船の前進(前進航行)と後進(後進航行)は、船舶の推進装置の仕組みと操船技術に密接に関係しています。
以下では、主に機械式の船舶(エンジン付きのモーターボートや大型船舶など)を中心に、詳しく解説していきます。
目次
船の「前進」と「後進」の基本的な違い
項目 | 前進(前進航行) | 後進(後進航行) |
---|---|---|
推進方向 | 船首(前方)へ | 船尾(後方)へ |
プロペラの回転方向 | 通常は右回転(時計回り) | 左回転(反時計回り) |
操作目的 | 目的地への移動、通常航行 | 停止、減速、港への接岸、離岸、緊急回避など |
船体の挙動 | 安定しやすい | 操舵性が低下し不安定になりやすい |
推進装置の仕組み
プロペラ式(スクリュープロペラ)
最も一般的な推進装置です。
エンジンの回転力でプロペラを回し、水を後方へ押し出すことで船を前進させます。
- 前進: プロペラが後方へ水を押し出す → 船は前へ進む
- 後進: プロペラが前方へ水を押し出す → 船は後ろへ進む
多くのエンジンはギアボックス(変速機)を通じて前進・後進を切り替える機構を持っています。
ギアを「リバース」に入れるとプロペラの回転方向が逆転し、後進となります。
操縦時の注意点と違い
前進航行時の特徴
- 舵(ラダー)による操作が効きやすい。
- 推進力が強く安定している。
- 比較的コントロールが容易。
後進航行時の特徴
- 舵の効きが悪くなる(なぜなら水の流れが逆だから)。
- 特に低速では、船体が予期しない方向に回ることがある(特にプロペラの回転による“プロペラウォーク”の影響)。
- 操作には熟練が必要。
プロペラウォークとは
後進時によく見られる現象で、プロペラの回転が一方向に船尾を押してしまう現象です。
特に単一スクリュー(プロペラ1基)の船に顕著で、
- 右回転(時計回り)のプロペラなら、後進時に船尾が左へ流れる傾向があり、船首が右を向く。
- 左回転のプロペラではその逆になります。
この性質を利用して、港での細かい操作や接岸時の微調整を行うこともあります。
船の操船シーンにおける前進・後進の使い分け
出港時
- 前進でゆっくり進み始める。
- 周囲の状況に応じて一時的に後進で微調整することも。
接岸時
- 微速前進と後進を繰り返して位置を調整。
- 強風や潮流がある場合、後進でブレーキをかけながら接岸。
狭い場所での方向転換
- 後進を使って「三点ターン」のような操船を行う。
- ボートやヨットでは「バック&フィル」技術(風を利用したターン)も使用される。
その他の推進システムとの違い
ウォータージェット式
- ジェット噴流で推進。水の吸い込みと吐き出しの方向で前進・後進を切り替える。
- 操舵性が非常に高く、急な後進や横移動(スライド)も可能。
可変ピッチプロペラ(CPP)
- プロペラの羽根の角度を変えて推進力の方向を変える方式。
- エンジンの回転方向はそのままでも、前進・後進が可能。
操船時の注意点
- 後進時は周囲の確認を徹底すること。
- 視界が制限されやすく、障害物や他船との衝突リスクがある。
- 風や潮流の影響を常に考慮する。
- 特に軽量のボートや小型船は流されやすいため、後進時の舵の利きが変わる。
- 無理に舵を切らず、スロットルを小刻みに操作する。
- 舵が利かない時は、エンジンの前進・後進を交互に使うことで旋回力を補える。
まとめ
ポイント | 前進 | 後進 |
---|---|---|
操作性 | 高い | 低い(特に小型船) |
船体の安定性 | 安定している | 不安定になりやすい |
主な用途 | 移動、巡航 | 接岸、ブレーキ、緊急回避 |
船尾の動き | 直進的 | プロペラウォークなどによる横流れが発生 |
以上、船の前進と後進についてでした。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。