船の排水量(はいすいりょう)とは、船が水に浮かぶときに排除(押しのける)している水の量のことを指し、船の重さと同等とされる非常に重要な指標です。
排水量は船舶の設計、安定性、航行性能、さらには法律的な区分にまで関わるため、海事関係では頻繁に使われます。
以下で詳しく解説します。
目次
基本概念:排水量とは?
排水量は、アルキメデスの原理に基づいています。
「浮いている物体は、その物体が押しのけた液体の重さと同じ重さの浮力を受ける」
つまり、船が水に浮かぶためには、その重さと同じ量の水を押しのけている必要があります。
よって、船の排水量(=押しのけた水の質量)=船の質量ということになります。
単位と計算
- 通常、トン(t)で表されます。
- 海水と淡水では密度が異なるため、厳密な計算では水の種類も考慮されます。
種類 | 密度の目安 |
---|---|
海水 | 約1.025 t/m³ |
淡水 | 約1.000 t/m³ |
排水量の種類
排水量にはいくつかの種類があります。
目的や文脈によって使い分けます。
軽荷排水量(Light Displacement)
- 船が燃料・積荷・乗員・水・消耗品などを積んでいない状態の排水量。
- 船体そのものの重さに近い。
満載排水量(Full Load Displacement)
- すべての積荷・燃料・乗員・水などをフルに積んだ状態での排水量。
- 軍艦や大型商船の設計ではこの数値が重視される。
常備排水量(Standard Displacement)
- 戦闘に必要な状態(燃料・弾薬は積むが、乗員の食糧や雑用品は積まない)など、特定の基準で測る。
- 主に軍艦の比較に使われる。
排水量とその他の重量指標の違い
混同しやすい用語もあるので、違いをまとめます。
用語 | 内容 | 主な用途 |
---|---|---|
排水量 | 船が押しのける水の質量 | 軍艦・設計 |
総トン数(GT) | 船の容積を元にした単位(≠重さ) | 商船の税制や規制に使用 |
載貨重量トン数(DWT) | 積める荷物の重量(燃料・水・貨物など) | 商船の貨物能力 |
排水量の実務的な意味
船舶設計での重要性
- 排水量は、船の喫水(沈む深さ)や安定性の計算に直結します。
- 軍艦では、満載時の速力や航続距離にも関係。
登録・法規の基準
- 一部の国や国際海事機関(IMO)では、排水量によって規制や検査の頻度が変わることもあります。
具体例
船種 | 満載排水量の目安 |
---|---|
小型漁船 | 5~50トン |
フェリー | 数千トン |
空母(例:米・ニミッツ級) | 約100,000トン |
潜水艦(原子力型) | 6,000~20,000トン |
まとめ
- 排水量=船の重さであり、船が水に浮く仕組みの根本に関わる。
- 用途によって「軽荷」「満載」「常備」など種類がある。
- 総トン数や載貨重量トン数とは異なる概念。
- 軍艦、商船、プレジャーボートすべてにおいて、排水量は設計や運用の基礎情報となる。
以上、船の排水量についてでした。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。