フェリーの無人航送について

フェリー,イメージ

フェリーの無人航送(むじんこうそう)とは、運転手(ドライバー)が乗船せずに、貨物トラックやトレーラーだけをフェリーに積み込み、目的地まで輸送する方式を指します。

これはシャーシ航送ドライバーなし航送とも呼ばれ、長距離輸送や物流の効率化を目的に利用されています。

目次

無人航送の仕組み

無人航送では、以下のようなプロセスで貨物を輸送します。

  1. 出発地でのトレーラー積載
    • トラックの牽引部分(トラクターヘッド)からトレーラーを切り離し、専用のトレーラードーリー(台車)やトラクターを使ってフェリーの甲板に積み込みます。
    • 一部のフェリーではロールオン・ロールオフ(Ro-Ro)方式を採用しており、船内の作業員や専用の牽引車(ターミナル・トラクター)がトレーラーを移動させます。
  2. フェリーによる海上輸送
    • 目的地の港までフェリーが無人のトレーラーを輸送します。
    • 一部の航路では冷凍・冷蔵貨物を運ぶための電源供給設備(コンセント)が備えられており、長時間の航海中も貨物の品質を維持できます。
  3. 到着地でのトレーラー引き渡し
    • 目的地の港に到着すると、専用の牽引車やトラクターがトレーラーを所定の位置まで移動させます。
    • 受取側のドライバーが到着後、トレーラーをトラクターヘッドに接続して目的地まで運転します。

無人航送のメリット

ドライバー不足への対応

  • 長距離トラックドライバーの人手不足は世界的な問題ですが、無人航送を活用することでドライバーの負担を軽減できます。
  • ドライバーはトレーラーの積み降ろし地点までの運転に集中できるため、長時間労働を抑制できます。

運行効率の向上

  • 運転手がフェリーに乗船する必要がないため、乗務員の宿泊や食事の手配が不要になります。
  • フェリーの航行中にドライバーは別の仕事ができるため、トラックの稼働率が向上します。

環境負荷の軽減

  • フェリーは大量の貨物を一度に運べるため、トラックによる長距離輸送と比べてCO₂排出量が削減されます。
  • トラックの走行距離を短縮できるため、燃料消費や車両の摩耗を抑えることができます。

コスト削減

  • 長距離運行に伴う燃料費、人件費、高速道路料金などを削減できます。
  • トラックのメンテナンス費用も抑えられます。

無人航送のデメリット・課題

トレーラーの取り扱い

  • 無人航送では、トレーラーとトラクターヘッドを頻繁に切り離すため、荷物の安全管理が重要になります。
  • 特に精密機器や液体貨物などは振動や傾斜の影響を受けやすいため、積み込み方法に工夫が必要です。

フェリーの発着時間の制約

  • 無人航送を利用する場合、フェリーの運行スケジュールに合わせる必要があります。
  • 天候の影響を受けることもあり、遅延が発生する可能性があります。

荷役作業の負担

  • 出発地と到着地の港でトレーラーの積み下ろし作業が発生し、専用の設備や作業員が必要です。
  • 一部の港では自動化が進んでいますが、荷役の効率化が求められています。

無人航送が利用される主なフェリー航路(日本国内)

日本国内では、主に以下のフェリー航路で無人航送が活用されています。

  • 太平洋航路(関東・関西~北海道)
    • 例: 商船三井フェリー(大洗~苫小牧)、新日本海フェリー(敦賀・舞鶴~小樽・苫小牧)
    • 北海道と本州間の物流において重要な役割を果たしている。
  • 瀬戸内海航路(四国・九州~関西・中国地方)
    • 例: 阪九フェリー(泉大津~新門司)、オレンジフェリー(大阪~愛媛)
    • トラック輸送の負担を軽減し、工業製品や農産物の輸送を支える。
  • 日本海航路(新潟・富山~北海道)
    • 例: 新日本海フェリー(新潟~苫小牧)
    • 日本海側の物流ルートとして活用されている。

無人航送の今後の展望

  • 自動運転技術との融合
    • 将来的には、港湾内での無人トレーラー搬送システムや、自動運転トラックと連携した無人航送が進化すると予想されます。
  • フェリーの大型化・効率化
    • 大型フェリーの導入により、無人航送の取り扱い量が増加し、物流の効率がさらに向上すると考えられます。
  • 国際フェリーへの展開
    • 韓国、中国、東南アジアとの海上輸送においても無人航送が導入される可能性があり、今後の動向が注目されています。

まとめ

フェリーの無人航送は、ドライバー不足や物流の効率化、環境負荷の軽減に貢献する重要な輸送手段です。

特に長距離トラック輸送の代替手段として、日本国内だけでなく、国際物流にも応用が期待されています。

技術の進化とともに、無人航送の活用範囲がさらに広がるでしょう。

以上、フェリーの無人航送についてでした。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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