タンカー(油槽船)をはじめ、多くの大型船の船底が「赤く塗られている」理由は、見た目のデザインや伝統的な要素だけでなく、実用的・科学的な理由があります。
この赤色には、防汚・防錆の機能が大きく関係しています。
船底の「赤」は防汚塗料の色だった
船底には「防汚塗料(Anti-fouling paint)」が使われている
船が海を航行していると、フジツボや貝類、海藻、バクテリアなどの「海洋生物」が船体に付着します。
これが進むと以下のような問題が起こります。
- 船の重量が増えて燃費が悪くなる
- 船体の表面がざらつき、抵抗が増して航行スピードが落ちる
- 船体の腐食が早まる(特に金属部分)
これを防ぐために、有害生物の付着を防ぐ防汚塗料が塗られています。
従来、この塗料には酸化銅などが含まれており、それが赤錆のような赤褐色の色をしていたため、自然と「赤い船底」が広まりました。
酸化銅を含む塗料=赤色になりやすい
酸化銅とは?
防汚塗料には、海洋生物の付着を防ぐために生物にとって毒性のある金属化合物(例:酸化銅、トリブチルスズなど)が用いられてきました。
酸化銅は特に以下の特徴を持っています。
- 殺生物効果が高い(微生物やフジツボの付着を防ぐ)
- 銅を使っているため色が赤~赤褐色になる
そのため、塗料が「赤くなる」ことは実質的に機能性の副産物だったのです。
なぜ赤色のまま今も使われているのか?
現在では塗料の技術も進歩しており、必ずしも赤色にする必要はありません。
青、緑、黒などの防汚塗料も開発され、実際に使われています。
しかし、赤色が今もよく使われている理由には、以下のような要因があります。
視認性が高い
赤は水中でも比較的見えやすく、メンテナンス時の視認性が良いため、傷や汚れ、腐食を見つけやすい。
伝統と慣習
造船業界では長年の慣習として「船底=赤」という認識が根付いています。
とくに商船やタンカーなどの業務用大型船は実用性重視なので、これまでの実績や安定性が重視されやすいです。
船底以外はなぜ赤くないのか?
船底は水中にある部分(水線以下の部分)で、最も生物の付着や腐食のリスクが高いため、防汚塗料が必須です。
一方、船体の上部(水線以上)は、空気に触れる部分であり、紫外線や塩害に耐えるための塗料が使われます。
これらは防汚目的ではないため、赤以外の色が自由に選ばれます(白、青、黒など)。
環境規制による変化も
過去に使用されていたトリブチルスズ(TBT)は、強力な防汚効果がある一方で海洋環境への悪影響が大きく、現在では多くの国で禁止されています。
これにより、近年ではより環境にやさしい非有機スズ系塗料やシリコン系塗料なども登場し、それに伴って色のバリエーションも増えてきました。
まとめ
理由 | 内容 |
---|---|
防汚効果 | フジツボや藻類の付着を防ぐための塗料に赤色の酸化銅が使われている |
視認性 | メンテナンスや点検時に劣化がわかりやすい |
慣習と実績 | 伝統的に使われてきたため安心感がある |
環境対応 | 現代では赤以外の選択肢もあるが、赤が依然として多く使用されている |
以上、タンカーの船底が赤い理由についてでした。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。