「錨(いかり)が海底に引っかかって抜けない…」
船を停泊させたあとにこんなトラブルに見舞われることがあります。
錨が抜けない原因は、海底の地形や錨の向き、鎖の張り具合など、いくつもの要因が関係しています。
無理に引っ張ると鎖が切れたり、船体にダメージを与える恐れもあります。
この記事では、
- 錨が抜けなくなる主な原因
- 抜けないときに試すべき安全な方法
- 再発を防ぐための予防策
をわかりやすく解説します。
錨が抜けない主な原因とは?
錨が海底に沈むとき、爪(フルーク)が地面に深く食い込むことで船を固定します。
しかし、状況によっては錨が「効きすぎる」ことがあり、引き上げが困難になります。
主な原因は次の通り
| 原因 | 内容 |
|---|---|
| 海底の地質 | 泥地や砂地で爪が深く沈み込みすぎる場合。特に粘土質の海底は抜けにくい。 |
| 岩や障害物に引っかかる | 錨のアームや爪が岩・構造物の隙間に絡まる。 |
| 錨の角度が悪い | 投錨時に正しい姿勢で沈まず、鎖が真上に引かれて抜けない。 |
| 潮流や風による船の移動 | 船が回転し、鎖がねじれて錨を締め付けてしまう。 |
| 長期間放置 | 海藻や貝類が付着して錨が海底に固着する。 |
錨が抜けないときの正しい対処法
錨が抜けない場合、焦って力任せに引くと危険です。
まずは段階的に安全な方法を試してみましょう。
船をゆっくり反対方向に動かす
錨を引いた方向と反対側へ少しずつ進むことで、爪の角度を変えて自然に外れる場合があります。
→ ポイント:エンジンは低速(デッドスロー)で動かすこと。
鎖(アンカーロープ)を緩めてしばらく待つ
鎖の張りを一度ゆるめて数分間静置すると、波や潮の動きで錨が自然に浮き上がることがあります。
トリップラインを利用する
あらかじめ錨の後端にトリップライン(補助ロープ)を付けておけば、反対側から引き上げることができます。
特に岩場・サンゴ地帯では有効です。
錨をゆっくり上下に揺らす
ウインチで少し上げては戻す動作を数回繰り返すことで、錨の根がほぐれて外れることがあります。
どうしても抜けない場合
すべての方法を試しても外れない場合は、
- 錨を切り離す(安全第一)
- 潜水士や引き上げ業者に依頼する
といった最終手段も検討しましょう。
錨が抜けない場所と特徴
| 海底の種類 | 抜けにくさ | 理由 |
|---|---|---|
| 泥地・粘土質 | ★★★★☆ | 爪が沈み込みやすく、真空状態で固着する |
| 岩場・サンゴ礁 | ★★★★★ | 錨が構造物の隙間に挟まりやすい |
| 砂地 | ★★☆☆☆ | 一般的に抜けやすいが、長時間放置すると沈下する |
| 藻場・貝殻底 | ★★★☆☆ | 生物の付着で固定されることがある |
航海前に海底のタイプを確認しておくことで、「錨が抜けない」トラブルを未然に防ぐことができます。
錨が抜けないトラブルを防ぐための予防策
投錨位置の選定を慎重に行う
岩や構造物の多い場所ではなく、砂地を選ぶのが基本です。
錨を下ろす角度に注意する
鎖が海底を這うように、水深の5〜7倍の長さを出すのが理想。
トリップラインを必ず設置する
特に地形が複雑な海域では、抜け対策の基本装備です。
定期的に錨を引き上げ、メンテナンスする
長期係留の場合、貝や錆の固着で抜けにくくなるため、定期点検を行うことが大切です。
錨が抜けないときに絶対やってはいけないこと
- 全力で引っ張る(ロープ・ウインチ破損の危険)
- 急発進・急後進する(船体に衝撃)
- 潜水せずに無理に外そうとする(人身事故の危険)
無理な操作は、船・錨・人すべてにリスクがあります。
必ず安全を優先し、可能なら複数人で確認しながら作業しましょう。
まとめ:錨が抜けないときは「焦らず、角度を変える」
ポイントをまとめると、
- 錨が抜けない主な原因は、地形・角度・引き方の問題
- 対処法は、反対方向への移動・鎖を緩める・トリップライン活用
- 岩場や粘土質では特に抜けにくく、事前対策が重要
無理に引き上げるよりも、角度を変える・時間をおく・装備を使うほうが安全で確実です。
錨の仕組みを理解しておけば、海上トラブルの多くは防げます。
以上、錨が抜けない理由についてでした。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。







