起重機船とクレーン船の違いについて

目次

起重機船とクレーン船の違いとは

起重機船とクレーン船は、基本的には同じ種類の作業船を指します。

国土交通省の用語集でも「起重機船=クレーン船(floating crane)」とされており、海上でクレーンを使って重量物を吊り上げたり、移動させたり、据え付けたりするために使用されます。

そのため、「起重機船」と「クレーン船」に明確な構造上の違いがあるわけではありません。

ただし、実際の港湾工事や海洋工事では、「起重機船」という言葉が技術資料や行政資料で使われることが多く、「クレーン船」は一般にも理解しやすい呼び方として使われる傾向があります。

また、クレーンを搭載している船がすべて起重機船に分類されるわけではありません。

貨物の積み降ろしを目的としたクレーン付き貨物船などもあるため、船の主な用途によって区別することが重要です。

起重機船とは

起重機船とは、クレーンによる作業を主な目的とする作業船です。

港湾工事や海洋工事では、陸上のクレーンでは対応しにくい海上の重量物を扱うために利用されます。

起重機船の主な役割

起重機船の代表的な役割は、重量物の吊り上げや据え付けです。

たとえば、防波堤を建設する際には、ケーソンと呼ばれる大型のコンクリート構造物を吊り上げ、所定の位置に据え付ける作業が必要になります。

このような海上での重量物施工に起重機船が使用されます。

また、橋梁部材や大型ブロック、鋼構造物などを海上から施工する場合にも活用されます。

起重機船はクレーン作業が主目的

起重機船の特徴は、単に「クレーンを搭載している船」ではなく、クレーン作業そのものが主な役割である点です。

船によっては荷役用クレーンを装備している貨物船もありますが、そうした船は貨物輸送が主目的です。

一方、起重機船は重量物を吊り上げたり、移動させたり、据え付けたりすることを目的として運用されます。

この違いを理解すると、起重機船の特徴が分かりやすくなります。

クレーン船とは

クレーン船とは、一般的に起重機船と同じ意味で使われる名称です。

港湾工事や海洋土木の分野でも、起重機船をクレーン船と呼ぶことがあります。

起重機船とクレーン船は基本的に同義

国土交通省の資料でも、起重機船とクレーン船は同じものとして扱われています。

そのため、一般的な説明では、

「起重機船=クレーン船」

と考えて問題ありません。

ただし、文章や資料によって使用される言葉が異なる場合があります。

「起重機船」は専門的な技術資料や工事関係資料で見かけることが多く、「クレーン船」は一般向けの記事やニュースなどでも使われる比較的分かりやすい表現です。

「クレーン船」という言葉が広い意味で使われることもある

注意したいのは、「クレーン船」という言葉が必ずしも厳密な船種分類として使われるとは限らないことです。

一般的な会話では、クレーンを搭載している船を幅広くクレーン船と呼ぶ場合があります。

しかし、技術的には、貨物船に荷役用クレーンが設置されているだけでは、必ずしも起重機船とは呼ばれません。

そのため、専門的な文脈では「何を主目的とする船なのか」を確認することが重要です。

起重機船とクレーン船の違いを比較

起重機船とクレーン船を比較すると、次のようになります。

項目起重機船クレーン船
基本的な意味クレーン作業を主目的とする作業船基本的に起重機船と同義
主な用途重量物の吊り上げ・移動・据え付け基本的に同じ
使用される場面港湾・土木・行政資料などでよく使われる一般向けの説明でも使われる
構造上の違い特別な違いはない特別な違いはない
英語表現floating craneなどfloating craneなど

このように、起重機船とクレーン船の違いは、船そのものの違いというより、主に呼び方の違いと考えると分かりやすいでしょう。

起重機船にはどのような種類がある?

起重機船は、クレーンの構造や船の移動方法によっていくつかのタイプに分けられます。

旋回式起重機船

旋回式起重機船は、クレーンの上部構造を左右に旋回できるタイプです。

クレーンを旋回させることで、船体を大きく移動させなくても吊り荷の位置を変えられるため、比較的柔軟な作業ができます。

港湾工事や海上工事など、さまざまな作業に使用されます。

固定式起重機船

固定式起重機船は、クレーンの旋回機能を持たないタイプです。

クレーンの向きが基本的に固定されているため、吊り荷の位置を変える際には船体そのものを移動させる場合があります。

重量物の吊り上げに対応した大型の固定式起重機船も存在します。

ただし、固定式だから必ず吊り上げ能力が高いわけではなく、能力は船やクレーンの設計によって異なります。

非自航式起重機船

日本では、自力航行を主目的としない非自航式の起重機船が多く使用されています。

非自航式の場合、タグボートや曳船などによって作業場所まで移動します。

港湾工事では作業場所がある程度限定されるため、自航能力を持たない大型作業船も広く利用されています。

自航式のクレーン船

自航式のクレーン船は、船自体に推進装置を備え、自力で航行できるタイプです。

海外の大型海洋工事などでは、自航能力を持つ大型クレーン船も使用されています。

そのため、「起重機船はすべて非自航式」と考えるのは正しくありません。

日本では非自航式が多いものの、自航式も存在します。

起重機船とクレーン付台船の違い

起重機船と似た作業船として、クレーン付台船があります。

クレーン付台船とは、台船の上にクローラークレーンなどの移動式クレーンを搭載したものです。

クレーン付台船は資料によって分類が異なる

起重機船とクレーン付台船の関係は、資料によって扱いが異なります。

技術資料によっては、起重機船とクレーン付台船を別の種類として区別しています。

一方で、業態分類や統計などでは、クレーン付台船を起重機船に含めて扱う場合もあります。

そのため、

「起重機船とクレーン付台船は完全に別物」

と断定するのは適切ではありません。

より正確には、

「構造や用途によって区別されることがあるが、分類上は起重機船に含まれる場合もある」

と理解するとよいでしょう。

クレーン付台船の特徴

クレーン付台船は、台船に移動式クレーンを搭載する構造になっています。

比較的軽量な荷物の吊り上げや、港湾工事における各種施工に利用されることがあります。

ただし、クレーンの能力や台船の大きさによって性能は大きく異なります。

そのため、「クレーン付台船は必ず小型・低能力」とは限りません。

クレーンを搭載していても起重機船とは限らない

船舶の中には、クレーンを搭載していても起重機船には分類されないものがあります。

クレーン付き貨物船

貨物船の中には、貨物を積み降ろすためのクレーンを船上に備えているタイプがあります。

こうした船は、クレーンを装備していても、主な目的は貨物輸送です。

そのため、一般的な港湾工事で使用される起重機船とは役割が異なります。

起重機船との違いは「主目的」

両者を見分けるポイントは、船の主な目的です。

クレーンによる吊り上げや据え付けが主目的であれば起重機船です。

一方、貨物輸送や別の作業が主目的であり、クレーンが補助設備として設置されているだけの場合は、通常は別の船種として扱われます。

起重機船が使われる主な工事

起重機船は、港湾・海洋工事を中心にさまざまな現場で利用されています。

防波堤工事

防波堤工事では、ケーソンなどの大型構造物を海上から据え付ける必要があります。

陸上クレーンでは届かない場所でも作業できるため、大型の起重機船が活躍します。

岸壁工事

岸壁や桟橋を建設する際にも、コンクリート製品や鋼製部材などの重量物を設置するために起重機船が使用されます。

海側から直接施工できることが大きなメリットです。

橋梁工事

海上や河川上の橋梁工事では、大型の橋桁や橋梁部材をクレーン船で吊り上げて設置することがあります。

陸上から大型クレーンを設置することが難しい場所では、海上から施工できる起重機船が有効です。

海洋構造物の設置

海上設備や各種海洋構造物の設置にも大型クレーン船が利用されます。

洋上風力発電設備の施工では、起重機船だけでなく、SEP船や風力発電設備の設置に特化した特殊船なども使用されます。

起重機船と陸上クレーンの違い

起重機船は海上に浮かんだ状態で作業するため、陸上クレーンとは施工条件が大きく異なります。

海象条件の影響を受ける

起重機船による作業では、風だけでなく波や潮流、潮位なども考慮する必要があります。

水面に浮いている船体は海象条件によって動揺するため、重量物を扱う際には慎重な施工計画が必要です。

船体の安定性も重要

重量物を吊り上げると、クレーンだけでなく船体にも大きな力がかかります。

そのため、

吊り荷の重量
作業半径
船体の姿勢
波浪
風
潮流

などを考慮しながら作業します。

安全な海上施工を行うためには、クレーンの能力だけでなく船体の安定性も重要です。

起重機船は英語で何という?

起重機船は英語で「floating crane」などと表現されます。

日本の公的な港湾用語集でも、起重機船の英語表現としてfloating craneが使用されています。

また、船の種類や用途によっては、

crane vessel
crane ship

などの表現が使われることもあります。

日本語の記事で説明する場合は、

「起重機船は英語でfloating craneなどと呼ばれる」

としておくと分かりやすいでしょう。

起重機船とクレーン船の違いに関するよくある疑問

起重機船とクレーン船は別の船ですか?

基本的には同じ種類の船を指します。

国土交通省の資料でも、起重機船とクレーン船は同義として扱われています。

したがって、一般的には「起重機船=クレーン船」と考えて問題ありません。

クレーンが付いている船はすべて起重機船ですか?

すべてが起重機船というわけではありません。

貨物船などにも荷役用クレーンを備えている船があります。

起重機船かどうかを判断する際には、クレーンによる重量物の吊り上げや据え付けが主目的であるかどうかがポイントになります。

起重機船は自分で航行できますか?

自航できるタイプと、自航できないタイプの両方があります。

日本では非自航式の起重機船が多く、タグボートなどによって作業場所まで移動します。

一方、海外を含めると自航能力を持つ大型クレーン船も存在します。

起重機船とクレーン付台船は同じですか?

必ずしも同じとは限りません。

技術資料では別々に分類される場合がありますが、資料によってはクレーン付台船を起重機船の一種として扱う場合もあります。

そのため、利用している資料や工事上の分類を確認することが重要です。

まとめ

起重機船とクレーン船は、基本的には同じ種類の作業船を意味します。

国土交通省の用語でも「起重機船=クレーン船」とされており、海上でクレーンを使って重量物を吊り上げたり、移動させたり、据え付けたりするために使用されます。

両者に明確な構造上の違いがあるわけではありませんが、「起重機船」は港湾工事や土木工事などの技術資料で使用されることが多く、「クレーン船」は一般にも分かりやすい呼び方として使われる傾向があります。

一方、クレーンを搭載している船がすべて起重機船というわけではありません。

貨物輸送を目的とするクレーン付き貨物船なども存在するため、船の名称だけでなく「何を主目的としているか」で判断することが大切です。

また、クレーン付台船については、起重機船とは別に分類される場合もあれば、起重機船の一種として扱われる場合もあります。

そのため、起重機船とクレーン船の違いを理解する際には、

「起重機船とクレーン船は基本的に同義だが、クレーンを搭載した船すべてを意味するわけではない」

と覚えておくと分かりやすいでしょう。

以上、起重機船とクレーン船の違いについてでした。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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