「錨は海底でどうやって船を止めているの?」「本当に海底に引っかかってるだけ?」
そんな疑問を持つ方も多いでしょう。
実は、錨(いかり)は単に“海底に沈んでいる重り”ではありません。
海底の地形・土質・潮の流れに応じて、爪(フルーク)が食い込み、鎖の重さで安定させるという精密な仕組みで働いています。
この記事では、
- 錨が海底で固定される仕組み
- 海底の種類による効き方の違い
- 錨が抜ける・効かない原因と対策
をわかりやすく解説します。
錨は海底でどう働く?基本の仕組みを解説
錨は船を停めるために海底に沈めて固定する装置です。
船体と鎖(アンカーチェーン)でつながれ、潮の流れや風による移動を防ぎます。
錨の固定の原理
- 錨を海底に下ろす(投錨)
船から錨と鎖をゆっくり下ろします。錨の重みで海底に着底。 - 船がわずかに後退し、爪が海底に食い込む
船が風や潮で引かれると、錨の爪(フルーク)が海底を掘り込みます。 - 鎖の重みで錨が寝るように固定
鎖が海底を這うことで、錨が持ち上がらずに安定します。
この「錨+鎖+海底摩擦」の3つが組み合わさることで、船を確実に止めることができます。
錨が効くかどうかは海底の状態で決まる
錨がうまく機能するかどうかは、海底の地質(底質)に大きく影響されます。
ここでは、代表的な海底の種類と錨の効きやすさを比較します。
| 海底の種類 | 特徴 | 錨の効きやすさ | 理由 |
|---|---|---|---|
| 砂質底(サンド) | 粒が細かく、均一で柔らかい | ◎ とても良い | 爪が深く食い込み、強く固定される |
| 泥質底(マッド) | 柔らかく粘りがある | ○ 良い | 吸着力が高く、錨が沈みやすい |
| 礫底(グラベル) | 小石・砂利が多い | △ 普通 | 食い込みが浅く、滑ることがある |
| 岩盤(ロック) | 硬く平らな岩場 | × 効かない | 爪が刺さらず、滑って固定できない |
| サンゴ底・海藻底 | 凹凸があり不安定 | × 効きにくい | 爪が絡まず、引っかかりが弱い |
理想的なのは砂質底(サンドボトム)。
多くの港や停泊地は、錨が効きやすい砂地に設計されています。
錨が海底に食い込む仕組み
- 錨を投下 → 海底に落下
- 爪(フルーク)が横向きに寝る
- 船が引かれる方向に爪が掘り込む
- 鎖の重みで角度が保たれ、錨が引き抜かれにくくなる
このとき、鎖の長さ(スコープ)が重要です。
鎖が短いと角度が立って錨が浮き、効かなくなる(dragging anchor)状態になります。
一般的には、水深の5〜7倍の長さの鎖を出すのが理想とされています。
錨が海底で効かない原因と対策
「錨が効かない」「船が流される」といったトラブルは、次のような原因で起こります。
| 原因 | 状況 | 対策 |
|---|---|---|
| 錨が軽すぎる | 大型船や潮流の強い海域で | 船体に合った重量の錨を使用 |
| 鎖が短い | 錨が立ち上がって固定されない | 水深の5〜7倍の鎖を出す |
| 海底が岩盤・サンゴ | 爪が引っかからない | 砂地や泥地を選ぶ |
| 潮流・風の急変 | 錨が引き抜かれる | 2本目の錨(ダブルアンカー)を使用 |
| 錨の向きが悪い | 投錨時に寝ていない | 船を少し後退させて爪を寝かせる |
錨の効きは海底環境と操船技術の両方で決まります。
特にプレジャーボートやヨットでは、地形図や潮流情報を事前に確認することが重要です。
海底に残された錨と「引き揚げ」の技術
ときには、錨が海底の岩や構造物に引っかかり、上がらなくなる(錨絡み)こともあります。
この場合は、
- 船を反対方向に移動して角度を変える
- 錨引き揚げ専用具(トリップライン)を使う
などの方法で回収します。
しかし、引き上げできない場合は、錨を切り離して放棄するケースも。
そのため、世界中の海底には“放棄された錨”が数多く沈んでおり、海中遺産やダイビングスポットとして人気になることもあります。
海底での錨の状態を守るために必要なメンテナンス
錨が海底で長時間使用されると、腐食・摩耗・海藻の付着が進行します。
特に鉄製の錨は錆びやすく、定期的な点検が欠かせません。
主なメンテナンス項目
- 錆落としと防錆塗装の再塗布
- 鎖やシャックル(接続金具)の摩耗点検
- 引き揚げ後の塩分洗浄と乾燥
こうした手入れを続けることで、錨の寿命は10年以上持たせることも可能です。
まとめ:錨は海底で「爪+鎖+摩擦」で船を支えている
ポイントをまとめると、
- 錨は海底に沈み、爪(フルーク)が地面に食い込むことで固定される
- 砂地や泥地では効きやすく、岩やサンゴでは効きにくい
- 鎖の長さと角度が安定のカギ
- 錆びや摩耗対策も重要
つまり、錨が海底でしっかり働くのは、重さではなく「構造と環境のバランス」によるものです。
この仕組みを知れば、船旅や海の安全への理解がより深まるでしょう。
以上、錨の海底での仕組みについてでした。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。







