日本最大のクレーン船「海翔」とは
日本最大のクレーン船として知られているのが、寄神建設株式会社が保有する大型起重機船「海翔(かいしょう)」です。
海翔は、最大4,100トンの吊り上げ能力を持つ巨大な作業船です。
国土交通省の資料でも「国内最大の吊り能力を有する4,100t吊起重機船」と紹介されています。
ここでいう「日本最大」とは、船体の長さや総トン数ではなく、主に起重機船としての吊り上げ能力が国内最大という意味です。
橋梁や防波堤などの建設では、数百トンから数千トンにもなる巨大な構造物を海上で持ち上げなければならない場合があります。
海翔は、こうした超重量物の吊り上げや運搬、据え付けなどを行うために使用される特殊な作業船です。
日本最大の起重機船「海翔」の基本スペック
海翔は、1987年に建造された大型起重機船です。
主な仕様は次のようになっています。
最大吊り上げ能力は4,100トン
海翔最大の特徴は、4,100トンという非常に大きな吊り上げ能力です。
一般的な乗用車を1台約1.5トンと仮定すると、重量だけで約2,700台分に相当します。
ただし、4,100トンの物体であればどのような位置でも自由に吊り上げられるという意味ではありません。
実際の許容荷重は、ジブの角度や作業半径、吊り位置、施工条件などによって変化します。
そのため「4,100トン吊り」という数字は、海翔の最大級の吊り上げ能力を示す代表的な数値と考えるとよいでしょう。
長さは120m、幅は55m
海翔の船体は、長さ120m、幅55m、深さ7.5mという非常に大きなサイズです。
特に幅55mという横幅の広さが特徴で、一般的な貨物船や旅客船とは大きく異なる形状をしています。
大型起重機船では、巨大な重量物を吊り上げた際の安定性を確保する必要があります。
そのため、幅広い船体を持つことは重要な特徴の一つです。
巻上高さは水面上約120m
海翔のクレーンは、水面上約120mの巻上高さを持っています。
これは、非常に高い位置まで吊り荷を持ち上げられることを意味します。
ただし、「海翔そのものの高さが120m」という意味ではありません。
正確には、クレーン設備による巻上高さが水面上約120mということです。
海翔の最大の特徴は巨大な2基のジブ
海翔の外観で特に目立つのが、船体上部に設置された2基の巨大なジブです。
ジブとは、クレーンの腕にあたる部分です。
3脚トラス式A型ジブを2基装備
海翔には、3脚トラス式A型ジブが2基搭載されています。
寄神建設によると、この構造は業界初として採用されたものです。
2基の巨大なジブを使用することで、非常に重い構造物を吊り上げることができます。
海翔の外観が一般的なクレーン船と大きく異なって見えるのも、この巨大なジブ構造によるものです。
ジブの角度を変えて作業する
海翔は、ジブ起伏式と呼ばれる方式を採用しています。
ジブの角度を変えることで、吊り荷との距離や吊り上げ位置を調整します。
クレーンでは、吊り荷がクレーン本体から遠くなるほど大きな力が必要になります。
そのため、作業半径と吊り上げ能力のバランスを考えながら施工することが重要です。
起重機船とクレーン船の違い
海翔は一般的には「クレーン船」と呼ばれることがありますが、港湾工事や建設業界では「起重機船」という名称がよく使われます。
起重機とはクレーンを意味するため、基本的には、
起重機船=クレーンを搭載した作業船
と考えて問題ありません。
専門分野では「起重機船」と呼ばれることが多い
国土交通省などの公的資料では、「クレーン船」よりも「起重機船」という名称が使われることが多くなっています。
そのため、海翔を正確に説明する場合は、
4,100トン吊り起重機船「海翔」
と表現すると適切です。
海翔はどのような工事に使用されるのか
海翔は、通常の陸上クレーンでは対応が難しい海上の大型工事で使用されます。
特に、大型橋梁や港湾施設などの建設で活躍しています。
大型橋桁の架設
代表的な用途の一つが、橋桁の架設です。
橋を建設する際には、工場や岸壁などで製作した巨大な橋桁を海上から橋脚の間に設置する方法があります。
橋桁が数百トン、あるいは数千トン規模になる場合、通常のクレーンでは吊り上げることができません。
そこで、海翔のような大型起重機船が使用されます。
橋桁を吊り上げた後、所定の位置まで運び、橋脚の上へ慎重に据え付けます。
ケーソンの据え付け
港湾工事では、ケーソンの設置にも海翔が使用されます。
ケーソンとは、防波堤や岸壁などに使用される大型の箱状構造物です。
主に鉄筋コンクリートなどで造られ、非常に大きなものになると重量は数千トンに達します。
こうした巨大なケーソンを吊り上げ、海中の所定位置へ設置する際にも大型起重機船が活躍します。
実際に海翔は、下田港などの港湾工事でケーソンの積み出しや据え付けに使用されています。
海上構造物の撤去にも活用される
大型起重機船は、新しい構造物を設置するだけでなく、既存構造物を撤去する際にも利用できます。
老朽化した橋桁や大型設備などを海上から吊り上げて撤去する工事です。
数百トンを超える構造物を一度に取り外すことで、施工期間を短縮できる場合もあります。
海翔が携わった代表的な工事
海翔は、1987年の建造以来、日本各地の大型プロジェクトに投入されてきました。
関西国際空港連絡橋
代表的な施工実績の一つが、関西国際空港連絡橋です。
関西国際空港は海上に建設された空港であり、本土と空港島を結ぶ巨大な連絡橋が建設されています。
海上で大型橋梁を施工するには、大型起重機船が重要な役割を果たします。
東京湾横断道路
海翔は、東京湾横断道路の建設にも使用されています。
東京湾横断道路は、現在の東京湾アクアラインを構成する道路です。
東京湾を横断する巨大なインフラを建設する際には、海上での大規模な施工が必要となりました。
神戸空港連絡橋
神戸空港も人工島に建設された空港です。
本土側と空港島を結ぶ神戸空港連絡橋の建設でも、海翔が使用されています。
女神大橋や牛根大橋
海翔は、女神大橋や牛根大橋など、さまざまな大型橋梁工事にも投入されています。
このように、海翔は日本の海上インフラ建設を支えてきた代表的な大型起重機船です。
海翔が数千トンの構造物を吊り上げられる理由
数千トンもの重量物を吊り上げると、クレーン側にも非常に大きな力が加わります。
海上で安全に作業するためには、吊り上げ能力だけでなく、船体の安定性も重要です。
幅広い船体で安定性を確保する
海翔は幅55mという非常に幅広い船体を持っています。
大型起重機船では、吊り荷によって船体が大きく傾かないようにすることが重要です。
幅広い船体は、海上で大型構造物を扱う際の安定性確保に役立ちます。
バラストなどで船体姿勢を管理する
大型起重機船では、重量物を吊り上げた際に船体の傾きや喫水が変化します。
そのため、バラストなどを利用して船体姿勢を管理しながら施工します。
バラストとは、船体の重量バランスを調整するために使用する水などの重りです。
吊り荷の重量や位置に応じて適切にバランスを取ることで、安全な作業につなげます。
海翔は自分で航行する船なのか
海翔のような大型起重機船は、一般的な貨物船や客船とは目的が異なります。
主な目的は高速で航行することではなく、海上で巨大構造物を吊り上げたり据え付けたりすることです。
他の作業船と連携して運用される
大型起重機船の施工では、曳船や係留設備などと連携しながら船体位置を調整することがあります。
海上では風や波、潮流の影響を受けるため、巨大な構造物を正確な位置へ設置するには船体の位置管理が非常に重要です。
そのため、海翔単独で作業するというよりも、複数の作業船や設備を組み合わせて工事を進める場合があります。
1987年建造でも現在まで使われている
海翔は1987年に建造されました。
非常に長い期間にわたって使用されている起重機船ですが、現在でも大型港湾工事などに投入されています。
大型起重機船は特殊な設備
4,000トン級の重量物を扱える起重機船は非常に特殊です。
船体だけでなく、巨大なジブ、巻上設備、制御設備など、多くの専用設備を必要とします。
そのため、適切な整備や管理を行いながら長期間使用されるケースがあります。
海翔もその代表的な船の一つです。
日本最大のクレーン船と呼ぶ際の注意点
海翔について「日本最大のクレーン船」と説明する場合は、その基準を明確にしておくことが大切です。
吊り上げ能力を基準に日本最大
海翔の最大吊り上げ能力は4,100トンです。
国土交通省の資料でも、国内最大の吊り能力を持つ起重機船として紹介されています。
したがって、
「国内最大の吊り上げ能力を持つ起重機船」
と説明するのが最も正確です。
一方で、日本で最も長い船や最も総トン数が大きい船という意味ではありません。
洋上風力向けの大型作業船とは種類が異なる
近年は、洋上風力発電設備の建設に使用するSEP船や、大型クレーンを搭載したさまざまな海洋作業船が登場しています。
これらは海翔と構造や用途が異なります。
そのため、「日本最大のクレーン船」という言葉を使う場合は、従来型の起重機船における吊り上げ能力を基準にした表現であることを理解しておくとよいでしょう。
まとめ
日本最大のクレーン船として知られているのが、寄神建設が保有する4,100トン吊り起重機船「海翔」です。
海翔は、長さ120m、幅55mという巨大な船体を持ち、3脚トラス式A型ジブを2基搭載しています。
最大吊り上げ能力は4,100トンで、国内最大の吊り能力を持つ起重機船として国土交通省の資料でも紹介されています。
主な用途は、大型橋桁やケーソンなどの吊り上げ、運搬、据え付けです。
関西国際空港連絡橋、東京湾横断道路、神戸空港連絡橋など、日本を代表する大型インフラの建設にも携わってきました。
海翔の最大の特徴は、単に巨大な物体を持ち上げられることだけではありません。
数千トン級の構造物を海上で扱い、所定の位置へ正確に据え付けられる点にあります。
そのため海翔は、巨大な「船」というよりも、海上を舞台に超重量物を扱う巨大な建設クレーンと考えると、その役割をイメージしやすいでしょう。
以上、日本最大のクレーン船についてでした。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。





