船の浮力(ふりょく)とは、水中にある物体が受ける上向きの力のことを指します。
この浮力によって船は水に浮かぶことができます。船の浮力はアルキメデスの原理に基づいており、これは古代ギリシャの数学者アルキメデスが発見した物理法則です。
目次
浮力の基本:アルキメデスの原理
アルキメデスの原理は、以下のように説明されます。
「流体中にある物体には、その物体が押しのけた流体の重さに等しい浮力が働く」
これを船に当てはめると、
- 船が水に浮かぶのは、
- 船が沈めた水の体積に相当する「水の重さ」ぶんの浮力が働いていて、
- その浮力と船の重さが釣り合っているから
ということになります。
浮力の仕組みを分かりやすく例えると
たとえば、次のようなケースを考えてみましょう。
重さ1,000kgの鉄の塊 → 浮かばない
鉄の塊は体積が小さく、水をほとんど押しのけないため、浮力も小さいです。
そのため、重さと浮力のバランスが取れず、沈んでしまいます。
同じ1,000kgの鉄でも、船の形にすると → 浮かぶ
船の形にすることで体積を大きく広げ、水をたくさん押しのけるようになります。
そうすると、押しのけた水の重さが1,000kgにもなり、浮力と釣り合って浮かぶのです。
浮力と重さのバランス
浮力と物体の重さ(=重力)との関係によって、物体の動きは次のように分かれます。
浮力 | 重さ | 結果 |
---|---|---|
大 | 小 | 浮く |
小 | 大 | 沈む |
同じ | 同じ | 浮かんでも沈まんでもない(ちょうど浮く) |
船の場合は、ちょうど浮かぶ位置で設計されていて、積載量(積み荷の重さ)によって浮く深さが変わります。
船の設計と浮力
船は、「どれだけの重さに耐えられるか」を正確に計算して設計されています。
このとき重要になる概念が以下の2つです。
排水量(はいすいりょう)
- 船が押しのける水の量(体積)を意味します。
- この排水量に水の密度(海水:1,025kg/m³、淡水:1,000kg/m³)を掛けると、浮力になります。
吃水(きっすい)
- 船がどれくらい水に沈んでいるか(喫水線からの深さ)を表します。
- 積み荷が重くなると吃水が深くなりますが、許容範囲を超えると船が沈む危険性があります。
海水と淡水の違い
- 海水は塩分を含んでいるため、淡水より密度が高いです(約1.025倍)。
- 同じ重さの船を浮かべるとき、海水の方がより大きな浮力を得られるため、船は海水ではやや浅く浮きます。
安定性と浮力の関係
浮力だけでなく、「浮心(ふしん)」や「重心(じゅうしん)」といった概念も、船の安定性に関わってきます。
- 浮心(Center of Buoyancy):水に沈んでいる部分の中心
- 重心(Center of Gravity):船の重さの中心
通常は、浮心が重心よりも下にあると不安定で転覆しやすく、浮心が重心より上にあると安定します。
まとめ
項目 | 内容 |
---|---|
浮力の定義 | 流体中で物体に働く上向きの力 |
根拠となる原理 | アルキメデスの原理(押しのけた水の重さに等しい浮力) |
船が浮く理由 | 大きな体積で水を多く押しのけ、浮力を得ている |
影響する要素 | 排水量、船の重さ、積荷、海水or淡水、安定性(重心と浮心) |
船が沈む条件 | 浮力より重さが大きくなると沈没のリスク |
以上、船の浮力についてでした。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。