タンカー(tanker)は、液体の貨物を大量に運搬するための専用船で、内部構造は非常に機能的かつ安全性を重視して設計されています。
ここでは、原油タンカーや製品タンカー(石油製品を運ぶタンカー)を中心に、内部構造について詳しく解説します。
タンカーの内部構造の概要
タンカーの内部は主に以下のような構成になっています。
- 貨物タンク(Cargo Tanks)
- 縦隔壁・横隔壁(Bulkheads)
- スロップタンク(Slop Tank)
- パイプライン・ポンプルーム(Piping System & Pump Room)
- バラストタンク(Ballast Tank)
- 隔壁空間(Void Space)・ダブルハル(Double Hull)
- 機関室(Engine Room)
- 居住区(Accommodation)
以下、それぞれ詳しく見ていきましょう。
貨物タンク(Cargo Tanks)
タンカーの最も中核となる部分です。液体の貨物(原油、石油製品、化学品など)を積載するタンクで、船体の大部分を占めています。
一般的に以下のような特徴があります。
- 複数の区画に分かれている:安全性の観点から、タンカーは複数のタンクに区切られています(6~15個程度が一般的)。
- 中央部・左右のウイングタンクに分かれる:中央の「センタータンク」と、左右の「ウイングタンク」に分かれています。
- 液漏れ防止のための被覆:内部は耐食性・耐薬品性のあるコーティングが施されている(特に化学品タンカー)。
隔壁(Bulkheads)
貨物タンクの間には、縦隔壁(longitudinal bulkhead)や横隔壁(transverse bulkhead)と呼ばれる壁が設けられています。
- 役割:貨物の揺れ(自由表面効果)を抑え、船の安定性を保ちます。
- 事故時の拡散防止:漏洩時に他のタンクに影響を及ぼさないようにしています。
スロップタンク(Slop Tank)
洗浄水や残留油を一時的に保管するタンクです。
貨物タンクを洗浄した際の汚水や油混じりの水をためておく専用のタンクで、汚染物質が海に直接排出されないよう管理されています。
パイプライン・ポンプルーム(Piping & Pump Room)
タンカーの心臓部ともいえる貨物の積み下ろし装置がここにあります。
- 貨物ポンプ:各タンクから液体を吸い上げて、陸上施設に送り出します。
- パイプライン:デッキ上または船内を通じて、各タンクとポンプを接続しています。
- 自動弁制御:現代のタンカーでは、貨物の移送は遠隔操作可能なバルブで制御されています。
- ポンプルーム(旧型船のみ):ポンプやバルブを人が操作できる区画(近年は安全性から省略されることも)。
バラストタンク(Ballast Tank)
空荷のときに船の安定を保つための海水を貯めるタンクです。
- 船体の前後左右に配置され、船の喫水やバランスを調整します。
- 荷物がないときや軽いときに水を入れ、航行中の安定性を確保します。
ダブルハル構造(Double Hull)
近年の大型タンカーでは、二重船殻構造(二重船体)が採用されています。
これは、外殻の内側にもう一枚の壁を設けた構造です。
- 事故時の環境保護:外殻が破れても、内殻で貨物漏洩を防げる。
- 法規制で義務化:特に原油タンカーでは、MARPOL条約によりダブルハル構造が義務付けられています。
機関室(Engine Room)
通常、船尾(後部)に設けられています。
- メインエンジン:プロペラを回す主機関。
- 補助機器:発電機、ボイラー、油圧装置なども集中しています。
居住区・操舵室(Accommodation & Bridge)
船員の生活スペースや航行制御を行うブリッジなども後部にまとめられています。
- 居住区:ベッドルーム、食堂、キッチン、シャワー室など。
- ブリッジ(操舵室):船の運航を管理する司令塔。
補足:化学品タンカー・LNGタンカーとの違い
- 化学品タンカー:タンク内がステンレスでできていたり、種類ごとに専用タンクを持つなど、より高度な管理が必要です。
- LNGタンカー:超低温(-162℃)での液化ガスを運ぶため、特殊な絶縁構造や圧力調整機構が設けられています。
まとめ
タンカーの内部は、「安全」「効率」「環境保護」の3要素を最大限に考慮して設計されています。
巨大な貨物タンクを中心に、パイプライン、バラスト機構、ダブルハル、そして機関室や居住区まで、すべてが密接に連携して巨大な液体貨物を安全に世界中へ輸送しているのです。
以上、タンカーの内部はどうなっているのかについてでした。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。