「船の『かい(櫂)』と『ろ(艪)』」については、どちらも手漕ぎで船を動かすための道具ですが、それぞれ形状や使い方、構造が異なります。
以下に、両者の違いと特徴を詳しく解説します。
目次
櫂(かい)とは
定義と概要
櫂(かい)は、船を水を押して漕ぐための棒状の道具で、英語では「paddle(パドル)」に相当します。
主に小型の舟(たとえばカヌーや和船など)で用いられます。
特徴
- 船の側面から水に入れて、手で漕ぐ。
- 基本的に「1本を両手で扱う」、もしくは「左右に1本ずつ持つ」。
- 支点がない(ただの棒)ため、力加減やバランスが重要。
- 古代の和船や漁船、カヌーなどで使われてきた。
- 操作は短距離向きで、スピードはあまり出ないが、小回りが利く。
例
- 和船での「さお櫂」や「手櫂(てがい)」。
- カヌーのパドル。
- ボートを進ませるために、手で握って水を掻く道具。
艪(ろ)とは
定義と概要
艪(ろ)は、船尾(または側面)に取り付けて使用する支点付きの漕ぎ道具で、英語では「oar(オール)」に近いですが、特に日本の伝統的な艪は少し特殊です。
特徴
- 船の船尾または側面に固定して使用する。
- てこの原理(支点・力点・作用点)を使って、水を押して前進する。
- 構造上、支点の「ろくそ(艪楔)」が必要で、これに艪をはめて回転させる。
- 日本の艪は「ねじるように回す」ことで推進力を得る、独特の使い方をする。
- 操作は熟練が必要だが、長距離や重い荷物の運搬に向いている。
例
- 日本の伝統的な木造船の艪。
- 舟歌などに出てくる「艪を漕ぐ舟」。
両者の比較まとめ
項目 | 櫂(かい) | 艪(ろ) |
---|---|---|
英語表現 | Paddle | Oar |
支点 | なし(手持ち) | あり(艪楔など) |
操作場所 | 船の側面 | 船尾または側面 |
使用方法 | 水を押して引く | 回転やねじりで水を掻く |
特徴 | シンプル、小回りが利く | 熟練必要、長距離向き |
操作性 | 初心者でも使いやすい | 技術が必要 |
豆知識:「ろかい(櫓櫂)」という言葉
日本語には「ろかい(櫓櫂)」という表現もあり、これは艪と櫂をまとめて表す言葉です。
江戸時代の和船などで「ろかいを漕ぐ」と言えば、櫂でも艪でも使って漕ぐ行為全体を指すことがあります。
現代での使い分け
- スポーツ用やレジャー用ボート:通常は「オール(艪)」を使う。
- カヌーやカヤック:パドル(櫂)を使う。
- 日本の伝統的な手漕ぎ船:艪を用いるのが一般的。
- DIYや釣り船など小型ボート:どちらでも取り付け可能だが、一般にオール型(艪)を用いることが多い。
まとめ
- 「櫂(かい)」はシンプルな手漕ぎ道具で、支点がなく、カヌーなどに使われます。
- 「艪(ろ)」は支点を使ったてこの原理で水を掻く、高度な技術が必要な漕ぎ道具です。
- 用途や操作方法、力の伝え方がまったく異なるため、場面に応じた使い分けが重要です。
以上、船の「かい」と「ろ」についてでした。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。