ゴムボートを使った海釣りは、岸からでは届かないポイントを狙えることから人気があります。
一方で、船外機を搭載する場合には小型船舶操縦免許や船舶検査が必要になることがあり、釣りについても漁業権や都道府県ごとの漁業調整規則などを守らなければなりません。
「2馬力のゴムボートなら何の許可もいらない」と考えるのは正確ではなく、船の長さや推進機関の出力、釣り方、出艇場所などを個別に確認する必要があります。
ここでは、ゴムボートで海釣りをする際に確認しておきたい許可・免許・ルールについて詳しく解説します。
ゴムボートで海釣りをするだけなら全国共通の釣り免許は原則不要
日本の海で一般的な遊漁として魚を釣る場合、全国共通の「海釣り免許」のようなものを取得する必要は基本的にありません。
たとえば、ゴムボートから竿とリールを使い、アジやサバ、マダイ、キス、根魚、青物などを狙う一般的な釣りであれば、釣りをすること自体について全国一律の免許を取得する制度にはなっていません。
ただし、「海釣りに免許がいらない」ことと「好きな方法で何でも採ってよい」ことはまったく別です。
水産庁によると、水産動植物の採捕については法律や都道府県の漁業調整規則などによって、使用できる漁具・漁法、禁止区域、禁止期間、大きさの制限などが定められています。
そのため、ゴムボートで海釣りをするときには「ボートを操縦するための条件」と「魚介類を採捕するための条件」の両方を確認することが重要です。
ゴムボートで小型船舶操縦免許が不要になる条件
ゴムボートに船外機を取り付ける場合、まず確認したいのが小型船舶操縦免許の必要性です。
一般に「2馬力なら免許不要」と説明されることがありますが、法律上は単純に「2馬力」という名称だけで判断するわけではありません。
船の長さが3m未満であること
国土交通省によると、小型船舶操縦免許が不要となる条件の一つは、船の長さが3m未満であることです。
ここでいう3mは、単純な製品カタログ上の全長ではなく「登録長」を基準として判断します。
登録長は通常、おおむね
船の全長×0.9
で算出されます。
ただし、船型によって登録長の定義が異なることがあるため、判断が難しい場合にはメーカーや地方運輸局などへ確認するのが確実です。
たとえば全長3.2mのボートであれば、
3.2m×0.9=2.88m
となるため、通常の計算では登録長が3m未満となる可能性があります。
ただし、「全長×0.9なら必ず免許不要になる」と自己判断するのではなく、ボートメーカーが示す仕様や適合情報を確認した方が安全です。
推進機関の出力が1.5kW未満であること
もう一つの重要な条件が船外機などの出力です。
免許不要となる基準は、
推進機関の出力が1.5kW未満
であることです。
1.5kWは約2.039馬力に相当するため、一般に販売されている「2馬力船外機」の多くはこの基準内に収まります。
ただし、法律上重要なのは商品名の「2馬力」ではなく、実際の定格出力が1.5kW未満かどうかです。
そのため、
「2馬力以下なら大丈夫」
と覚えるより、
「1.5kW未満が基準」
と覚えておいた方が正確です。
なお、1.5kW「以下」ではなく、1.5kW未満である点にも注意しましょう。
プロペラを直ちに停止できるなどの安全機構が必要
船の長さとエンジン出力だけ満たしていれば、必ず小型船舶操縦免許が不要になるわけではありません。
国土交通省は、免許不要となる条件として、プロペラによる人体への傷害を防ぐための機構を備えることも定めています。
具体的には、
- 非常停止スイッチ
- キルスイッチ
- 遠心クラッチ
- 中立ギア
- プロペラガード
などが例として示されています。
したがって、
船の長さ3m未満+推進機関1.5kW未満
という2条件だけで判断するのではなく、安全機構についても確認する必要があります。
いわゆる「免許不要艇」の条件
ゴムボートでよく使われる「免許不要艇」「ミニボート」という言葉は、一般的には次のような条件を満たすボートを指します。
基本的な条件
主な条件は、
- 船の長さが3m未満
- 推進機関の出力が1.5kW未満
- プロペラを直ちに停止できるなど所定の安全機構を備えている
ことです。
国土交通省も、船の長さ3m未満かつ機関出力1.5kW未満のミニボートについて、船舶検査および小型船舶操縦免許が不要になると案内しています。
ただし、免許の要否については安全機構の条件も関係するため、購入前にメーカーの商品説明や仕様書を確認しましょう。
2馬力船外機にエレキを追加するときは合計出力に注意する
ゴムボート釣りでは、2馬力クラスの船外機に加えて、ポイント移動や船位保持のためにエレキモーターを搭載するケースがあります。
この場合には特に注意が必要です。
推進機関の出力は合計で判断される
日本小型船舶検査機構(JCI)は、2馬力の船外機に船位保持用の電動船外機を併設し、合計出力が1.5kW以上となる場合には船舶検査が必要になると案内しています。
つまり、
「メインエンジンが2馬力だから免許・検査不要」
とは限りません。
船外機と補助推進用エレキなどを組み合わせる場合には、
搭載する推進機関の合計出力
を確認することが重要です。
ゴムボートを艤装するときに見落としやすいポイントなので注意しましょう。
免許不要のミニボートなら船舶検査も不要
一定の条件を満たすミニボートについては、小型船舶操縦免許だけでなく船舶検査も不要です。
JCIによると、
船の長さ3m未満かつ推進機関の出力1.5kW未満
のミニボートは船舶検査が不要とされています。
そのため、典型的な免許不要仕様のゴムボートであれば、
- 小型船舶操縦免許不要
- 船舶検査不要
となる場合があります。
ミニボートの条件を外れる場合はJCIに確認する
一方、
- 船の長さが3m以上になる
- 推進機関の合計出力が1.5kW以上になる
など、ミニボートの条件から外れる場合には、船舶検査の対象となる可能性があります。
ただし、船舶検査には航行水域などによる別の免除条件も存在します。
したがって、
「1.5kW以上なら例外なく検査が必要」
と単純に判断するのではなく、船体・船外機・航行水域などをもとにJCIへ確認するのが確実です。
免許不要でも海上交通ルールは守る必要がある
小型船舶操縦免許が不要なゴムボートだからといって、海上で自由に航行できるわけではありません。
免許・検査が不要なミニボートであっても、海上では船舶として交通ルールを守る必要があります。
特に、
- 港の出入口
- 航路
- フェリー航路
- 大型船の通航区域
- 漁船が頻繁に出入りする場所
では十分な注意が必要です。
ミニボートは大型船から発見されにくいため、
「こちらが避けてもらえるだろう」
と考えないことが重要です。
都道府県の漁業調整規則を確認する
ゴムボートで海釣りをする際には、出艇する都道府県の漁業調整規則を確認しましょう。
水産庁によると、遊漁者が海面で使用できる漁具・漁法は都道府県ごとに定められています。
竿釣り以外の漁法には特に注意する
ゴムボートから通常の竿釣りをするケースで問題になることは比較的少ないものの、釣り方によっては地域ごとの規制に該当します。
たとえば、
- ひき縄釣り
- 投網
- たも網
- やす
- 徒手採捕
- 集魚灯
- まき餌
などについては、都道府県ごとに使用条件が異なる場合があります。
トローリングは地域によって禁止されている
特にゴムボートフィッシングで注意したいのが、ひき縄釣り、いわゆるトローリングです。
船を走らせながらルアーや仕掛けを曳く方法は、都道府県によって遊漁者による使用が禁止されている場合があります。
したがって、
「普通のルアー釣りができるからトローリングもできる」
とは限りません。
釣行予定地の都道府県が公開している遊漁ルールを事前に確認しましょう。
漁業権の対象になっている魚介類を勝手に採らない
海釣りで非常に重要なのが漁業権です。
沿岸部では共同漁業権や区画漁業権などが設定されている場所があります。
漁業権が設定されている海域だからといって、そこで魚釣りをすること自体が直ちに禁止されるわけではありません。
水産庁も、漁業権が設定されている水面であっても、遊漁が直ちにできなくなるわけではないと説明しています。
漁業権対象種には注意する
一方で、その海域の漁業権の対象となっている水産動植物を勝手に採捕すると、漁業権侵害となる可能性があります。
特に注意したいのが、
- アワビ
- サザエ
- ウニ
- 海藻類
- エビ類
- タコ類
などです。
水産庁も、採貝・採藻漁業などが行われている漁場では、アワビ・サザエ等の貝類やワカメ・コンブ等の海藻類、エビやタコ等の定着性水産動物を組合員以外の人が採ると、漁業権侵害となるおそれがあると案内しています。
ただし、対象種は漁業権ごとに異なります。
「この魚介類は全国どこでも採ってはいけない」と一括りにするのではなく、釣りをする海域の漁業権を確認する必要があります。
アワビやナマコなどはさらに厳しい規制がある
漁業権とは別に、漁業法によって採捕そのものが原則禁止されている水産動植物にも注意が必要です。
特定水産動植物については、許可や漁業権などに基づかない採捕が禁止されています。
特にアワビやナマコなどについては、一般の釣り人が「少しだけなら」と持ち帰るような行為は避けなければなりません。
そのため、魚以外の貝類・海藻類・甲殻類などを採取したい場合には、通常の魚釣り以上に慎重な確認が必要です。
禁漁期間やサイズ制限も確認する
釣り竿で釣った魚だからといって、すべて自由に持ち帰れるとは限りません。
水産庁によると、水産動植物については、
- 採捕禁止期間
- 禁止区域
- 魚種ごとの大きさ
- 漁具・漁法
などの規制が設けられています。
地域によって規制内容が異なるため、釣行前には都道府県の水産担当部署が公開している最新情報を確認しましょう。
漁港から出艇するときは利用ルールを確認する
ゴムボート釣りでは、
「海で釣りができるか」
だけでなく、
「どこからボートを出せるか」
も重要です。
漁港のスロープを自由に使えるとは限らない
漁港にあるスロープは、もともと漁業者などが船を揚げ降ろしするための施設です。
そのため、
- 関係者以外利用禁止
- プレジャーボート利用禁止
- 利用申請が必要
- 事前予約が必要
- 使用料が必要
- 車両進入禁止
などのルールが設けられていることがあります。
一方で、一般のプレジャーボートが利用できる施設もあります。
つまり、
「漁港なら必ず出艇できる」わけでも、「すべての漁港で禁止されている」わけでもありません。
漁港管理者、自治体、施設管理者などへ事前に確認しましょう。
砂浜や海岸から出艇する場合も確認が必要
砂浜からゴムボートを出す場合も、必ず自由に利用できるとは限りません。
特に注意したいのが、
- 海水浴場
- 遊泳区域
- 港湾区域
- 自然保護区域
- 工事区域
- 立入禁止区域
などです。
海水浴シーズンには遊泳者との事故を防ぐため、船舶の進入や出艇が制限されることもあります。
したがって、
「釣りができる場所」と「ゴムボートを出してよい場所」は別々に確認する
ことが重要です。
定置網や養殖施設には近づかない
ゴムボートで沖へ出ると、定置網や養殖施設などに遭遇することがあります。
こうした漁業施設の周辺では、漁業者の作業を妨害しないよう十分な距離を取る必要があります。
アンカーを投入するときも注意する
アンカーを使用する場合にも、
- 定置網
- 養殖施設
- 漁具
- ロープ
- ブイ
- 海底ケーブル
などがないことを確認しましょう。
アンカーが漁具などに絡むと、自分のボートが動けなくなるだけでなく、漁業者の設備を破損させる可能性があります。
特に定置網周辺へ不用意に接近するのは避けましょう。
ライフジャケットは免許不要艇でも着用する
海釣りではライフジャケットの着用が非常に重要です。
免許が必要な通常の小型船舶については、船室外の乗船者に一定のライフジャケットを着用させる義務があります。
一方、小型船舶操縦免許が不要なミニボートについては、通常の小型船舶と同じ着用義務の適用を受けない場合があります。
しかし、
法的な義務がないことと、安全上必要ないことは別です。
ゴムボートは船体が小さく、
- 波をかぶりやすい
- 風に流されやすい
- 急な体重移動でバランスを崩しやすい
- 落水すると再乗艇が難しい
といった特徴があります。
そのため、法律上の最低基準にかかわらず、乗船者全員がライフジャケットを常時着用することを強くおすすめします。
免許不要だからといって沖まで自由に出られるわけではない
「免許不要艇だから沖へどこまで行ってもよい」と考えるのは危険です。
ミニボートは、
- 船体が小さい
- 波に弱い
- 風の影響を受けやすい
- 潮流に流されやすい
- 大型船から見えにくい
- エンジントラブル時の自力帰港能力が低い
という特徴があります。
国土交通省も、ミニボートについて転覆や機関故障などの海難事故への注意を呼びかけています。
したがって、
「法律上免許が不要な範囲」と「安全に釣りができる範囲」は別
と考えましょう。
沖へ出る距離は、船外機が停止した場合でも安全に帰港できる範囲を意識することが重要です。
ゴムボートで海釣りをする前に確認したい項目
実際にゴムボートを出す前には、次の項目を確認しておくと安心です。
ボートと船外機について
確認しておきたいのは、
- 船の登録長
- 船外機の定格出力
- エレキを含めた推進機関の合計出力
- 非常停止スイッチやキルスイッチの有無
- 小型船舶操縦免許の要否
- 船舶検査の要否
- 最大搭載人数
- 最大搭載馬力
などです。
特に「2馬力」という呼び方だけで判断せず、1.5kW未満かどうかを仕様表で確認することが大切です。
釣り場について
釣り場では、
- 都道府県漁業調整規則
- 使用可能な漁具・漁法
- 漁業権対象種
- 禁漁期間
- サイズ制限
- 禁止区域
- 定置網
- 養殖施設
- 航路
などを確認します。
出艇場所について
出艇場所では、
- ボートの出艇が認められているか
- 漁港スロープを利用できるか
- 事前申請が必要か
- 利用料金が必要か
- 駐車できるか
- 海水浴場の規制がないか
などを確認しましょう。
ゴムボート海釣りの許可・免許を一覧で確認
ゴムボートで海釣りをする際に確認したい主な項目を整理すると、次のようになります。
| 項目 | 基本的な考え方 |
|---|---|
| 海釣りの全国共通免許 | 一般的な竿釣りでは原則不要 |
| 小型船舶操縦免許 | 所定のミニボート条件を満たせば不要 |
| 船の長さ | 登録長3m未満か確認 |
| 推進機関 | 合計出力1.5kW未満か確認 |
| 安全機構 | キルスイッチなど所定の機構を確認 |
| 船舶検査 | ミニボート条件を満たせば原則不要 |
| 漁業調整規則 | 都道府県ごとに確認が必要 |
| 漁業権 | 海域・対象種を確認 |
| 禁漁期間・サイズ制限 | 魚種・地域ごとに確認 |
| 漁港・スロープ | 管理者のルールを確認 |
| 海岸からの出艇 | 海水浴場等の利用規制を確認 |
| ライフジャケット | 法的義務の有無にかかわらず着用を強く推奨 |
ゴムボートで海釣りをする際は「2馬力だから許可不要」と判断しない
ゴムボートで一般的な海釣りをするだけであれば、全国共通の釣り免許が必要になるわけではありません。
また、
船の長さが3m未満、推進機関の出力が1.5kW未満で、所定の安全機構を備える
などの条件を満たすミニボートであれば、小型船舶操縦免許が不要となります。
船舶検査についても、長さ3m未満かつ推進機関の出力1.5kW未満のミニボートは原則として不要です。
ただし、船外機にエレキモーターなどを追加する場合には合計出力を確認する必要があります。
さらに、免許・検査不要のゴムボートであっても、
- 都道府県漁業調整規則
- 漁業権
- 禁漁期間
- サイズ制限
- 漁港やスロープの利用ルール
- 航行ルール
などは別途守らなければなりません。
したがって、ゴムボートで海釣りをする際には、
「小型船舶操縦免許・船舶検査」→「都道府県の遊漁ルール」→「漁業権」→「出艇場所」→「航行上の安全」
という順番で確認すると、必要な許可やルールを見落としにくくなります。
特に初めて訪れる海域では、出艇前に都道府県の水産担当部署、漁港・施設の管理者、JCIなどの公的情報を確認してから釣行することが大切です。
以上、ゴムボートで海釣りをする際に必要な許可についてでした。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
















