船の着岸(ちゃっがん)は、海上での操船の中でも特に繊細さと技術が求められる場面です。
風や潮流の影響を受けるため、経験と判断力が非常に重要ですが、以下のポイントをしっかり押さえておけば、着岸の成功率を大きく高めることができます。
目次
基本的な着岸の流れ
- 事前の確認と準備
- 着岸場所(桟橋、岸壁、浮桟橋など)の構造を把握
- 潮の流れ・風の強さと向きを確認
- フェンダー(船体と岸の接触を緩和するクッション)の設置
- ロープ(係船索)の準備と担当者の配置
- 進入アプローチ
- できるだけ風上・潮上から進入する
→ 自然の力をコントロールしやすく、停止・修正がしやすい - ゆっくりとした速度で接近
→ 一般的には「最徐行」や「微速」が基本。早すぎると修正が難しく危険
- できるだけ風上・潮上から進入する
- 角度と位置調整
- 通常、岸に対して30~45度の角度でアプローチし、接近しながら船尾を振って平行に
- 船体の前部(船首)が岸に近づきすぎないように注意
- 横風がある場合は、風上側に少し船首を向けて進む「アングル保持」
- 最終接近と停船
- 必要であれば逆転(バック)して船速を完全に止める
- 同時にロープの受け渡しを行い、固定する
- 係留作業
- ロープは前後のもやい(バウライン・スターンライン)をまず固定
- 続いてスプリングライン(前後方向の動きを抑える)を張る
- テンション(張り具合)を調整し、船が動かないようにする
成功のための5つのコツ
風と潮を読む力
着岸前に「風はどちらから吹いているか」「潮はどちらに流れているか」を読むことは非常に重要です。
例えば、風が岸に向かって吹いている場合は、風に押されて船が予想より早く接近することがあります。
逆に風が沖から吹く場合は、エンジンを切ると岸から離れていってしまいます。
スピードは極力ゆっくりに
「ぶつけても大丈夫なスピードでしか近づかない」というのが鉄則です。
速く入ると修正の余地がなく、他船や桟橋を傷つける原因になります。
声かけと合図を徹底
クルーとのアイコンタクトやハンドサイン、声かけ(コール)を明確にしておくと、着岸時の混乱を防げます。
「もやい、投げて」「スプリング、緩めて」など、事前に役割分担と指示内容を確認しておきましょう。
フェンダーの位置をしっかり
岸壁との接触は避けられない場面もあるため、フェンダー(防舷物)は船体の最も当たりやすい箇所(中央部や接岸する側)にしっかりと配置します。
練習と経験を重ねる
毎回違う状況(風・潮・混雑)で着岸することになるため、理屈だけでなく「身体で覚える」必要があります。
初心者は風のない日、広い場所から練習するのがおすすめです。
よくある失敗と対策
失敗例 | 原因 | 対策 |
---|---|---|
接岸時にぶつけてしまう | スピードが速い、舵遅れ | 最徐行を徹底し、舵・スロットル操作に余裕を持つ |
船が岸に平行にならない | アプローチ角度が悪い | 30~45度で入り、最後に船尾を振る |
風で船が流されてしまう | 風の計算ミス | アングル調整し、風をうまく利用する |
ロープがもたつく | 事前準備不足 | ロープの種類と結ぶ順を明確にしておく |
ワンポイント:バウスラスターやスクリューの利用
現代の船にはバウスラスター(船首の横向き推進装置)が付いていることが多く、これをうまく使うと着岸がぐっと楽になります。
風で流されそうなときに、舵を切るのではなくスラスターで横移動するのが効果的です。
補足
- 「やり直す勇気」も技術のうち:進入がうまくいかないと感じたら、無理せず一度離れて再アプローチすることが大切です。
- 「反対側からの着岸」も検討:風や潮の影響が強すぎるときは、向きを変えて逆方向から着岸したほうが安全なこともあります。
以上、船の着岸のコツについてでした。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。