LPGタンカーについて

LPGタンカー,イメージ

LPGタンカー(LPG Tanker)は、液化石油ガス(Liquefied Petroleum Gas:LPG)を大量に輸送するための専用船舶です。

LPGは主にプロパン(C₃H₈)やブタン(C₄H₁₀)などを主成分とする可燃性ガスで、家庭用燃料、工業用原料、または自動車用燃料などとして広く使用されています。

LPGタンカーはこの気体を圧力や低温で液化した状態で輸送します。

目次

LPGタンカーの基本構造と機能

LPGタンカーの設計は、安全性と効率性を高めるために非常に高度な技術が使われています。

主な構造は以下の通りです。

カーゴタンク(Cargo Tank)

LPGは通常、気体では非常に体積が大きくなってしまうため、輸送には液化された状態で運ばれます。

これには主に以下の2つの方法があります。

  • 加圧方式(Pressurized):常温で圧力をかけて液化状態を維持。小型船に多く使われます。
  • 冷却方式(Refrigerated):大規模輸送向け。LPGを約-42℃まで冷却し、常圧に近い状態で液体として保管。

また、この2つを組み合わせた「セミ冷却式(Semi-pressurized/semi-refrigerated)」もあります。

ポンプ・バルブシステム

LPGは非常に揮発性が高く、漏れると爆発や火災のリスクがあります。

そのため、特殊なポンプやバルブシステムによって、積み下ろし作業が慎重に行われます。

ガス処理装置(Gas Handling System)

ガス漏れや圧力調整のために、ベーパーリターンラインやブリーザータンクなどの安全機構が備えられています。

LPGタンカーの種類

全圧力型(Fully Pressurized Tanker)

  • 容量:数千トン規模(比較的小型)
  • 特徴:耐圧タンクを備えており、冷却設備は不要
  • 用途:内航、近海輸送など

セミ冷却型(Semi-pressurized/Semi-refrigerated Tanker)

  • 容量:5,000~20,000立方メートル
  • 特徴:圧力と冷却の両方を使用可能
  • 用途:中距離航路向け

完全冷却型(Fully Refrigerated Tanker)

  • 容量:20,000~100,000立方メートル以上
  • 特徴:極低温下で液化されたLPGを大量輸送
  • 用途:長距離・大量輸送(例:中東→アジア)

LPGタンカーとLNGタンカーの違い

比較項目LPGタンカーLNGタンカー
輸送物質プロパン・ブタン等メタンが主成分
液化温度約 -42℃約 -162℃
タンク設計スチール製タンク(球形・円筒形)複合断熱構造の膜式/球形タンク
通常サイズ~85,000立方メートル程度~266,000立方メートル(Q-maxなど)
ガス性質圧力・温度で比較的容易に液化極低温が必要で設備が複雑

LPGタンカーの運用と安全性

LPGは非常に可燃性が高いため、国際海事機関(IMO)や各国の海事法規に基づき厳重な安全管理が求められます。

以下は代表的な対策です。

  • 二重船殻構造(ダブルハル)による浸水・衝突対策
  • ガス検知器自動消火システムの設置
  • 静電気対策:荷役時の静電気放電による引火防止
  • 乗員の訓練:IGCコード(国際ガス運搬船コード)準拠

世界のLPGタンカー市場と動向

LPGは需要が伸びており、特に以下の地域間での輸送量が増加しています。

  • 中東 → アジア(特に日本・韓国・中国)
  • アメリカ → アジア(シェールガス由来のLPG輸出)
  • 東南アジア → インド(家庭用燃料需要の増加)

世界のLPG輸送を担う主な船会社には、以下のようなプレイヤーがあります。

  • BW LPG(シンガポール)
  • Dorian LPG(アメリカ)
  • Exmar(ベルギー)
  • NYK・MOL・K Line(日本の大手海運)

LPGタンカーに関わる将来技術

今後は環境規制や効率化の観点から、次のような技術が注目されています。

  • LPG燃料エンジンの搭載:積荷の一部を燃料に使うことで排出ガスを削減
  • 自動運航技術(Autonomous Shipping):AIやセンサーによる操船補助
  • 脱炭素対応設計:温室効果ガス(GHG)排出削減に向けた新設計船の建造

まとめ

LPGタンカーは、液化石油ガスという高圧・低温を要する特殊な貨物を、安全かつ効率的に輸送するために設計された高度な船舶です。

サイズや方式にはいくつかのバリエーションがあり、輸送距離や用途に応じて選択されます。

現在も世界のエネルギー需要に応えるために重要な役割を担っており、今後も環境対応や燃費効率を意識した新技術が導入されていくことでしょう。

以上、LPGタンカーについてでした。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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