潜水艦の操舵室の特徴や設備について

潜水艦で艦の航行や潜航、浮上などを指揮する中心的な区画は、一般に「発令所」と呼ばれます。

日常的な表現では「操舵室」と呼ばれることもありますが、発令所の役割は舵を操作することだけではありません。

方向舵や潜舵の操作に加えて、深度管理、航法、潜航・浮上、周囲の監視、戦術判断、通信、安全管理など、潜水艦を運用するための重要な機能が集められています。

そのため、発令所は潜水艦の「頭脳」にあたる場所といえます。

水上艦では、艦橋、操舵室、戦闘指揮所などが別々の区画に分かれていることがあります。

一方、潜水艦では艦内空間が限られているため、これらの機能の多くが発令所や、その周辺区画に集約されています。

目次

潜水艦の発令所の特徴

耐圧船殻の内部に設けられている

潜水艦の発令所は、海水圧に耐えるための耐圧船殻の内部に設けられています。

水上艦の艦橋のように大きな窓から外を見ることはできません。

乗員は、潜望鏡、電子光学マスト、ソナー、レーダー、航法装置などから得られる情報をもとに、艦の周囲の状況を判断します。

発令所の正確な位置は艦型によって異なりますが、多くの潜水艦では船体中央部付近に配置されています。

従来型の潜水艦では、光学式潜望鏡の鏡筒が発令所まで通っていたため、発令所、潜望鏡、セイルなどの位置関係が設計に大きな影響を与えていました。

現代の一部の潜水艦では、船体内部まで鏡筒を通さない電子光学マストが採用されています。

そのため、従来よりも発令所の配置に自由度を持たせやすくなっています。

外の様子を直接見ることができない

潜航中の潜水艦では、乗員が窓越しに外の景色を確認することはできません。

周囲の状況を把握するためには、次のような装置を利用します。

・潜望鏡または電子光学マスト

・パッシブソナーやアクティブソナー

・水上航行時などに使用するレーダー

・慣性航法装置

・ジャイロコンパス

・電子海図

・通信や電波に関する情報

・深度、針路、速力、姿勢を示す計器

発令所では、これらの情報を統合し、自艦の位置や姿勢、周囲の船舶、海底地形、航路上の危険などを把握します。

潜水艦の乗員には、目に見えない周囲の状況を、複数のセンサー情報から正確に組み立てる能力が求められます。

狭い空間に多くの設備が集められている

潜水艦は、船体内部の空間が非常に限られています。

そのため、発令所も必ずしも広いとは限りません。

壁面や操作席の周囲には、表示装置、操作盤、通信機器、警報装置、配線、配管などが効率よく配置されています。

複数の乗員が近い距離で勤務し、命令や報告を復唱しながら艦を運用します。

現代の潜水艦では、アナログ計器や大型の操舵輪に代わり、多機能ディスプレーや統合型コンソールを採用する例が増えています。

ただし、すべてがタッチパネル化されているわけではありません。

誤操作防止や非常時の操作性を考慮し、物理ボタン、レバー、スイッチ、トラックボールなどを併用する場合もあります。

潜水艦を動かす操艦設備

方向舵の操作装置

方向舵は、潜水艦の進行方向を左右に変えるための舵です。

操舵担当者は、艦長や当直士官などから指示された針路に従い、操舵装置を操作します。

古い潜水艦では、水上艦と同じような操舵輪が使われることがありました。

現代の潜水艦では、スティック式の操作装置や統合型操艦コンソールが採用される場合があります。

ただし、操作方式は海軍や艦型によって異なります。

また、現代の潜水艦では、自動操舵装置によって指定された針路を維持し、操舵担当者がその状態を監視することもあります。

潜舵の操作装置

潜水艦には、左右方向を制御する方向舵のほかに、深度や縦方向の姿勢を調整する潜舵があります。

潜舵は、英語でダイビングプレーンやハイドロプレーンなどと呼ばれます。

潜舵は水流を利用して効果を生み出すため、基本的には速力が高いほど強く作用し、低速では効きが弱くなります。

深度変更は潜舵だけで行うものではありません。

速力、浮力、船体の前後バランス、艦尾側の舵などを組み合わせて制御します。

艦首潜舵とセイル潜舵

潜水艦の前方に設けられる水平舵を、艦首潜舵と呼びます。

艦首潜舵は、船体前方の水流を利用して、艦の深度や縦姿勢の調整を補助します。

艦によっては、艦首ではなく、セイルと呼ばれる上部構造物の側面に潜舵を設けています。

このような舵は、セイルプレーンやフェアウォータープレーンと呼ばれることがあります。

一部の潜水艦では、接岸時や氷海での運用などを考慮し、潜舵を回転させたり格納したりできる構造が採用されています。

艦尾の舵

艦尾には、方向舵や深度制御に使用する舵面が設けられています。

一般的な十字型の配置では、縦方向の舵面が左右の旋回を担当し、横方向の舵面が縦姿勢や深度の調整を担当します。

一方、現代の一部の潜水艦では、4枚の舵面を斜めに配置したX舵が採用されています。

X舵では、複数の舵面を組み合わせて動かし、旋回や深度変更を行います。

海底近くで下向きの舵が大きく突き出しにくいことや、複数の舵面による制御が可能になることなどが利点として挙げられます。

その一方で、舵の動きを調整する制御システムは複雑になります。

深度や姿勢を確認する設備

深度計

深度計は、潜水艦が海面からどの程度の深さにいるかを表示する装置です。

潜水艦の位置を表す場合は「水深」ではなく、「深度」という言葉を使用します。

水深は、海面から海底までの距離を指します。

一方、深度は海面から潜水艦までの深さを指します。

また、潜水艦と海底との間に残されている距離は、艦底余裕などと表現されます。

発令所では、現在の深度だけでなく、上昇しているのか、下降しているのか、安定しているのかも確認します。

現代の潜水艦では、深度、深度変化、艦の姿勢などが統合ディスプレー上に表示される場合があります。

姿勢表示装置

潜水艦は、水中で艦首を上げたり下げたりしながら深度を変更します。

この前後方向の傾きを、縦傾斜やトリムと呼びます。

発令所では、次のような情報を確認します。

・艦首上げや艦首下げの角度

・左右方向の傾き

・旋回率

・方向舵の角度

・潜舵の角度

・深度の変化

・設定された深度との差

潜水艦では、燃料、清水、物資の消費や、魚雷などの重量物の移動によって船体の重量バランスが変わります。

そのため、単に舵を操作するだけでなく、艦全体の浮力や前後のバランスも調整する必要があります。

速力や推進状態の表示装置

発令所では、現在の速力、推進器の回転数、推進装置への指令、機関の状態などを確認します。

機関や電動機の詳細な監視は、専用の機関区画や操作室で行われることもあります。

それでも、速力の指令や推進状態に関する重要な情報は、発令所で把握できるようになっています。

潜水艦では、速力を上げると推進器や船体周辺の水流による音が大きくなる傾向があります。

そのため、速力の選択は移動時間だけでなく、隠密性やソナーの聴取条件にも関係します。

潜航と浮上を管理する設備

主バラストタンクの制御装置

潜水艦は、主バラストタンクを使って大きな浮力の変化を生み出します。

水上航行中の主バラストタンクには空気が入り、タンク内部の海水が排出されています。

潜航するときは、主バラストタンク上部のベント弁を開き、内部の空気を外へ逃がします。

すると、タンク下部の開口部から海水が流入し、潜水艦全体の浮力が減少します。

発令所では、主バラストタンクに関係する弁や空気系統の状態を確認します。

艦型によって異なりますが、主に次のような情報が管理されます。

・ベント弁の開閉状態

・注水や排水の状態

・ブロー系統の状態

・圧縮空気系統の圧力

・関連する警報

・艦全体の浮力状態

主バラストタンクの細かな表示方式や操作場所は、潜水艦ごとに異なります。

通常浮上と緊急浮上

通常の浮上では、潜水艦は推進力と潜舵を使いながら徐々に深度を浅くします。

海面へ近づいたあと、必要に応じて主バラストタンク内の海水を排出し、水上で十分な浮力を確保します。

一方、重大な浸水や深度制御不能などの緊急時には、高圧空気を主バラストタンクへ送り込み、海水を急速に排出する緊急ブローが行われる場合があります。

緊急浮上は、船体や乗員に大きな負担を与える可能性があります。

そのため、通常の浮上とは異なる非常手段として扱われます。

具体的な手順や設備の構成は、艦型によって異なり、詳細が公開されていない部分もあります。

トリムタンクの制御装置

主バラストタンクが大きな浮力変化を担当するのに対し、トリムタンクは艦の前後バランスや細かな重量調整に使われます。

魚雷を発射した場合や、燃料、清水、物資を消費した場合には、艦内の重量分布が変化します。

そのままでは艦首や艦尾が上がりやすくなったり、深度を維持しにくくなったりします。

そこで、タンク間で水を移動させたり、必要な量の海水を取り込んだりして、艦の姿勢を調整します。

ただし、乗員が少し移動するたびに毎回調整するわけではありません。

艦全体として無視できない重量変化や姿勢変化が生じたときに、必要な調整が行われます。

航海と位置確認に関する設備

ジャイロコンパス

ジャイロコンパスは、潜水艦の針路を確認するための重要な装置です。

磁気コンパスとは異なり、真北を基準とした方位を示します。

潜水艦の船体には金属や多数の電気機器が使用されているため、磁気だけに頼らない方位確認が必要です。

ジャイロコンパスの情報は、操舵や航法の基準として使用されます。

慣性航法装置

潜水艦は、通常の潜航深度ではGPSの電波を受信できません。

GPSに使用される電波は、海水中を深く伝わらないためです。

そのため、潜水艦では慣性航法装置を使って、現在位置を継続的に推定します。

慣性航法装置は、艦の加速度や回転運動を計測し、直前の位置からどの方向へ、どの程度移動したかを計算します。

外部へ電波を発信せずに位置を推定できるため、隠密性を重視する潜水艦に適しています。

ただし、慣性航法装置には時間の経過とともに誤差が蓄積します。

そのため、浮上時やマストを海面上に出したときに得た衛星測位情報などを利用し、必要に応じて位置を修正します。

艦型によっては、水深情報や海底地形に関する情報を位置確認の補助に利用する場合もあります。

歴史的には、天体の位置を利用する天測も行われてきました。

電子海図と航海表示装置

現代の潜水艦では、紙の海図に加えて電子海図や統合航海表示装置が使用されます。

画面上には、次のような情報を表示できます。

・自艦の推定位置

・予定航路

・過去の航跡

・水深

・海底地形

・航行上の危険区域

・周囲の船舶

・航路標識

・探知した目標の情報

ただし、現代の潜水艦でも、非常時や装置故障に備えて、紙の海図や独立した航法資料を併用する場合があります。

艦外を観察する設備

光学式潜望鏡

従来型の潜水艦では、光学式潜望鏡を使って海面上を観察します。

潜水艦は潜望鏡深度まで浮上し、潜望鏡の先端だけを海面上へ出します。

潜望鏡は、主に次のような目的で使用されます。

・周囲の船舶や航空機の確認

・浮上前の安全確認

・沿岸地形や航路標識の確認

・目標の方位や動きの観測

・天候や海面状態の確認

歴史的な潜水艦では、観測者が接眼部をのぞきながら、潜望鏡の周囲を歩くようにして全周を観察する構造が見られました。

ただし、光学式潜望鏡であっても、操作方法や表示方式は艦型によって異なります。

電子光学マスト

現代の一部の潜水艦では、光学式潜望鏡の代わりに電子光学マストが採用されています。

電子光学マストは、先端に取り付けられたカメラなどで海面上を撮影し、その映像を発令所のディスプレーへ送ります。

機種によっては、可視光カメラ、赤外線撮像装置、暗視用センサーなどが搭載されます。

電子光学マストでは、大型の鏡筒を発令所まで貫通させる必要がありません。

また、撮影した映像を複数の乗員が同時に確認したり、記録したりできます。

そのため、艦長、航海担当者、戦術担当者などが同じ映像を共有しながら判断できます。

レーダー

潜水艦も、水上航行中やレーダーマストを使用できる状態では、レーダーを利用できます。

レーダーは、周囲の船舶、陸地、海岸線、ブイなどを確認するために役立ちます。

ただし、レーダーは自ら電波を発信する装置です。

使用すると、相手の電波探知装置に発見される可能性があります。

そのため、隠密行動中には常時使用するのではなく、必要性と危険性を考慮して使用されます。

ソナーと戦術情報に関する設備

パッシブソナー

パッシブソナーは、自ら音波を発射せず、周囲の音を受信する装置です。

船舶や潜水艦からは、推進器、機関、ポンプ、水流などに由来する音が発生します。

パッシブソナーは、これらの音を分析し、相手の方位や特徴を推定します。

自艦から音波を発しないため、隠密性を保ちやすい点が大きな特徴です。

ただし、パッシブソナーで目標を探知しても、正確な距離が直ちに分かるとは限りません。

そのため、時間経過による方位変化、自艦の進路変更、音の特徴、過去の探知情報などを組み合わせて、目標の位置や動きを推定します。

アクティブソナー

アクティブソナーは、自艦から音波を発射し、物体から返ってくる反射音を分析する装置です。

反射音が戻るまでの時間などから、物体までの距離を求めやすいという特徴があります。

一方、自艦が音波を発射するため、その音を相手に探知される可能性があります。

そのため、軍用潜水艦では、状況に応じて慎重に使用されます。

戦術情報表示装置

現代の潜水艦では、ソナー、電子光学マスト、レーダー、航法装置、通信などから得た情報を統合し、戦術状況を画面上に表示します。

表示される情報には、次のようなものがあります。

・自艦の位置と針路

・探知した目標の方位

・目標の推定位置

・目標の推定速力

・目標の推定針路

・識別状況

・周囲の地形や航路

・危険区域

発令所では、これらの情報をもとに、周囲の状況を判断し、安全な航行や戦術行動を行います。

兵器管制に関する設備

兵器管制装置

潜水艦の発令所や、その隣接区画には、魚雷やミサイルなどを運用するための兵器管制装置が置かれる場合があります。

兵器管制装置では、ソナーや各種センサーから得た情報を分析し、目標の運動を推定します。

主に扱われる情報は次のとおりです。

・目標の方位

・目標の推定距離

・目標の推定速力

・目標の推定針路

・自艦との位置関係

・兵器の使用条件

・発射後の誘導情報

ただし、魚雷そのものの保管、整備、発射管への装填などは、通常、魚雷室の担当者が行います。

発令所や兵器管制席では、目標情報の分析、兵器の選択、発射に関する指揮などが行われます。

発射管の状態確認

発令所や兵器管制席では、魚雷発射管の準備状況や安全状態に関する情報を確認できます。

確認される可能性がある情報には、次のようなものがあります。

・発射管への装填状況

・発射準備の進行状況

・艦内側と艦外側の扉の状態

・注水や排水の状態

・安全装置の状態

ただし、これらの情報がすべて発令所の一つの画面に表示されるとは限りません。

艦型によっては、魚雷室側の操作盤、兵器管制席、発令所の表示装置などに分けて表示されます。

通信と艦内連絡の設備

艦内通信装置

発令所は、機関区画、魚雷室、居住区、電池区画など、艦内のさまざまな場所と連絡を取る必要があります。

そのため、次のような艦内通信装置が備えられています。

・艦内電話

・インターホン

・艦内放送装置

・警報ベル

・非常用通信装置

・指令伝達装置

潜水艦では、機器の作動音や換気音があるため、重要な命令は復唱して確認します。

針路、深度、速力などの命令を受けた担当者は、同じ内容を繰り返してから操作します。

これにより、聞き間違いや操作ミスを防ぎます。

艦外通信装置

海水中では、通常の無線通信に使われる電波が大きく減衰します。

そのため、潜水艦が潜航したまま通信できる方法は限られています。

潜水艦では、状況に応じて次のような通信手段が利用されます。

・低い周波数を利用する通信

・通信マスト

・曳航式アンテナ

・衛星通信

・浮上時の通常無線

・水中音響通信

超長波などの低周波通信は、地上の大型送信施設から潜水艦への情報送信に利用される場合があります。

ただし、通信方式は国、艦型、アンテナ設備、潜航深度、運用状況によって異なります。

低周波通信は、潜水艦側で受信する用途が中心になることもあります。

潜水艦から長距離送信する場合には、通信マストを使用したり、別の通信方式を利用したりする必要があります。

通信のためにマストを海面上へ出すと、発見される危険が高まる可能性があります。

そのため、発令所では通信の必要性と隠密性の両方を考慮します。

安全管理に関する設備

浸水や火災の警報装置

潜水艦にとって、浸水と火災は特に重大な危険です。

発令所には、艦内各区画の異常に関する警報や報告が集められます。

監視される主な異常には、次のようなものがあります。

・浸水

・火災

・煙

・電源異常

・機器の故障

・配管の圧力異常

・有害ガス

・酸素や二酸化炭素の異常

・区画の閉鎖状態

ただし、これらの数値がすべて発令所で直接監視されているとは限りません。

専用の環境管理装置や、各区画の担当者が監視し、重大な異常が発生した場合に発令所へ警報や報告が送られることもあります。

発令所では、異常の内容に応じて、応急班の派遣、消火、排水、区画の閉鎖、浮上などを指示します。

水密扉やハッチの状態表示

潜水艦の内部は、複数の区画に分けられています。

区画の間には、水密扉やハッチが設けられています。

これらを閉じることで、浸水、煙、火災などの拡大を抑えます。

発令所では、主要な扉やハッチが開いているか、閉じているかを確認できる場合があります。

また、潜航前には、船外へ通じる開口部や弁が適切に閉じられているかを確認します。

ただし、水密扉を閉めれば、どのような損傷でも完全に浸水を止められるわけではありません。

隔壁の構造や損傷の位置、浸水の規模によって、区画閉鎖の効果は異なります。

艦内空気の監視

潜水艦は、密閉された空間で長時間活動します。

そのため、艦内の空気を安全な状態に保つ必要があります。

監視対象には、酸素、二酸化炭素、一酸化炭素、水素、冷媒ガスなどが含まれる場合があります。

空気再生装置や酸素供給装置の運転は、専用区画や担当部署で管理されることもあります。

重大な異常が発生した場合は、発令所へ警報や報告が送られ、必要な対応が指示されます。

発令所で勤務する主な乗員

艦長

艦長は、潜水艦全体の指揮責任を負います。

通常航行中に常に発令所にいるとは限りません。

潜航や浮上、狭い海域の航行、重要な目標への接近、緊急事態などでは、発令所で直接指揮を執ります。

当直士官

当直士官は、通常航行中の発令所を指揮します。

針路、速力、深度、周囲の状況、艦内からの報告などを総合的に監督します。

必要に応じて艦長へ報告し、指示を受けます。

操舵担当者

操舵担当者は、方向舵や潜舵を操作し、命令された針路や深度を維持します。

古い潜水艦では、方向舵、艦首側の潜舵、艦尾側の潜舵を複数の乗員が分担する構成が見られました。

現代の潜水艦では、統合型操艦装置によって、従来より少ない人数で複数の舵面を制御する場合があります。

航海担当者

航海担当者は、電子海図、紙海図、慣性航法装置、ジャイロコンパスなどを使い、自艦の位置と航路を管理します。

海底地形や水深、周囲の船舶、航行上の危険などを確認し、安全な航海を支えます。

ソナー担当者

ソナー担当者は、周囲の音を監視し、船舶、潜水艦、海中雑音などを分析します。

探知した目標の方位や特徴を発令所へ報告します。

ソナー室が発令所とは別の区画に置かれている場合でも、重要な情報は発令所へ送られます。

戦術・兵器管制担当者

戦術担当者や兵器管制担当者は、ソナー、航法装置、電子光学マストなどから得られた情報を分析します。

目標の位置、速力、針路などを推定し、必要に応じて兵器使用に関する準備を行います。

具体的な役職名や配置人数は、海軍や艦型によって異なります。

発令所の照明に特徴がある理由

暗順応を保つために照明を調整する

従来の潜水艦では、夜間に潜望鏡を使用する際、乗員の目を暗い環境に慣らしておく必要がありました。

そのため、発令所の照明を暗くしたり、赤色系の照明を使用したりすることがありました。

明るい場所から急に暗い海面を見ても、目がすぐには対応できないためです。

現代の潜水艦では、電子光学マストやデジタルディスプレーの採用が進んでいます。

そのため、照明だけでなく、ディスプレーの輝度や表示モードも含めて調整されます。

すべての現代潜水艦が常に赤色照明を使用するわけではなく、具体的な運用は艦型や状況によって異なります。

水上航行時のブリッジとの違い

水上航行時には上部の指揮位置を使用する

潜水艦には、水上航行時に周囲を目視するための指揮位置が設けられています。

多くの場合、セイルの上部にあり、ブリッジや艦橋と呼ばれます。

水上航行中は、艦長、当直士官、見張員などが上部に立ち、周囲の船舶や海面状況を直接確認します。

ただし、水上艦の密閉された艦橋と同じような設備を備えているとは限りません。

潜水艦のブリッジは、露天式または簡易的な構造であることもあります。

実際の操舵装置は艦内にある場合が多い

潜水艦では、水上のブリッジから針路や速力に関する指示を発令所へ伝え、耐圧船殻内の操舵担当者が実際の操作を行う方式があります。

ただし、指揮方法や操作装置の構成は艦型によって異なります。

発令所と水上ブリッジの違いを整理すると、次のようになります。

発令所は、潜航中を含む艦の操艦、深度管理、航法、戦術指揮などを行う中心区画です。

水上ブリッジは、水上航行中の見張りや目視による指揮に使用されます。

操舵席は、通常、発令所内または耐圧船殻内部に設けられ、計器や指示をもとに舵を操作します。

古い潜水艦と現代の潜水艦の違い

古い潜水艦の発令所

第二次世界大戦期や冷戦初期の潜水艦では、次のような設備が多く見られました。

・大型の操舵輪

・機械式レバー

・多数のアナログ計器

・個別の潜舵操作席

・光学式潜望鏡

・紙海図

・機械式または初期の電気式射撃計算装置

・多数のスイッチと表示灯

各担当者が個別の装置を監視し、口頭で報告することで、発令所に情報が集められていました。

現代の潜水艦の発令所

現代の潜水艦では、次のような設備の採用が進んでいます。

・多機能ディスプレー

・統合型操作コンソール

・電子海図

・慣性航法装置

・統合戦術情報システム

・電子光学マスト

・デジタル兵器管制装置

・自動針路維持装置

・自動深度制御装置

・スティック式操作装置

ただし、現代の潜水艦が完全にデジタル化されているとは限りません。

非常時に備えた独立計器、物理スイッチ、紙の資料などが残される場合もあります。

また、自動化が進んでも、人間による監視や判断が不要になるわけではありません。

潜水艦は、水中で外部からの支援を受けにくいため、故障、浸水、火災、航法上の危険などに対して、乗員が迅速に対応する必要があります。

潜水艦の操舵室に関するまとめ

潜水艦で一般に操舵室と呼ばれる場所は、多くの場合、正式には発令所に相当します。

発令所は、単に舵を動かすだけの場所ではありません。

方向舵や潜舵の操作、深度管理、潜航と浮上、航法、ソナー情報の確認、戦術判断、兵器管制、通信、安全管理など、潜水艦の運用に必要な重要機能が集められています。

最大の特徴は、窓のない耐圧船殻内部で、潜望鏡、電子光学マスト、ソナー、航法装置などの情報を使って艦を運用する点です。

古い潜水艦では、操舵輪やアナログ計器を複数の乗員が分担して操作していました。

現代の潜水艦では、多機能ディスプレー、統合コンソール、電子光学マスト、自動制御装置などの採用が進んでいます。

ただし、装置の配置、操作方式、乗員の役割は、海軍や艦型によって大きく異なります。

潜水艦の発令所は、限られた空間に多くの情報と操作機能を集約し、海中での安全な航行と任務遂行を支える中枢区画です。

以上、潜水艦の操舵室の特徴や設備についてでした。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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