潜水艦の乗組員になるには海上自衛官を目指す
日本で潜水艦の乗組員になるには、基本的に海上自衛官となり、その後に潜水艦乗員として必要な選抜や専門教育を受ける必要があります。
一般企業のように、最初から「潜水艦乗組員」という職種へ直接応募して、そのまま潜水艦に配属される仕組みではありません。
まず海上自衛隊の採用制度を利用して自衛官となり、その後、潜水艦乗員候補として適性を確認され、必要な教育や訓練を受けるのが基本的な流れです。
まずは海上自衛隊の採用試験を受ける
潜水艦乗員を目指す場合、最初の段階となるのが海上自衛隊への入隊です。
海上自衛隊には複数の採用制度があり、年齢や学歴、将来希望するキャリアなどによって受験する区分が異なります。
例えば、一般曹候補生などとして海上自衛隊に入り、海曹・海士として経験を積みながら潜水艦乗員を目指す道があります。
一方、一般幹部候補生などの採用制度から幹部自衛官となり、潜水艦勤務を目指す道もあります。
応募できる年齢や学歴などの条件は採用区分や年度によって異なるため、実際に応募する場合は防衛省・自衛官募集サイトの最新情報を確認することが重要です。
海上自衛隊に入れば必ず潜水艦に乗れるわけではない
海上自衛官になったからといって、希望すれば必ず潜水艦に乗れるわけではありません。
海上自衛隊の潜水艦教育訓練隊には、各教育隊や部隊から潜水艦乗員として適性のある隊員が集められます。
さらに、潜水艦乗員候補者には選抜適性検査が行われます。
そのため、潜水艦勤務を希望することに加え、潜水艦という特殊な環境で勤務できる身体的・心理的な適性が求められます。
潜水艦乗員になるためには選抜適性検査がある
潜水艦は海中を航行する艦艇であり、一般的な陸上勤務や水上艦勤務とは異なる特殊な環境で生活・勤務することになります。
そのため、潜水艦乗員候補者には、潜水艦勤務に適しているかを確認するための選抜適性検査が実施されます。
海上自衛隊の潜水艦教育訓練隊では、主に健康診断、耐圧試験、心理適性検査、面接が行われるとされています。
健康診断を受ける
潜水艦乗員候補者には健康診断が行われます。
潜水艦では、閉鎖された艦内で一定期間生活しながら任務を遂行しなければなりません。
そのため、自衛官として勤務するための基本的な健康状態に加え、潜水艦勤務に適応できるかどうかも重要になります。
具体的な判定基準については一般向けにすべて公開されているわけではないため、「特定の病気があれば必ず不合格になる」などと一概に判断することはできません。
耐圧試験を受ける
潜水艦乗員の選抜で特徴的なのが耐圧試験です。
海上自衛隊の潜水艦教育訓練隊では、潜水艦乗員候補者への選抜適性検査として耐圧試験を実施していることが明記されています。
潜水艦勤務では特殊な環境に置かれるため、その環境に適応できるかを確認するための検査の一つと考えると分かりやすいでしょう。
なお、「潜水艦乗員」と、自ら水中へ潜る「潜水員」は別のものです。
心理適性検査を受ける
潜水艦乗員候補者には心理適性検査も行われます。
潜水艦では限られた空間で多くの乗員が長時間共同生活を送りながら、各自が専門的な任務を遂行します。
そのため、潜水艦という特殊な勤務環境に適応できるかどうかも重要になります。
海上自衛隊も、潜水艦乗員には高い技術力だけでなく、冷静な判断力が求められるとしています。
面接も行われる
選抜適性検査には面接も含まれています。
健康状態や耐圧環境への適性、心理面などとあわせて、潜水艦乗員として勤務できるかが総合的に確認されます。
そのため、単に「潜水艦が好きだから乗りたい」という希望だけではなく、自衛官として勤務する姿勢や潜水艦勤務への適性が重要になると考えられます。
潜水艦教育訓練隊で専門教育を受ける
潜水艦乗員候補者として選抜適性検査を通過すると、潜水艦教育訓練隊で専門的な教育を受けます。
海上自衛隊には、初めて潜水艦に乗り組む隊員を対象とした潜水艦課程が設けられています。
海曹士潜水艦課程がある
海曹や海士として初めて潜水艦に乗り組む隊員は、「海曹士潜水艦課程」で教育を受けます。
海上自衛隊が公開している情報では、教育期間は約4か月です。
この期間に、潜水艦で勤務するために必要となる基本的な知識や技能を学びます。
幹部潜水艦課程がある
幹部自衛官として初めて潜水艦に乗り組む場合は、「幹部潜水艦課程」で教育を受けます。
教育期間は約5か月とされています。
幹部として潜水艦を運用するために必要となる基本的な知識や技能を身につけていきます。
潜水艦乗員になるために受ける主な訓練
潜水艦教育では、艦内で通常勤務するための知識だけではなく、事故や緊急事態に対応するための訓練も行われます。
潜水艦は海中で活動するため、異常が発生した際に簡単に外部へ避難できるとは限りません。
そのため、乗員自身が適切に対処するための能力を身につけることが重要になります。
緊急脱出訓練を行う
潜水艦教育では、緊急時に潜水艦から脱出するための訓練が実施されます。
海上自衛隊では、万が一の事態が発生した際に乗員が潜水艦から個人脱出できるよう、必要な教育を行っています。
潜水艦ならではの訓練の一つといえるでしょう。
防火・防水訓練を行う
火災や浸水への対応も、潜水艦乗員にとって重要です。
潜水艦教育訓練隊では、防火・防水訓練を通じて、艦内で火災や浸水が発生した際の応急対処について学びます。
海上を航行する一般的な艦艇でも火災や浸水への対応は重要ですが、潜水艦は海中で活動するため、艦内での初動対応が特に重要になります。
運動・水泳能力も確認される
潜水艦教育では、運動能力や水泳能力の測定も実施されています。
海上自衛隊では、潜水艦で勤務するうえで必要となる体力や水泳能力を確認するとしています。
そのため、将来的に潜水艦乗員を目指している場合は、普段から基礎体力を高め、水泳にも慣れておくことが役立つでしょう。
ただし、一般向けに公開されていない具体的な合格基準については、推測して判断しないことが大切です。
実際の潜水艦で乗艦実習を行う
潜水艦課程では、教育の集大成として実際の潜水艦に乗艦して実習を行います。
教室や訓練施設で学んだ知識を、実際の潜水艦という環境の中で確認していく重要な段階です。
こうした専門教育や実習を経て、潜水艦乗員として必要となる知識や技能を身につけていきます。
潜水艦にはさまざまな役割の乗員がいる
潜水艦乗員は、全員が同じ仕事を担当しているわけではありません。
潜水艦を安全に航行させ、任務を遂行するためには、さまざまな専門分野を担当する乗員が必要です。
航海や通信などを担当する乗員がいる
潜水艦では、航海、通信など艦の運用に必要となるさまざまな業務が行われています。
例えば航海に関する業務では、艦を安全に目的地へ航行させるために必要な情報を扱います。
通信に関する業務では、通信機器などを扱いながら、艦と外部との情報伝達に関わります。
担当する仕事内容や必要な専門知識は職域によって異なります。
水雷を担当する乗員もいる
水雷は潜水艦と関係の深い職域の一つです。
海上自衛隊では、水雷の職域について、護衛艦や潜水艦で魚雷などの水中武器やソナーなどの水中捜索機器を扱う仕事と説明しています。
潜水艦の捜索や攻撃、関連する器材の整備なども担当します。
機関などを担当する乗員もいる
潜水艦を航行させるためには、推進装置や電気設備などを適切に管理する必要があります。
そのため、機関などの専門分野を担当する乗員も重要です。
担当職域によっては、機械、電気、通信などに関する知識が役立つ場合があります。
ただし、潜水艦乗員になるために理系出身であることが一律に求められるわけではありません。
必要な専門知識や技能については、自衛隊に入隊した後の教育や訓練を通じて身につけていきます。
潜水艦乗員に求められる能力
潜水艦では、高度な機器を扱いながら海中で任務を遂行します。
さらに、限られた艦内空間で多くの乗員が共同生活を送ります。
そのため、専門的な知識だけでなく、さまざまな能力が必要になります。
高い技術力が求められる
現代の潜水艦には、航法装置、通信装置、ソナー、推進装置など、多くの設備が搭載されています。
乗員は自分の担当する装置や業務について専門的な知識と技能を身につけ、確実に任務を遂行しなければなりません。
海上自衛隊も、潜水艦乗員には高い技術力が求められると説明しています。
冷静な判断力が重要になる
海上自衛隊は、潜水艦乗員に求められる能力の一つとして冷静な判断力を挙げています。
潜水艦は水中という特殊な環境で活動するため、異常や緊急事態が発生した場合でも、落ち着いて自分の役割を果たす必要があります。
そのため、知識や技能だけでなく、状況を冷静に判断する能力も重要です。
チームワークも重要になる
潜水艦は、多くの乗員がそれぞれの担当業務を受け持つことで運用されています。
一人だけで潜水艦を動かすことはできないため、周囲の乗員と連携しながら任務を遂行することが必要です。
また、限られた艦内空間で共同生活を送ることから、一般的に協調性やコミュニケーション能力も重要になると考えられます。
ただし、具体的な選抜基準については一般向けにすべて公開されているわけではありません。
潜水艦乗員と潜水員は別の仕事
「潜水艦乗員」と「潜水員」は名称が似ていますが、仕事内容は異なります。
潜水艦に乗りたいと考えている場合は、この違いを理解しておくとよいでしょう。
潜水艦乗員は潜水艦の中で勤務する
潜水艦乗員は、潜水艦の艦内で航海、通信、水雷、機関など、それぞれの担当業務を行います。
潜水艦そのものを安全に運用し、任務を遂行することが主な役割です。
「潜水艦に乗って働きたい」という場合は、基本的にこちらを目指すことになります。
潜水員は自ら水中へ潜る
一方の潜水員は、潜水装備を使用して自ら海中へ潜り、水中でさまざまな任務を行う隊員です。
海上自衛隊では、潜水員としてスクーバ潜水、水中処分、飽和潜水などの分野があります。
例えば、水中で艦艇の状態を調査したり、不発弾や機雷などに関連する任務を行ったり、深海での活動に従事したりします。
そのため、
「潜水艦の中で勤務する人」が潜水艦乗員、
「自分自身が水中に潜って作業する人」が潜水員、
と考えると違いを理解しやすいでしょう。
潜水艦乗員を目指すなら何を準備すればよい?
将来、海上自衛隊の潜水艦乗員になりたい場合、学生の段階から潜水艦の専門知識をすべて身につけておく必要はありません。
まず重要なのは、海上自衛官として採用されるための準備を進めることです。
採用試験に向けて準備する
海上自衛隊への入隊には採用試験があります。
受験する採用区分によって試験内容や応募資格が異なるため、自分がどの採用区分を目指すのかを調べておくことが重要です。
採用制度は変更される可能性があるため、受験時には防衛省・自衛官募集サイトで最新の募集要項を確認しましょう。
基礎体力を高めておく
潜水艦教育では運動・水泳能力の測定が行われます。
そのため、ランニングや筋力トレーニングなどで基礎体力を高めておくことは、入隊後の訓練にも役立ちます。
特別なトレーニングだけをするのではなく、継続して運動できる体力を身につけておくことが大切です。
水泳に慣れておく
潜水艦乗員になるための教育では、水泳能力も確認されます。
そのため、水に慣れていない場合は、あらかじめ泳ぐ習慣を身につけておくとよいでしょう。
ただし、具体的な合格基準について一般公開されていない部分を推測して練習目標にする必要はありません。
集団生活に慣れることも大切
潜水艦では、多くの乗員が限られた艦内空間で共同生活を送ります。
そのため、周囲と協力しながら生活し、自分の役割を責任を持って果たす姿勢が重要です。
学校生活や部活動、仕事などを通じて、時間を守る、ルールを守る、周囲と協力するといった基本的な習慣を身につけておくことも役立つでしょう。
潜水艦乗員になるまでの流れ
日本で潜水艦乗員を目指す場合の大まかな流れは、次のように整理できます。
海上自衛隊の採用試験を受ける
↓
海上自衛官になる
↓
必要な基礎教育や職種教育を受ける
↓
潜水艦乗員候補となる
↓
健康診断・耐圧試験・心理適性検査・面接などの選抜適性検査を受ける
↓
選抜適性検査に合格する
↓
海曹士潜水艦課程または幹部潜水艦課程で専門教育を受ける
↓
脱出訓練、防火・防水訓練、運動・水泳能力測定などを行う
↓
実際の潜水艦で乗艦実習を行う
↓
潜水艦乗員として勤務する
このように、潜水艦乗員になるには、単に海上自衛隊へ入隊するだけではなく、潜水艦勤務への適性を確認する選抜や専門的な教育を受ける必要があります。
潜水艦乗員になるには適性と専門教育が必要
日本で潜水艦の乗組員になるには、まず海上自衛官になることが基本です。
その後、潜水艦乗員候補となり、健康診断、耐圧試験、心理適性検査、面接などの選抜適性検査を受けます。
選抜を通過した後は潜水艦教育訓練隊で専門教育を受け、脱出訓練や防火・防水訓練、乗艦実習などを経験します。
潜水艦は水中という特殊な環境で活動するため、乗員には高い技術力と冷静な判断力が求められます。
また、艦内には航海、通信、水雷、機関などさまざまな役割があり、多くの乗員が協力して潜水艦を運用しています。
そのため、潜水艦乗員を目指す場合は、まず海上自衛隊の採用制度を確認し、採用試験への準備や基礎体力づくりを進めることが第一歩となります。
応募資格や採用区分などは年度によって変更される場合があるため、実際に受験するときは防衛省・自衛官募集サイトの最新情報を確認するようにしましょう。
以上、潜水艦の乗組員になるにはどうすればよいかについてでした。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
















