結論からいうと、民間用の潜水艇であれば、個人が所有することは可能です。
潜水艦というと、海上自衛隊や海外の海軍が運用する軍用潜水艦をイメージしやすいですが、実際には民間向けの有人潜水艇も存在します。
1人乗りや2人乗りの小型潜水艇から、数人が乗れる観光・研究向けの潜水艇まで、さまざまなタイプがあります。
日本でも、潜水船であることだけを理由として、個人による所有が一律に禁止されているわけではありません。
ただし、購入して所有することと、実際に海で航行・潜航させることは別問題です。
実際に使用するには、船舶の登録や検査、操縦資格、安全基準など、さまざまな制度を確認する必要があります。
潜水艦と潜水艇は意味が少し異なる
一般的に「潜水艦」は軍用船を指すことが多い
日常的に「潜水艦」という言葉を使う場合、海軍や海上自衛隊などが運用する軍用の船を指すことが一般的です。
軍用潜水艦は長期間にわたって水中を航行できるよう設計されており、魚雷発射管やソナー、軍用通信設備などを備えています。
一方、個人でも所有できる可能性があるのは、主に民間用の小型有人潜水艇です。
個人向けでは「有人潜水艇」が中心になる
個人向けの製品には、「パーソナルサブマリン」などと呼ばれる小型潜水艇があります。
主な用途は、
- 水中観察
- 海洋調査
- レジャー
- 大型ヨットの付属艇
- 観光
などです。
軍用潜水艦とは構造や目的が大きく異なります。
そのため、「潜水艦を個人所有できるか」というテーマを考える場合、実際には民間用の有人潜水艇を想定するのが現実的です。
日本では潜水艇の個人所有そのものは禁止されていない
所有と航行は別に考える必要がある
日本の船舶関連制度では、潜水船という種類の船を個人が所有することそのものを、一律に禁止する仕組みにはなっていません。
そのため、条件を満たした民間用潜水艇を購入し、個人名義で所有することは可能です。
ただし、購入した潜水艇を海で使用する場合には、船舶として法令上必要な手続きを行う必要があります。
自動車で例えると、
「自動車を購入して所有すること」
と、
「公道を走行すること」
が別であるのと似ています。
潜水艇も、所有できたからといって、すぐに好きな場所で自由に潜航できるわけではありません。
潜水艇には船舶登録が必要になる場合がある
総トン数20トン未満では小型船舶登録制度が関係する
日本では、原則として総トン数20トン未満の一定の船舶について、小型船舶登録制度が設けられています。
登録対象となる小型船舶は、所有者や船舶の情報を登録し、船舶番号を表示する必要があります。
そのため、小型の民間用潜水艇についても、船舶の仕様などによっては小型船舶登録制度の対象となります。
ただし、すべての船舶が同じ扱いになるわけではないため、実際には艇ごとに確認する必要があります。
20トン以上になると制度が異なる
総トン数20トン以上の船舶では、原則として船舶法に基づく登録制度などが関係します。
ただし、船舶の用途や構造によって例外もあるため、
「20トン以上になったらすべて同じ制度になる」
と単純に判断することはできません。
購入を検討する場合は、その艇の総トン数、長さ、用途などを確認したうえで、地方運輸局などへ問い合わせる必要があります。
潜水船は「特殊船」として扱われる
一般的な小型ボートとは検査制度が異なる
潜水艇を所有する際に特に注意したいのが、船舶検査です。
通常、総トン数20トン未満の小型船舶については、日本小型船舶検査機構(JCI)が船舶検査を担当するケースが一般的です。
しかし、潜水船は通常のプレジャーボートとは異なります。
潜水船は「特殊船」として扱われ、総トン数20トン未満であっても国による船舶検査の対象となります。
そのため、
「20トン未満の小さな潜水艇なら、普通の小型ボートと同じ扱いになる」
とは限りません。
小型だから検査が簡単になるとは限らない
一般的な小型船舶の中には、一定の条件を満たすことで船舶検査が免除されるものもあります。
しかし、潜水船や水中翼船、エアクッション艇などは特殊船として扱われるため、通常の小型船舶と同じ免除制度が適用されない場合があります。
潜水艇は水中で外部から強い水圧を受けるため、安全性の確認が極めて重要です。
船体の構造だけではなく、浮力制御や生命維持、安全設備などについても高い信頼性が求められます。
潜水艇を操縦するには資格が必要になる
小型船舶操縦士免許が関係する
日本では、一定の小型船舶を操縦するには、小型船舶操縦士免許が必要です。
一般的には、
- 一級小型船舶操縦士
- 二級小型船舶操縦士
- 特殊小型船舶操縦士
などの資格があります。
ただし、潜水艇の場合、
「一級小型船舶操縦士を持っていれば、すべての潜水艇を操縦できる」
とは限りません。
必要な資格は船の仕様によって変わる
必要になる資格は、
- 総トン数
- 船体の長さ
- 構造
- 使用目的
- 航行区域
- 旅客を乗せるか
- 個人利用か商業利用か
などによって異なります。
20トン以上の船舶になると、一般的には海技士などの資格が関係する場合もあります。
一方で、一定条件を満たすプレジャーボートでは例外があります。
そのため、潜水艇を実際に購入する際には、その艇の仕様を提示したうえで、地方運輸局などに必要な操縦資格を確認するのが確実です。
個人が所有できる潜水艇にはどのような種類がある?
1人乗りや2人乗りの小型潜水艇
個人所有を考えた場合、最も現実的なのは小型の有人潜水艇です。
1人または2人程度が搭乗できるタイプがあり、水中観察やレジャーを目的として設計されています。
大型の透明ドームを備え、周囲の海中を観察しやすい構造になっている製品もあります。
軍用潜水艦のように長期間潜航することを目的としているわけではなく、比較的短時間の水中活動を想定したものが中心です。
数人が乗れる大型の有人潜水艇
もう少し大型になると、操縦者に加えて数人の乗客を乗せられる有人潜水艇もあります。
このタイプは、
- 海洋研究
- 海中観光
- 豪華ヨットの付属艇
- 水中撮影
などに使用されます。
潜航できる深度が深くなるほど耐圧構造が高度になり、価格や維持費も高くなる傾向があります。
観光用の大型潜水艇
数十人の乗客を乗せられる観光用潜水艇も存在します。
ただし、このクラスになると個人の趣味として所有するよりも、観光事業者などが商業目的で運航するのが一般的です。
有償で乗客を乗せる場合には、個人利用とは異なる法制度や安全基準なども関係します。
現役の軍用潜水艦を個人所有するのは現実的ではない
民間潜水艇とはまったく別の存在
海上自衛隊の潜水艦など、現役の軍用潜水艦を一般個人が購入して運用することは現実的ではありません。
軍用潜水艦には、
- 魚雷発射管
- 武器管制システム
- 高性能ソナー
- 軍用通信設備
- センサー
- 機密性の高い電子機器
などが搭載されています。
こうした装備には、船舶としての規制だけではなく、防衛装備品や武器、輸出入、機密情報などに関係する別の制度も関わります。
そのため、個人向けの民間潜水艇とは同じものとして考えることはできません。
退役潜水艦が保存されることはある
海外では、退役した軍用潜水艦が博物館船として保存・展示されている例があります。
ただし、一般的には武装などが撤去・無力化され、展示施設として使用されています。
つまり、
「退役潜水艦の船体を保存すること」
と、
「軍用能力を維持した潜水艦を個人が運用すること」
はまったく別の話です。
潜水艇はいくらくらいするのか
購入価格だけでも高額になりやすい
個人向けの潜水艇は、一般的な自動車や小型ボートと比べても高額になりやすい乗り物です。
価格は、
- 搭乗人数
- 最大潜航深度
- 船体構造
- バッテリー容量
- 航続時間
- 認証
- オプション装備
などによって大きく異なります。
そのため、「個人用潜水艇は必ずいくら」と一概にいうことはできません。
本当に大きいのは購入後の維持費
潜水艇では、購入価格だけでなく維持管理にも多くの費用がかかります。
例えば、
- 定期的な整備
- 船舶検査
- 保管
- バッテリー管理
- 部品交換
- 専門技術者による点検
- 海までの輸送
などが必要になる可能性があります。
そのため、購入できる資金があるだけでは十分ではありません。
継続的に安全な状態を維持できる体制が必要です。
潜水艇だけ購入しても運用できない場合がある
母船が必要になる潜水艇もある
潜水艇によっては、自力で港から潜航地点まで移動するのではなく、大型ヨットなどの母船に搭載して運用します。
潜航地点まで母船で移動し、クレーンなどを使って潜水艇を海に降ろす方式です。
このような艇を個人所有する場合は、潜水艇だけでなく母船も必要になる可能性があります。
クレーンや専用設備が必要な場合もある
潜水艇の種類によっては、
- クレーン
- 潜水艇用架台
- 充電設備
- 整備設備
- 支援要員
などが必要になります。
ただし、すべての潜水艇で必須というわけではありません。
運用方式は機種によって大きく異なるため、購入前に確認する必要があります。
潜水艇の保管場所も重要になる
一般的なマリーナでは対応できない場合がある
普通のプレジャーボートであれば、マリーナに係留・保管する方法が一般的です。
しかし、潜水艇の場合は特殊な設備が必要になることがあります。
例えば、
- 大型クレーンが必要
- 陸上保管が必要
- 専用の架台が必要
- 特殊な充電設備が必要
といった艇では、一般的な小型船舶用マリーナでは対応できない可能性があります。
そのため、潜水艇を購入する場合は、
「どこで保管し、どこで整備するのか」
を事前に決めておくことが非常に重要です。
個人で潜水艇を自作することはできる?
作ることと航行させることは別
技術的には、個人が潜水艇を製作すること自体は可能です。
実際、海外を中心に個人が小型潜水艇を製作した事例もあります。
しかし、
「潜水艇を製作すること」と「人を乗せて海で合法的に航行させること」は別問題です。
実際に航行させる場合には、船舶安全法などに基づく安全基準や船舶検査などの制度が関係します。
潜水艇の自作は非常に危険
潜水艇では、水深が深くなるほど船体に大きな水圧がかかります。
設計や溶接、材料選定などに問題があると、船体の重大な損傷につながる危険があります。
さらに、
- 浮力調整
- 酸素供給
- 二酸化炭素の除去
- 電力供給
- 通信
- 非常浮上
などについても安全性を確保しなければなりません。
そのため、有人潜水艇の製作・運用には高度な専門知識が求められます。
潜水艇では安全管理が特に重要になる
水上船とは異なるリスクがある
一般的な船舶では、エンジンが停止しても船体そのものは水面に浮いていられる場合があります。
一方、潜水艇では水中でトラブルが発生すると、外部から簡単に救助できない可能性があります。
そのため、
- 耐圧構造
- ハッチ
- シール類
- バッテリー
- 推進装置
- 浮力調整装置
- 生命維持装置
- 通信装置
- 非常時の浮上手段
などの安全管理が非常に重要です。
専門業者による整備体制も必要になる
潜水艇は特殊な構造を持つため、一般的なボート整備業者では対応できない可能性があります。
購入する場合には、艇そのものだけでなく、
「誰が整備するのか」
「部品をどのように調達するのか」
「定期点検をどこで行うのか」
まで確認しておく必要があります。
個人で潜水艦を所有する際の主なハードル
個人で民間用潜水艇を所有する場合には、主に次のようなハードルがあります。
購入費用
潜水艇そのものが高額になりやすいため、購入できる人は限られます。
登録や船舶検査
日本で航行する場合には、船舶の仕様に応じて登録や船舶検査が必要になります。
特に潜水船は特殊船として扱われる点に注意が必要です。
操縦資格
潜水艇の総トン数や長さ、用途などによって必要な操縦資格が異なります。
保管場所
一般的なマリーナでは対応できない可能性があるため、専用の保管環境が必要になる場合があります。
維持管理
潜水艇は特殊な船舶であるため、専門的な点検・整備を継続して行う必要があります。
潜水艦は個人所有できるが簡単ではない
民間用の有人潜水艇であれば、個人が所有すること自体は可能です。
しかし、購入しただけで自由に海へ潜れるわけではありません。
実際に日本で航行・潜航させる場合には、
- 船舶登録
- 船舶検査
- 操縦資格
- 安全基準
- 保管場所
- 整備体制
などを確認する必要があります。
特に重要なのは、潜水船が一般的な小型プレジャーボートとは異なる「特殊船」として扱われる点です。
総トン数20トン未満の小型艇であっても、通常の小型船舶とまったく同じ検査制度になるとは限りません。
また、現役の軍用潜水艦を一般個人が購入し、軍用能力を維持した状態で自由に運用することは現実的ではありません。
したがって、「潜水艦を個人で所有することはできるのか」という疑問への答えは、「民間用の潜水艇であれば可能だが、実際に航行・潜航するためには法制度、安全性、費用、維持管理など多くの条件をクリアする必要がある」となります。
以上、潜水艦を個人で所有することはできるのかについてでした。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
















