作業船の種類やそれぞれの用途について

目次

作業船とは

作業船とは、旅客や一般貨物を運ぶことを主な目的とする船ではなく、海上や港湾、河川などで特定の作業を行うために建造・装備された船の総称です。

港湾工事や海洋土木工事では、海底を掘る浚渫船、重量物を吊り上げる起重機船、杭を施工する杭打船、土砂を運搬する土運船など、さまざまな作業船が使用されています。

そのほかにも、船舶を曳航する引船、海上火災に対応する消防船、海底ケーブルを敷設するケーブル敷設船、養殖施設を管理する養殖作業船などがあります。

ただし、「作業船」という言葉の分類方法は一つではありません。

港湾土木、海洋工事、船級規則、水産業、洋上風力発電など、分野によって作業船に含める船種が異なる場合があります。

そのため、作業船を理解する際には、どのような作業を目的としている船なのかを見ることが重要です。

浚渫船

海底や河床を掘削する作業船

浚渫船とは、海底や河川の底に堆積した砂、泥、土砂などを掘削・除去するための作業船です。

港や航路では、時間の経過とともに海底へ土砂が堆積し、水深が浅くなることがあります。

そのままでは大型船が安全に航行できなくなる可能性があるため、浚渫船を使用して必要な水深を確保します。

浚渫船の主な用途

浚渫船は、主に次のような作業で使用されます。

・港湾や航路の水深確保
・港湾の新設や拡張
・埋立工事
・河川や運河の堆積土砂の除去
・岸壁や防波堤建設前の海底整備

浚渫船にはさまざまな種類がある

浚渫船には、作業方法によって複数の種類があります。

代表的なのがグラブ浚渫船です。

グラブ浚渫船は、クレーンの先端に取り付けたグラブバケットで海底の土砂をつかみ、船上へ引き上げます。

このほか、ポンプを使って土砂と海水を吸い上げるポンプ浚渫船や、バックホウを搭載したバックホウ浚渫船などもあります。

砕岩船

海底の岩盤を砕く作業船

砕岩船は、海底にある硬い岩盤などを砕くための作業船です。

通常の浚渫船では掘削が難しい場所で使用されます。

海底の岩盤を細かく砕いてから、浚渫船などで除去することで、航路や港湾の水深を確保します。

砕岩船の主な用途

主な用途としては、航路整備、港湾造成、岸壁建設などがあります。

特に岩盤が露出している海域では、浚渫作業の前工程として重要な役割を果たします。

起重機船・クレーン船

海上で重量物を吊り上げる作業船

起重機船とは、大型のクレーンを搭載し、海上で重量物を吊り上げたり移動させたりする作業船です。

一般には「クレーン船」と呼ばれることもあります。

ただし、船級規則などでは船体形式や構造によって「Crane Vessel」や「Floating Crane」などに区分されることがあります。

そのため、起重機船とクレーン船は日常的には近い意味で使われるものの、専門的な分類では区別される場合があります。

起重機船の主な用途

起重機船は、次のような工事で使用されます。

・防波堤用ケーソンの据え付け
・橋梁部材の架設
・港湾設備の設置
・海洋構造物の建設
・重量物の積み降ろし
・沈没物の引き揚げ
・洋上風力発電設備の建設

陸上から大型クレーンを設置できない海上では、起重機船が非常に重要な役割を担います。

杭打船

海底に基礎杭を施工する作業船

杭打船とは、岸壁、桟橋、橋脚、海洋構造物などの基礎となる杭を海底へ施工する作業船です。

大型クレーンや杭打ち設備を搭載し、鋼管杭などを所定の位置へ施工します。

杭打船の主な用途

主な用途としては、次のようなものがあります。

・桟橋の建設
・岸壁の建設
・橋脚基礎工事
・海上施設の基礎工事
・洋上設備の基礎施工

杭打船は単独で作業するだけでなく、引船、揚錨船、台船などと組み合わせて「杭打船団」として運用されることもあります。

地盤改良船

軟弱な海底地盤を強化する作業船

地盤改良船は、海底の軟弱な地盤を改良し、構造物を建設できる状態にするための作業船です。

港湾施設や空港、人工島、防波堤などの建設では、海底地盤が軟弱なままでは構造物が沈下したり傾いたりする可能性があります。

そのため、建設前に地盤を強化する必要があります。

地盤改良船の主な種類

地盤改良船には、さまざまな方式があります。

代表的なものとして、深層混合処理船、サンドコンパクション船、サンドドレーン船、砂撒船などがあります。

深層混合処理船では、海底地盤とセメント系固化材などを混合し、地盤を固めます。

サンドコンパクション船では、地中へ砂杭を造成して地盤を締め固めます。

港湾工事において非常に重要な作業船の一つです。

コンクリートミキサー船

海上でコンクリートを製造・打設する作業船

コンクリートミキサー船とは、船上にコンクリート製造設備を備えた作業船です。

「コンクリートプラント船」と呼ばれることもありますが、日本の港湾工事では「コンクリートミキサー船」という名称がよく使われます。

コンクリートミキサー船の主な用途

主な用途は次のとおりです。

・防波堤建設
・岸壁建設
・海上橋梁工事
・海洋構造物の建設
・水中コンクリートの施工

陸上から大量の生コンクリートを運ぶことが難しい海上工事では、船上でコンクリートを製造できることが大きなメリットになります。

土運船

浚渫した土砂を運搬する作業船

土運船とは、浚渫工事などで発生した土砂を運搬するための船です。

浚渫船が海底から掘り上げた土砂を積み込み、埋立地、処分場、土砂受入施設などへ運搬します。

浚渫船と組み合わせて使用される

土運船は、浚渫船と組み合わせて使用されるケースが多くあります。

例えば、グラブ浚渫船が海底の土砂を掘り、隣接する土運船へ積み込みます。

土運船が満載になると、処分場所などへ移動して土砂を排出します。

このように、浚渫船と土運船が一つの船団として作業することがあります。

揚土船

土砂を埋立地などへ揚げる作業船

揚土船は、土運船などによって運ばれてきた土砂を、埋立地や陸上へ送り出すための作業船です。

土運船と名称が似ていますが、役割には違いがあります。

土運船は主に土砂を運搬する船であるのに対し、揚土船は土砂を陸上や埋立場所へ移送する役割を担います。

揚土船の主な種類

揚土船には、リクレーマー船、バージアンローダー船、圧送船などがあります。

浚渫、運搬、揚土という一連の工程を複数の作業船で分担するケースもあります。

ガット船

砂・砂利・石材などを運搬する船

ガット船とは、一般的にグラブバケット付きのクレーンを搭載した自航式の運搬船です。

砂、砂利、石材、土砂などを運搬し、自船のグラブを使って積み込みや荷揚げを行うことができます。

ガット船は単純な浚渫船ではない

ガット船はグラブを搭載しているため、浚渫に近い作業が可能な場合もあります。

しかし、港湾工事の分類では「グラブ付自航運搬船」として扱われることがあり、単純に浚渫船の一種と断定するのは適切ではありません。

運搬能力と荷役能力を併せ持つことが、ガット船の大きな特徴です。

引船・タグボート

他船を曳いたり押したりする作業船

引船は、強力な推進力を利用して、ほかの船や台船を曳航したり、大型船の離着岸を補助したりする船です。

一般には「タグボート」と呼ばれています。

引船の主な用途

引船の代表的な用途は次のとおりです。

・大型船の離着岸支援
・非自航式作業船の曳航
・台船の移動
・海洋構造物の曳航
・緊急時の船舶支援

大型船は港内の狭い水域では自由に方向転換しにくいため、タグボートが船首や船尾を押したり引いたりしながら、安全な離着岸を支援します。

また、自力航行できない起重機船や台船などを施工場所まで移動させる役割もあります。

押船

台船などを後方から押す船

押船は、バージや台船などを船首で押して移動させる船です。

英語では「Pusher」などと呼ばれます。

引船がロープなどを使用して船を曳くのに対して、押船は対象となる台船と接触・連結して押して進むことが特徴です。

土砂、資材、貨物などを搭載したバージを運航する際に使用されます。

揚錨船

アンカーの設置や回収を行う作業船

揚錨船は、大型作業船や海洋構造物を係留するアンカーを設置、移設、回収するための作業船です。

大型のウインチや曳航設備などを備えています。

揚錨船の主な用途

浚渫船、起重機船、作業台船、海洋構造物などは、海上で一定の位置を維持するためにアンカーを使用する場合があります。

揚錨船は、それらのアンカーを適切な位置へ配置したり、作業終了後に回収したりします。

作業船団を支える重要な補助船の一つです。

作業台船・バージ

海上の作業スペースとして使われる船

バージとは、一般的に広い甲板や積載スペースを持つ台船を指します。

自航能力を持たないタイプも多く、その場合は引船や押船によって移動します。

バージにはさまざまな種類がある

「バージ」は一つの用途に限定された船種ではありません。

クレーンを搭載したクレーンバージ、建設機械を搭載した作業台船、資材運搬用バージなど、目的に応じてさまざまな形式があります。

そのため、海上工事の作業スペースや資材置き場として幅広く活用されています。

自己昇降式台船

船体を海面より上へ持ち上げて作業する船

自己昇降式台船は、船体から海底へ脚を下ろし、その脚を利用して船体を海面より上へ持ち上げることができる作業台船です。

英語では「Jack-up Barge」などと呼ばれます。

船体が波の影響を受けにくくなるため、安定した作業環境を確保できます。

自己昇降式台船の主な用途

主な用途には、海上構造物の建設、橋梁工事、港湾工事、洋上風力発電設備の建設などがあります。

特に洋上風力発電では、大型風車の施工に関連して重要性が高まっています。

測量船・調査船

海底地形や水深などを調査する船

測量船や調査船は、海底の地形、水深、地質、海洋環境などを調査するための船です。

港湾工事では、工事前の現況確認や施工後の出来形確認などに使用されます。

主な調査内容

主な調査内容としては、次のようなものがあります。

・水深測定
・海底地形測量
・地質調査
・磁気探査
・海流調査
・水質調査

港湾工事では正確な海底地形の把握が不可欠であるため、測量船は施工計画や安全管理において重要な役割を担います。

潜水士船・潜水作業支援船

潜水士の水中作業を支援する船

潜水士船とは、潜水士が海中で点検、調査、補修などを行う際の拠点となる作業船です。

「潜水作業支援船」と呼ばれる場合もあります。

主な用途

潜水士船は、次のような作業で使用されます。

・岸壁や防波堤の水中点検
・海洋構造物の補修
・船体やプロペラの点検
・海底ケーブルの調査
・水中での切断や溶接
・海底状況の確認

潜水設備、コンプレッサー、クレーンなどを搭載する船もあります。

消防船

海上や港湾の火災に対応する船

消防船は、船舶や港湾施設、海上施設などで発生した火災を消火するための作業船です。

大型の消防ポンプや放水銃などを搭載しています。

消防船の主な役割

大型タンカー、貨物船、石油コンビナート、港湾施設などで火災が発生した場合、陸上から十分な消火活動ができないことがあります。

そのような場合に、消防船が海上から放水して消火活動を行います。

船によっては泡消火設備などを搭載している場合もあります。

油回収船

海上へ流出した油を回収する船

油回収船は、船舶事故などによって海上へ流出した油を回収するための作業船です。

海洋汚染の拡大を防止することを目的としています。

油回収船の主な作業

油回収船では、オイルフェンスを展張して油の拡散を防いだり、海面に浮いた油を回収したりします。

回収した油を船内タンクなどへ収容し、適切に処理できる場所まで運搬します。

海洋環境を守るために重要な作業船です。

洋上補給船

海洋施設へ物資を供給する船

洋上補給船は、海上施設へ燃料、水、資材、機械、食料などを運ぶための船です。

英語では「Offshore Supply Vessel」と呼ばれ、OSVと略されます。

洋上補給船の主な用途

主に、海洋石油・天然ガス施設、海洋工事現場、洋上風力発電関連施設などへの物資供給に使用されます。

広い貨物甲板を備えた船が多く、大型資材や機械を運搬できるようになっています。

ケーブル敷設船

海底ケーブルを設置する作業船

ケーブル敷設船は、海底へ通信ケーブルや電力ケーブルを敷設するための特殊作業船です。

英語では「Cable Layer」などと呼ばれます。

ケーブル敷設船の主な用途

主な用途は次のとおりです。

・海底通信ケーブルの敷設
・海底送電ケーブルの敷設
・離島間の電力ケーブル敷設
・洋上風力発電設備の海底ケーブル施工

現代の大型ケーブル敷設船では、船体の位置を高精度で維持するため、ダイナミックポジショニングシステムを搭載している場合があります。

パイプ敷設船

海底へパイプラインを敷設する作業船

パイプ敷設船は、海底へ各種パイプラインを設置するための作業船です。

主に海洋エネルギー開発や海底インフラ整備などで使用されます。

パイプ敷設船の主な用途

主な用途としては、海底油田やガス田のパイプライン、海洋施設間の配管、海底送水管などの施工があります。

大型船では、船上でパイプを接続しながら海底へ送り出す設備を備えています。

養殖作業船

養殖施設の管理や給餌を行う船

養殖作業船は、魚介類や海藻などを養殖する施設の管理に使用される船です。

港湾土木用の作業船とは分野が異なりますが、広い意味では作業船の一種です。

養殖作業船の主な用途

主な用途としては、次のようなものがあります。

・餌の運搬と給餌
・生け簀の点検
・網の交換や清掃
・魚介類の運搬
・ロープやアンカーの設置
・養殖設備の補修

小型船が使用されることも多い一方、大規模養殖場ではクレーンや自動給餌設備を搭載した専用船が使われる場合もあります。

洋上風力発電向け作業船

洋上風力発電の建設や保守を支える船

洋上風力発電の普及に伴い、専用の作業船も増えています。

洋上風力発電では、風車の建設だけでなく、作業員の輸送や設備の保守にも複数種類の船が必要になります。

建設用作業船

風車の基礎、タワー、ナセル、ブレードなどを施工するため、大型クレーン船や自己昇降式台船などが使用されます。

CTV

CTVは「Crew Transfer Vessel」の略です。

洋上風力発電施設へ技術者や作業員を輸送するための比較的小型の船です。

SOV

SOVは「Service Operation Vessel」の略です。

洋上風力発電施設の近くに一定期間滞在しながら、保守・点検作業を支援します。

船内に作業員の居住設備や整備設備などを備えていることが特徴です。

作業船の種類を用途別に整理

港湾・海洋土木で使用される作業船

港湾や海洋土木工事では、浚渫船、砕岩船、起重機船、杭打船、地盤改良船、コンクリートミキサー船などが使用されます。

これらは、海底を整備したり、大型構造物を設置したりするための中心的な作業船です。

運搬や補助を行う作業船

土運船、ガット船、引船、押船、揚錨船、各種バージなどは、主要な作業船を支援する役割を担います。

工事現場では、本体となる作業船だけでなく、このような補助船が欠かせません。

防災や環境対策に使用される作業船

消防船や油回収船などは、事故や災害への対応、海洋環境の保全などを目的として使用されます。

海底インフラを整備する作業船

ケーブル敷設船やパイプ敷設船は、海底通信網、電力網、海底パイプラインなどを構築するために使用されます。

水産業や洋上風力分野の作業船

養殖作業船、CTV、SOVなども、それぞれの産業に特化した作業船です。

作業船の用途は港湾工事だけに限らず、さまざまな海洋産業へ広がっています。

複数の作業船が船団を組んで工事することも多い

海上工事では、一隻の作業船だけですべての工程を行うとは限りません。

複数種類の作業船が一つの船団を組み、それぞれの役割を分担することがあります。

例えば浚渫工事では、浚渫船が海底を掘り、土運船が土砂を運搬し、引船が非自航式の船を移動させます。

また、起重機船の作業では、揚錨船、引船、資材運搬台船などが周辺作業を支援することがあります。

このように作業船は単独で働くだけでなく、複数の船が連携することで大規模な海上工事を進めています。

作業船は海上インフラを支える重要な船

作業船には、浚渫船、起重機船、杭打船、地盤改良船、土運船、引船、消防船など、多数の種類があります。

それぞれの船は、海底の掘削、重量物の施工、土砂運搬、船舶支援、防災、海洋調査など、異なる役割を持っています。

さらに近年では、海底通信ケーブルや洋上風力発電など、新しい海洋インフラの整備に対応する専用作業船の重要性も高まっています。

つまり、作業船とは一つの形を持つ船を指すのではなく、海上で特定の仕事を行うためにつくられた多様な船の総称です。

港、防波堤、橋、海底ケーブル、洋上風力発電施設など、私たちの生活や産業を支える多くの海上インフラは、さまざまな作業船によって建設・維持されています。

以上、作業船の種類やそれぞれの用途についてでした。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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