船の陸送とは、文字通り「船を陸路で輸送すること」です。
通常、船は水上での移動を前提としていますが、製造されたばかりの新造船や中古船、また修理や展示、販売などの目的で「陸上を通って目的地まで運ばれる」ことがあります。
このプロセスは非常に専門的で、多くの工程と配慮が必要になります。
以下に詳しく解説します。
目次
船の陸送の概要
陸送が行われる主なケース
- 新造船の納品
→ 造船所で建造された後、海に接していない場所のユーザー(湖、内陸の川など)へ納品する場合。 - 中古船の売買
→ 遠方の購入者の元へ運ぶ際、航行が困難な距離や地域なら陸送が選ばれます。 - 展示・イベント用の輸送
→ ボートショーやイベントなど、海とは無関係な場所で展示される際に陸送されます。 - 修理や保管のための移動
→ 陸上でのメンテナンスや冬季保管を行う際に、専用施設に輸送するケースです。
陸送の種類と方法
船の大きさや重さ、目的地によって輸送方法が変わります。
トレーラー輸送(トラック輸送)
最も一般的な方法です。
専用の「ボートトレーラー」や「重機用低床トレーラー」に船を積み込んで移動させます。
- 小型船(プレジャーボート、ジェットスキー)
→ 自家用車が牽引できるボートトレーラーでの移動が可能です。 - 中型以上の船(10トン以上など)
→ 重機用低床トレーラー(通称:セミトレーラーやフラットベッドトレーラー)を使用。 - 超大型艇(クルーザーやヨットなど)
→ 輸送専用の特殊車両(例:ダブルアクスルトレーラー、油圧昇降付き)を使い、警察の許可や先導車を必要とすることもあります。
クレーンやフォークリフトでの積み下ろし
- 港や造船所、マリーナで船をトレーラーに載せる際には、クレーンや大型フォークリフトが用いられます。
- 船底を傷つけないよう、船体に合わせた吊り具(スリング)を使用します。
陸送に必要な手続きと準備
輸送業者の選定
- 船舶輸送に対応した業者を選ぶ必要があります。
- 業者によっては、積載から運搬、現地での下ろし作業まで一貫して行ってくれます。
事前見積もりと打ち合わせ
- 船のサイズ・重さ・積載場所・目的地などの情報を元に見積もりを取得。
- 特殊な車両や許可申請が必要な場合、その費用も考慮する必要があります。
道路使用許可や特殊車両通行許可の取得
- 船体が大型で、幅2.5m・高さ3.8m・長さ12mを超える場合、「特殊車両通行許可」が必要になります(国土交通省が管轄)。
- 場合によっては、警察への道路使用許可、先導車両の配置が必要になることもあります。
輸送保険の加入
- 万一の事故や損傷に備えて、船体や輸送中のトラブルをカバーする輸送保険に加入するのが一般的です。
陸送にかかる費用の目安
費用は船のサイズ、移動距離、使用車両、積み下ろしの機材などにより大きく異なります。
以下はあくまで目安です。
船の種類 | 陸送距離 | おおよその費用 |
---|---|---|
ジェットスキー | 50km | 約1〜3万円 |
プレジャーボート(6m未満) | 100km | 約5〜15万円 |
中型船(7〜10m) | 100km | 約20〜50万円 |
大型艇・クルーザー(10m以上) | 100km | 50万円〜200万円以上 |
ヨット(マスト取り外し含む) | 100km | 60万円〜300万円以上 |
※港から港への「海上輸送」より割高になる場合もあります。
陸送時の注意点
- 事前に船の寸法(長さ・幅・高さ・重さ)を正確に把握しておくこと。
- エンジンオイルや燃料、バッテリーは可能な限り抜いておくこと(安全対策)。
- 船体に突起物や外装品(航海灯、アンテナなど)があれば、取り外すか事前に固定。
- 受け入れ先(マリーナや保管所)が陸送受け入れに対応しているかの確認も重要。
陸送ではなく「回送(海上輸送)」との違い
- 陸送は「道路を使ったトラックでの運搬」
- 回送は「海を通って船自身が移動すること(船長による自走またはタグボート牽引)」
海上回送の方が費用を抑えられる場合もありますが、航行距離が長い・安全性に課題がある場合は陸送が選ばれます。
まとめ
船の陸送は、「高度な専門知識と設備を必要とする陸上物流サービス」の一つであり、小型ボートから大型クルーザーまでさまざまなケースに対応できます。
準備と確認事項をしっかり整えれば、安全かつスムーズに船を目的地へ運ぶことが可能です。
特に以下の3点が成功のカギです。
- 信頼できる陸送業者の選定
- 正確な船体情報と輸送経路の共有
- 法的手続き(通行許可や保険)の確実な対応
以上、船の陸送についてでした。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。