タンカー船(タンカー)の大きさについて詳しく説明すると、その規模は非常に多様で、輸送する液体の種類(原油、石油製品、化学薬品、LNGなど)や航行する海域に応じて分類されています。
ここでは、主に原油タンカー(オイルタンカー)を中心に、大きさの分類や特徴をわかりやすく解説します。
目次
タンカーの大きさ分類(主に原油タンカー)
タンカーは「DWT(載貨重量トン数)」という単位でその規模を表します。
これは、貨物・燃料・水・乗員など、船が安全に運搬できる最大重量を指します。
以下は代表的なサイズ分類です。
ハンディサイズ(Handy Tanker)
- DWT:10,000〜50,000トン
- 全長(L):120〜200メートル程度
- 特徴:
- 小型で取り回しが良く、沿岸部や小規模港にも入港可能。
- 石油製品や化学薬品輸送にも使用。
- いわば「小回りの利くタンカー」。
ミディアムレンジ(MR)タンカー
- DWT:25,000〜45,000トン
- 特徴:
- 製品タンカーとしての使用が多く、精製されたガソリンや軽油を運ぶ。
- 複数のタンクを持ち、多品種少量の積載に向く。
パナマックス(Panamax Tanker)
- DWT:50,000〜80,000トン
- 全長:最大約294メートル(旧パナマ運河の制限による)
- 特徴:
- パナマ運河を通行可能なサイズ。
- 原油だけでなく製品も輸送可能。
- 運河に合わせた船体サイズの代表格。
アフラマックス(Aframax Tanker)
- DWT:80,000〜120,000トン
- 全長:230〜250メートル程度
- 特徴:
- 中型原油タンカー。港湾設備を選ばず入港しやすい。
- 「AFRA」とは「Average Freight Rate Assessment(平均運賃評価)」の略。
- 沿岸部輸送に強く、世界中で非常に多く運用されている。
スエズマックス(Suezmax Tanker)
- DWT:120,000〜200,000トン
- 全長:275〜285メートル
- 幅:最大約50メートル
- 特徴:
- スエズ運河を通行できる最大サイズ(現代の拡張後の基準)。
- 中長距離の原油輸送に使用。
- 非常に高効率なサイズで、経済性が高い。
VLCC(Very Large Crude Carrier)
- DWT:200,000〜320,000トン
- 全長:300〜330メートル
- 特徴:
- 世界の原油輸送の中核を担う大型タンカー。
- ペルシャ湾からアジア・欧州・米国西海岸などへの大量輸送に最適。
- 水深や港湾設備の制約で入港できる港は限定される。
ULCC(Ultra Large Crude Carrier)
- DWT:320,000トン以上(最大56万DWT超も存在)
- 全長:350〜415メートル(超巨大)
- 特徴:
- 史上最大級の船舶サイズ。
- 数十万トンの原油を一度に運ぶ超大型タンカー。
- 運用コスト・運航制限が大きいため、現在では稼働数は非常に少ない。
- ドックインや座礁リスクを避けるため、専用の沖合ターミナルなどで荷役を行う。
各サイズの使用シーンと航行ルート例
タンカー種別 | 主な用途 | 航行ルートの例 |
---|---|---|
ハンディサイズ | 地域間の短距離輸送、製品タンカー | 日本国内、ASEAN圏、地中海沿岸など |
アフラマックス | 沿岸長距離輸送 | 北海〜西欧、黒海〜地中海 |
スエズマックス | 長距離原油輸送 | 中東〜欧州(スエズ通過) |
VLCC | 国際大量輸送 | 中東〜日本、中国、韓国 |
ULCC | 大量長距離輸送(特殊) | 中東〜欧州(専用沖合基地) |
参考:実在した超巨大タンカーの例
Seawise Giant(後のKnock Nevis)
- DWT:564,763トン(史上最大)
- 全長:458.45メートル
- 幅:68.8メートル
- 就役期間:1979年〜2009年
- 特徴:
- 通常の港には入れず、沖合のブイで荷役を行っていた。
- 実質「海上の島」のような存在だった。
大きさと経済性のトレードオフ
タンカーの大きさが増せば当然輸送効率も上がりますが、それに伴い以下のような課題も生じます。
- 接岸可能な港が限定される
- 船体の管理コストや修繕費が増大
- 座礁リスク、風や潮流の影響増加
- 航行速度の制約(燃費効率優先のため)
そのため、VLCCが経済性と航行可能性のバランスが最も良いとされ、現在でも主流です。
まとめ
分類 | 載貨重量トン数 | 用途・特徴 |
---|---|---|
Handy | ~50,000 DWT | 小型港湾、石油製品、化学薬品向け |
Aframax | ~120,000 DWT | 中規模港湾、沿岸原油輸送 |
Suezmax | ~200,000 DWT | スエズ運河対応、大量輸送 |
VLCC | ~320,000 DWT | 長距離・大量原油輸送の主力 |
ULCC | 320,000 DWT~ | 超巨大、稼働数は少ない |
以上、タンカー船の大きさについてでした。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。