船長になるには何が必要?
船長になるには、目指す船の種類や大きさ、航行区域に応じた資格を取得し、実際の船で乗船経験を積む必要があります。
特に、貨物船やタンカー、フェリーなどの大型船の船長を目指す場合は、海技士(航海)の資格を取得し、航海士として経験を積みながら船長を目指すのが一般的です。
一方、プレジャーボートやヨットなどの小型船舶では、小型船舶操縦士免許が必要になります。
そのため、船長になるには、まず自分がどのような船の船長を目指すのかを明確にすることが大切です。
大型船と小型船では必要な資格が異なる
日本では、原則として総トン数20トン以上の船舶で、船長や航海士などの船舶職員として乗り組む場合、海技士の海技免状が必要です。
一方、原則として総トン数20トン未満の小型船舶を操縦する場合には、小型船舶操縦士免許が必要になります。
ただし、一定の条件を満たす20トン以上のプレジャーボートが小型船舶として扱われる場合もあります。
そのため、「船長になりたい」と考えている場合は、大型商船なのか、小型のボートやヨットなのかによって進むべきルートが大きく変わります。
大型船の船長になるまでの一般的な流れ
大型の貨物船やタンカー、フェリーなどの船長を目指す場合、一般的には海技士(航海)の資格を取得し、船会社で航海士として経験を積みます。
代表的な流れは次のとおりです。
海事系の学校などで専門知識を学ぶ
→ 海技士(航海)の資格取得を目指す
→ 船会社へ就職する
→ 航海士として乗船経験を積む
→ 必要に応じて上位の海技士資格を取得する
→ 一等航海士などの職位を経験する
→ 船長へ昇進する
ただし、これは一般的なキャリアモデルの一例です。
すべての人がまったく同じ順番で船長になるわけではなく、勤務する船会社や船の種類、取得資格などによってキャリアは異なります。
海事系の学校で船員に必要な知識を学ぶ
未経験から大型船の船長を目指す場合、海事系の学校へ進学する方法があります。
代表的な進学先には、海上技術学校や海上技術短期大学校、商船系の高等専門学校、海事・商船系の大学などがあります。
こうした学校では、航海や操船、気象、船舶運用、海上法規など、船員に必要な専門知識を学びます。
また、練習船による乗船実習を通じて、実際の船内業務を経験できる学校もあります。
ただし、船長になるために特定の学校を必ず卒業しなければならないわけではありません。
目指す海技資格やこれまでの経歴などによって、資格取得までのルートは異なります。
船長を目指すなら海技士(航海)の資格が重要
大型船の船長を目指す場合、中心となる資格が海技士(航海)です。
海技士には航海、機関、通信、電子通信などの区分があります。
このうち、船橋で航海当直や操船を担当し、将来的に船長を目指す場合に関係するのが海技士(航海)です。
海技士(航海)は1級から6級まである
海技士(航海)には、次の6段階があります。
一級海技士(航海)
二級海技士(航海)
三級海技士(航海)
四級海技士(航海)
五級海技士(航海)
六級海技士(航海)
必要になる資格は、船舶の総トン数や航行区域、船内で担当する職務などによって異なります。
単純に「資格の級が高ければ、どの船でも船長になれる」というわけではありません。
実際に乗り組む船に応じて、必要な資格を確認する必要があります。
海技士は必ず6級から順番に取得するわけではない
海技士(航海)は1級から6級までありますが、必ず6級、5級、4級と一つずつ順番に取得しなければならない制度ではありません。
受験する級ごとに必要な乗船履歴や受験資格などが定められているため、それらの条件を満たしていれば、該当する級の国家試験を受験できます。
そのため、船長を目指す過程では、本人の経歴や勤務する船舶に応じて三級、二級、一級などの上位資格を取得していくことになります。
海技士国家試験に合格する
海技士の免許を取得するためには、原則として海技士国家試験に合格する必要があります。
海技士国家試験の定期試験は、基本的に4月、7月、10月、2月の年4回実施されています。
このほか、必要に応じて臨時試験が実施されることもあります。
海技士(航海)の試験には筆記や口述がある
海技士(航海)の国家試験では、身体検査や学科試験が行われます。
学科試験には筆記試験と口述試験があり、航海に関する専門知識や船舶運用、安全管理などについて問われます。
また、資格や試験区分によっては一定の乗船履歴が必要です。
そのため、単に勉強して試験に合格するだけではなく、実際に船に乗った経験が資格取得に重要になります。
海技免許講習の修了も必要
海技免状を取得する際には、国家試験への合格だけでなく、資格区分に応じた海技免許講習を修了する必要があります。
必要な講習は取得する資格などによって異なるため、受験する際には国土交通省や地方運輸局の最新情報を確認することが大切です。
船会社に就職して航海士として経験を積む
海技資格を取得した後は、船会社へ就職し、航海士として実務経験を積むのが一般的です。
大型船では、船長の下に複数の航海士が配置され、それぞれが役割を分担しながら船を安全に運航します。
航海士は操船以外にも多くの仕事を担当する
航海士の仕事は、単に船を動かすことだけではありません。
航海計画の作成や航海当直、船位の確認、気象や海象の確認、安全設備の管理、貨物管理など、幅広い業務を担当します。
こうした経験を積むことで、将来船長として船全体を管理するために必要な知識や判断力を身につけていきます。
三等航海士から船長を目指す場合がある
大型商船では、一般的なキャリアの一例として、
三等航海士
→ 二等航海士
→ 一等航海士
→ 船長
と昇進していく場合があります。
ただし、これは法律上すべての人に義務づけられている順番ではありません。
船会社の人事制度や船種、本人の資格や経験などによって昇進ルートは異なります。
また、「三級海技士(航海)」と「三等航海士」のように、海技資格の級と船内での職位がそのまま対応しているわけではない点にも注意が必要です。
四級海技士(航海)でも船長になれる場合がある
船長になるためには必ず一級海技士(航海)が必要というわけではありません。
船舶の大きさや航行区域によっては、四級海技士(航海)などでも船長として乗り組める場合があります。
四級海技士(航海)で乗り組める船には条件がある
四級海技士(航海)は、沿海区域や限定近海区域などを航行する一定の総トン数5,000トン未満の船舶で、船長として乗り組める資格です。
ただし、実際に必要となる資格は、船舶の総トン数や航行区域などの条件によって決まります。
そのため、「四級海技士を持っていれば5,000トン未満の船ならすべて船長になれる」と考えるのは適切ではありません。
自分が乗りたい船に必要な乗組み資格を確認することが重要です。
資格を取得すればすぐ船長になれるわけではない
海技士の資格を取得したからといって、すぐに船会社で船長になれるとは限りません。
資格は、その船で船舶職員として勤務するために必要となる条件の一つです。
実際に船長へ昇進するには、航海士として十分な経験を積み、安全運航能力やリーダーシップなどを船会社から評価される必要があります。
船長は船全体の責任を負う立場
船長は、船の運航を統括する最高責任者です。
安全な航海だけでなく、船員の管理や緊急時の判断、貨物や旅客の安全確保など、非常に大きな責任を負います。
そのため、資格だけではなく、長年の実務経験や総合的な判断力が求められます。
船長に求められる能力
船長になるためには、航海や操船に関する知識だけでなく、さまざまな能力が必要です。
冷静な判断力
海上では、悪天候や機器の故障、他船との接近など、予測できない状況が発生することがあります。
船長は状況を正確に把握し、安全を優先して迅速に判断しなければなりません。
そのため、冷静な判断力は船長にとって非常に重要な能力です。
リーダーシップ
船長は、船員全体をまとめる立場です。
航海士や機関士をはじめとする船員へ適切な指示を出し、船内のチームをまとめる能力が求められます。
特に大型船では多数の船員が働いているため、組織を管理する力も必要です。
コミュニケーション能力
船長は、船員だけでなく、船会社の運航管理者や港湾関係者など、さまざまな人と連携します。
外航船の場合には、外国の港湾関係者や他国の船舶とコミュニケーションを取る機会もあります。
そのため、円滑に意思疎通できる能力が重要です。
安全管理能力
船舶事故は、人命だけでなく、貨物や海洋環境にも大きな影響を与える可能性があります。
船長には事故を防止するための高い安全意識と、安全管理能力が求められます。
外航船の船長を目指すなら英語力も重要
海外の港を行き来する外航船の船長を目指す場合は、英語力も重要です。
国際航海では、他船との通信や港湾関係者とのやり取り、英文書類の確認など、英語を使用する機会があります。
海事英語を身につけると役立つ
船舶の世界では、一般的な英会話だけでなく、航海や安全運航に特化した海事英語が使用されます。
そのため、外航船を目指すのであれば、専門的な海事英語についても学んでおくことが重要です。
英語力が高ければ、外国人船員とのコミュニケーションや海外港での業務にも対応しやすくなります。
小型船の船長になるには小型船舶操縦士免許が必要
プレジャーボートやヨットなど、小型船舶の船長を目指す場合は、大型船とは異なる資格制度が適用されます。
原則として総トン数20トン未満の小型船舶を操縦する場合には、小型船舶操縦士免許が必要です。
一級小型船舶操縦士
一級小型船舶操縦士は、水上オートバイを除く小型船舶を操縦でき、原則として航行区域に制限がありません。
そのため、長距離のクルージングなどを行う人に向いています。
ただし、沿海区域の外側80海里以遠を航行する場合には、機関に関する資格を持つ人を別に乗船させるなどの条件があります。
「一級を取得すれば、どのような条件でも一人でどこまでも航行できる」というわけではありません。
二級小型船舶操縦士
二級小型船舶操縦士では、水上オートバイを除く小型船舶について、基本的に平水区域および海岸から5海里以内を航行できます。
5海里は約9kmです。
沿岸での釣りやレジャーなどを目的としてボートを操縦する場合に広く利用されている資格です。
小型旅客船や遊漁船の船長には特定操縦免許が必要
観光船や遊漁船など、人を乗せて事業を行う小型船舶の船長を目指す場合は、通常の小型船舶操縦士免許だけでは不十分な場合があります。
小型旅客船や遊漁船の船長として乗船する場合には、特定操縦免許が必要です。
特定操縦免許制度は2024年4月に改正された
特定操縦免許制度は2024年4月に改正されています。
旧制度の特定操縦免許を持っていた人には経過措置が設けられていましたが、その期間は2026年3月31日に終了しました。
そのため、2026年4月1日以降は、新制度に対応した特定操縦免許の要件を満たしていない場合、小型旅客船や遊漁船の船長として乗船できません。
これから観光船や遊漁船の船長を目指す場合は、最新の特定操縦免許制度を確認する必要があります。
小型旅客船では船長への教育訓練も行われる
2024年4月からは、小型旅客船の船舶所有者に対し、初めて船長として乗り組む人などへ、その船が航行する海域の特徴に応じた操船教育を行う「特定教育訓練」が義務づけられています。
これは船長本人が単独で取得する資格というより、船舶所有者側に教育訓練の実施が義務づけられている制度です。
旅客を乗せる船では、通常のレジャーボート以上に高い安全管理能力が求められます。
未経験から船長を目指すにはどうすればよい?
未経験から大型船の職業船長を目指すのであれば、海事系の学校で学び、必要な海技資格を取得して船会社へ就職する方法が分かりやすいでしょう。
一般的なイメージとしては、
海事系学校などで学ぶ
→ 海技士(航海)の資格取得を目指す
→ 船会社へ就職する
→ 航海士として経験を積む
→ 必要な上位資格を取得する
→ 一等航海士などを経験する
→ 船長へ昇進する
という流れになります。
まず目指す船の種類を決めることが重要
「船長」といっても、貨物船、タンカー、フェリー、旅客船、遊漁船、ヨット、プレジャーボートなど、船の種類はさまざまです。
船種や船の大きさによって、必要な資格や経験は大きく異なります。
そのため、最初に「どのような船の船長になりたいのか」を決めることが重要です。
大型商船を目指すのであれば海技士(航海)、小型のプレジャーボートなどを操縦したいのであれば小型船舶操縦士免許というように、目標から逆算して資格や進路を選ぶとよいでしょう。
船長になるには資格と実務経験の両方が必要
船長になるには、単に船を操縦する免許を取得するだけでは十分ではありません。
特に大型船では、海技士(航海)の資格を取得したうえで、航海士として実務経験を積み、安全運航や船員管理などに必要な能力を身につけていく必要があります。
また、必要な海技資格は、船の大きさや航行区域によって異なります。
小型船舶の場合も、レジャー目的のボートなのか、旅客を運ぶ観光船や遊漁船なのかによって必要な免許が変わります。
船長を目指すのであれば、まず乗りたい船の種類や航路を明確にし、その船に必要な資格や乗船履歴を確認することが大切です。
資格制度や試験、講習の内容は変更される場合もあるため、実際に受験や進学を検討する際には、国土交通省や各地方運輸局、海技教育機構などが公開している最新情報を確認しましょう。
以上、船長になるにはどうすればよいのかについてでした。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。














