タグボートとは

タグボート（Tugboat、または単に「タグ」）とは、主に他の船舶を牽引（けんいん）したり、押したりしてサポートする小型で強力な船のことです。

港湾、河川、造船所などで多く使われており、その役割や特徴は一般の船と大きく異なります。

以下では、タグボートの役割、仕組み、種類、歴史的背景まで含めて詳しく解説します。

タグボートの基本的な役割

大型船の操船補助

大型船（タンカー、コンテナ船、客船など）は、港の中のような狭い場所では自力で正確に操船するのが難しいため、タグボートが横についたり後ろから押したりして、方向転換・接岸・離岸をサポートします。

牽引作業

エンジンのない船や故障した船、あるいは構造物（例えばドック、浮き桟橋など）を別の場所に移動させる際に、タグボートが牽引して運びます。

消火・緊急支援

一部のタグボートは消火装置を搭載しており、海上での火災時に消防艇のような役割を果たします。

また、遭難船の救助などにも使用されます。

タグボートの特徴

小型ながら高出力

船体は比較的小さいですが、非常に強力なエンジンを搭載しており、その出力は1,000〜10,000馬力に達することもあります。

引く力（「ボラードプル」と呼ばれます）は数十トンにおよびます。

高い操縦性

タグボートは非常に機動性が高く、360度旋回可能な推進機構（アジマススラスター、Voith Schneider Propellerなど）を持っていることが多く、狭い場所でも自在に動くことができます。

丈夫な船体

他の船にぶつかって押すため、船体前部には厚い防舷材（フェンダー）を装備し、頑丈な構造になっています。

タグボートの種類

タグボートの実用例

港湾でのコンテナ船接岸

大型コンテナ船が港に入る際、前方・後方・左右にタグボートが付き、細かい操船をサポートします。

狭い水路や風の強い日でも、安全にドックに接岸できます。

油タンカーの牽引

タンカーはその性質上、港湾内での衝突は環境災害につながるため、タグボートが複数隻ついて安全を確保します。

海難事故対応

漂流船や火災船の救援活動でも活躍。

タグボートは速度と機動性を活かし、他の船が近づけない状況でも対応可能です。

タグボートの歴史と現在

歴史的には19世紀から使用

タグボートは産業革命期に誕生し、当初は蒸気機関で動いていました。

河川交通が重要だったヨーロッパやアメリカでは早くから発展し、鉄道と並ぶ物流の要でした。

現代のタグボート

今日のタグボートはディーゼルエンジン、あるいは電気推進（ハイブリッド）を採用した最新型も増えており、環境対策が進んでいます。

また、無人遠隔操作型タグボートの研究も進んでいます。

名前の由来：「タグ（Tug）」とは？

英語の「tug」は「引っ張る」という意味の動詞で、「タグボート（tugboat）」は「引っ張る船」という意味になります。

日本語では「タグ船」や「曳船（えいせん）」とも呼ばれます。

関連語とその違い

まとめ

タグボートは、海上交通の円滑な運用に欠かせない「縁の下の力持ち」です。

小さな船ながら、大型船を支え、時には命を守る重要な役割を果たしています。

港湾で大型船を見かけたら、その近くで小さく動いているタグボートにもぜひ注目してみてください。

目立たなくとも、非常に高度な技術と役割を担っている存在です。

以上、タグボートとはについてでした。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。