風上に向かってヨットが進むことができるのは、ヨットの帆の形状と水中にあるキールやセンターボードの役割によるものです。
この現象を「タッキング(Tacking)」または「ビーティング(Beating)」と呼び、いくつかの物理的な原理が関与しています。詳しく説明します。
エアロダイナミクスと帆の働き
ヨットの帆は単純な風受け板ではなく、飛行機の翼と同じように「エアロフォイル(aerofoil)」の形状をしています。
風が帆の両面を通過する際、風上側と風下側で風の流れの速さが異なります。
帆の曲面によって風下側の風の流れが速くなり、風上側では遅くなるため、帆の両面で圧力差が生じます。
この圧力差が「揚力(リフト)」を生み、ヨットを前進させる力となります。
キールやセンターボードの役割
ヨットが水中に持つ「キール」や「センターボード」は、船体の横滑りを抑える役割を果たします。
これらは水中翼のように機能し、水がキールを通過する際に生じる抵抗によって、船体が風によって横に流されるのを防ぎます。
その結果、ヨットは風上に向かって進むことが可能になります。
クローズホールドとタッキング
風上に直接進むことは不可能ですが、「クローズホールド」と呼ばれる特定の角度で進むことができます。
クローズホールドでは、風の向きに対しておよそ30~45度の角度で航行します。
直接風上に進むためには、「タッキング」と呼ばれる操船技術を使用します。
タッキングはヨットの舳先を風に向けて方向を変える操作であり、これを繰り返してジグザグに進むことで風上に向かって進むことができます。
ベルヌーイの法則とニュートンの作用反作用の法則
帆のエアロダイナミクスはベルヌーイの法則にも関係しています。
風下側の圧力が低くなることで揚力が生まれるという点で、飛行機の翼と同じ原理です。
また、風が帆に当たって方向を変えるときに生じる「反作用」によっても推進力が生じます。
これはニュートンの作用反作用の法則に基づいており、風が帆に当たって流れを変えると、その反動でヨットが進む力を得るのです。
まとめ
ヨットが風上でも進むことができる理由は、帆がエアロフォイルとして機能し、揚力を生み出していること、そしてキールが横滑りを防いでいることにあります。
タッキングを繰り返すことでジグザグに進むことができ、これによって風上方向への航行が可能になるのです。
以上、風上でもヨットが進める理由についてでした。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。