ジェットスキー(PWC)の塗装は、単なる外観カスタムではなく、船体保護・劣化対策・資産価値維持という実用面も大きく関わります。
一方で、車やバイクと同じ感覚で考えると失敗しやすい分野でもあります。
ここでは、素材・塗装方法・工程・DIYと業者の違いを、誤解が起きやすい点を修正しながら整理します。
ジェットスキーの船体素材は一種類ではない
ジェットスキーの船体は、一般に以下のような素材が使われています。
- FRP(ガラス繊維強化プラスチック)
- SMC(シートモールディングコンパウンド)
- メーカー独自の複合樹脂素材
「FRP+ゲルコートが主流」と説明されることも多いですが、実際にはメーカーや年式によって構造が異なります。
この違いは、塗装時の下地処理方法・補修材・プライマーの選択に影響するため、非常に重要です。
ゲルコートの正しい理解
工場出荷時のジェットスキー表面は、多くの場合「ゲルコート」と呼ばれる表層で仕上げられています。
- 塗装ではなく、樹脂を型に流し込む工程で形成される表層
- 高い耐水性・耐候性・耐摩耗性を持つ
- 光沢があり、非常に硬い
よくある誤解として「ゲルコートの上から塗ると剥がれる」という表現がありますが、正確には
光沢が残ったまま・脱脂不足・適切な下地処理なしで塗ると剥がれやすい
という意味です。
適切な足付け・脱脂・塗料システムの選定を行えば、ゲルコート上への塗装は十分可能です。
ジェットスキーを塗装する主な目的
見た目のカスタム
- 色替え(単色・ツートン)
- デザイン塗装
- マット仕上げ・キャンディカラーなど
劣化・ダメージの補修
- 紫外線による退色
- 表面の白化
- 細かなヘアクラック
中古艇のリフレッシュ
外装の印象は中古ジェットの価値を大きく左右するため、適切な塗装は再販価値の向上にもつながります。
塗装方法の種類と特徴
ゲルコート再施工
- 新艇に近い仕上がり
- 非常に高い耐久性
- 専用樹脂・研磨工程が必要
- 技術・設備・時間が必要
DIYが不可能ではありませんが、難度は高く、失敗時のリカバリーも大変なため、一般的には上級者向けです。
2液ウレタン塗装(業者施工で多い)
- 自動車・マリン兼用塗料
- 艶・耐候性・補修性のバランスが良い
- ベース+クリア、または単層タイプ
現在、業者によるジェットスキー塗装の主流といえる方法です。
DIY塗装(簡易)
- スプレー缶や簡易ガン使用
- コストを抑えられる
- 塗料・環境次第で仕上がり差が大きい
淡水使用や短期前提であれば成立しますが、海水使用・直射日光保管では劣化が早まる傾向があります。
正しい塗装工程(失敗防止の核心)
ジェットスキー塗装で最も重要なのは、下地処理です。
洗浄・脱脂
- 海水成分、油分、ワックス除去
- 中性洗剤洗浄 → 脱脂剤使用
足付け(サンディング)
工程により番手を使い分けます。
- 表面調整・段差取り:粗め
- 下塗り前:中番手
- 上塗り前:#320〜#400程度が一般的
光沢を完全に消し、塗料が食いつく状態を作ることが目的です。
下塗り(プライマー/サーフェサー)
- 下地が露出している
- 補修跡がある
- 素材が混在している
このような場合は、エポキシ系など適切な下塗りを入れると安定します。
一方で、健全なゲルコート面で、対応するトップコートを使用する場合は、必ずしもプライマー必須とは限りません。
カラー塗装
- 薄く数回に分けて塗る
- 一度に厚塗りしない
クリア塗装
- ベース+クリア方式の場合は重要
- 単層でもUV耐性を持つ塗料は存在する
乾燥・硬化
- 指触乾燥では不十分
- 完全硬化前の水濡れは厳禁
DIY塗装の現実的な評価
DIY塗装は「できる・できない」ではなく、どこまで求めるかが重要です。
- 塗料の種類(1液/2液)
- 下地処理の丁寧さ
- 使用環境(海水・淡水)
- 保管状況(屋内・屋外)
- ビーチングや接触の頻度
これらによって、耐久性は大きく変わります。
「必ず◯年持つ」とは言えませんが、条件が厳しいほど劣化は早まると考えるのが現実的です。
業者に依頼した場合の相場感
一般的に見られる価格帯は以下のイメージです。
- 部分補修:数万円〜
- 全塗装(単色):10〜30万円前後
- デザイン塗装・修理込み:それ以上
実際の価格は、下地状態・分解範囲・色数・デザインで大きく変動します。
塗装後のメンテナンスが寿命を左右する
- 使用後は真水洗浄
- 直射日光を避けた保管
- 定期的なUVケア
- 係留保管は特に注意
塗装自体よりも、その後の扱いで寿命が大きく変わるのがジェットスキーの特徴です。
まとめ
- ジェットスキーの素材は多様で、塗装方法は一律ではない
- ゲルコート上への塗装は可能だが、下地処理が成否を分ける
- 「必須」「必ず剥がれる」といった断定は避け、条件で判断する
- DIYは成立するが、用途と期待値を明確にすることが重要
- 業者相場は10〜30万円前後が一つの目安
以上、ジェットスキーの塗装についてでした。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。














