船の燃料は「重油」であることが多いですが、実際には用途や船の種類によって使われる燃料はさまざまです。
以下に、重油とは何か、なぜ使われるのか、そして近年の代替燃料の動向まで、詳しく解説します。
船の燃料としての「重油」とは?
重油の定義
重油(Heavy Fuel Oil、略してHFO)は、原油を蒸留・精製する過程で得られる「残渣(ざんさ)油」です。
これは、ガソリンや灯油、軽油などの比較的揮発性の高い成分を取り除いた後に残る、粘性が高くて黒っぽい油です。
種類
国際海事機関(IMO)や国ごとの規制では、以下のような分類があります。
種類 | 特徴 |
---|---|
IFO(Intermediate Fuel Oil) | 重油と軽油を混ぜて粘度を調整した燃料。IFO180やIFO380などがあり、数字は粘度(cSt)を示します。 |
MFO(Marine Fuel Oil) | 船舶向けに調整された重油で、いわばIFOの一種。 |
MDO(Marine Diesel Oil) | 軽油に近いディーゼル系燃料。小型船や補助機関に使われることが多い。 |
LSFO(Low Sulfur Fuel Oil) | 硫黄分を0.5%以下に抑えた重油。2020年以降、国際的に推奨されるようになった。 |
なぜ船で重油が使われるのか?
経済性
重油は石油製品の中でも安価で、大量輸送に向いています。
大型船舶では燃料消費量が非常に多いため、燃料コストは非常に重要な要素です。
高エネルギー密度
重油は粘度が高い分、エネルギー密度(単位体積あたりのエネルギー)が高く、長距離航海に向いています。
大型エンジンとの相性
重油は扱いが難しい反面、一定の温度で加熱して粘度を下げれば、信頼性の高いディーゼルエンジンで安定して燃焼できます。
環境問題と規制強化
従来の重油は硫黄分が多く、環境への影響が大きいため、以下のような国際的な取り組みが進められています。
IMO 2020規制
国際海事機関(IMO)は2020年1月より、船舶燃料中の硫黄分を0.5%以下に制限しました(従来は3.5%)。
これにより、重油をそのまま使うことが難しくなり、多くの船は以下のいずれかの方法を取っています。
- LSFO(低硫黄重油)への切り替え
- 排ガス洗浄装置(スクラバー)の搭載
- LNG(液化天然ガス)などのクリーン燃料への転換
現在・未来の代替燃料
LNG(液化天然ガス)
環境性能に優れ、SOxやNOx、CO2排出量が大幅に低減します。
ただし、専用設備が必要で初期投資が高い。
メタノール・アンモニア
今後の脱炭素化のカギとされる燃料。
CO2排出ゼロや低排出が期待されており、実証実験が進んでいます。
バイオ燃料・合成燃料
再生可能エネルギー由来の代替燃料。
現在はコストや供給の安定性に課題があります。
船のタイプと燃料の使い分け(簡単に)
船の種類 | よく使われる燃料 |
---|---|
商船(大型貨物船・タンカー) | IFO380、LSFO、LNG |
客船・フェリー | LSFO、MGO、LNG |
小型漁船・沿岸船 | MDO、軽油 |
新世代エコ船 | LNG、バイオ燃料、メタノール |
まとめ
- 多くの大型船では重油(特にIFO、HFO)が伝統的に使われてきた。
- その理由はコストが安く、エネルギー効率が高いから。
- しかし、環境への影響を考慮して、低硫黄重油(LSFO)やLNGなどの代替燃料への移行が進んでいる。
- 将来的には、CO2を出さない次世代燃料(アンモニア、合成燃料)が主流になる可能性も。
以上、船の燃料は重油なのかについてでした。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。