タンカーの「馬力」について詳しく解説します。
タンカーは原油や液体化学品、LNG(液化天然ガス)などを運ぶ巨大な船舶であり、そのエンジン出力、つまり馬力(horsepower)は船の大きさや用途によって大きく異なります。
以下では、タンカーの種類、エンジン出力の目安、推進方式、燃費との関係など、多角的に掘り下げて説明します。
タンカーの種類とサイズ別分類
タンカーにはさまざまな種類とサイズがありますが、主に以下のように分類されます。
分類名 | 載貨重量トン数(DWT) | 主な用途・航路 |
---|---|---|
Handysize | ~40,000 DWT | 地中海や内海など小規模航路向け |
MR(Medium Range) | ~50,000 DWT | 地域間の輸送など中規模航路 |
Panamax | ~80,000 DWT | パナマ運河を通過できる最大サイズ |
Aframax | ~120,000 DWT | 大西洋・地中海で多く使用される |
Suezmax | ~200,000 DWT | スエズ運河を通過できる最大サイズ |
VLCC(Very Large Crude Carrier) | 200,000~320,000 DWT | 世界の原油輸送の主力 |
ULCC(Ultra Large Crude Carrier) | 320,000 DWT超 | 巨大原油タンカー(現在は少数) |
馬力(horsepower)の概要と単位の違い
海事業界では「馬力」よりも「キロワット(kW)」や「メガワット(MW)」で出力が語られることも多く、1馬力(HP)は約0.7355kWです。
タンカーのエンジン出力(馬力)の目安
船の大きさごとに代表的な出力(主機関の馬力)を挙げると以下の通りです。
タンカーのサイズ | 主機出力の目安(kW) | 馬力換算(約) |
---|---|---|
Handysize | 5,000~8,000 kW | 6,800~10,800 馬力 |
MRタンカー | 7,000~10,000 kW | 9,500~13,600 馬力 |
Aframax | 10,000~15,000 kW | 13,600~20,400 馬力 |
Suezmax | 15,000~20,000 kW | 20,400~27,200 馬力 |
VLCC | 25,000~32,000 kW | 34,000~43,500 馬力 |
ULCC | 30,000~40,000 kW | 40,800~54,400 馬力 |
これらのエンジンは通常「低速ディーゼルエンジン」(two-stroke slow speed diesel)で、スクリューを直接回す構造が多いです。
最大出力で常時運転することはなく、燃費を重視した運用がされます。
出力と速度の関係:馬力が高ければ速くなる?
実はタンカーにとって「速度」は最優先事項ではありません。
多くのタンカーは エコスピード(eco-speed) と呼ばれる燃費効率の良い速度で運航します。
- VLCCの場合、設計最大速力は15~16ノット程度ですが、エコ運航では12ノット前後で走ることが多いです。
- 馬力が高くても、積荷の重さや波浪の影響、燃料コストなどの理由で速度は制限されます。
馬力と燃費・排出ガスの関係
船舶の燃料(主に重油やLNG)は馬力に比例して消費されるため、CO₂やSOx排出とも密接に関係しています。
そのため、国際海事機関(IMO)は排出ガス規制(EEDI、CIIなど)を導入しており、馬力の過剰な使用を避ける傾向があります。
最近の傾向
- デュアルフューエルエンジン(LNGと重油の両用)
- 電気推進+バッテリーのハイブリッド
- 風力補助帆(ウィングセイル)の導入 などで馬力(エネルギー)の最適化が進められています。
タンカーの推進技術と馬力
主流の方式
- 低速二行程ディーゼルエンジン(MAN B&WやWinGDなどが有名)
- スクリュー(プロペラ)を1基または2基搭載
- ギヤボックスなしで直接スクリュー軸を回すダイレクトドライブ
代替方式
- 電気推進(電動モーター)
- ポッド型推進器(Azimuth Thruster):方向転換と推進を兼ねる
- LNG燃料推進:エンジン馬力と環境性能を両立
実例:VLCC「TI Europe」のエンジン
- 全長:380m、幅:68m、載貨重量:441,585 DWT
- 主機:MAN B&W 8S90MC-C
- 出力:50,220馬力(約37,000kW)
- 設計速力:約16.5ノット
まとめ
タンカーの馬力は、用途やサイズによって大きく異なりますが、VLCCクラスでは3万〜5万馬力が一般的です。
馬力は単なる出力の目安だけでなく、燃費、航海速度、環境負荷といった重要なファクターと密接に関係しています。
近年は「より少ない馬力で、より多くの積荷を、より環境に優しく運ぶ」ことが求められており、エンジンの高効率化や燃料の多様化が進んでいます。
以上、タンカーの馬力についてでした。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。