ゴムボートで釣りやレジャーを長時間楽しむ場合、純正の腰掛板だけでは「お尻や腰が痛くなる」「背もたれが欲しい」「もう少し快適に座りたい」と感じることがあります。
そのようなときは、ゴムボート用の椅子を自作することで、快適性を高めることが可能です。
ただし、ゴムボートはFRPボートやアルミボートと違い、空気で膨らませた柔軟な船体構造になっています。
そのため、椅子を取り付ける際は、単純に強度だけを考えるのではなく、船体への荷重、重心の高さ、固定方法、重量バランスなどを総合的に考えることが重要です。
特に、座面を高くしすぎたり、エアチューブやエアフロアに局所的な荷重をかけたりすると、安定性や船体の耐久性に悪影響を及ぼす可能性があります。
ここでは、ゴムボート用の椅子を自作する基本的な方法と、安全に使用するためのポイントを詳しく解説します。
ゴムボート用の椅子を自作する主な方法
ゴムボート用の椅子には、いくつかの作り方があります。
初めて自作する場合は、ボートメーカーが用意している腰掛板の取付構造を利用する方法が比較的取り入れやすいでしょう。
腰掛板を自作する方法
もっともシンプルなのは、左右のチューブ間に設置する腰掛板そのものを自作する方法です。
基本的な構造は、
- 耐水性のある合板
- 防水塗装
- 滑り止め材
- 必要に応じたクッション
といったシンプルなものです。
構造が単純なので重量を抑えやすく、座面も極端に高くならないため、ゴムボートとの相性がよい方法です。
ただし、腰掛板の寸法や取付構造はボートごとに異なります。
純正の腰掛板がある場合は、その寸法や形状を参考にするのが基本です。
腰掛板に背もたれ付きシートを取り付ける方法
釣り用途で人気なのが、純正または自作した腰掛板の上に、背もたれ付きのマリンシートを取り付ける方法です。
背もたれがあることで、長時間の釣りでも疲れにくくなります。
一方で、背もたれに体重を預けると、腰掛板には単純な下向きの荷重だけでなく、後方へ倒そうとする力も加わります。
そのため、板の厚さだけではなく、
- 合板全体の曲げ強度
- ボルト取付部
- 裏側の補強
- シート受け部分の強度
なども考慮する必要があります。
アルミフレームを使って自作する方法
アルミパイプやアルミフレーム材を使用して、シートベースを自作する方法もあります。
アルミは比較的軽量で耐食性にも優れているため、ロッドホルダーや魚探などをまとめて取り付ける艤装にも向いています。
ただし、構造が複雑になるほど、
- 接合部の強度
- フレームのねじれ
- チューブへの接触
- 重量増加
など考えるべきポイントが増えます。
初めて自作するのであれば、まずは腰掛板を利用したシンプルな構造から始めるほうが扱いやすいでしょう。
初心者には腰掛板を利用した構造がおすすめ
自作のしやすさと安全性のバランスを考えると、ゴムボート純正の腰掛板取付部を利用する方法が基本です。
ゴムボートによって、
- シート受け
- シートスライダー
- ベルト式
- 固定式
- 専用アタッチメント
など取付構造が異なります。
そのため、「シートレール」という名称に限定せず、使用しているボートの純正腰掛板取付部を利用すると考えるとよいでしょう。
メーカーが設計した取付部を利用すれば、人の体重を左右のチューブへ比較的広く分散できます。
逆に、メーカーが想定していない場所へ椅子を設置すると、チューブや床へ局所的な荷重が集中する可能性があります。
ゴムボート用の椅子を自作するために必要な材料
腰掛板をベースにした椅子なら、ホームセンターなどで入手できる材料を使って製作できます。
耐水性のある合板
座面には、
- 耐水合板
- 構造用合板
- マリン合板
などが候補になります。
ただし、使用する板の厚さは一律には決められません。
必要な強度は、
- 腰掛板の長さ
- 左右の支点間距離
- 合板の種類
- 使用者の体重
- 背もたれの有無
- 回転台の有無
- 補強方法
によって変化します。
DIYでは15~18mm程度の合板が使われることもありますが、この厚さなら必ず安全という意味ではありません。
純正腰掛板がある場合は、その板厚や構造をひとつの参考にしながら、必要に応じて裏側へ補強材を追加します。
背もたれ付きマリンシート
快適性を高めたい場合は、市販の折りたたみ式マリンシートを利用する方法があります。
家庭用の椅子よりも、
- 水濡れ
- 紫外線
- 潮風
などを想定した素材で作られている製品が多いため、船上で使用しやすいのが特徴です。
ただし、シート本体が重すぎるとゴムボートの重量バランスにも影響します。
できるだけ軽量なものを選ぶとよいでしょう。
耐食性のあるボルトやナット
シートの固定には、
- ステンレスボルト
- ステンレスナット
- 大径ワッシャー
- 緩み止めナット
などが使用できます。
特に海で使用する場合、一般的な鉄製金具は錆びやすいため、海水環境に適した耐食性のある金具を使用したほうが安心です。
ただし、ステンレスも絶対に錆びないわけではありません。
アルミ部材などと組み合わせる場合は異種金属接触腐食にも注意し、使用後は真水で洗浄して十分に乾燥させます。
大径ワッシャーや補強板
背もたれ付きシートを合板へ取り付ける場合は、ボルト周辺に荷重が集中します。
そのため、
シート
↓
合板
↓
補強板または大径ワッシャー
↓
ナット
という形で荷重を分散させる方法が有効です。
ただし、大径ワッシャーを使用すれば必ず安全になるわけではありません。
腰掛板そのものが大きくしなる場合は、板全体の補強も必要です。
クッション材
腰掛板だけで使用する場合は、EVAフォームなどを貼ることで座り心地を改善できます。
EVAフォームは、
- 水を吸いにくい
- 軽量
- クッション性がある
- 滑り止め効果を得やすい
といった特徴があります。
厚さは座り心地だけでなく、身体の安定性も考慮して決めましょう。
厚く柔らかすぎるクッションは身体が左右へ動きやすくなるため、必要以上に厚くする必要はありません。
ゴムボート用椅子の寸法を決める
自作では、正確な採寸が重要です。
使用状態に近い空気圧で寸法を確認する
ゴムボートは空気圧によって船体形状が変化します。
そのため、折り畳んだ状態や空気が不足した状態で採寸すると、完成後に寸法が合わなくなる可能性があります。
寸法確認をするときは、メーカーが指定している使用時の空気圧まで膨らませた状態で、
- 左右の腰掛板取付部の距離
- チューブ間の内幅
- 純正腰掛板の長さ
- シート位置
- オールとの距離
- 船外機操作位置
などを測定します。
ただし、腰掛板を実際に装着するタイミングはボートによって異なります。
一部のゴムボートでは、船体を完全に膨らませる前に腰掛板を装着し、その後規定空気圧まで充気する構造になっています。
そのため、寸法確認は使用状態で行い、腰掛板の取付手順についてはボートメーカーの取扱説明書に従うのが適切です。
純正腰掛板がある場合は形状を参考にする
純正腰掛板が付属している場合は、最も重要な参考資料になります。
特に、
- 全長
- 幅
- 板厚
- 端部の形状
- 取付位置
- シート受けへのかかり方
を確認しましょう。
純正品より大幅に長くしたり、座面を高くしたりすると、メーカーが想定していない力が取付部へ加わる可能性があります。
腰掛板を加工する方法
寸法が決まったら合板を加工します。
合板を必要なサイズに切断する
合板は、
- 丸ノコ
- ジグソー
- 手ノコ
などを使用して切断できます。
特に重要なのが、板の角や切断面を滑らかに仕上げることです。
ゴムボートのチューブはPVCやCSMなどの柔軟な生地で作られているため、尖った木材やバリが接触すると傷の原因になります。
板の角を丸くする
腰掛板の四隅は、できるだけ丸く加工します。
紙やすりやサンダーを使用して、
- 尖った角
- バリ
- ささくれ
- 切断面
を滑らかにします。
手で触ったときに引っ掛かりがない状態を目安にするとよいでしょう。
合板に防水処理をする
木製の腰掛板では、防水処理が非常に重要です。
木口や穴を重点的に処理する
合板は、表面よりも切断した木口や穴から水分が浸入しやすくなります。
そのため、
- 全体を研磨する
- 木口を滑らかにする
- 防水塗装を行う
- 十分に乾燥させる
- 必要に応じて重ね塗りする
という手順で仕上げます。
ボルト穴を開ける場合は、穴の内部も防水処理しておくと耐久性を高めやすくなります。
防水処理には、
- マリン用塗料
- 屋外用ウレタン塗料
- エポキシ樹脂
などが使用できます。
耐水合板やマリン合板を使用する場合でも、切断面を無処理のまま長期間使用するのは避けたほうがよいでしょう。
背もたれ付きシートを取り付ける方法
腰掛板が完成したら、必要に応じて背もたれ付きシートを取り付けます。
シートの位置を決める
まず腰掛板をボートへ取り付け、実際に座る位置を確認します。
船外機付きの場合は、
- ティラーハンドルへ無理なく手が届くか
- オール操作を邪魔しないか
- 船外機のチルト操作を邪魔しないか
- 魚探やロッドホルダーと干渉しないか
- 立ち上がるスペースがあるか
などを確認します。
ボルト穴を開ける
位置が決まったらシートベースの穴位置をマーキングし、ドリルで穴を開けます。
一度にすべての穴を開けるのではなく、シートベースを仮置きしながら位置ずれがないことを確認して作業すると失敗しにくくなります。
裏側を補強する
背もたれ付きシートでは、人が後方へもたれた際に大きな力がかかります。
そのため、ボルト部分だけでなく腰掛板全体の強度を考える必要があります。
必要に応じて、
- 大径ワッシャー
- 金属製補強板
- 木製補強材
などを追加し、荷重をできるだけ広い範囲へ分散させます。
回転式シートを取り付ける場合の注意点
釣りでは、360度回転できるシートが便利です。
ただし、ゴムボートへ取り付ける場合は慎重に検討する必要があります。
回転台によるねじり荷重を考える
回転式シートでは、人が身体の向きを変えるたびに腰掛板へねじる力が加わります。
そのため、薄い板へ回転台を直接取り付けるのは避け、
腰掛板
↓
補強材
↓
回転台
↓
シート
という構造で強度を確保します。
メーカー純正品がある場合は優先する
ゴムボートメーカーによっては、回転式シートや専用取付金具を用意している場合があります。
純正品が用意されている場合は、可能な限りメーカー指定の方法を優先したほうが安心です。
座面を高くしすぎない
ゴムボート用の椅子を自作する際に特に注意したいのが、座面の高さです。
座面が高くなるほど重心も高くなる
座面を高くすると視界が良くなり、立ち座りもしやすくなります。
しかし、人間の重心位置も高くなるため、ボートの安定性には不利になります。
特に、
- 横方向へ身体を傾ける
- 魚を取り込む
- アンカーを持ち上げる
- 船外機を操作する
- ロッドを大きく振る
といった動作では、重心の高さが安定性に影響します。
何cmまでなら安全という一律の基準はありません。
船幅や船体形状、チューブ径、乗員重量などによって安定性は変わるため、純正座面から大幅に高さを上げないことが基本です。
チューブやエアフロアへネジを打たない
ゴムボートの船体には、椅子を取り付けるためにネジやビスを直接打ち込んではいけません。
エアチューブへ穴を開けない
PVCやCSMなどで作られたチューブは空気室になっています。
ここへ穴を開ければ気密性が失われます。
そのため、
- エアチューブ
- エアフロア
- インフレータブルキール
などへDIYでネジやビスを打ち込むことは避けます。
金具を安易に接着しない
ゴムボートではDリングやシート受けなどが船体へ接着されている場合があります。
しかし、これらはメーカーが素材、接着剤、接着面積、想定荷重などを考慮して設計したものです。
自作で適当な金具を接着し、人の体重を支える用途に使用するのは危険です。
追加のシート受けなどを取り付けたい場合は、メーカーが指定した艤装方法があるか確認しましょう。
細い脚の椅子を直接床へ置かない
家庭用の折りたたみ椅子などを、そのままゴムボートへ置く方法も避けたほうがよいでしょう。
局所的な荷重がかかる
細い椅子脚の場合、人の体重が小さな面積へ集中します。
特にエアフロアでは、硬い脚や尖った部品が接触すると、
- 表面の摩耗
- 傷
- 局所的な変形
などにつながる可能性があります。
床置き式シートを使用する場合は、メーカーが対応を認めている製品を選ぶか、広い面積で荷重を分散できる構造にすることが重要です。
船内の重量バランスにも注意する
椅子の位置は、乗り心地だけでなくボート全体の姿勢にも影響します。
船尾へ重量を集中させない
船外機付きゴムボートでは、船尾に、
- 船外機
- 燃料タンク
- バッテリー
- 操船者
などの重量が集中しやすくなります。
さらに重いシートを船尾へ設置すると、船尾側がより沈み込みやすくなります。
その結果、
- 船首が上がりやすくなる
- 加速時の姿勢が変化する
- 滑走性能に影響する
- 操縦性が変化する
といった可能性があります。
荷物や燃料タンクの位置を調整し、できるだけ前後左右のバランスを取ることが重要です。
最大搭載重量を超えないようにする
自作椅子もボートへ搭載する重量の一部です。
艤装品の重量も含めて考える
ゴムボートでは、
- 乗員
- 船外機
- 燃料
- バッテリー
- アンカー
- クーラーボックス
- 魚探
- 釣具
- 自作椅子
- その他の艤装品
などをすべて含めた総重量を考える必要があります。
椅子を丈夫にしようとして厚い合板や重い金属フレームを使いすぎると、それだけ搭載可能な荷物や人員の余裕が減ります。
軽量化と強度のバランスを考えることが重要です。
完成後は必ずテストする
自作椅子が完成しても、いきなり沖へ出るのは避けましょう。
まず陸上で確認する
ボートをメーカー指定の状態まで膨らませ、椅子を取り付けます。
そのうえで、
- 座面がぐらつかないか
- 腰掛板が大きくしならないか
- 背もたれへ軽く体重をかけても問題ないか
- ボルトやナットが緩んでいないか
- 尖った部品が船体へ接触していないか
- 腰掛板が取付部から外れそうにならないか
などを確認します。
次に穏やかな水面で確認する
陸上で問題がなければ、風や波の少ない安全な場所で実際に使用します。
最初から大きく身体を動かすのではなく、
- 普通に座る
- 左右へ軽く体重を移動する
- オールや船外機を操作する
- 低速で航行する
- シートや腰掛板の状態を再確認する
という順番で確認するとよいでしょう。
ゴムボート用の椅子を自作するときに避けたい構造
自作では、丈夫さだけでなく船体への影響を考える必要があります。
避けたほうがよい例
次のような構造はおすすめできません。
- エアチューブへネジやビスを打つ
- エアフロアへ細い椅子脚を直接置く
- メーカー非指定の金具を安易にチューブへ接着する
- 補強なしの薄い板へ大型シートを取り付ける
- 座面を極端に高くする
- 重い鉄製フレームを大量に使用する
- ボルト先端を船体側へ露出させる
- 椅子を固定せず船内へ置くだけにする
- 純正腰掛板取付部へ過大な荷重をかける
ゴムボートでは、椅子そのものを頑丈にするだけでは不十分です。
椅子、腰掛板、取付部、船体全体をひとつの構造として考えることが大切です。
初心者が作るならシンプルな構造がおすすめ
初めてゴムボート用の椅子を自作するなら、複雑なフレーム構造よりもシンプルな腰掛板式がおすすめです。
作りやすい基本構造
一例として、
純正腰掛板取付部
↓
耐水性のある合板
↓
EVAクッション
という構造なら比較的シンプルです。
背もたれが必要なら、
純正腰掛板取付部
↓
十分な強度を持つ合板
↓
補強材
↓
低めの折りたたみ式マリンシート
という構造にします。
回転式シートを使用する場合は、さらに回転台周辺の補強と座面高さに注意します。
ゴムボート用の椅子を自作するときは安全性を最優先する
ゴムボート用の椅子は、合板や市販のマリンシートを使えば比較的簡単に自作できます。
特に取り入れやすいのは、メーカー純正の腰掛板取付部を利用し、その上に自作腰掛板やクッション、背もたれ付きシートを取り付ける方法です。
ただし、ゴムボートは柔軟な船体構造であるため、一般的な椅子と同じ感覚で製作することはできません。
重要なのは、
- メーカー指定の取付構造を利用する
- チューブやエアフロアへ穴を開けない
- 板全体の強度を確保する
- ボルト部分の荷重を分散する
- 座面を高くしすぎない
- 船内の重量バランスを整える
- 最大搭載重量を超えない
- 完成後に陸上と穏やかな水面で確認する
というポイントです。
また、純正シートや専用オプションが用意されている場合は、自作品よりメーカー指定品を優先したほうが安全性を確保しやすくなります。
自作する場合も、快適性だけを追求するのではなく、「低重心・軽量・荷重分散・確実な固定」を基本に設計すると、ゴムボートで使いやすい椅子に仕上げやすくなります。
以上、ゴムボート用の椅子を自作する方法についてでした。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。















