ビルジ(bilge)とは、船の最も低い部分、つまり船底にたまる汚れた液体やその空間自体を指します。
船体構造上、船底にはフレーム(骨組み)と外板(外壁)との間に、わずかな空間があり、そこにさまざまな水分が自然と集まってしまいます。
これが「ビルジ」と呼ばれる場所、もしくはそこにたまった液体そのものを意味します。
ビルジにたまるもの
ビルジには、さまざまな種類の液体や汚れがたまります。
具体的には
- 海水・雨水
船体にできたわずかな隙間や甲板上から流れ込む。 - 冷却水の漏れ
エンジンなどの機械から漏れる冷却水。 - 燃料や潤滑油の漏れ
小さなオイル漏れが、時間とともにビルジにたまる。 - 掃除や作業中の汚れ水
船内の清掃作業で発生した汚水など。 - 結露
温度差によって生じた船内の結露水もビルジに流れ込むことがある。
これらが混じり合うため、ビルジ水は非常に汚れた液体になります。
特に油分が混じっていると、環境汚染の原因となるため、適切な管理が必要です。
ビルジの管理とビルジポンプ
ビルジに水がたまりすぎると、船体バランスを崩したり、重量増加で燃費が悪化するほか、最悪の場合、機械室や居住区にまで水があふれ、船の安全に深刻な影響を与えます。
そのため、ビルジポンプという専用のポンプ装置を使って、定期的にビルジ水を排出します。
ビルジポンプの主な種類
- 手動ビルジポンプ
小型船に多く、人力でポンピングして排水する。 - 電動ビルジポンプ
プレジャーボートや中型船に一般的。自動センサー付きもある。 - 大型エンジンルーム用ビルジポンプ
大型商船や軍艦では、大容量・高圧型の電動または油圧式ビルジポンプを備えている。
さらに、最近では「ビルジアラーム」という水位センサーも搭載されていて、一定量以上のビルジ水がたまると自動的に警報が鳴る仕組みも普及しています。
ビルジ排出と環境問題
ビルジ水には油分が混ざることが多く、そのまま海に排出すると海洋汚染防止条約(MARPOL条約)に違反する場合があります。
したがって、多くの船では、
- ビルジ水から油分を分離・除去してから排出する
- 専用タンクに貯留し、港の処理施設で適切に廃棄する
といった方法を取っています。
特に商船・フェリー・軍艦クラスになると、ビルジ水油水分離装置(OWS: Oily Water Separator)を搭載しており、船上でできるだけきれいにしてから海に放出する義務があります。
また、小型船でもビルジに油が混じっているときは、必ず陸上で処理しなければなりません。
違反すると高額な罰金を科せられることもあり、非常に厳しく管理されています。
まとめ
簡潔にまとめると、ビルジとは
- 船底に自然にたまる汚れた液体やそのスペースのこと
- 海水・雨水・油・冷却水・掃除水などが混ざっている
- 船の安全運航のため、定期的な排水と管理が必須
- 油分を含む場合は、法令に基づいた処理が必要
ビルジ管理は単なる「掃除」ではなく、船の安全運航と環境保護の両面で、非常に重要な作業なのです。
以上、船のビルジについてでした。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。