潜水艦にも、乗員が身体を清潔に保つための設備があります。
ただし、一般家庭にあるような浴槽付きの風呂ではなく、シャワーなどの洗浄設備が中心です。
潜水艦は限られた船内空間に、推進装置やソナー、兵器、食料、寝台など多くの設備を搭載する必要があります。
そのため、生活設備についても省スペース化が重視されています。
また、潜水艦の設備は国や艦級、建造年代によって異なるため、「すべての潜水艦に同じ設備がある」とは言い切れません。
ここでは、現代の軍用潜水艦に見られる一般的な生活環境について解説します。
潜水艦では浴槽よりシャワーが一般的
家庭のような浴槽は基本的に設けられていない
現代の軍用潜水艦では、一般家庭のようにお湯を張って入る大きな浴槽より、シャワーなどの洗浄設備が一般的です。
潜水艦の耐圧船体内部は非常に限られた空間です。
その中に任務遂行に必要な設備を収めなければならないため、大量の水と広いスペースを必要とする浴槽は効率的ではありません。
ただし、艦級によって設備は異なるため、「潜水艦には絶対に浴槽がない」と断定するのは適切ではありません。
シャワーなどの洗浄設備がある
長期間航海する潜水艦では、乗員の衛生を維持するため、シャワーをはじめとした洗浄設備が設けられています。
ただし、陸上のホテルや住宅の浴室のように広い空間ではなく、限られたスペースを効率的に利用した設備になっています。
また、シャワーを利用できる時間や頻度については、艦級や任務、造水能力などによって異なります。
「必ず数分以内」「何日に1回」といった共通ルールがすべての潜水艦に存在するわけではありません。
潜水艦では海水から真水をつくる
海水をそのまま生活用水には使わない
潜水艦の周囲には大量の海水がありますが、それをそのまま飲料水や調理用水として使用することはできません。
現代の大型潜水艦には、海水から塩分などを取り除いて淡水をつくる設備が搭載されています。
こうして製造された真水は、飲料、調理、洗浄などさまざまな用途に利用されます。
水は管理しながら使用される
造水設備を搭載している潜水艦であっても、水を完全に無制限に使えるとは限りません。
造水設備には処理能力があり、飲料や料理、清掃などにも水が必要です。
そのため、状況に応じて水の使用量が管理されます。
一方で、現代の大型原子力潜水艦などでは十分な造水能力を備えている場合もあります。
そのため、「潜水艦では常に深刻な水不足になる」と考えるのも正確ではありません。
潜水艦にはトイレもある
長期航海に対応したトイレ設備がある
数十人から100人以上が乗り組む大型潜水艦では、当然ながらトイレも設けられています。
ただし、家庭のトイレと同じ仕組みではありません。
潜水艦は深く潜るほど船外の水圧が高くなるため、汚水を単純に海中へ排出することはできません。
汚水は専用設備で管理される
潜水艦では、トイレや洗浄設備などから出る汚水を専用の設備で保持・処理し、適切な条件で排出します。
具体的な構造は艦級によって異なりますが、タンクや配管、バルブなどを利用した専用システムが用いられます。
そのため、潜水艦ではトイレの使用方法が陸上とは異なる場合もあります。
潜水艦の寝室は非常にコンパクト
乗員は狭い寝台で眠る
潜水艦では、限られたスペースを最大限利用するため、乗員用の寝台もコンパクトにつくられています。
一般的には、多段式に配置された狭い寝台を使用します。
ホテルの個室のような広い寝室が乗員全員に用意されているわけではありません。
寝台の周囲には、最低限の私物を収納できるスペースが設けられていることもあります。
個人用スペースは限られている
潜水艦では、多くの乗員が共同の居住区で生活します。
役職によって専用または少人数用の居住区画が用意される艦もありますが、乗員の多くは限られた空間を共有します。
そのため、地上生活と比べるとプライバシーを確保しにくい環境です。
潜水艦には調理設備もある
艦内で食事がつくられる
長期航海を行う潜水艦には、乗員の食事を用意するための調理設備があります。
専門の調理担当者が乗艦する潜水艦もあり、航海中も艦内で食事が提供されます。
食事は栄養補給だけでなく、長期間の閉鎖環境で勤務する乗員の生活リズムや士気を維持するうえでも重要です。
長期航海に備えて大量の食料を積み込む
潜水艦は長期間補給を受けずに航海する場合があるため、出航時には大量の食料や物資を積み込みます。
特に長期航海では、食料を保管するスペースの確保も重要になります。
航海が進んで食料が消費されると、収納スペースにも徐々に余裕が生まれます。
潜水艦は長期間潜航できる空気環境を整えている
酸素を供給する設備がある
長期間潜航できる潜水艦では、出航時に積み込んだ空気だけを使って生活しているわけではありません。
特に原子力潜水艦では、酸素を供給するための設備が搭載されています。
これによって、長期間海面へ浮上しなくても乗員が生活できる環境を維持できます。
二酸化炭素も除去される
乗員が呼吸すると、艦内では二酸化炭素が増加します。
そのため、潜水艦には二酸化炭素を除去するための設備も必要です。
さらに、湿度や温度、臭気なども管理し、艦内の空気環境を一定に保つよう設計されています。
潜水艦では空調設備も重要
人間と機械の熱を管理する
潜水艦の内部では、多数の乗員だけでなく、さまざまな電子機器や機械設備が稼働しています。
それらから発生する熱を管理するため、空調設備は非常に重要です。
潜水艦は冷たい海中を航行するからといって、艦内まで常に寒いわけではありません。
艦内温度は空調設備によって管理されます。
湿度や臭気も管理される
潜水艦は外気を自由に取り込める環境ではないため、湿度や臭気なども適切に管理する必要があります。
汗や料理、機械類などからさまざまな臭気が発生する可能性がありますが、環境制御設備によって艦内空気が管理されています。
そのため、「潜水艦の中は必ず臭い」と単純に断定するのは適切ではありません。
潜水艦では昼と夜の感覚が地上と異なる
自然光がほとんど入らない
軍用潜水艦には、一般的な住宅や旅客船のように外を見るための大きな窓は基本的にありません。
潜航中は自然光を見る機会がほとんどないため、外の明るさから昼夜を判断することは困難です。
当直を交代しながら24時間運用する
潜水艦は航行中、操艦や機関監視、ソナー監視などを24時間継続する必要があります。
そのため、乗員は当直を交代しながら勤務し、その合間に食事や睡眠を取ります。
勤務体系は国や海軍、時代によって異なりますが、一般家庭のように全員が夜に眠って朝に起きる生活とは大きく異なります。
潜水艦ではプライバシーが限られている
多くの設備を共同で使用する
潜水艦では、寝台、食事スペース、トイレ、洗浄設備など、多くの生活設備を複数の乗員が共同利用します。
限られた船体内部で大勢が生活するため、一人ひとりに広い個室を用意することは困難です。
そのため、地上での生活と比べるとプライベートな空間は非常に限られています。
持ち込める私物にも制約がある
潜水艦では収納スペースも限られています。
そのため、乗員が自由に大量の私物を持ち込めるわけではありません。
衣類や日用品なども、決められた収納場所に収める必要があります。
原子力潜水艦と通常動力潜水艦では生活環境が異なる
原子力潜水艦は長期潜航に向いている
原子力潜水艦は、原子炉から長期間エネルギーを得られます。
そのため、推進だけでなく、造水や空調、酸素供給などの設備を運転しながら長期間潜航できます。
ただし、実際の任務期間は食料や消耗品、乗員の運用上の条件などにも左右されます。
通常動力潜水艦は比較的小型の艦が多い
ディーゼル・エレクトリック方式などの通常動力潜水艦は、原子力潜水艦と比べて小型の艦が多い傾向があります。
そのため、居住スペースがより限られる場合があります。
ただし、大型の通常動力潜水艦も存在するため、「原子力潜水艦は快適で通常動力潜水艦は必ず狭い」と単純に分けることはできません。
艦の大きさや設計思想、乗員数、任務内容によって生活環境は異なります。
潜水艦の生活環境は限られた空間を最大限活用している
潜水艦には、乗員が長期間生活するためのシャワーなどの洗浄設備、トイレ、寝台、調理設備、空調設備などが備えられています。
ただし、地上の住宅と比較するとスペースは非常に限られており、浴槽のように広い場所を必要とする設備は一般的ではありません。
特に潜水艦では、限られた耐圧船体の内部に任務用設備と生活設備の両方を配置する必要があります。
そのため、潜水艦の生活環境は決して広々としているわけではありませんが、長期間の航海や潜航を続けられるよう、水・空気・食事・睡眠・衛生などを維持するための設備が効率的にまとめられているのが大きな特徴です。
以上、潜水艦の中に風呂はあるのか、生活環境についてでした。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
















