「船のトラッキング(vessel tracking)」とは、世界中の船舶の現在位置、航行ルート、速度、目的地、積荷情報などをリアルタイムまたはほぼリアルタイムで把握・監視する技術やシステムの総称です。
このトラッキングは、商業目的・安全管理・環境保護・物流効率化など、さまざまな分野で活用されています。
以下では、船のトラッキングの基本から応用、具体的な利用例まで、丁寧に解説します。
目次
船のトラッキングの基本構造
主なデータ取得手段:AIS(自動識別システム)
- AIS(Automatic Identification System) は、国際的に義務化されているシステムで、一定トン数以上の船舶には搭載が義務づけられています。
- 船はAISを通じて以下のような情報を自動で発信します。
- 船名・船籍
- 現在位置(緯度・経度)
- 航行速度(Knots)
- 進行方向
- 積荷の種類(タンカー・コンテナ船など)
- 出港港/目的港
- MMSI(海事移動業務識別番号)
情報の取得方法
- 陸上の受信局:沿岸に設置されており、数十〜数百キロ圏内の船舶からのAIS信号を受信。
- 衛星AIS(SAT-AIS):洋上や遠洋にいる船のAIS信号を衛星でキャッチ。これにより、世界中のどこにいる船でも追跡が可能。
船のトラッキングでできること
利用者 | 活用目的 |
---|---|
海運会社 | 配船管理・ETA予測・遅延通知・航路最適化 |
荷主(企業) | 積荷の追跡・入港予定の確認 |
保険会社 | 航行履歴の照会・事故調査 |
港湾関係者 | 入港スケジュール調整・混雑回避 |
政府/軍 | 不審船の監視・領海侵犯の検出 |
環境団体 | 違法漁業・オイル流出の追跡 |
一般ユーザー | 船舶のリアルタイム観察(趣味・教育) |
応用と最先端技術
機械学習によるETA(入港予定時刻)予測
天候、潮流、過去のパターンをAIで分析し、精度の高い予測が可能。
異常検出/リスク管理
- 「普段とは違う航路」「スピードの急減速」などの異常をAIが検知し、海賊行為や故障のリスクを警告。
物流最適化との連携
- サプライチェーン管理ソフト(SCM)と連携し、海上輸送の「見える化(可視化)」を実現。
- コンテナ港の混雑回避、陸送トラックの手配最適化にも役立ちます。
法的・技術的制限もある
- 小型船・漁船などはAIS未搭載のケースも多い。
- 悪天候や障害物によってAIS信号が届かないこともある。
- 船によっては「ステルス運航(AISを故意にオフにする)」が問題化。
- 特に違法漁業や制裁対象国の船舶で散見される。
船のトラッキングが持つ社会的意義
- 海難事故の迅速対応:沈没時の最後の位置が即時に分かる。
- 国際安全保障の維持:領海侵犯・密輸対策に不可欠。
- 持続可能な海洋管理:海洋汚染や違法操業を監視。
船のトラッキングの今後
- 5G海上通信・Starlink海上導入:通信エリア拡大でトラッキングの精度向上。
- ドローン・無人船(自動運航)との統合:無人船が自ら航路を調整しトラッキング情報を共有。
- ブロックチェーンによる積荷トレーサビリティ:積荷データと連携し、偽装や盗難を防止。
まとめ
「船のトラッキング」とは、単なる“位置の把握”を超えて、海上物流の効率化、安全保障、環境保護にまで貢献する国際インフラ的な技術です。
AISをベースにしながら、衛星・AI・IoTと連携して急速に進化しています。
以上、船のトラッキングについてでした。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。」