「タンカー(tanker)」という言葉には、文脈によっていくつか異なる意味がありますが、主に以下のような使われ方をします。
それぞれ詳しく説明します。
目次
船舶としての「タンカー」:液体を大量に輸送するための専用船
定義
「タンカー」とは、原油、石油製品、液化天然ガス(LNG)、化学薬品、食用油などの液体を大量に輸送するための専用船です。
主な種類
タンカーには運ぶ液体の種類によってさまざまな種類が存在します。
種類 | 運搬物 | 説明 |
---|---|---|
原油タンカー | 原油 | 油田から製油所への輸送用。超大型が多い。 |
プロダクトタンカー | ガソリン・軽油・灯油などの石油製品 | 製油所から消費地への輸送に使われる。 |
LNGタンカー | 液化天然ガス(LNG) | -163℃の超低温で液化された天然ガスを輸送。 |
ケミカルタンカー | 化学薬品 | 酸・アルカリ・有機溶剤など、特殊な液体も可。 |
食品用タンカー | 食用油、ワイン、ジュースなど | 衛生基準が高く、ステンレス製タンクが多い。 |
大きさの分類(原油タンカーの例)
分類名 | 積載量(DWT) | 用途や特徴 |
---|---|---|
ハンディサイズ | ~60,000 DWT | 港湾施設が小さい地域向け。 |
パナマックス | ~80,000 DWT | パナマ運河を通過可能な最大サイズ。 |
アフラマックス | ~120,000 DWT | 中規模の原油輸送に最適。 |
Suezmax | ~200,000 DWT | スエズ運河を通過できる限界サイズ。 |
VLCC | 200,000~320,000 DWT以上 | 世界中で主流の超大型原油タンカー。 |
ULCC | 320,000 DWT以上 | ごく一部の専用ルートのみ対応可能な超巨大船。 |
※DWTは「載貨重量トン数(Deadweight Tons)」で、貨物・燃料・水などすべてを含めた最大搭載能力です。
軍事用途でのタンカー:補給艦の意味
軍用タンカー(補給艦)
海軍用語では、「タンカー」は燃料補給艦としての意味も持ちます。
戦闘艦や空母などに洋上で燃料を補給する任務を担っています。
- 油槽(油を積むタンク)を持ち、航行中の艦船にホースを使って燃料を送る。
- 食料・水・弾薬などの補給も行えるものもあり、「補給艦(replenishment ship)」とも呼ばれます。
航空機における「空中給油機」も「タンカー」
エア・タンカー(Air Tanker)
軍用機では「空中給油機(エア・タンカー)」という意味もあります。
これは空を飛ぶタンク、つまり燃料を搭載し、他の飛行機に飛行中に燃料を補給する機体です。
- 有名な例:アメリカ空軍の「KC-135」や「KC-46」など。
- 給油方法:ブーム方式(硬いパイプ)やプローブアンドドローグ方式(ホース式)など。
その他の特殊な使い方
消防用飛行機(fire tanker)
山火事などで大量の水や消火剤を投下する飛行機を「ファイア・タンカー」と呼ぶこともあります。
こちらは「エア・タンカー」とも重なります。
比喩的表現(ビジネスや日常会話)
ビジネスなどでは、巨大組織や動きの鈍いものに対して、「タンカーのように方向転換が難しい」といった比喩で使われることもあります。
例:
「大企業はタンカーのように動きが鈍く、変革に時間がかかる。」
補足:タンカー事故の影響
タンカーが座礁・衝突・沈没などの事故を起こすと、大量の油が海に流出する可能性があり、深刻な海洋汚染につながります。
たとえば、1989年の「エクソン・バルディーズ号原油流出事故」では、アラスカの自然が大きな被害を受けました。
そのため、現代では二重船殻(ダブルハル)構造の導入など、安全対策が義務付けられています。
まとめ
意味のカテゴリ | 説明 |
---|---|
輸送船(一般) | 液体を運ぶ大型貨物船。原油やLNG、化学薬品など用途多数。 |
軍事用艦船 | 洋上で他の艦船に燃料を補給する。補給艦としての役割。 |
空中給油機(航空機) | 飛行中の他の軍用機に燃料を補給する飛行機。 |
消防用航空機 | 火災に水や消火剤を撒く航空機。 |
比喩的な表現 | 巨大で方向転換が遅い組織などの例え。 |
以上、タンカーの意味についてでした。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。