潜水艦の速さはどのくらいなのか

目次

潜水艦の速さはどのくらい?

潜水艦の速さは、艦種や推進方式によって大きく異なります。
公開されている現代潜水艦の性能を見ると、水中で20〜30ノット級の速力を持つ艦が多く確認できます

1ノットは時速約1.852kmです。
そのため、20ノットは約37km/h、25ノットは約46km/h、30ノットは約56km/hに相当します。

ただし、潜水艦は普段から最高速力で航行しているわけではありません。
潜水艦にとっては、単純な速さよりも、敵に発見されにくい静粛性を維持しながら行動することが非常に重要だからです。

また、軍用潜水艦の実際の最高速力や静粛性能は軍事機密に関係するため、正確な数値が公開されていない場合も少なくありません。
そのため、潜水艦の速さを比較するときは、あくまでも各国が公表している数値を基準として考える必要があります。

ノットをkm/hに換算するとどのくらい?

潜水艦の速度では「ノット」という単位が使われます。
1ノットは1時間に1海里進む速さで、約1.852km/hです。

代表的な速度を換算すると、次のようになります。

速力時速換算
10ノット約18.5km/h
15ノット約27.8km/h
20ノット約37.0km/h
25ノット約46.3km/h
30ノット約55.6km/h
40ノット約74.1km/h

数字だけを見ると、自動車とそれほど変わらないように感じるかもしれません。
しかし、水は空気よりもはるかに密度が高いため、数千トンもの潜水艦を水中で時速40〜50km以上まで移動させるには大きな推進力が必要です。

日本の潜水艦の速さ

日本の海上自衛隊が運用する潜水艦については、一部の艦級で公式な速力が公表されています。

そうりゅう型は約20ノット

海上自衛隊の「そうりゅう」型潜水艦は、公式情報で速力約20ノットとされています。

20ノットを時速に換算すると、約37km/hです。

そうりゅう型は通常動力型の潜水艦で、日本の主力潜水艦として長期間運用されてきました。
同型艦の「じんりゅう」などについても、水中速力20ノットと公表されています。

したがって、日本の通常動力潜水艦について考える場合、約20ノット前後が公開スペック上の代表的な水中速力の一つといえます。

たいげい型の詳細な最高速力は公表情報が限定的

そうりゅう型の後継として整備が進められているのが「たいげい」型潜水艦です。

たいげい型については、全長や排水量、推進方式などの主要諸元が公開されています。
一方で、実際にどこまで高速航行できるのかという詳細な性能については、公開情報だけでは判断できない部分があります。

軍用潜水艦では、最高速力や静粛航行時の性能が戦闘能力に直接関係するため、すべての性能が公開されるとは限りません。

アメリカの原子力潜水艦の速さ

原子力潜水艦は、通常動力潜水艦と比べて大きな推進出力を長時間維持しやすいという特徴があります。

バージニア級は25ノット以上

アメリカ海軍の主力攻撃型原子力潜水艦であるバージニア級は、公式情報で25ノット以上とされています。

25ノットは約46km/hです。

ここで重要なのは、「25ノット」ではなく「25ノット以上」と公表されている点です。
つまり、正確な最大速力そのものが公開されているわけではありません。

潜水艦では実際の最高性能が軍事機密となる場合があるため、公表値は最低限の性能を示している可能性があります。

オハイオ級は20ノット以上

アメリカ海軍の戦略原子力潜水艦であるオハイオ級については、20ノット以上とされています。

オハイオ級のような弾道ミサイル原子力潜水艦は、敵艦を高速で追跡することよりも、長期間発見されずに潜伏し続けることが重要です。

そのため、潜水艦の種類によって、求められる速力や設計思想は異なります。

イギリスの原子力潜水艦の速さ

イギリス海軍でも複数の原子力潜水艦が運用されています。

アスチュート級は30ノット

イギリス海軍の攻撃型原子力潜水艦「アスチュート級」は、公式情報で30ノットとされています。

30ノットは約55.6km/hです。

公開されている現代潜水艦の速力としては比較的高速な部類に入ります。

攻撃型原子力潜水艦は、敵潜水艦や水上艦の追跡、偵察、巡航ミサイルによる攻撃など幅広い任務を担うため、高い速力と長時間の潜航能力が求められます。

ヴァンガード級は25ノット

イギリス海軍の弾道ミサイル原子力潜水艦「ヴァンガード級」は、25ノットとされています。

25ノットは約46km/hです。

アスチュート級より公表速力は低いものの、ヴァンガード級は戦略核抑止を目的とした潜水艦です。
最高速力よりも、長期間静かに潜伏できる能力のほうが重要になります。

通常動力潜水艦と原子力潜水艦では何が違う?

潜水艦の速力を理解するうえでは、推進方式の違いも重要です。

通常動力潜水艦はバッテリーの制約を受ける

通常動力潜水艦の多くは、ディーゼルエンジンと電動モーターを組み合わせています。

潜航中は主として蓄電池から供給される電力で推進用モーターを動かします。

高速航行すると消費電力が増えるため、バッテリーを急速に消耗します。

そのため、通常動力潜水艦では、

「最高速力が何ノットか」

だけでなく、

「その速力をどのくらい維持できるか」

も重要になります。

現代ではリチウムイオン電池やAIPと呼ばれる非大気依存推進システムなどを採用する潜水艦もあり、潜航性能は向上しています。
ただし、原子力潜水艦とはエネルギー供給の仕組みが根本的に異なります。

原子力潜水艦は高速を長時間維持しやすい

原子力潜水艦では、原子炉を利用して大きなエネルギーを継続的に得ることができます。

そのため、原子力潜水艦の大きな特徴は、単純に「最高速度が高い」ということではなく、大きな出力を長期間利用できることです。

通常動力潜水艦と比較すると、高速航行を長時間維持しやすく、長期間潜航したまま活動できます。

原子力潜水艦の航続距離について「無制限」と表現される場合がありますが、これは推進用燃料による制約が極めて小さいという意味です。

実際には、

乗員の食料

整備

消耗品

乗員の健康管理

任務上の都合

などによって航海期間は制限されます。

潜水艦は水上と水中で速さが違う

潜水艦では、水上速力と水中速力が異なります。

さらに、昔の潜水艦と現代の潜水艦では、その関係が大きく変化しています。

第二次世界大戦頃までは水上のほうが速い潜水艦が多かった

第二次世界大戦頃までの潜水艦は、現在の潜水艦とは運用思想が大きく異なっていました。

当時の潜水艦は長時間水上航行し、必要なときに潜航する運用が一般的でした。

そのため、船体も水上航行を意識した形状になっています。

例えば、第二次世界大戦期のアメリカ海軍潜水艦には、水上で約20ノット、水中では10ノット未満という艦がありました。

当時の潜水艦は、水中よりも水上のほうが高速だったケースが一般的です。

現代潜水艦は水中航行を重視している

現代の潜水艦は、基本的に大部分の時間を水中で活動することを前提に設計されています。

船体も、水中抵抗を小さくするための流線形になっています。

そのため、現代潜水艦の多くは水中航行性能を重視した設計です。

原子力潜水艦の場合、長期間浮上せずに任務を継続することも可能なため、水上航行は主要な運用形態ではありません。

潜水艦はなぜ最高速度で航行しないのか

潜水艦は高い最高速力を持っていても、通常の任務で常に最大速力を使用するわけではありません。

その最大の理由が静粛性です。

高速になるほど騒音が増えやすい

潜水艦が高速航行すると、さまざまな騒音が増加しやすくなります。

主なものとして、

船体周囲の水流による雑音

推進器による騒音

機械設備の振動

キャビテーションによる騒音

などがあります。

潜水艦は敵のソナーによる探知を避ける必要があるため、必要以上に高速航行することは不利になる場合があります。

つまり潜水艦にとって重要なのは、単純な最高速力ではなく、必要な静粛性を維持しながらどの程度の速力で行動できるかという点です。

静粛航行時の具体的な速度は公表されないことが多い

潜水艦が静かに航行するときの速度について、具体的に「何ノット」と決まっているわけではありません。

適切な速度は、

艦型

深度

海況

推進方式

運用状況

周囲の音響環境

などによって変化します。

また、どの程度の速度まで静粛性を保てるかは、その潜水艦の戦闘能力そのものに関係します。

そのため、現代軍用潜水艦の詳細な静粛航行性能は、一般にはほとんど公開されません。

キャビテーションが潜水艦の速度を左右する

潜水艦の高速航行で重要になる現象の一つが「キャビテーション」です。

キャビテーションとは?

プロペラなどの推進器を高速で回転させると、翼面付近の圧力が局所的に低下することがあります。

圧力が十分低くなると水が気化し、小さな蒸気泡が発生します。

この気泡が再び高い圧力の場所に移動すると急激に崩壊します。

この現象がキャビテーションです。

キャビテーションは騒音の原因になる

キャビテーションによって生じる気泡の生成や崩壊は、騒音や振動の原因になります。

軍用潜水艦では、こうした騒音が敵のソナーに探知される可能性を高めます。

そのため、潜水艦の推進器には高い静粛性が求められます。

現代潜水艦では、特殊な形状のプロペラやポンプジェット推進器などを採用し、キャビテーションや推進器騒音を抑える工夫が行われています。

高速航行すると潜水艦自身のソナーにも影響する

潜水艦が高速航行するデメリットは、敵から発見されやすくなることだけではありません。

自分自身が周囲の音を聞き取りにくくなる場合もあります。

自己雑音が増える

潜水艦の受動ソナーは、周囲の艦艇や潜水艦などが発する微弱な音を探知します。

しかし高速航行すると、船体周囲を流れる水による雑音などが増加します。

このような自艦由来の雑音を「自己雑音」と呼ぶことがあります。

自己雑音が大きくなると、遠方の弱い音を識別する条件が悪化する可能性があります。

そのため潜水艦では、

自分が静かであること

周囲の音を聞き取りやすくすること

の両方の意味で、低速航行が重要になる場合があります。

30ノットは水中ではかなり速い

30ノットは時速約56kmです。

自動車と比較すると、それほど高速には感じないかもしれません。

しかし、水中を進む物体には非常に大きな抵抗がかかります。

さらに潜水艦は数千トンから1万トンを超える巨大な艦艇もあります。

そのため、巨大な船体を水中で時速50km以上まで動かしながら、同時に騒音や振動を低減するには高度な技術が必要です。

潜水艦の高速性能では、

推進機関の出力

船体形状

推進器の設計

キャビテーション対策

機械振動の抑制

静粛性

など、多くの要素が関係します。

歴史上には40ノットを超える高速潜水艦もあった

潜水艦の速力が20〜30ノット程度だからといって、それが技術的な限界というわけではありません。

冷戦期には、40ノットを超える水中速力を持つと評価された潜水艦も存在しました。

ソ連のアルファ級は非常に高速だった

代表的な存在が、旧ソ連のアルファ級原子力潜水艦です。

アルファ級はチタン合金製の船体や高出力の原子炉などを採用し、40ノットを超える高速性能を持つ潜水艦として知られています。

40ノットは時速約74kmです。

これは潜水艦としては非常に高い速力です。

ただし、高速化すればするほど、

騒音

機関の大型化

建造コスト

維持費

推進効率

などの問題も大きくなります。

そのため、現代の潜水艦では単純な最高速力だけを追求する設計は一般的ではありません。

潜水艦は最高速力だけでは性能を判断できない

潜水艦の性能を比較するとき、「何ノット出せるか」は分かりやすい指標です。

しかし、最高速力だけで潜水艦の優劣を判断することはできません。

静粛性が非常に重要

潜水艦の最大の特徴は、海中に身を隠しながら行動できることです。

どれほど速くても、大きな騒音を出して敵に位置を知られてしまえば、潜水艦としての大きな利点を失ってしまいます。

そのため現代潜水艦では、

静粛性

ソナー性能

潜航持続能力

航続性能

兵器システム

情報処理能力

センサー性能

などを総合的に評価する必要があります。

「速い潜水艦=強い潜水艦」とは限らない

例えば、最高速力30ノットの潜水艦と25ノットの潜水艦があったとしても、それだけで30ノットの艦が優れているとは判断できません。

25ノットの潜水艦のほうが、

より静かに航行できる

敵を遠くから探知できる

長時間潜航できる

優れた兵器を搭載している

という可能性もあります。

潜水艦戦では、自分が発見される前に敵を発見することが極めて重要です。

そのため、実戦では最高速力よりも静粛性や探知能力のほうが重要になる場面も多くあります。

潜水艦の速さの目安

公開されている代表的な潜水艦をまとめると、次のようになります。

潜水艦種類公表速力の目安
そうりゅう型通常動力型約20ノット
バージニア級攻撃型原子力潜水艦25ノット以上
アスチュート級攻撃型原子力潜水艦30ノット
ヴァンガード級弾道ミサイル原子力潜水艦25ノット
オハイオ級弾道ミサイル原子力潜水艦20ノット以上

このように、公開情報では20〜30ノット級の現代潜水艦が多く確認できます。

ただし、実際の最高性能がすべて公開されているとは限らないため、これらの数値はあくまでも公表値として考える必要があります。

まとめ

潜水艦の速さは艦種によって異なりますが、公開されている現代潜水艦では20〜30ノット級、時速にすると約37〜56km級の速力を持つ艦が多く確認できます

例えば、日本のそうりゅう型は約20ノット、アメリカのバージニア級は25ノット以上、イギリスのアスチュート級は30ノットと公表されています。

また、冷戦期には40ノットを超える非常に高速な原子力潜水艦も存在しました。

ただし、潜水艦にとって最高速力は性能の一部分にすぎません。

高速航行すると騒音や自己雑音が増えやすくなり、敵に探知される可能性や、自分自身のソナーによる探知条件に影響する場合があります。

そのため、潜水艦では「どれだけ速く走れるか」だけではなく、どの程度静かに行動できるか、どれだけ長く潜航できるか、敵をどれだけ早く探知できるかといった総合的な性能が重要になります。

以上、潜水艦の速さはどのくらいなのかについてでした。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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