷鯨」、「そうげい」は「蒼鯨」と表され、それぞれ異なる意味やイメージを持っています。
たいげい型では「げい」という共通した語を使いながら、各艦に固有の名称を与えているのが特徴です。
潜水艦の名前は誰が決めるのか
海上自衛隊の部隊などから候補を募集する例がある
近年の海上自衛隊の潜水艦では、艦名を決める際に、海上自衛隊の部隊などから名称候補を募集する例があります。
ただし、候補として挙げられた名前がそのまま採用されるわけではありません。
命名基準に合っているか、過去の艦名との関係はどうか、潜水艦にふさわしい名称かといった点を踏まえて検討されます。
なお、すべての潜水艦について必ず同じ方法で候補募集が行われると断定するのは適切ではありません。
そのため、「近年の命名例では、部隊などから候補を募集している」と理解するとよいでしょう。
最終的な艦名は防衛大臣が決定する
候補の募集や検討を経たあと、最終的な艦名は防衛大臣によって決定されます。
「たいげい」や「じんげい」「とうりゅう」などについても、防衛大臣が艦名を決定したことが海上自衛隊から公表されています。
大まかな流れとしては、命名基準に沿って候補を選び、各種の検討を行ったうえで、防衛大臣が正式な名称を決定すると考えると分かりやすいでしょう。
潜水艦の「型名」はどのように決まるのか
1番艦の艦名が型名として使われる
潜水艦について調べていると、「おやしお型」「そうりゅう型」「たいげい型」といった呼び方を目にします。
この「○○型」は、基本的に同じ設計思想や構造を持つ艦艇のグループを示す呼称です。
海上自衛隊では、1番艦であるネームシップの艦名が、そのまま型名として使われています。
たとえば、1番艦が「そうりゅう」であるため「そうりゅう型」、1番艦が「たいげい」であるため「たいげい型」と呼ばれます。
艦名と型名は意味が異なる
「たいげい」は1隻の潜水艦につけられた艦名です。
一方、「たいげい型」は、たいげいを1番艦とする同系列の潜水艦全体を示す名称です。
同じように、「そうりゅう」と「そうりゅう型」、「おやしお」と「おやしお型」も意味が異なります。
潜水艦についての記事を書く際には、個別の船を示しているのか、艦型全体を示しているのかを区別すると分かりやすくなります。
同じ型の潜水艦は似た名前になるのか
艦型ごとに名前のテーマをそろえる傾向がある
海上自衛隊の潜水艦を見ると、同じ型の艦に似た名前が付けられていることが分かります。
おやしお型では「しお」、そうりゅう型では「りゅう」、たいげい型では「げい」が多く使われています。
そのため、名前だけを見ても、どの艦型に属する潜水艦なのか推測できる場合があります。
同じ語尾にすること自体が正式な命名規則ではない
ただし、「おやしお型なら必ず『しお』を付ける」「そうりゅう型なら必ず『りゅう』を付ける」という規則が、潜水艦全体の正式な命名基準として定められているわけではありません。
正式な基準となっているのは、あくまでも「海象」「水中動物」「ずい祥動物」です。
その範囲内で、同じ艦型の名称に統一感を持たせる運用が行われていると考えるのが適切です。
したがって、「同じ型では共通したテーマの名称が採用される傾向がある」と表現すると正確です。
潜水艦の名前がひらがななのはなぜか
海上自衛隊の正式な艦名はひらがなで表記される
海上自衛隊の潜水艦は、「たいげい」「そうりゅう」「じんげい」のように、公式にはひらがなで表記されます。
そのため、「大鯨」や「蒼龍」といった漢字がそのまま正式な艦名表記になるわけではありません。
艦艇名として記載する場合には、基本的に「たいげい」「そうりゅう」のようなひらがな表記を使用します。
漢字表記は名前の由来を説明する際に使われる
一方で、海上自衛隊が艦名の由来を説明するときには漢字が使用されることがあります。
たとえば、「たいげい」は「大鯨」、「じんげい」は「迅鯨」、「そうげい」は「蒼鯨」といった形です。
この場合の漢字は、名前が持つ意味や由来を分かりやすく示すための表記です。
そのため、「正式な艦名はひらがな、由来を示す際には漢字が使われることがある」と覚えておくとよいでしょう。
潜水艦の名前にはどのような意味が込められているのか
そうりゅう型はさまざまな龍を表現している
そうりゅう型はすべて「りゅう」を含む名前ですが、それぞれ同じ意味ではありません。
色や動き、方角、力強さなど、異なるイメージを持つ龍の名称が使われています。
たとえば「せきりゅう」や「しょうりゅう」「とうりゅう」など、それぞれに個別の由来があります。
単純に番号を付けるのではなく、一隻ごとに意味を持つ名称を与えている点が、日本の潜水艦の特徴の一つです。
たいげい型は鯨の力強さや雄大さを表現している
たいげい型では、鯨を意味する「げい」を中心とした名前が採用されています。
鯨は海中を泳ぐ大型動物であり、潜水艦を連想しやすい存在でもあります。
「大鯨」「迅鯨」「雷鯨」「蒼鯨」など、それぞれの名称には大きさ、速さ、力強さ、雄大さなどを感じさせる意味が込められています。
過去に使われた潜水艦の名前が再利用されることはあるのか
歴史のある艦名が後世に受け継がれることがある
海上自衛隊では、過去に使用された艦名を新しい艦艇に再び使用することがあります。
つまり、一度使用した艦名は二度と使えないという決まりではありません。
「おやしお」もその代表例で、海上自衛隊初の国産潜水艦に使われた歴史のある名称が、その後の潜水艦にも受け継がれています。
このような再命名は、過去の艦艇が持つ歴史や伝統を次の世代へ継承する意味も持っています。
潜水艦の艦名と艦番号の違い
潜水艦には名前とは別に艦番号がある
潜水艦には、「そうりゅう」「じんげい」といった艦名だけでなく、識別のための艦番号も付けられています。
海上自衛隊では、一般的な潜水艦に「SS」という艦種記号が使用されています。
たとえば「じんげい」はSS-515、「らいげい」はSS-516です。
そのため、
「じんげい」が艦名、「SS-515」が艦番号という関係になります。
艦種が変わると艦番号が変わる場合もある
潜水艦の艦種や用途が変更された場合には、艦番号も変更されることがあります。
代表的な例が「たいげい」です。
「たいげい」は就役時には潜水艦としてSS-513の艦番号が付けられていました。
しかし、その後、試験潜水艦へ種別変更され、現在はSSE-6201となっています。
したがって、潜水艦の記事で艦番号を掲載する場合には、建造時や就役時の番号なのか、現在の番号なのかを確認することが重要です。
海外の潜水艦にも命名規則はある
国によって潜水艦の名前の付け方は異なる
潜水艦の命名規則は海上自衛隊だけに存在するものではありません。
アメリカやイギリスなど、各国の海軍にも独自の命名方針や伝統があります。
ただし、「潜水艦には必ず海に関係する名前を付ける」といった世界共通のルールがあるわけではありません。
国によって、魚などの海洋生物、都市、州、歴史上の人物など、さまざまな名称が使用されています。
そのため、潜水艦の名前には各国の海軍文化や歴史が反映されているといえるでしょう。
海上自衛隊の潜水艦の命名規則まとめ
海上自衛隊の潜水艦には、正式な命名基準があります。
基本となるのは、「海象」「水中動物の名」「ずい祥動物の名」です。
実際の艦名を見ると、おやしお型では潮などの海象、そうりゅう型では龍、たいげい型では鯨をテーマとした名称が採用されています。
また、同じ型では共通したテーマを持つ名前が付けられる傾向がありますが、「必ず同じ語尾を使用する」ということ自体が正式な命名規則ではありません。
近年の例では、海上自衛隊の部隊などから艦名候補を募集し、各種の検討を経たうえで、防衛大臣が最終的な艦名を決定しています。
さらに、1番艦の艦名が「○○型」という艦型名として使われる点や、過去の歴史ある艦名が新しい潜水艦へ受け継がれる場合がある点も特徴です。
このように、日本の潜水艦の名前は単なる愛称ではなく、命名基準、海上自衛隊の伝統、同型艦としての統一感、言葉が持つ意味などを考慮して付けられています。
以上、潜水艦の命名規則や名前の付け方についてでした。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
















